相手によって志乃に悪影響を与える可能性大。
①
〜坂田銀時の場合〜
「銀ー!」
銀時の営む万事屋にやってきた志乃は、ソファに寝転ぶ彼の上にダイブする。「ぐえっ」という苦しげな声に構わず、銀時に抱きついた。胸に顔を埋めると、大好きな匂い。銀時の死んだ魚のような目が、志乃を映した。
「んだよ……」
「んー?何でもなーい」
「じゃあいきなりダイブしてくるんじゃねーよ!すっげー痛えんだかんな!」
「てめー、俺の苦しみわかってねーだろ」と志乃を抱きしめて、頬を引っ張る。びにょーんと伸びる頬に銀時は口角が上がるのを抑えられない。
ソファで志乃を組み敷いて下にさせると、細い腕が銀時の首にまわる。素直に甘えてくる彼女が可愛らしくて、銀時は頬に軽く口付けた。
「ぎっ……!?」
途端に、ぶわっと赤くなる志乃の頬。それが面白くて、くつくつと笑いを堪え切れない。
「も、もうっ」
「ワリーワリー。……お前が可愛かったもんでな」
愛おしげに彼女の髪に触れる。その先に、再びキスを落とした。
(前半部分はもう普段でもやりそうじゃん。恋人らしいことキスしかしてねーし、シスコンブラコンの君らなら確実にしてるよねェ!?)
(してねーよ、するわけねーだろ!)
(大丈夫。もし銀がキスしようとしてきても唇刈り取るから)
(あれっ?もしかして俺の味方一人もいない?)
〜志村新八の場合〜
いつもの剣術の修行が終わったその日。
「師しょ……あ、違う。新八」
「わっ!……わざわざ言い直さないでよ」
新八、と名前で呼んだだけなのに、ここまで照れるとは。昔は普通に呼び捨てだったのに。真っ赤になる彼氏に、志乃のドS心がくすぐられる。
「えいっ」
「ぅわっ!?し、ししししっ、志乃ちゃんっ!?」
ぎゅう、と背中を抱きしめてやると、新八は志乃よりも大きな体を揺らして、激しく動揺する。小悪魔的な笑みを浮かべ、新八の耳元に唇を寄せて囁いた。
「新八、大好き」
「〜〜〜〜ッ!!」
ぼふっ!と音を立てていそうな程、新八の顔はさらに一段階赤くなった。くつくつと楽しげに反応を見ていると、震えていた新八の体が硬直する。
どうしたのか、と彼を見上げる。新八は鼻血を流して、床に崩れるように倒れた。
「しっ、新八っ!?」
(し……しし、し、志乃ちゃんのっ……や、柔らかすぎる胸、が……!!)
新八の邪な思考など知らず、志乃は首を傾げて倒れた新八を見下ろした。
(新八のチェリーな面がよくも悪くも出ましたね)
(そこに良し悪しなんかあるの!?ていうか志乃ちゃんの前で何て事言ってんだァァ!!)
(取り敢えずキモい消えろメガネ)
(もう心折れる……)
〜土方十四郎の場合〜
「とーうーしーろっ」
「オイ名前で呼ぶなっつったろ」
「いいじゃん、デートなんだし」
そう言って、志乃は土方の腕に抱きつく。楽しげな彼女に対し、土方は溜息を吐く。
いや、今二人が所謂恋人関係になっているのは、他でもない自分のせいなのだが。幼い頃から変わらず背伸びし続ける彼女を心配していたのが、いつの間にか恋愛感情に変わっていた。
気がついたら目が離せなくて、いつも側にいたいと思ってしまうようになった。……相手はまだ子供なのに。
もちろん、付き合っていることは内緒だ。これが隊士に、特に沖田にバレれば面倒だ。様々な誤解が生まれるし、何より志乃に近寄ろうとするアホもいるかもしれない。
土方はそれが気がかりだった。
「……志乃」
「?」
志乃の細い腰に手をまわし、抱き寄せる。どうしたのか、と赤い双眸が土方を捉えた。その純粋な瞳に見据えられ、土方はそのまま志乃を抱き上げた。
「わっ……!」
突然体が宙に浮かび、小さく悲鳴を上げる。志乃を抱っこすると、ちょうど土方の目には彼女の銀髪と白い首筋が映る。
「……ん」
「ひゃっ……ちょ、ちょっと……」
そこに顔を埋めると、ほんのり甘い匂いがする。背中に手をまわし、匂いを嗅ぐと、志乃はくすぐったいのか、身を捩る。
そのまましばらく匂いを嗅いでから、土方はようやく志乃を降ろした。
「……何、いきなり」
「お前もせいぜい男には気をつけるこった」
え?と首を傾げる志乃。土方はそんな彼女の髪を撫で、穏やかな笑顔を浮かべた。
(これだよ……!これが一番書きたかった……!!)
(最悪だった)
(ウゼェが俺も同意見だ)
〜沖田総悟の場合〜
※下ネタ入ります
「志乃」
「なぁに?」
昼休み中。大好きなチキン南蛮を口に運ぼうとしたその時、彼氏の沖田が前に座ってきた。
「今夜、俺と一発【ピー】しねェか」
「は?」
「「「「ブッ!!?」」」」
志乃と沖田以外の全員が、小説の存続すら左右しかねない爆弾発言に吹き出す。志乃だけはわけがわからず、首を傾げている。
「えっ、何?つまりどういうこと?」
「要するにおしべとめしべを……」
「何つー説明してんだァァァァ!!」
とんでもなく危ない説明を始めようとした沖田の頭に、土方の踵落としが決まる。沖田はそのまま顔面を机に叩きつけられた。
「お前白昼堂々何やってんだァ!!アホか!ガキに何つー事教えようとしてんだよ!」
「何でィ土方さん。俺と志乃は付き合ってんだからナニしようが勝手だろィ」
「カタカナ変換やめろ‼︎この小説が消されるだろーが!!」
「ねぇザキ兄ィ、【ピー】って何?」
「ギャアアアアアア!!何てこと言うの志乃ちゃん」
「嬢ちゃん、忘れるんだ!今のは全部忘れるんだァァァァ!!」
状況を一切呑み込めない志乃に、隊士達は何とか先程の沖田の発言を忘れさせようとした。団子をチラつかせれば、即座に忘れたが。
********
志乃が何故この男に惚れたのか、周囲は未だによくわからない。元々志乃に悪影響を与えるような存在なのに、何故かこの二人は付き合っている。
それは予てより全員の疑問だったのだが、ついに山崎が志乃に思い切って尋ねてみた。
「志乃ちゃんは何で沖田隊長と付き合ってるの?」
「えっ?」
志乃がキョトンとした顔で、山崎を見上げる。
「何でって……何で?」
「いや、その……あの、沖田隊長のどういう所を好きになったのかなって」
「どういうとこって言われても……」
うーん、と腕組みをして考える。しばらく首を傾げて唸っていたが、不意に腕を解いた。
「わかんない」
「えっ!?」
「特に理由はないよ。ただ、私が総悟を好きなだけ。総悟が私を好きでいてくれてるだけ。それ以上に何かいる?」
「…………」
ふふ、と優しく笑った彼女は、とても幸せそうに見えた。
そうか、彼女はただ、見つけただけなんだ。自分のことを想って、大切にしてくれる存在を。
現に沖田は志乃と付き合ってから、常にと言い切っていいほど彼女の傍にいた。
志乃が見廻りに行く時は必ず一緒に行っていたし、ご飯を食べる時も常に隣にいるし、志乃が誰かと話しているだけでも……。
「オイ山崎。てめェ、人の女と何喋ってんでィ」
ほら、やっぱり来た。
沖田は志乃が誰かと話していると、すぐに妨害しにやってくる。志乃は俺のものと言わんばかりの圧力に、山崎は萎縮する。
「お、沖田隊長……こ、これはその」
「おし、山崎。歯ァ食い縛れ」
「ちょっと志乃ちゃん助けてェェェ!!」
山崎は涙目で志乃に助けを求めるが。
「わっ……ちょ、総悟っ」
「ん、大人しくしとけ」
志乃は沖田に抱きしめられ、全く身動きの取れない状態。しかも抱きしめられた彼女は満更でもなさそうに頬を染めている。志乃はその手を、沖田の背にまわした。
「総悟、大好き」
「俺も」
ーーえっ、俺は一体何を見せられてるの?
二人のラブラブムードの中、三十路を越えた男は一人、悲しい気分に浸った。
(この話だと単に山崎が不憫なだけだね)
(ってことで俺ァ早速志乃と……)
(どこに志乃連れて行こうとしてんだコラァァァ!!)
個人的には新八が一番書きやすかったです。彼、ものすごい純情なんで。トッキーとはまた違った(と言ってもかなり微妙な)関係性になりました。
沖田はもう、腹括りました。多分こうなるだろうと。純粋なものを自分だけの色に染めたいって、ドSなら少なからずあると思うんですね、そういう願望が。まあでも普段の二人なら、「死ね」「お前が死ね」の応酬になると思います。