「つまり、ここは冬木市なのじゃな? 御主の話によると冬木市では5回聖杯戦争が行われて、その後魔術師によって聖杯は解体されたと。では、冬木の聖杯戦争には巻き込まれてはおらんのではなかろうかの?」
人目を避け、薄暗い裏路地で疲れた足を休ませながら、周りを見張っているセイバーと話していた。
「いや、それが……これを見てくれ」
俺は逃げるときに拾った古新聞紙の日付をセイバーに見せた。
「2004年1月31日。冬木の第五次聖杯戦争は2004年に起きている」
「じゃぁ、御主はタイムスリップでもしてきたのかの?」
自分の記憶がもし正しければ、俺は未来から来た人間ということになる。魔術の中で時の流れを遅くしたりするものは聞いたことがあるが……タイムスリップなんて技術があれば魔術協会やらに……魔術協会? そうか。
「セイバー、いい案を考えた」
いきなり声色が変わった俺を驚いた眼でセイバーは見た。
「御主、何かよい案でも思いついたか」
「魔術協会か聖堂教会に連絡を取ろう。聖杯戦争は魔術協会が主催し、聖堂教会が監督役をしているんだ。まずは教会にいこう。冬木の土地は日本有数の霊地で、多くの魔術師が住んでいると聞く。教会に関係者がいると思う」
セイバーは俺の話を聞くと、持っていた新聞紙を地面に投げ捨て、日本刀を腰に差しなおした。
「御主の話に賛成じゃ。では、その冬木にある教会に行こうぞ」
「ちょっと待て、そう焦るなよっておい!」
セイバーって人の話をちゃんと聞かないのかな…… 教会の場所、まだわかってないのに。
人ごみをかき分けるように走っていくセイバーとそれを追うマスターの姿を見ている二人の姿は彼らには見えていなかった。
「誰もいないではないか! 御主、儂はどれだけ走ったか!」
冬木教会。あちらこちらを走り回るセイバーを宥め、冬木市の住人達に聞き込みをしたところ分かった一番怪しい教会だ。教会の中に入ってみると、そこには誰もいなかった。むろん、的が外れたからセイバーはお怒りだった。
「おかしいなぁ……聖堂教会の人じゃなくても一般人の神父ぐらい居てもいいような……」
人が居た雰囲気はあるのに、だれもいない…… 妙だと考えることは直ぐに終わった。
「えぇ、おかしいですよ。どうやら冬木の第5次聖杯戦争に関わった人々は今現在、消滅しています」
落ち着いた男の声が教会の入り口から聞こえてきた。すぐにセイバーが抜刀し、俺の前に立った。
「うぬは何者じゃ!? 名を名乗れ!」
殺気立つセイバーに落ち着くようにジェスチャーをした男はまたゆったりとしゃべり始めた。
「実は、私、自分の名前を忘れてしまったようで……仮の名前ですが、聖杯戦争に参加している水無月と申します」
突然のマスターとの邂逅に俺は唖然とした。聖杯戦争ならば暗殺もあってもおかしくないのにサーヴァントもそばに置かず話しかけてくるマスターなんて見たことがない。
「マスターがのこのこと目の前に出てくるとは、御主の首頂いたァ!」
教会の入り口に立っていた水無月へセイバーは刀の先を向けると、腰を低く構え、走り始めた。
「その刀。貴女はセイバーのサーヴァントとお見受けした。ランサー!」
一気に詰め寄ってくるセイバーの姿を一瞥し、水無月が叫んだ瞬間
「女。そんなに殺気立たなくてもいいだろう」
大きな男が大ぶりの槍を構えていきなり目の前に現れて、水無月を守った。
これが、セイバーと他のサーヴァントの初めての戦いの始まりであった。
ー著者よりー
一日一投稿を目指していましたが、2日3日、私事で忙しくなるので更新が遅れます。すみません。
(追記。6月12日文章の修正)