「女。ここはいったん引け」
男は屈強な体をし、野太い声でセイバーに話しかけた。片手にはただでさえ高身長のくせに、身長の半分よりも長く、龍が描かれている槍が俺は気になった。ランサー……槍兵か。あの槍の大きさなら懐に入れば倒せるかもしれない。
「うぬは儂が女だから相手にならんと言うのか!」
セイバーは腰をかがめ、男の懐に入った。そのまま、抜いておいた日本刀で男の体に切りつけようとする。
「誰も、そんなこと言ってないだろ」
「くッ!」
強い風が吹き
セイバーがこっちに吹き飛んできた!
急いで倒れているセイバーに駆け寄った。
「おい、セイバー! 大丈夫か!」
「御主……大丈夫だったらこの有様じゃなかろう」
ゆっくりとセイバーは立ち上がると微動だにしない男をにらみつけ、刀を構えた。
「…あの男……あの男、儂が懐に入った瞬間、刀を振りぬく前にあの槍で叩きつけてきおったわ」
男の足元の床にはヒビが少し入ってる。
「予想以上に素早いぞ。そのスピードにあの槍の重さを儂にかけてくる。なかなかの強敵じゃ」
重々しくセイバーが言ったと思うと、いきなり笑い始めた。
「ハハハ! こうではなくてはのぅ! ……マスター。儂は戦が好きだったのかもしれん」
腰に手を当ててガハハと笑い続けるセイバーを男は冷淡に見つめ、水無月は微笑みながら見ていた。
「水無月とやら、儂がここで笑っていてもなんもせぬということは何か儂らに用事でもあるのか?」
「えぇ、そうですね。セイバー、私は貴女たちと情報の共有をしたいのです」
「ちょっと待った!! 俺がセイバーのマスター……なんでセイバーって知っている?」
水無月がセイバーと話し始めようとするのを止めに入った俺は水無月に尋ねた
「おや、私は貴方が『セイバー!』と叫んでいるのを今、聞いたのですよ」
「……マスター」
セイバーがジト目でこちらを睨んでくる。やらかした。あとで、セイバーに怒られるかも……いや、絶対怒られるな。
「まぁ、そう仲を悪くするとこれから先が危ないですよ」
相変わらず微笑みながら水無月はお辞儀をした。
「改めて自己紹介を。私は水無月、ランサーのマスターです。今さっき、眼が覚めたらあのランサーと共に横に倒れていたのです。聖杯戦争に参加していることは覚えていたのですが、何故か自分の名前以外思い出せないし、ランサーも自分の真名がわからない。仕方なく、聖堂教会のもとへ頼りに来たのですが……」
水無月は白いシャツを着て、痩せていた。落ち着いているのか、それともあまりしゃべらない人なのか……いや、それよりこの人も記憶喪失。
「俺も記憶がなくて……セイバーはこんなんですし、聖堂教会に頼ろうと思いまして。あ、俺の名は神流と呼びます」
「こんなんとはなんだ! こんなんとは!」
そっぽを向いてセイバーは拗ねていたけど、もうすこし落ち着いてほしいから俺はなんも言わなかった。
「いいですね。可愛らしいサーヴァントじゃないですか」
「はい?」
「私のサーヴァントなんて、正直、電信柱と同じです」
水無月が指でランサーを指すとランサーは首だけを動かし、水無月を見て、槍を構えた。
「マスター。俺の槍でも受け止めてみるか?」
「いや、冗談だよ。ランサー! ここの雰囲気を慰めるジョークってやつさ!」
水無月がランサーに駆け寄って宥めている姿を見て、なにやっているんだがと、セイバーを見ると『儂……儂は幼子じゃない……でも……儂は一体』とぶつぶつ言っているもんだがら、俺はどうしようもならないとまだ壊れていない教会の長椅子に座った。
水無月はまだ信用はできないが、仲間がいないのは心細い。ここは様子を見て……
「あれ? 皆さん? 聖杯戦争はどうしました?」
いきなり、知らない人の声が聞こえてきて俺たち4人は固まった。
セイバーは体育座り、水無月はランサーの槍を必死に抑えていて、ランサーは槍を構えて続けている。まるで、コントをやっているようなところにまぁ、知らない人が来たら驚くよな。
俺たちの姿を見て、荒れている教会の中を見て、黒い服を着た若い男はため息をついた。
「こんなに荒らして…… で、聖杯戦争の監督役の私のところへそろって集まるとは一体……何がありましたか?」
俺は耳を疑ったが、水無月が驚いている姿を見て、確信した。
ようやく、聖杯戦争について、そして、俺たちの過去を知るかもしれない、聖堂教会の人間に会えることができたのだ!
(筆者のひとこと)
戦闘描写の勉強をしてきます