「えーと、私の名前は
「はい。……あの……ここは本当に日本の冬木市ですか?」
俺たちは散らかった椅子を並び替え、篠座を囲むように座っていた。
篠座は大きく頷いた
「はい、そうです。ここは冬木市ですね」
「私たちは一体何者なんでしょうか……?」
「実は貴方たちの姿と名前だけ、教会から連絡を受けていまして……今日から調べようと思っていたのです」
篠座はそういうと隣の部屋から写真を持ってきた。
「はい、神流さん」
写真にはカフェテリアに座って何かを飲んでいる俺の姿がそこには写っている。
「これは……水無月さん」
水無月に渡した写真には裏路地でフードを被った男と喋っている彼の姿が。
「ランサーのマスター。御主は、なにか怪しいことでもしておったのかの?」
「マスター……俺はマスターにこの槍を振るいたくはない」
「私、そんな怪しいですか!?」
水無月に詰め寄るセイバーとランサーを篠座は宥め、写真を集めた。
「これ以上の情報は渡せません。伝えられるのはただ、これは聖杯戦争であり、皆さんは何かの望みがあって参加しています。記憶を失っていても聖堂教会を頼るということは魔術の知識はまだお持ちということ。互いに殺し合い、最後に残るまで戦い続けてください」
篠座は硬い表情で言い切った。
俺の頭の中で何かが引っかかっていた。今の話は何かがおかしい……聖杯で何かを叶えるわけじゃなくて……なんだ? 何を俺は求めていたのか?
「マスターよ。頭なんて抱え込んで何を悩んでおるのかの?」
気が付いたらセイバーが隣に立っていた。
「セイバー。俺は気になるんだ。さっきの篠座の話は何かが引っかかる」
「うむ、儂もそう思うのじゃ。これはただの聖杯戦争ではない。二組とも記憶喪失になるなんての」
「ランサーと少し戦ってどうだ? 今、勝てそうか?」
「儂の真名を思い出せない限り、この小柄な体じゃとあのランサーには力で負けてしまうかの。あの槍は案外早いのじゃ。切られることはなくとも潰れてしまうからの」
もし戦闘になったら俺たちは不利だ。どうすればいいか――
「ねぇ! もっと早く逃げて!」
「―――――――――ィ!!」
突然、教会の外から悲鳴を上げる女性の声とまるで獣のような大声が聞こえてきた。
地面を削る音と、唸り声も混ざっている。
「!?」
俺とセイバー、水無月とランサーは教会から飛び出した。
「助けて! 君たち、魔術師でしょ? このサーヴァントが! 私たちを!」
赤いスーツを着た20代に見える女性と、赤い甲冑を着た男が、唸り声をあげ赤い眼を光らせている黒い甲冑の男と対峙していた。唸る男の腰元には血が滴る麻袋がぶら下げられていた。
「あやつ、血の臭いがするのぅ…… あの女を助けるかの?マスター」
「……」
「マスター?」
「やれ」
気が付いたら俺は『やれ』と言っていた。麻袋を見つめるたびに怒りと悲しみがどこからか湧き上がってくる。
「マスター! しっかりせい! いくぞ!」
俺とセイバーは、再び赤いスーツの女のもとへ走り始めた。
走りながら俺は自分の記憶を少し思い出した。
――――『もう二度と同じことはさせない』俺は、大切な誰かを殺されてこの聖杯戦争に参加することを決めたのだ
教会内では、悠然と篠座は飛び出していった神流達とそれに続いた水無月たちを見ていた。
「水無月さんも、飛び出していきましたね。居ますか?」
「……どうした? マスター」
篠座の横に浅黒い肌の男が現れた。今、外で戦いが起きているのに助けに動かないマスターを呆れた顔で見ている。
「ライダーとバーサーカーのサーヴァントもここに集結したようです。私たちは彼らが記憶を取り戻すか、それとも真実を知らずにこの戦いを終わらせるか。まさかの結末もあり得るでしょう。ちゃんと計画通りに進めるのですよ。アーチャー」
「わかっている。マスター」
篠座は教会の扉に背を向けると、黒い神父服を脱ぎ、白いシャツの襟を正して、教会の奥へ消えていった。
(筆者により)
セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカーの5騎が登場しました。まだ出ていないのはアサシン、キャスターですね。もう死んでるかもしれませんが
全員の真名は考えてありますので、クイズのように考えながら読んでいただくと嬉しいです。ヒントはかなり出してしまっていて少し反省しています。
次回はバーサーカーとの戦闘。がんばって描写しますので読んでいただけるのなら幸いです。では、羽織単衣でした。