「マスター。早く教会のほうへ! 喰いとめます」
赤い甲冑を着た男が、俺らのほうへ指をさし、女性が走り寄ってきた
「頼んだ! ねぇ、君たちもマスターなら手伝って!」
「あぁ……セイバーのマスターの神流だ」
「女性の頼みならば私はお助けします。私の名は水無月。ランサーのマスターです」
水無月が前に出て、女性に駆け寄った。ランサーには大きな武器がある分、宝具が使えなくても問題はないかもしれない。
俺らはただの刀だが、心が止まることを許さない。
「ありがとう! うちはライダーのマスターで、名を立花と言います。実は……記憶がなくて名前を思い出せないのです」
「私たちも同じく記憶がなくて…… 本当ですよ?」
三人ともマスター、サーヴァント共に記憶がない。怪しい。
また後で篠座にでも聞いてみるか。
「ランサー、いいですね。恐らく、あの男はバーサーカーだと思われます」
水無月はライダーが対峙している男を見ていた。男は唸り声をあげつづけ、大きな太刀を手に、ギョロギョロと周りを見回していた。とても現代人のような恰好はしていない。
「もし、すべてのマスターとサーヴァントに記憶がないのならばこのサーヴァントは相当な危険性を持つでしょう。今、排除しなければ彼の腰にある生首の数が増えるはず。ランサー、いいですね」
「了解」
ランサーはのしのしとライダーの隣に立った。赤い甲冑の男、ライダーはかなり顔つきがいい――今でいう美少年で、ランサーとは違って小柄な体つきをしていた。
「あんた、ランサーのサーヴァントか。気が合いそうだ」
「……黙って、剣を握れ」
ぶっきらぼうに答えたランサーにため息をつき――
「さっきまで、逃げてて悪かったなぁ。おっさん」
「――――ィ!」
ライダーが煽った瞬間、バーサーカーは突然切り込んだ。
刀と太刀がぶつかり合う鈍い音が響き渡る。
ランサーが隙を逃さず、槍を叩きつける。
「うむ……」
「――――――ェ!」
唸り声と共に、槍が吹き飛ぶ。
「こいつ……今の槍を素手で受け止めたのか……」
血に濡れている片手でバーサーカーはライダーを殴り飛ばした。
紙屑のように吹き飛んで地面に突き刺さった。
「――――ィ!」
「痛てぇなぁ……」
吠える大声が響き渡る中、ランサーとライダーはそれぞれの得物を地面に突き刺して立ち上がった。
「旦那。ありゃ、かなりの強敵だな」
「ただの筋肉ではない。あの太刀を片手で持ち、死角からの強襲にも察知できる感覚……」
二人は再びバーサーカーに斬りかかった。
「たかが一人でしょ! 一気に押すのよ!」
運動会の親のように大声で叫ぶ立花に水無月は困った顔で宥めた
「あのですね……ランサーは見た目通りパワータイプなのですが、ライダーもあの小さな体をもってパワータイプの戦い方をしています。あのバーサーカーもパワータイプ。お互いにぶつかり合って力尽きるまで戦うでしょうが……どうやらあのバーサーカーの力は普通じゃないです」
水無月が解説している間、ライダーとランサーはバーサーカーに切りかかり、投げ飛ばされ、立ち上がり、切りかかってを繰り返していた。
「儂に行かせてくれ」
俺の横で戦いぶりを見ていたセイバーが刀を抜き、ランサーとライダーが戦っている中へ向かっていった。これでも状況が変えられないのならかなり不味い。まず、バーサーカーのマスターを発見できていない。
「おう、ぬしら、下がっておれ!」
「セイバーか! すまない!」
ランサーとライダーが飛び下がり、
セイバーはさっきのランサーとの戦いと同じようにバーサーカーの懐へ
「――――ィ!」
「不味い! 両手持ちに切り替えた! セイバーが潰れる!」
バーサーカーの振りかぶった太刀が注意を呼び掛ける前にセイバーへ振り下ろされた。
あの小柄な体なら、一気に潰れるかもしれない。ここは令呪で魔力を送るべきか!?
「マスター!気にする出ない!儂も少しは学ぶのじゃ!」
セイバーの叫ぶ声と金切り声のような鋭い音が響いた。
それどころか肩の上に掲げた刀の上を太刀が滑って行く。
あれは……どこかで……見たような……
「バーサーカーの馬鹿力を、刀を傾かせることで地面のほうに流しているのか! 俺もやってみてぇ!」
「阿呆、ライダー。あれは気を抜くと地面に叩きつけられる精密な動きだ」
力が変な方向に抜けて、バーサーカーは空を切ったように前のめりに倒れてきたその瞬間
一閃
「鈍いわ」
「――――ゥゥォォォ!!」
セイバーがバーサーカーの手首を切り、ボトっと太刀と共に手首が落ちた。
「どうだ。まだやるかの。バーサーカー」
バーサーカーの獣のような叫び声と呼びかけるセイバーの声を聞きながら俺は震えが止まらなかった。
新しい記憶が復活した。