Fate/lost memory   作:羽織単衣

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第六話「バーサーカー」

「マスター。早く教会のほうへ! 喰いとめます」

赤い甲冑を着た男が、俺らのほうへ指をさし、女性が走り寄ってきた

「頼んだ! ねぇ、君たちもマスターなら手伝って!」

「あぁ……セイバーのマスターの神流だ」

「女性の頼みならば私はお助けします。私の名は水無月。ランサーのマスターです」

水無月が前に出て、女性に駆け寄った。ランサーには大きな武器がある分、宝具が使えなくても問題はないかもしれない。

俺らはただの刀だが、心が止まることを許さない。

「ありがとう! うちはライダーのマスターで、名を立花と言います。実は……記憶がなくて名前を思い出せないのです」

「私たちも同じく記憶がなくて…… 本当ですよ?」

三人ともマスター、サーヴァント共に記憶がない。怪しい。

また後で篠座にでも聞いてみるか。

「ランサー、いいですね。恐らく、あの男はバーサーカーだと思われます」

水無月はライダーが対峙している男を見ていた。男は唸り声をあげつづけ、大きな太刀を手に、ギョロギョロと周りを見回していた。とても現代人のような恰好はしていない。

「もし、すべてのマスターとサーヴァントに記憶がないのならばこのサーヴァントは相当な危険性を持つでしょう。今、排除しなければ彼の腰にある生首の数が増えるはず。ランサー、いいですね」

「了解」

ランサーはのしのしとライダーの隣に立った。赤い甲冑の男、ライダーはかなり顔つきがいい――今でいう美少年で、ランサーとは違って小柄な体つきをしていた。

「あんた、ランサーのサーヴァントか。気が合いそうだ」

「……黙って、剣を握れ」

ぶっきらぼうに答えたランサーにため息をつき――

「さっきまで、逃げてて悪かったなぁ。おっさん」

「――――ィ!」

ライダーが煽った瞬間、バーサーカーは突然切り込んだ。

刀と太刀がぶつかり合う鈍い音が響き渡る。

ランサーが隙を逃さず、槍を叩きつける。

「うむ……」

「――――――ェ!」

唸り声と共に、槍が吹き飛ぶ。

「こいつ……今の槍を素手で受け止めたのか……」

血に濡れている片手でバーサーカーはライダーを殴り飛ばした。

紙屑のように吹き飛んで地面に突き刺さった。

「――――ィ!」

「痛てぇなぁ……」

吠える大声が響き渡る中、ランサーとライダーはそれぞれの得物を地面に突き刺して立ち上がった。

「旦那。ありゃ、かなりの強敵だな」

「ただの筋肉ではない。あの太刀を片手で持ち、死角からの強襲にも察知できる感覚……」

二人は再びバーサーカーに斬りかかった。

 

「たかが一人でしょ! 一気に押すのよ!」

運動会の親のように大声で叫ぶ立花に水無月は困った顔で宥めた

「あのですね……ランサーは見た目通りパワータイプなのですが、ライダーもあの小さな体をもってパワータイプの戦い方をしています。あのバーサーカーもパワータイプ。お互いにぶつかり合って力尽きるまで戦うでしょうが……どうやらあのバーサーカーの力は普通じゃないです」

水無月が解説している間、ライダーとランサーはバーサーカーに切りかかり、投げ飛ばされ、立ち上がり、切りかかってを繰り返していた。

 

「儂に行かせてくれ」

俺の横で戦いぶりを見ていたセイバーが刀を抜き、ランサーとライダーが戦っている中へ向かっていった。これでも状況が変えられないのならかなり不味い。まず、バーサーカーのマスターを発見できていない。

「おう、ぬしら、下がっておれ!」

「セイバーか! すまない!」

ランサーとライダーが飛び下がり、

セイバーはさっきのランサーとの戦いと同じようにバーサーカーの懐へ

「――――ィ!」

「不味い! 両手持ちに切り替えた! セイバーが潰れる!」

バーサーカーの振りかぶった太刀が注意を呼び掛ける前にセイバーへ振り下ろされた。

あの小柄な体なら、一気に潰れるかもしれない。ここは令呪で魔力を送るべきか!?

「マスター!気にする出ない!儂も少しは学ぶのじゃ!」

セイバーの叫ぶ声と金切り声のような鋭い音が響いた。

 

 

潰(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)

 

それどころか肩の上に掲げた刀の上を太刀が滑って行く。

あれは……どこかで……見たような……

「バーサーカーの馬鹿力を、刀を傾かせることで地面のほうに流しているのか! 俺もやってみてぇ!」

「阿呆、ライダー。あれは気を抜くと地面に叩きつけられる精密な動きだ」

力が変な方向に抜けて、バーサーカーは空を切ったように前のめりに倒れてきたその瞬間

 

 

一閃

 

 

「鈍いわ」

「――――ゥゥォォォ!!」

セイバーがバーサーカーの手首を切り、ボトっと太刀と共に手首が落ちた。

「どうだ。まだやるかの。バーサーカー」

バーサーカーの獣のような叫び声と呼びかけるセイバーの声を聞きながら俺は震えが止まらなかった。

 セ(・)イ(・)バ(・)ー(・)の(・)剣(・)筋(・)を(・)俺(・)は(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。(・)

新しい記憶が復活した。

 

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