「どうだ。まだやるかの。バーサーカー」
セイバーが刀についた血糊を振り払うと尖った先をバーサーカーに向けた。
「――――!」
人のようで人ではない声を上げるとバーサーカーは落ちている右手を拾い――
逃げた
「ヘッ!?」
「は?」
180度回転して走り去っていくバーサーカーをポカンと口を開けてみていた
「おいおい、そりゃぁないだろ。マスター、追おうぜ」
ライダーが呆れた顔で振り向いた。
「そうね。ここで放っておくといつ現れるかわからないし…… 君たちはどうするの?」
「私は皆さんが行くと言ったらついていきます。まだ他のサーヴァントの動きがわからない以上、一人で行動するのは危ないと思いまして」
立花と水無月は俺を見た。俺には嫌な予感があった
「いや、追うのはやめよう。なにかがおかしい。あんな好戦的なサーヴァントが逃げるなんて信じられない」
「でも、今怪我をしているときに追わないと後々面倒だよ?」
「それもそうなんだけど……まだ情報が少なすぎる。危ないことは好きじゃない」
何か言いたそうな顔をしていた立花は俺の眼をジッとみると、大きく溜息をついた
「わかったわよ。じゃぁ、監督役……居るんでしょ? あわせてちょうだい」
教会へ入ったとき、そこには誰もいなかった。
「篠座さん? いませんか?」
水無月が大声で叫んだが、ネズミ一匹でてこなかった。あれ?
「ねぇ……君たち、私を騙してない?」
「いや、待て。確かに居たんだ。さっきまで篠座っていう…… 落ち着けって」
立花は眉をひそめるとライダーを呼び寄せた。
「正直ね、まだ、君たちが何者かで、信用してもいいかわからないの。今回は助けてもらったから襲わないけど、次会ったときはどうなるかわからないからね」
「立花、信用してくれ。監督役はいたんだ」
俺が立花に近づこうとした時、ライダーが立花の前に立ちはだかった。
「形勢を変えてくれたセイバーのマスターだ。だから忠告するぜ。これ以上マスターに近づいたら切り伏せる」
ライダーはさっきまでのヘラヘラ顔ではなく、凛々しい顔で日本刀の先を俺に向けた。
「ちょっと待て。今、セイバーは教会内の探索に行っているし、ここで襲われたら困る」
「これは聖杯戦争なんだぜ。旦那が死ねばこちらも得なわけだ」
「マスター! 大変じゃ!」
ライダーを説得しているとセイバーが驚いた顔で走ってきた。
「セイバーも説得してくれ。ライダー陣営が信用してく――――」
「し、篠座が死んでおるのじゃ!」
「え!?」
セイバーについていくと、教会に置かれているオルガンの後ろに血みどろになって寄りかかっている黒い服を着た男の死体があった。大きく肩から腰にかけての刀傷と腹に刺し傷がつけられている。顔は無残にもたくさんの切り傷で誰だか判別がつかない。
「…………不味いな」
「うむ、不味い」
すぐさま、セイバーが俺の前に刀を構え、ランサーが水無月の前で槍を構え、ライダーが立花の前で構えた。
「いったん、誰がこんなことをしたかわかるまで仲良くするのはやめにしましょ」
「立花さんの意見に賛成です。私も少し仲良くしすぎました」
「ここで、仲違いするのは不味い。二人とも話し合おう」
雰囲気が一気に悪くなっていく。誰かがここで飛び道具でも投げ込んだらたちまち、三つ巴になるだろう。一触即発な状態……
「いやじゃ!いやじゃ!」
「セイバー!?」
セイバーが刀か手を放すと駄々をこねるように床に寝そべった。
「ちょっと待て!セイバー、今の状態をわかっているのか!?」
「ん? わかっておる。あれじゃろ? 三つ巴ってやつじゃろう? 儂は嫌いじゃ。さっきまで共に刃をそろえていたのにこんなんで矛先を向けあうのは嫌いなのじゃ」
そういうと、セイバーは顔を上げて笑いながら言った。
「御主ら、剣を交えるのであれば外でやってくれ。儂は面倒なので、一抜けなのじゃ」
「セイバー……お前、そんなこと言ってもな…… 子供じゃない……いや、子供かもしれないけどさ、あぁ面倒だ。セイバーは黙っていろ」
険悪な雰囲気で一人だけ拗ねられていきなり死ぬのだけは嫌だ。
ヘラヘラ笑っているセイバーを見ていた立花はため息をついた。
「ハァ…… そうね、まだライダーの真名もわからないことだし、どっかに行かせてもらうわ」
「俺らを殺そうとはしないのか?」
「さっき、助けてくれたでしょ? 貸しを作りたくないのよ」
立花は軽く笑った。
「もし、それが監督役じゃないとしてもこんなことをする人なんて悪意のあるマスターの仕業でしょ? 大体、みんな記憶喪失でイレギュラーな聖杯戦争だったらもう少し単独行動させてもらうわ」
確かにその通りだ。俺の記憶はほぼ空っぽで、何を聖杯に願っているかも覚えていない。
「私も立花さんと同様、単独行動取らせてもらいます。監督役は本来こんな簡単に死ぬことはないでしょう。なにか裏があると思います。あ、もちろん、神流さん、貴方のことを私は信頼していますが。ここは別々に行動してまた後で情報交換をいたしましょう」
水無月はランサーに武器を収めさせると、入り口に向かった。
「この死体はどうするんだよ!」
二人の後ろ姿に俺は叫んだ。こんな荒れた教会に一般人なんて来たら俺に厄介後とか起きてしまう。そんなことは勘弁してほしい
「君が片づけておいて!」
「はぁ!?」
おいおい……それは……嘘だろ?
「神流さん、この拠点を譲りますから。ではまた会いましょう」
あいつら、振り向きもしなかった……
水無月と立花がテクテク歩き去ってしまい、俺には死体が残された。
「うむ、御主。掃除を始めようぞ!」
いや、いつのまにかに割烹着に着替えているセイバーもいたな…… 血みどろの三つ巴にはならなかった功績はあるが、それでもこのマイペースぶりは……そんな英雄が居たような……
二組のマスター達が教会から去り、残された俺はただ無邪気に血糊をふき取り、死体を片づけるセイバーをただ見つめ、頭を抱えるだけだった。
かなり投稿する間が空いてしまい申し訳ありません。勉強やらの諸事情で執筆する時間が取れず今に至ります。また、小説の書き方が下手になってたりやキャラの性格が変わっていたりしたら、すみません(一応、チェックはしましたが……)。良ければ、再び読んでいただけると幸いです。