一晩中、教会を調べたが、結局、あの死体が誰かはわからなかった。警察を呼べばいずれか誰だったかはわかるかもしれないが、そんなことをすれば面倒なことになる。朝の警官暴行とか、遺体の第一発見者とかへの疑いもあるだろうから、静かに埋葬した。
「さぁ、起きたかの? そろそろ、出かけたいのじゃ」
――――夜、セイバーが元気よく出かけようとする6時間前
「しかし、あの篠座って男は本当に教会関係者なのかの」
「……聖堂教会についての書類は何一つ見つからなかったな」
一般人が礼拝に来ても違和感を覚えないぐらいには綺麗に片づけた聖堂で一休みをしていた。
「この暗殺は人間の仕業ではない。おそらく、アサシンの仕業であろうよ」
カカカと笑うとセイバーは長椅子に足を載せた。
「誰も気が付くことはなかったもんな…… まぁ、あの状況じゃ気が付かなくても仕方ない」
「顔を滅多切りにして拷問をした後なんらかの刃物で喉元を一突きしたのではと思ったのじゃが…… いや、人間でもアサシンでもいいが、そやつは何もせずにして儂、ランサー、ライダー、バーサーカーの情報を集め、かつ監督役を暗殺するとはなかなかのもの」
「…………もしかしてアサシンのマスターは俺たちのことを知っているかもしれない」
ボソッと言った俺をセイバーはニヤニヤ笑いながら顔を向けた。
「ちゃんと聖杯戦争をやっているからであろう?確かに、アサシン陣営は記憶喪失ではないかもしれないの。だが……」
「だが?」
「教えてくれるわけがなかろうが」
ケッと吐き捨てるようにセイバーはつぶやくと長椅子に寝っ転がった。
「明日、町へ向かうぞ。故に今は寝ておくのじゃ」
「おい、番は誰がするんだよ」
立ち上がり、まさか……と焦りながら、走り詰めるともうすでに爆睡の域に入っているサーヴァントが居た。
「まぁ、昨日の夜は普通に寝ていたし、今日は俺の番……いや、マスターよりも早く休みに入るサーヴァントなんて聞いたことあるか!!」
どうやら、不真面目なサーヴァントの話は今のところ一度も聞いたことがないな……。
――――今に至る
「ん? どうしたのじゃ、御主。元気がないようじゃの」
「そりゃぁ……ねぇ…… 徹夜だったからなぁ」
「夜更かしなんて、健康に悪いのじゃ。儂のマスターなのだから、しっかりしてもらわないと」
「誰かがすぐに寝に入るからなぁ」
クマができているだろう俺がセイバーを睨みつけると、そっぽを向いた。
「で、どこに行く? 行く当てでもあるのか?」
「本があるところへ行くのじゃ。儂が相当な有名人だったなら儂の伝記の一つ二つはあるはずじゃろうよ」
「でもなぁ…… セイバー、そんな恰好じゃ外、歩けないだろ?」
セイバーは初めて会った時からずっと袴姿で、今まで何もセイバーに言っていなかったが、サイズがどうやら大きすぎるようで胸元辺りが時々緩んでいる。
「さっきの戦闘で少しボロボロになっているし…… あと、この時代にその袴姿は合わない」
「うむ…… ならば、先ほど教会で見たあの服にするのじゃ」
セイバーは少し呆け、ニヤリと笑うと俺がまばたきをした間にセイバーは男物の袴姿から黒のレディーススーツに着替え終わっていた。すらりと伸ばしたズボンに綺麗に落ち着いた黒い上着を羽織って堂々と立っていた。――――ちょっと待て
「どうじゃ!」
「いや、ダメだろ。なんでそんな戦いにくい服にした?」
「儂もこういう西洋ぽい服を着てみたかったのじゃ。教会の私室に沢山あっての。袴のほうが良いじゃろうと思っていたのじゃが、マスターの頼みなら仕方ない」
「もう一回変えてくれませんかね?」
「嫌じゃ」
再びそっぽを向くセイバーを見て、俺の令呪が使ってほしいと疼いたが、ここは一息ため息をつき、教会を出た。
拝借した腕時計には朝9時とあり、外からは朝から昼への暖かい太陽の光が差し込んでいた。
「で、どこに図書館や本屋があるって知っているか?」
「知るわけがなかろうが! 歩けばどこかに当たるじゃろう」
髪の毛を後ろで結わくとセイバーは日本刀を竹刀用の袋の中にしまうと、その袋を背負った。
「さて、マスター、行くぞ。やるべきことは、儂たちの記憶を取り戻すことじゃ。聖杯はそのあとじゃ」
「わかっているよ。頼むからおとなしくしてくれ……」
寝不足の俺と、元気いっぱいのセイバーは教会を出て、町へ向かった。謎のバーサーカーに、教会での暗殺事件、三組のマスターとサーヴァントの記憶喪失……これらを一つでも解決しなくてはならない
読んでいただきありがとうございます。再び更新が遅れました。申し訳ないです。8月初めからまたコツコツと更新する予定で、あと、1話あたりの校閲など行いたいと思っています。
次の投稿まで間が空くかもしれませんが、よろしくお願いいたします。