ゾイドグラフィックス戦記   作:ロイ(ゾイダー)

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作中に名前のあるリヒトホーヘンというキャラはヒストリーオブゾイドの劇中にいるバトルストーリーの公式キャラです。
確実に名前は、あの赤い飛行機乗りに由来すると思われます。

ちなみに現在の見解では、戦略爆撃はそこまで有効ではありません


ゾイドグラフィックス戦記 プテラス編 前編

 

 

ZAC2037年 9月14日 中央大陸西部 ゼネバス帝国領 

 

 

 

かつて侵攻してきた共和国軍と帝国軍の戦闘が幾度も繰り広げられてきた砂礫の野には、激しい戦いの名残である破壊されたゾイドの残骸が無数に転がっていた。

 

それらの残骸が転がる砂地に、帝国軍の小規模部隊が展開していた。

 

 

部隊の内訳は、ゲーター3機、それを取り囲むように、護衛のマーダ(電磁砲装備型)が4機、指揮官機のゲルダーがいた。ゲルダーは、背部に4連装対空ミサイルを追加装備している。

 

 

「今日は、平穏に終わりそうだな…」

 

 

マーダのパイロットは、モニターの片隅に表示された時刻表示を見て言った。

 

今の所、ゲーターは敵機の機影を自慢の3Dレーダーで地上にも、上空にも捕捉していなかった。

 

彼らの直ぐ近くには、中央大陸を二分する山脈 中央山脈が壁の如く聳え立っている。

 

「お前ら、油断するなよ…」

 

ゲルダーに乗る指揮官が、部下を注意する。

 

この対空警戒任務は、旧式機のゲルダーやマーダが使われていることから分かる様に敵と交戦する危険性の低い任務である。

 

それでも、共和国領との境に近いこの地域は、最前線の1つである。その時、ゲーターの3Dレーダーが、彼らに接近する機影を捉えた。

 

 

それらは、速度と方向から見て敵機である可能性が高かった。

 

 

「敵機です!」

 

ゲーターのパイロットが叫ぶ。

同時に各機のコックピットに対空警戒を示す警報が鳴り響いた。

 

「きやがった!」

 

 

帝国兵の一人がそう言ったのと同時に、中央山脈の黒い影から湧き出す様に敵機が姿を現した。

 

共和国軍の最新鋭小型飛行ゾイド プテラスである。

 

大きく蒼く光るマグネッサーウィング、ペガサロスとは比較にならない太い胴体、陸戦ゾイドに匹敵する脚部は、従来の共和国軍の飛行ゾイドに比べても異質で、敵機のシルエットを繰り返し、脳裏に叩き込まれてきた帝国兵達が見間違うはずがなかった。

 

数は6機。どの機体も低空を飛び、空にV字を描く様な隊形で彼らに向かってきている。

 

帝国兵達の目の前で、プテラス6機は、散開すると地上のターゲットに襲い掛かる。

マーダやゲーターが電磁砲やビームガトリングを上空に向けて乱射するが、射角の問題で、プテラスの機影を捉えることは無かった。

 

プテラスは、敵部隊に機銃掃射を浴びせながら脚部の爆弾漕の小型爆弾を投下する。10発以上の小型爆弾が帝国軍部隊の周囲に着弾し、彼らを包囲する様に火柱が立ち昇る。

 

直撃を受けたゲーターは、木端微塵に吹き飛び、爆風を直に浴びたゲーターが背鰭を穴だらけにされながら横転する。

 

その機体のコックピットは、完全に破壊されていた。

隣では、マーダが脚部を破壊されて行動不能に追い込まれていた。

 

 

「おのれ!」

 

せめて一矢報いようと指揮官機を務めるゲルダーが背部の対空ミサイルを発射した。

ゲルダーの背部がミサイルの発射炎で一瞬オレンジに染まった。

 

発射された4発のミサイルは、白煙を上げて青空の敵機を追う。

 

地球では、航空兵器に対して有効な対空ミサイルも強力な磁気嵐によって誘導装置の信頼性が低下しているこの惑星Ziでは、無誘導のロケット弾と大差は無かった。

 

高い運動性能を誇るプテラスは、それらのミサイルを急旋回や急降下で容易に回避する。ミサイルは、敵機を捉えることなく、空しく自爆していった。

 

プテラスの1機が急降下し、地上の帝国軍機に向けて機銃掃射を開始した。すれ違い様にプテラスの胴体上部側面に装備されたバルカン砲が火を噴く。

 

機銃弾を胴体に受けたマーダが爆散する。別のプテラスが、ゲルダーの背部に機銃掃射を浴びせた。

 

幸い重装甲のゲルダーは、装甲に多少傷がついただけで済んだ。ゲルダーの後ろで、最後のゲーターがプテラスの機銃掃射で大破した。

 

「終わったのか…」

 

ゲルダーに乗る部隊指揮官を務める帝国兵は、次々と共和国領へ去っていく敵の航空部隊を憎しみの籠った目で見据えて言った。

 

襲撃は時間にすると数分であったが、それが地上の帝国軍部隊に与えた損害は、甚大な物だった。

 

マーダは、2機が大破、対空哨戒任務を務めるゲーターは、全てがスクラップと化し、彼らの任務である共和国軍の爆撃部隊の発見、監視という目的は果たせなくなった。

 

国境付近で対空監視任務に従事していた第145電子偵察小隊は、共和国空軍のプテラス部隊の襲撃を受け、短時間で壊滅を余儀なくされたのだ。

 

任務を達成したブルーグレーの機影は、意気揚々と東の空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ZAC2034年、ヘリック共和国は、鳥族の王族出身の共和国空軍司令官 リヒトホーヘンの発案で、共和国空軍に配備されてきた大型飛行ゾイド サラマンダーの過半数を新設した戦略航空大隊に編入、この部隊による帝国本土空爆作戦を正式に承認した。

 

これは、それまでのゾイド星(惑星Zi)の軍事作戦の常識を超えた作戦であった。

 

この作戦は、爆装したサラマンダー部隊によって中央山脈を超え、ゼネバス帝国本土の都市や軍需工場といった拠点に対する戦略爆撃を行い、帝国の戦争遂行能力を奪うことを目的としていた。

 

後方拠点に打撃を与え、ゼネバス帝国の国力を低下させるだけでなく、帝国市民の士気を低下させることにより、戦争を早期終結に導くというもので、それまでゾイド部隊による大会戦や都市や拠点に対する攻略作戦等が主体であったこの惑星の戦争の常識を遥かに超えたものであった。

 

帝国本土空爆作戦が発表された時、戦線から遠く離れた敵国の都市に対する攻撃等全く想像出来なかった陸軍、海軍の将軍、共和国議会の一部議員は、絵空事であると思った程である。

 

それまでの空軍、飛行ゾイドの役割を考えれば、彼らの反応も当然と言える。

 

飛行ゾイドの存在によって地球以上に航空兵力の歴史は長かったものの、それらの利用法は、前線偵察、相手の偵察妨害、敵の飛行ゾイドへの攻撃、地上攻撃等で、陸軍の補助としての存在であった。

 

前線から遥か離れた都市を空爆し、戦争そのものの趨勢に影響を与える等考えられなかったのである。

 

帝国本土空爆作戦を立案した空軍司令官 リヒトホーヘンは、鳥族の貴族出身のエースパイロットであり、帝国軍の侵攻作戦によって故郷を失っていた。

 

この前代未聞の作戦を考案するにあたって彼が教師としたのは、6万光年離れた惑星 地球の戦争で行われた航空作戦の歴史だった。

 

その中で彼が注目したのは、戦略爆撃という用語であった。

 

戦略爆撃………敵国の生産施設や都市を破壊し、戦争継続能力を奪うことで戦争を早期終結へと導く。

 

リヒトホーヘンにとってこれは、この戦争を終わらせる答えの様に見えたのである。

 

 

そして、この作戦に要求される性能を全て満たすのは、新開発されたばかりだった唯一の大型飛行ゾイドであるサラマンダーのみだった。

 

 

その半年後、戦略航空大隊に編入されたサラマンダーは、戦略爆撃を開始した。

 

大量の爆弾を搭載できるサラマンダーの大部隊による空爆は、ゼネバス帝国最大の工業地帯ウラニスク工業地帯等数多くの都市や防衛拠点、工場等に打撃を与え、ゼネバス帝国の工業力、戦争遂行能力も低下していった。

 

 

対するゼネバス帝国も、この天空からの脅威に手を拱いていたわけではなかった。対空ミサイルや対空砲の高性能化、唯一の実用飛行ゾイドであるシンカーの武装、速力強化等のサラマンダー対策を進めた。

 

中でも最も効果を発揮したのは、ゼネバス帝国空軍、陸軍の連携によって国内に形成された防空哨戒網である。

 

これは、地球人科学者より導入されたレーダーシステムと通信網を利用し、共和国領を飛び立ったサラマンダー部隊をいち早く発見、敵の爆撃編隊の針路から、目標となる拠点を算定するというシステムである。

 

これにより、敵機の針路上に迅速かつ効率的に防空戦力を集中させることが可能となったゼネバス帝国空軍は、少ない防空戦力で、効率的に迎撃することが出来るようになった。

 

防空網に突入することとなったサラマンダー部隊の被害は、拡大し、爆撃作戦の中止さえ提案され始めた。

 

防空網の眼となっていたのは、当初、レーダーを有する基地であったが、これは固定目標であるため、即座に少数機のサラマンダーによる爆撃対象にされた。

 

 

これによりサラマンダー部隊の被害は低下した。

 

 

対する帝国軍は、爆撃のターゲットとならない様にレーダーを移動させればいい、と考えた。

 

 

ここで、白羽の矢が立ったのが、ディメトロドン型電子戦ゾイド ゲーターである。ゲーターの背びれの3Dレーダーは、地上、空中両方の敵を探知可能で、対空警戒任務に転用出来た。

 

小型ゾイドであるゲーターのレーダーシステムは、基地のレーダーに性能で大きく劣っていたが、空を高く飛ぶ大型機であるサラマンダーの大編隊を捕捉し、その方向を通報するには、十分だった。

 

防空網の眼である索敵システムが復旧したことで、サラマンダー部隊の被害は再び増大した。

 

 

これを受け、共和国空軍は、貴重なサラマンダー部隊の被害を出来る限り、減らす為国境付近の地域に展開する帝国軍の対空監視部隊の掃討部隊を編成した…敵地に侵入し、敵の対空監視部隊を叩き潰すという困難な任務には、共和国が開発した新型飛行ゾイド プテラスが充てられたのであった。

 

 

 

 

 

 

対空哨戒部隊への襲撃を終えたプテラス6機で編成される第3小隊は、基地への帰路に就いていた。

 

眼下には、黒々とした中央山脈の険しい山肌が広がっている。

 

 

 

「グレン隊長!今日も楽な任務でしたね!」

 

 

 

2番機を務めるコリン・マクスウェル中尉は、先程の戦いを脳内で回想しながら先頭を飛ぶ隊長に言った。

 

「コリン、油断するよ…連中は、旧式機を護衛にしているからいいものの、本格的な対空装備を出して来たら…こっちが酷い目に遭うんだ」

 

通信波により伝達されたお調子者の副官の言葉を聞きながら、禿頭の指揮官は、彼をたしなめる様に言う。

 

「おい、新入り!お前もよくやったな、ケイ、お前は、マーダの脚を吹き飛ばしただろ?」

 

編隊の最後尾のプテラスに乗るパイロットは、初陣の緊張の余韻の残る顔を緩ませた。

 

「はい!ありがとうございます」

 

「各機!基地が見えて来たぞ!」

 

パイロット達の視界に光を放つ山の中腹の一部が見えた。

 

 

中央山脈山頂付近に積る白銀の万年雪や遥か古代のマグマが冷え固まって出来た黒い岩石の輝きとも違うそれは、中腹に建設した共和国の空軍基地の輝きである。

 

中央山脈 タリオニス空軍基地 まだ中央大陸が統一されていた頃、中央山脈の周囲を主な居住エリアとする民族 鳥族の聖地が存在していた場所にこの空軍基地は建設されていた。

 

聖地だった頃は、遥か有史以前に気候変動で絶滅した、サラマンダーを上回るサイズの大型翼竜型ゾイドの群れの化石が、御神体として配置され、鳥族によって神殿が築かれていた。

 

最盛期には、鳥族以外の民族を含む数多くの人間が険しい山を乗り越えて参拝していたのである。

 

 

だが、ZAC2037年現在、もう誰も、古代の鳥族の文化、技術水準の高さを示すその神殿も、気候変動で滅び去った古の空の巨人たちの遺骨が埋まった大岩も、見ることは出来ない。

 

かつて部族間抗争の頃も保護されていたその壮麗な神殿と化石が埋め込まれた大岩は、ZAC2033年のゼネバス帝国軍の共和国領侵攻作戦の際に帝国軍の砲撃によって破壊され、現在は廃墟となっているのがその理由である。

 

破壊された鳥族の聖地に築かれたこの基地の名が、地球の古代の言語で、「報復」を意味する単語なのは、偶然ではないだろう。

 

事実この基地は、開設されてから今日に至るまで共和国空軍機という報復の矢を撃ち込んできた。

そして今日も、帝国領に放たれた矢が、任務を終えて帰還してきた。

 

 

 

 

 

「全機!着陸態勢に入れ!」

 

 

かつての神殿の名残である崩れかけた大理石の石柱が視界に入ったのと同時にプテラス隊を率いるグレン・マクダネル大尉は、旗下のパイロット達に命令を下す。

 

プテラス5機のパイロットの指揮官を務めるこの男は、ペガサロスで、シンカー2機を撃墜し、地上攻撃でも戦果を挙げたエースパイロットである。

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

彼の部下は、即座に指示通り自分の機体の速度を緩める。

 

グレンは、神殿跡に聳える石柱が見えた辺りで、減速するのが、この基地での安全な着陸でのコツだと経験から知っていた。

 

なにしろ中央山脈の山腹に建設されたこの基地では、滑走路を外れたら、即命に係わる。

 

3日前には、第5小隊のプテラスが2機、減速のタイミングを間違え山脈に激突する事故を起こしていた。

 

グレンも、彼の部下達も戦闘で敵の対空砲火や敵機に撃墜されて死ぬのは、覚悟している。だが、事故で犠牲になることは、何としても避けたかった。

 

灰色の強化コンクリートを敷き詰めた滑走路がパイロット達の視界一杯に迫った。

最後尾の新米パイロット2人は、緊張に表情を強張らせる。

 

プテラス6機は、指揮官機を先頭に空中で静止し、次々と滑走路に降り立つ。

 

プテラスは、その改良型マグネッサーウィングとサラマンダー譲りの二足歩行も可能な頑強な着陸脚の存在によって垂直着陸が可能であった。

 

これは、それ以前の共和国空軍の戦闘機である鳥型ゾイド ペガサロスが離着陸に長い滑走路を必要としていたのとは対照的だった。

 

着陸したプテラスのコックピットが開き、パイロット達が、頭部側面に内蔵されていたワイヤーロープを用いて滑走路の硬い地面に降り立った。

 

ゴドスのフレームを流用したプテラスは、グライドラーやペガサロスと異なり、全高が高い為、この様な方法で搭乗員は、乗降しなければならなかった。

 

一応、プテラスを地面に寝かせることでパイロットが乗り降りする方法があったが、発進時に手間がかかる為最前線では用いられなくなっていた。

 

 

「…」

 

 

最後に着陸したプテラスのコックピットが開放され、パイロットが地面に降りた。

 

ケイ・ランバート准尉は、対ゾイド爆弾の爆風にも耐える強化コンクリートが敷かれた地面の硬い感触を両脚で確かめた。

 

これが、この若きパイロットの癖で、彼にとって自分が今揺らぐことのない地面にいるのだと確かめる儀式の様な物である。

 

黒曜石の様な黒髪を後ろにまとめた彼は、この部隊に入ってからまだ日が浅くプテラスに搭乗しての実戦はこれが初めてだった。

 

「中々良い着陸だったぞ!」

 

「敵機一機撃破よくやったな」

 

着陸と同時に隊長であるグレン以下隊員達が彼の肩を叩き、笑顔で迎え入れた。

 

グレンの次にケイの右肩を叩いたのは、プテラス3番機のパイロット リック・バークレイ少尉である。

「ケイ、昨日の賭けはお前の勝ちだったな。次は負けねえからな」

 

最後に金髪を短く刈りこんだヘアスタイルの長身の男がケイの前に現れて言った。

彼、プテラス5番機のレイモンド・ラッド准尉は、ケイと同様に今回の出撃が初陣である。

 

「賭け?」

 

「おいおい、忘れちまったのかよ。訓練学校を卒業した時に言っただろ?空でも陸でもいいから敵ゾイドを最初に仕留めた方に酒をおごるってな」

 

「…ああそうだったな。奢ってくれるよな?」

 

ケイは半年前の約束を思いだし、笑みを浮かべて言った。

 

「それは、この基地にバーが出来てからの話だなぁ」

 

レイモンドも口元に笑みを浮かべる。その笑みは、賭博師が相手と賭けに勝利した時に見せるそれに似ていた。

 

このタリオニス空軍基地は、現在建設途上で、滑走路と格納庫、レーダー等の空軍基地として不可欠な設備こそ完成していたが、酒保やバー等の兵員の休息や娯楽の為の施設は過半数が未完成であった。

 

また将来の帝国本土空襲作戦を見据えて設置されることが決められた重装備機 プテラス・ヤーボ用のカタパルトも未完成である。

 

「…畜生!」

 

ケイは、悔しそうに顔をしかめる。

 

「お前ら整備の邪魔になる前に宿舎に戻るぞ」

 

「あっ」

 

「はい!分かりましたぁ」

 

他のパイロットが滑走路から去りつつあるのを見た2人は慌ててその後を追った。

司令室に戦果報告する必要のある指揮官のグレン以外の第3小隊のパイロット達は、宿舎へと消えていった。

 

第3小隊は、エースパイロットであるグレン中尉の指揮の元順調に帝国領への地上攻撃において戦果を挙げた。

ケイとレイモンドも第3小隊の一員として地上の敵ゾイドをスクラップに変えていった。

 

 

 

 

 

ZAC2037年 9月20日 

 

 

この日も第3小隊のプテラス6機は、帝国側の対空監視部隊を撃破し、基地に帰還する途中だった。新米のケイとレイモンドは、初陣と同じく一番後ろを飛んでいる。

 

「今日も遭遇しなかったなぁ…」

 

「どうしたんだケイ?」

 

「いや…俺らの部隊何度も帝国の本拠地に突撃してるのに一度も迎撃機と空戦してないなって思ってさ」

 

「確かに、俺ら一度も敵の飛行ゾイドと遭遇してないな」

 

レイモンドも不思議そうに言う。

 

「ゼネバスの奴らは陸軍に偏重した編成になっているからな。空軍の規模は、それほど大きくない。それに飛行ゾイド部隊同士の空戦なんてそうは無いもんさ」

 

「そうなんですか!?」

 

「それって、どういうことです?隊長」

 

2人の新兵は、驚き気味だった。

 

「シンカーは、確かに脅威だが、あれは、海軍の攻撃機も兼ねている。この内陸で遭遇することはまずない。俺達が交戦するのは、空軍の所属機だけだが、これは、現在半分以上が帝国首都やウラニスク工業地帯とかの重要拠点の防衛に回されてるそうだ。まあサラマンダー部隊の連中のお蔭だな。最後の残りの半分の部隊のシンカーも多くが前線の爆撃部隊かその護衛らしい。だからこの国境の小部隊が遭遇する確率は少ないってわけだ。」

 

「勉強になりました大尉殿!」

 

「だからと言って油断するなよ。お前ら、いつ、帝国がシンカーの大部隊で攻め込んで来るか分からんからな。」

 

グレンは、そういうと通信を切った。

 

この時は、グレンを含む全員が、帝国空軍によるタリオニス空軍基地への攻撃は、まだまだ先だろうと想像していた。

 

 

 

 

 

だが、次の日、皮肉にも彼の言葉は現実のものとなる………日暮れ前に帰還した偵察機のプテラスが、帝国空軍によるタリオニス空軍基地への空爆の兆候有という情報を持ち帰ったことによって…レドームを装備したプテラス偵察機が、滑走路にシンカー部隊が多数展開しているのを発見したのだ。

 

それが、タリオニス空軍基地の攻撃の為に集められた航空部隊であることは、明らかであった。

 

なぜならば、この付近でそのような大編隊を用いて攻撃する程の航空戦力を有する目標は、タリオニス空軍基地しか存在していなかったからである。

 

国境近辺に展開していた対空警戒部隊に損害を与え、本土防空網を穴だらけにされたことで、ゼネバス帝国軍は、この空軍基地を眼の上の瘤と見做したのであった。

 

対する共和国空軍は、折角山岳地帯に建設した飛行場をみすみす破壊させるわけにはいかず、プテラス隊を支援する為、サラマンダー・ブラックバードを空軍基地の上空に派遣した。

 

サラマンダーの早期警戒機、夜間戦闘機仕様であるこの機体最大の特徴は、背部のレドームである。

 

このレドームによって、サラマンダー・ブラックバードは、捕捉した目標を探知し、更にその情報を味方基地や味方の迎撃機に送信し、効果的に友軍機を迎撃に向かわせることが出来た。

 

更に基地の対空レーダーと異なり、低高度の目標を捉えることが可能である。この索敵能力の高さから空軍の関係者の中には、「空のゴルドス」と呼ぶ者もいる。

 

サラマンダー・ブラックバードからの管制の元、タリオニス空軍基地のプテラス飛行隊は、シンカー部隊を迎撃する予定だった。

 

 

 

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