ゾイドグラフィックス戦記   作:ロイ(ゾイダー)

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ゾイドバトルストーリーではツインホーンの活躍はあまりありません
ですが皇帝親衛隊の新鋭機として帝都防衛戦に参加したのは間違いないと思われます。


ゾイドグラフィックス戦記 ツインホーン編 前編

 

 

 

まもなく戦場へと変貌つつある大理石の都の下、地球人の技術によって建設された地下格納庫で、彼らは出撃の時を待っていた。

 

 

地下格納庫では、赤い象型ゾイドが約20機整備されていた。

 

その機体は、皇帝親衛隊のみに配備された小型ゾイド ツインホーンであった。

 

ツインホーンは、ゼネバス皇帝の護衛部隊であり、首都防衛部隊の中核戦力でもある皇帝親衛隊の主力機として開発されたマンモス型小型ゾイドである。

 

その性能は、イグアン並みの格闘能力、マルダー並みの対空能力、ゲルダー以上の攻撃力という、ゼネバス帝国軍最強の小型ゾイドと言っても過言ではない性能であった。

 

だが、帝国小型ゾイドの共通コックピットとは異なる新型コックピットの採用等の最新技術の導入による設計の複雑化によって製造コストは、従来の小型ゾイドを上回り、整備性も悪化していた。

 

この点もあってツインホーンは、現在のゼネバス帝国軍では、皇帝親衛隊にのみ配属されているのである。

 

「いよいよ、実戦か…」

 

出撃の時を、戦友と共に今かと待つツインホーン401号機のコックピット内で、皇帝親衛隊第2中隊第1小隊所属のヴァルター・ベルガー少尉は、自分に対して言い聞かせるかのように呟いた。

 

間もなく、帝都に攻め寄せる共和国軍と戦う……彼は、そのことに対して、未だ現実感を持つことが出来なかった。この帝都防衛の戦いは、彼ら皇帝親衛隊の隊員と、その乗機であるツインホーンにとって本格的な実戦参加であった。

 

マンモス型小型ゾイド ツインホーンは、制式採用型のベースとなったデータ収集用に開発された白いカラーの試作機や先行量産型の少数機が実戦テスト、前線部隊への士気高揚目的に前線に投入されることはあったが、生産された機体の大半は、皇帝親衛隊の所属機としてパレードに参加する程度で、実戦経験は皆無に等しかった。

 

そして彼、ヴァルターは、そのどちらにも参加していなかった。

 

一般部隊からの転属組であるヴァルターは、皇帝親衛隊に配属されて以来、彼は、この首都攻防戦の日に至るまで殆ど実戦を経験していなかった。

 

例外は、来襲してきた共和国空軍の飛行ゾイド相手の対空戦闘であり、陸戦は一度も無かったのである。

 

実戦に参加できることは、彼にとって喜びでもあった。

 

親衛隊に配属されて以来、中々前線に参加できないことが、悩みでもあったからだ。一般部隊にいた戦友達が前線で戦っている時に自分は本国で安全に過ごしていると考えていたのである。

 

「…」

 

ツインホーン412号機のコックピットで、マインツ・シュミット少尉は、黙々と愛機であるツインホーンの機体の調整を行っていた。

 

赤みがかった金髪が特徴的なこの若者にとってこの親衛隊に配属され、実戦を迎えるということは、他の隊員と同様に名誉なことであった。

 

だが、孤児院出身の彼にとっては、それは、彼の戦友たち以上に特別な意味をもっていたのである。

 

ゼネバス帝国に存在する孤児院は、その大半が国営で、その目的は、将来の帝国軍兵士を育成することにあり、院内では、軍事教練や思想教育が盛んに行われていた。

 

ヘリック共和国側や帝国内の反政府組織は、この事について、子供に軍事訓練を施し、国家そのものを兵営にする愚行だと非難している。それは、一面では、真実を突いていた。

 

 

だが、育てられた者達にとっては、そこはただ一つの居場所だった。1か月前に22歳の誕生日を迎えたマインツは、今日のこの日が来ることを心待ちにしていた。

 

10歳で両親を失った後、ここまで自分を育ててくれた祖国の為に命を奉げることができる。

 

顔も碌に覚えていない、幼い頃に戦死した父、共和国軍の爆撃で死んだ母、生きている唯一残された肉親である孤児院にいる妹、自分と共に帝国軍に入隊した孤児院の友人達、自分を優秀なパイロットに育て上げてくれた訓練学校の教官…今まで出会ってきた親しい人々の顔が彼の脳裏を過った。

 

「祖国の為に」

 

祖国の為に…繰り返し、士官学校で教えられてきた標語を祈りの言葉の様に心の中で呟きながら、彼は、その時を待った。

 

「…(エリカとマリは元気にしているだろうか?)」

 

親衛隊 第2中隊指揮官のヨーゼフ・ベッカー少佐は、首都から故郷に疎開した妻子の事を思った。その鍛えられた鋼鉄の様なしなやかな体躯と整えられた口髭は、彼を見る者に真面目で几帳面な人物だという印象を与えていた。

 

事実それは、見かけ倒しではなく、彼はその通りの人物であった。

 

ZAC1980年の開戦以来、彼は前線でも先頭にたって戦い、戦果を挙げてきた。

 

だからこそ、皇帝を守る精鋭である親衛隊の1個中隊を任されるに至ったのである。この地下格納庫で整備を受けているツインホーンは全て彼の指揮下にあった。

 

第2中隊指揮官のヨーゼフ・ベッカー少佐のツインホーンは、指揮官機型である。

 

このタイプは、通常機とコックピットの形状が異なり、レーダーと通信機能が強化されていた。彼は、ツインホーンの開発の際に製作された射撃、対空、格闘の3機能に特化させた試作機 プロトホーンの格闘戦特化型のテストパイロットを務め、ゴドス5機を撃破する戦果を挙げているエースパイロットであった。

 

「敵が何機来ようと我々は皇帝陛下を守り抜く…」

 

狭いコックピットで彼は呟いた。その言葉は、自分に言い聞かせるかの様だった。

 

「…生き残れるだろうか」

 

ツインホーン436号機のエルンスト・ハルシュタイン少尉は、部隊の同僚達の多くとは異なり、戦いに向かうことを恐れていた。部隊内でも大木の様な堂々とした体躯の持ち主で、隊内では、歴戦の勇士とみられていたが、彼の内面はそれと大きくかけ離れていた。

 

そもそも彼は、この精鋭で知られる皇帝親衛隊の一員に選ばれること等、想像すらしていなかったのである。3年前、まだ一般の部隊にいた頃マルダーのパイロットだった彼は、お世辞にも優秀な兵士ではなかった。砲撃音に怯えることもしばしばで、同僚から臆病者扱いされることもあった程である。

 

対空射撃で共和国空軍機8機を撃墜したことが彼の運命の転換点であった。

 

それ以来戦果を挙げ続け、帝国軍兵士の憧れである皇帝親衛隊に配属されたのである。彼にとって皇帝親衛隊に入れたことで嬉しかったのは、実戦が少ないということであった。

 

帝都での戦いを目前に控えた彼の脳裏を満たすのは、どうやってこの戦いを切り抜けて生き残るかということだけだった。第1中隊のツインホーンパイロット達は、実戦の時を待った。

 

それぞれの兵士達の思い等、一切斟酌することなく、〝その時〟は訪れた。

 

 

 

 

 

 

「ツインホーン439号機整備完了!」

 

若い整備兵の弾んだ声が格納庫に響いた。

最後のツインホーンの整備が完了したことで、部隊は、出撃準備が整った。

 

皇帝親衛隊の兵士達は、指揮官からパイロット、実戦に参加しない整備兵に至るまで、その時を待ち続けた。

 

 

 

………そして、出撃の時は来た。

 

「全部隊出撃せよ!」

 

指揮官機型のツインホーンが部隊の先頭に立つ。実戦の際に、指揮官先頭という帝国軍の伝統は親衛隊において顕著であった。

 

第1中隊を初めとする6つのツインホーン部隊は、地下と地上を繋ぐ出入り口から出撃し、ゼネバス皇帝の居城である王宮を初めとする帝都の重要拠点の防衛に出撃する予定だった。

 

 

地上に現れたツインホーン部隊の周囲には、見る物を圧倒するかのような無数の瓦礫の山があった。彼らが守護すべきだった場所 ゼネバス帝国首都 中央大陸に並ぶものなしと謳われた壮麗な大理石の都は、共和国軍の誇る翼竜型重爆飛行ゾイド サラマンダーの空爆と超大型ゾイド ウルトラザウルスの艦砲射撃によって醜い瓦礫の山に変換されていた。

 

その惨状は、直接ではなく外部からの情報がセンサーによって3D映像としてコックピットのモニターに表示されている。

 

これは、コックピットが装甲化されているためである。

 

「共和国軍め…」

 

無残に破壊された町並みを見た親衛隊員の1人が怒りに満ちた声で言う。

 

「友軍機とは珍しいな」

 

「ああ」

 

彼らの頭上を赤い鳥型ゾイド4機が通過していった。

 

「シュトルヒか…」

 

ベルガーは珍しそうに呟いた。

 

シュトルヒは、中央大陸西部の火山地帯に生息する始祖鳥型ゾイドをベースに開発された空戦ゾイドである。

 

優れた空戦性能を有するシュトルヒは、制空権奪回の切り札として、大型ゾイドであるアイアンコングやサーベルタイガーと並んで最重要生産機種に指定され、量産が進められていた。

 

だが、現在は帝国の兵器生産の中心であるウラニスク工業地帯が、サラマンダーの猛爆を受けて以降は、生産は完全にストップしてしまっていた。

 

ZAC 2038年 12月 現在、帝国首都付近を飛行しているシュトルヒは、皇帝親衛隊所属機だけである。

 

「現在、帝都に襲来した共和国軍部隊の主力は、王宮広場で現在守備隊と交戦中、親衛隊第1中隊は急行しこれを撃破せよ」

 

首都各地に潜伏している電子戦ゾイド ゲーター部隊からの通信が入った。彼らもまた地下格納庫や通路から出撃した部隊である。

 

第1中隊は、王宮の近郊に到着した。

 

首都の中心部に位置する王宮、ゼネバス皇帝の居城にしてゼネバス帝国の中心であるその大理石を組み合わせて作られた芸術品は、連日のヘリック共和国軍の空爆と砲撃により、首都の大半の建造物が軍民の区別なく瓦礫に変換されている今も、その建物だけは、大きく損傷を受けつつ、見る者にその威容を誇示していた。

 

「やはり、共和国軍の狙いは、皇帝陛下の御身か」

 

この激戦の中でも堂々と聳える大理石の城を目に留め、ヨーゼフは呟いた。

 

彼は、共和国軍が、皇帝を生きて拘束するべく、意図的に攻撃を緩めていると推測していた。そしてその推測は当っていた。

 

彼らは知る由もないが、今帝国首都に攻め寄せている部隊を率いる共和国軍の名将 ヨハン・エリクソン大佐は、ゼネバス帝国皇帝を、大統領の弟でもあるその人物を必ず生きたまま捕える様に大統領から直接命令を受けていたのである。

 

これまで大小100回近く行われた、帝都を灰燼に変えたサラマンダー部隊による無差別爆撃も、皇帝の住居たる王宮には一切手を付けていなかった。

 

地下格納庫より出撃したツインホーン第1中隊は、帝国首都の中心に存在する王宮へと急いだ。

 

王宮を囲む広場に展開する友軍の支援が彼らに課せられた任務である。小型ゾイドの部隊が複数戦闘を演じることが出来る程の広さを持つこの広場は、閲兵式の為に作られたもので、その中心には、アイアンコングの銅像が置かれていた。

 

2年前、ゼネバス帝国皇帝が、親衛隊と帝都守備隊を中心とした閲兵式を行ったこの広場では、現在、共和国軍首都攻略部隊が帝都守備隊の残余と交戦していた。

 

宮殿内にも皇帝親衛隊を初めとする帝国軍の精鋭が待ち伏せしていたが、彼らはまだ戦闘には加入していなかった。

 

「共和国軍め!」

 

攻め寄せる共和国軍に向けて、マルダーがミサイルを発射する。白煙を上げて金属の矢が前方の共和国軍の小型ゾイド部隊に着弾し、損害を与えた。

 

次の瞬間には、肉薄したゴドスがキックを叩き込んで撃破する。

 

アロサウルス型小型ゾイド ゴドスは、バランスのとれた性能で、敵兵から恐竜の殺し屋の異名で恐れられた機体である。そのゴドスは、別のマルダーを狙うが、イグアンに横合いからキックを食らわされて破壊された。

 

カノントータスの砲撃がゲルダーやイグアンを吹き飛ばす。広場で帝国軍部隊を次々と撃破していく共和国軍小型ゾイド部隊…彼らが、攻撃目標である王宮に足を踏み入れるのは間もなくかと思われた。

 

 

「全機進め!ゼネバス皇帝のいる王宮は目前だぞ!」

 

小隊指揮官機のゴドスがガイサック3機を従えて進撃した。

彼らと王宮との間を阻むものは何もなかった。

 

 

「くっ!王宮への侵入を許してしまうのか!」

 

ハンマーロックに乗るパイロットは、それを見て思わず叫んだ。彼の機体は、ゴドス3機と交戦しており、それを阻止するすべはない。

 

部下の機体も同様である。

 

これまでの帝都での戦闘で戦力を大幅に撃ち減らされた帝国軍部隊は、戦力が払底していた。

 

「くぅ…陛下、申し訳ありません」

 

皇帝陛下の居城を守りきれない無力さにそのパイロットは顔を顰めた。次の瞬間、王宮に突入しようとしていたゴドスの頭部を横合いから放たれたビームが撃ち抜いた。

 

「小隊長!何だ!ぐぁあ」

 

「ダニーっ」

 

ガイサック3機も、後を追う様にビームを胴体に受けて爆散した。

両軍の兵士が、ビームの来た方を見た。

 

「新型機か?!」

 

「親衛隊か!」

 

そこには、赤いマンモス型小型ゾイドの群れがいた。

 

装備機全機をツインホーンで編成したゼネバス皇帝親衛隊 第1中隊が到着したのである。第1中隊は、撃破機を出すことなく戦場に到着した。

 

 

 

 

「全機攻撃開始。王宮から共和国軍を叩きだせ」

 

指揮官機を先頭に第1中隊のツインホーンは、共和国軍部隊に襲い掛かった。

 

 

ツインホーン各機が、ミサイルポッドと加速ビーム砲を目の前の敵に向けて乱射した。

背部に搭載されたミサイルが白煙を上げて敵部隊に降り注ぐ。それは、ツインホーンの鮮やかな赤い機体色と相まって活火山の噴火を見る者に想起させた。

 

ツインホーンは、前方に倒した腰部の加速ビーム砲を撃ちながら、敵部隊に襲い掛かる。

 

「帝都をこれ以上貴様らの好きにはさせんぞ」

 

指揮官機のヨーゼフ少佐のツインホーンが格闘戦用の牙 ヒートでゴドスを狙う。ゴドスのパイロットが機体を後退させようとした時には、赤熱化された牙がゴドスの胴体を貫いている。

 

ツインホーンの2本の牙には、高熱を放出する機能が内蔵されており、格闘戦での威力を増すのに貢献していた。

 

これが、この兵装がヒートと呼ばれている理由である。

 

「当たれ!」

 

エルンストのツインホーンは、遠距離から加速ビーム砲やミサイルを発射してガイサックやゴドスを次々と破壊する。他の親衛隊の機体が格闘戦を積極的に行っているのとは対照的だったが、これはパイロットのエルンストが格闘戦を嫌っていたからである。

 

 

格闘戦は、訓練での死亡率も高い危険な戦法だからである。

激戦の中でも彼は生き残ることを最優先に考えていた。

 

 

「どけ!」

 

ベルガーのツインホーンは、ビーム砲を乱射しながら敵機に突っ込む。

 

その隣には、マインツのツインホーンもいた。ベルガーのツインホーンは体当たりでゴドスを押し倒し、頭部コックピットを踏み潰す。マインツのツインホーンは、ヒートでゴドスを切り裂いた。

 

「〝恐竜の殺し屋〟もこの程度か!」

 

ベルガーは、次の獲物に照準を合わせる。

 

彼はレーザー照準器に捉えた敵機に向けて、トリガーを引いた。

 

数秒後、頭部を撃ち抜かれたゴドス2機が地面に倒れ込む。

 

「なんてパワーだ!小型ゾイドとは思えんぞ」

 

他の親衛隊員も、ツインホーンの高性能を引き出していた。共和国軍部隊は、僅か20機程ののゾイドの戦闘加入によって苦戦を強いられた。

 

「なんて機体だ!たかが30機にも満たない敵機に!」

 

共和国軍の前線指揮官の1人は、目の前の光景が信じられずにいた。

 

しかし、共和国軍も次第に体制を立て直し、数にまかせた波状攻撃で帝国軍を圧倒し始めた。

 

「数が多い!」

 

不用意に接近してきたゴドスをツインホーンの鼻で横倒しにしつつ、ヨーゼフは叫んだ。

その発言は、この広場で交戦する帝国軍の兵士の言葉を代弁していた。

 

「何機いるんだよ?」

 

ベルガーのツインホーンはゴドスのコックピットに鼻を突き刺し、先端の火炎放射器を浴びせて撃破し、ガイサックを突進で弾き飛ばす。

 

その横では、ゴドス数機のロングレンジガンの集中射撃を受けてツインホーンが1機撃破されていた。

 

独自の装甲防御型コックピットを採用したツインホーンもゼロ距離からコックピットを撃ち抜かれては打つ手がなかった。ツインホーンを擁する皇帝親衛隊も数に押され始めていた。

 

親衛隊以外の守備隊機は撃破されるか王宮への撤退を余儀なくされていた。

 

今の所撃破機は、孤立したところを袋叩きにされた1機だけだが、このままでは他の機体も後を追うことになるのは、時間の問題だった。

 

 

だが、その状況は一変した。

 

 

広場の中央に置かれていたアイアンコングの銅像が突如動きだし、共和国軍に襲い掛かったのである。

 

 

「なんだと!?」

 

 

それまで単なる置物だと思っていた物が動き出す光景を見たベルガーは、驚愕の余り一瞬茫然となった。

 

彼の同僚も、一瞬自分の見ている物が信じられなかった。

 

それは、共和国軍の兵士も同じで一瞬だが、砲火が止んだ。

 

アイアンコングの銅像は、両腕で近くにいたガイサックとゴドスを掴むと共和国軍部隊に向けて投げつけた。

 

直後、共和国軍部隊の中央で、火柱が上がった。

 

 

それは、帝都防衛用の最終兵器として配置されていた無人ゾイド ブロンズコングが起動したのであった。

 

 

無人でもパイロットの乗ったゾイドと戦える無人ゾイドは、この時代では、ある種のオーバーテクノロジーと言えた。

 

人口で劣るゼネバス帝国軍は、人間の操縦するゾイドと同じレベルでの行動が可能な無人ゾイドの研究に熱心だった。しかし、導入された地球人の技術をもってしてもその実用化は難しかった。

 

生物であるゾイドは、UAV等の無人兵器とは異なっていたからである。単に自動操作にするだけでは、野生ゾイドと変わらない為、人間の乗るゾイドの持つ高度な判断力には到底及ばず、地球の戦車や戦闘機などの兵器に使用されていた人工知能(AI)では、ゾイドと人間とゾイドの同調性による性能向上を再現することは困難だった。

 

 

ブロンズコングは、地球で研究されていた高性能軍事AIをランドバリーら冒険商人の技術者がゾイド用に改良し、アイアンコングに搭載した無人戦闘ゾイドであった。

 

 

ブロンズコングは、AIの指示にゾイドを完全に従属させ、完全にコントロールさせるという点で、それまでの人間による操縦に劣る従来のAI式、ゾイドに操縦の大半を任せる自動操作と異なっていた。

 

 

 

AIの指示に完全に従うには、ゴジュラスやサーベルタイガーの様に凶暴でパイロットを選ぶ機体ではなく、比較的大人しく人間の指示に従うゾイドであるという条件があった。

 

ゼネバス帝国の大型ゾイドの中でも、性格が大人しく比較的人間の操作に従い、防衛戦で特に力を発揮するという性質を持つアイアンコングがAIの搭載機に選ばれた。

 

 

このブロンズコングは、模擬戦闘では優秀な成績を示したが、高性能AIのコストの問題から量産化は見送られた。その試作機は、宮殿の広場に銅像という名目で配置されたのであった。

 

 

ブロンズコングの正体は、開発を指示したゼネバス皇帝と一部の上層部のみ機密であった。

 

またブロンズコングは、帝都防衛用ということで、通常のアイアンコングと異なり、ミサイルランチャー等の火器は一切装備していなかった。

 

だが、小型ゾイド中心の共和国軍部隊を蹴散らすのには、十分であった。

 

長い腕を振り回して迫りくる共和国軍機を蹴散らし、ハンマーナックルでカノントータスを粉砕した。

 

カノントータスの突撃砲も分厚い装甲に弾き返された。突如現れた敵機に共和国兵達は、混乱した。

 

 

「銅像が動き出した!!支援砲撃を!!」

 

 

指揮官機仕様のゴドスに乗る共和国兵は、通信機に向かって叫んだ。

その声は悲鳴に近かった。

 

 

「許可できん!ここからでは、味方を巻き込む!」

 

 

これまでの戦いで共和国軍の前線部隊に勝利を齎してきたウルトラザウルスの艦砲射撃も、ゼネバス皇帝が潜伏しているとみられる宮殿と周囲にひしめく友軍機の存在もあって不可能であった。

 

 

ブロンズコングは、巨体とパワーを生かして小型中心の共和国ゾイドを次々と破壊し、搭載されたAIの命令通り、目標…起動時に帝国軍臨時司令部から送信されたデータにある、郊外の共和国軍の総司令部が存在すると推測されるウルトラザウルスへと向かって前進していった。

 

 

 

 

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