「…おちびちゃんはどうしてそんなこというの?」
赤れいむの宣言に、母れいむはみるみるうちに顔を曇らせる。
母――になる前の次女れいむは、所謂「だぜまりさ」の父と「元飼ゆっくりれいむ」の母、そして姉妹には姉の長女れいむと末っ子まりさが居る、5ゆん家族に生まれ育った。
彼女は父親の教育方針により、普通のれいむとは異なる育てられ方をしている。
「おちび、おまえはれいむにしとくのがおしいくらいゆうっしゅう!なまりさのあんこをうけついでいるのぜ、だからどこにだしてもはずかしくない、さいっきょう!なれいむにそだてるのぜ」
我が子に何か特別な才能を見出した訳では無い。そうかと言って気紛れでした発言でも無い。
父親のまりさは隣に住む自分の妹まりさとの間で、互いの跡継ぎ(まりさ種)に相応しい番候補を育て合う「きょうってい!」を結んでいた。
自身こそ狩りの達ゆんと呼ばれるクラスのまりさだったが、彼女の母もそのまた母もその先も、この群れでは「姫まりさ」と呼ばれる大人しく家庭的な美ゆっくりの餡統。妹も御多分に洩れず姫。
だから父親は、一番最初に生まれたれいむが長姉として滅多矢鱈と母性を振り撒こうとするのを見て、取り敢えず次女は、許婚(候補)も姫であった場合の備えとした。
群れが今のゆっくりぷれいすを見つけた時から続く、由緒正しい「めいっもんまりさ」として当然の配慮だった。
「ゅ、れ~みゅもちょうおもっちぇたんぢゃよ!れ~みゅはきっちょおちょーしゃをもきょえるきゃりにょてんちゃいににゃるよ!」
ゆっくりは思い込みの力により、種として領分すら簡単に覆すナマモノ。
厳しく狩り(と言っても人間でいうところの採集が主)を仕込まれたので、少々甘やかされて育てられた末っ子まりさより、優秀な狩ゆとなった。
そしてその腕前を活かし、木の実でも蝶でも許婚(候補)に望まれるまま、狩りを覚え始めた子ゆの頃からその皮を削り、時には自分に与えられた特別な「あまあま」でさえ口にせず貢いでいた。
こうした努力が実って、長姉れいむや幼馴染のぱちゅりーとの恋のもみあげ(鞘)当てを制し、想いを寄せてくれたちぇんの告白を振り切って、見事に許婚まりさのハートを射止める。
長にも無事「えっとう!」をした暁には番になると報告し、家族のみならず幹部達にも満場一致で祝福された。
今思えば、正に「しあわせぇ~~っ!」の絶頂。それなのに、ポッと出のビッチれいむに寝取られてしまったのだ。
まりさ種とは思えないほど可憐で、出会ってからお別れを切り出されるその日まで「だぜのぜ」口調を使っている姿なぞ、だだの1度も見た時が無かった。
そんな許婚まりさが、怖い顔をした大人達から枝を突き付けられ、群れから「ついっほう!」すると脅されても、
「まりさはばーじんさんをささげあったれいむといっしょになるのぜ!」
と、そのお下げに絡まるビッチれいむを決して離そうとしない。その姿を見て、次女れいむは全てを諦めた。
結局、当時の長は貴重な成体まりさを失うリスクを回避する方向に舵を切った。ビッチのお腹に宿っているであろう、新たなまりさ種の誕生に期待したのだ。
群れに納める税の割り増しを条件に2ゆを番として群れで生活する事を認め、その代償として各々の家族達に対し、次女れいむの一家に対する「いしゃりょう」の支払いを命じている。
許婚――いや、裏切り者まりさの両親は、我が子は狩りの得意な次女れいむと番になるものと慢心し、幼馴染「達」に甘えてゆっくりしてばかりいる娘を「とてもゆっくりしたゆっくり」と誇りにさえ思っていた。
そんな馬鹿親にもかかわらず、片割れであるパパありすは狩りも道具作りも器用にこなす大変評判の良いゆっくりで、次女れいむが獲物を運ぶのに愛用している籠も、彼女のお手製だった。
若い頃は群れ1番の美ゆっくりと誉れ高いママまりさを番にし、誰もが羨むしあわせー!な家庭を築いたのだが、そんな生活が一転する。
祝福されない番には罰として1から新居を用意しろと命じられた為、巣穴を掘る必要が有るのに、花嫁は身重で何もさせられない。そればかりか、
「れいむはにんぷさんなんだよ!ごはんさんをいっぱいだべなきゃおなかのおちびちゃんがゆっくりできないよ!」
と、自分達のおうちに勝手に転がり込み、大飯を喰らっては寝てばかりいた。
姫として大変ゆっくり育った裏切り者まりさが、実は狩りの才能を秘めていた、なんて都合の良い話がある訳も無い。
出来るのはまりさ種としてはマシな程度なおうたと、都会派なコーディネートを少し齧ったぐらいで、枝を咥えた事すら無かった。
春を迎え、もう1ゆの自立も時間の問題。それならば、とママまりさの額は既に鈴生りとなっており、パパありすは泣く泣く自分似の実ゆっくりを間引いている。
2家族分のごはんさん集めを一手に引き受ける羽目になり、狩りの合間を縫っては我が子に巣穴の掘り方から教えてやらなくてはならない状態。
当然、相手の家族にも慰謝料の分担、そうでなくてもせめて巣立ちの日までは自分の娘の面倒ぐらい見て欲しい、と持ちかけたのだが相手は「しんぐるまざー」のでいぶ。
大事な働き手を盗られて困っている。自ゆんには他にもまだおちびちゃんが居るのだから、コッチが援助して欲しいぐらいだ!とまるで聞く耳を持たなかった。
周りからは躾の足りない馬鹿な親だと白い目で見られるばかりで、舌(手)を貸すどころか慰めもしてくれない。
えっとう!中に夢見た新しい子や孫ゆ達に囲まれた「へっぶんじょうたい!」は何処に行ってしまったのだろう?
いっそ駆け落ちでもしてくれれば楽だったが、長の裁定により、妻と子は黒い帽子に良く似合う、とっても素敵な白いおりぼんを担保として取り上げられていたので、今さらどうにもならない。
「まりさ!ゆっくりしていってね!」
「ゆ?!‥‥‥ごめんねありす、まりさはいまからゆっくりいそいでおぼうしでいけさんをわたるこうっしゅうかいにいかなくちゃいけないんだ!おうちのなかにはおねえさんがいるから、いっしょにゆっくりしていってね!」
苦境に立たされた裏切り者まりさ家族の1ゆ、従姉妹ありす。
隣のれいむ姉妹や末っ子まりさとは親戚同士、家族ぐるみの付き合いをしていたのだが、最近は毎朝毎晩ゲスで田舎者な姉の尻拭いに駆り出され、すっかり疎遠になってしまった。
れいむ種みたいに必死にならずとも困らない為、両親も娘を積極的に末っ子まりさと番にさせようとはしなかった。望むのなら応えよう、そんな程度の認識でしかなかった。
だから2ゆの仲は「他の姉妹の色恋沙汰なんか自分達には関係無い!」などと言わせるには程遠く、どうにか時間を作って会いに行っても、ぞんざいな扱いを受けている。
恋のライバル達は本命候補の思わぬ脱落に、ほくそ笑んでいた。
「そんなっ‥‥‥まりさのおねえさんが、ありすなんかとゆっくりしてくれるわけないのに‥‥‥そう、そうね、ありすはかくごをきめたわ!ごきげんよう、ありすのだいすきなまりさ」
ふさぎこむ次女れいむは狩りにも行かず、おうちでゆっくりすることが多くなっていた。
母親の元飼いゆっくりれいむは厳しい自然の冬には耐え切れず、次女れいむの失恋を知ること無く「おそらのゆっくりぷれいす」に旅立っており、留守を任せるのに都合が良かったので、誰も咎めなかった。
「れいむ、ゆっくりしていってね!」
「ありす?‥‥‥ゆっくりしていってね、でもいもうとはおでかけだよ?」
末っ子まりさの元には年頃のゆっくり達が、代わる代わる手土産を持って遊びに来る。
だが、恋ゆんの為におかざりが汚れたり傷付いたりするのも厭わず狩りに精を出していた「ゆっくりできないゆっくり」には、見向きもしない。
「だいじょうぶ、ありすはれいむにおはなしがあってきたの」
人気者の妹なら居ない。だからさっさと帰れ。事情を知った上でなお「おぉ、あわれあわれ(笑)」と蔑まれるのはもうたくさんだ。
つい最近までは妹みたいな存在として可愛がっていた筈なのに、お喋りするどころか顔も見たくない。どんな話題を振られても適当にあしらっているのに、一向に帰る気配すらない。
業を煮やして一体何の用だと訊ねてみると、従姉妹ありすは一呼吸おき、真剣な眼差しで自分を見つめる。
「れいむ、ありすをれいむのおよめさんにしてください!」
「ゆぅぅぅ!?」
次女れいむは最初こそ驚いたが、しばらくすると自ゆんと従姉妹ありすの置かれている状況を冷静に把握した。
このありすは、自分の家族から慰謝料代わりに父の「ごさいさん」とは名ばかりの「すっきり奴隷」として差し出される前に、先手を打ったのだ。
自分を裏切った相手の妹が?馬鹿にしてるのか?けっかい!用の枝で体中「ぷーすぷーす」してやろうかとも思ったが、実際問題として次女れいむに選択の余地は殆ど残されていなかった。
ライバルだったぱちゅりーは自分との争いに敗れたショックで自棄になり、しつこく言い寄る喪れいむと番になった。
カマキリに齧られて泣いていたので仇を討ち、ついでに傷をぺーろぺーろしてあげたり、狩りの途中に悪天候に見舞われて帰れなくなり、寒さと恐怖に震えているからすーりすーりして暖めてやった妹分的なちぇんは、なんと長姉れいむと番になっていた。
れいむ同士でも構わないのなら相手は簡単に見つかるだろうが、足元を見られるに決まっている。それに、生まれて来るのは苦労するのが目に見えているれいむ種だけ。そんなのは絶対に嫌だ。
こうして、次女れいむは従姉妹ありすと番になった。
一応同情されている彼女は、群れの中で空いている巣穴を優先的に使わせて貰える権利を得ていたので、おうち探しには困らない。新居用にと餌はたっぷり集めていた。
お歌は上手だったが、寝床作りやごはんさんの管理がド下手だった母親とは違い、新妻となったありすは快適な生活を提供してくれた。
そのまま「かじてつー」として老いた父親の面倒を看ながらゆん生を終える「いかずごけぇ!」にならないで済んだのも、素直に感謝はしている。
だが、心を許して遂に「ふぁーすとちゅっちゅ」交わそうとしたのに、ソレをやんわりと断られた時は餡子を吐きそうなくらいショックだった。
「このむれのれいむは、すこしぐらいぼーいっしゅ!なほうが、とかいはよ?」
「ゆーん♪ れいみゅわちょきゃいはー!」
「そうだね、ゆっくりりかいしたよ…」
母れいむは自分の餡子が「みずよーかん」みたいに冷えて行くのを感じながら、苦渋の選択を受け入れるしかなかった。