ダークブリングマスターの憂鬱(エリールート)   作:闘牙王

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第十七話 「誓い」

「よーし! じゃあみんなお風呂に入っちゃおうか!」

 

 

夕食も終わり、一日の疲れを実感しながらもゆっくりとできる時間。そんなことはおかまいなしにエリーの楽しそうな声がリビングに響き渡る。恒例のエリーのお風呂タイム。お風呂の時間が長いとか、バスタオル姿で家を歩き回るとか言いたいことはいろいろあるが

 

 

「じゃあアキ、ママさんたち連れていくね!」

「ああ……でもこれって意味あんのか? 洗ってくれるのは助かるんだけど……」

 

 

その中でも理解できないのがこれ。ママさんことマザーとイリュージョン、ハイドを一緒に持って、ではなく連れていくこと。どうやら一緒に入浴している気らしい。

 

 

「もう、アキったらまたそんなこと言って! ママさんたちも女の子なんだからちゃんと綺麗にしなくちゃいけないんだから!」

『そういうことだ。もっともアキには女心など分かるはずもないがの』

「石の女心なんて分かりたくもねえよ……分かったからさっさと行ってこい。お前らが終わらないと俺が入れねえんだよ」

「ふーんだ、行こ、ママさん。あ、でも覗いちゃダメだからね、アキ!」

「だ、誰が覗くか!?」

 

 

べーっと舌を出しながら上機嫌にエリーたちはそのまま浴室へと走り出していく。バタバタと騒がしいのはまるで子供のよう。あとに残されたのは自分とデカログス、ワープロードの三人。見事な男所帯。流石にエリーも男性人格ある二人は連れて行かないらしい。ワープロードはともかくデカログスを持ってお風呂は危なすぎる。お風呂云々は置いておくとして今度手入れはしなければ。それはともかく

 

 

(とりあえずエリーは大丈夫そうだな……記憶も問題ないし、一時は本当にどうなるかと思ったけど……)

 

 

大きくため息という名の安堵を吐きながらソファに腰掛ける。思い出すのは昨日の出来事。マザーの提案から始まったエリーとの修行。それ自体は間違いではなかった。だが自分はもちろん、エリーも予想していなかった事態が起こってしまった。

 

 

『アキ、あたし……どうしてこんなところにいるの……?』

 

 

記憶喪失。魔導精霊力を使う副作用であり代償。それによってエリーは自分がどうしてここにいるのかを忘れてしまっていた。幸い、記憶の喪失は一時的なもので自分の説明によってすぐにエリーは思い出すことができた。エリー自身の名前や記憶、自分やマザーのことは問題なく覚えている状態。だがそうはいっても自分にとっては本当に寿命が縮まる思いだった。

 

 

(ほ、本当にどうなるかと思った……あのまま記憶喪失になったらどうなってたか……!?)

 

 

本当にあのまま全ての記憶を失ってしまったらどうなっていたのか。考えるだけで背筋が凍る。エリーが記憶を失うということはすなわち魔導精霊力の完全制御が不可能になってしまうこと、エンドレスを倒すことができなくなってしまうことを意味している。誇張でも何でもなく世界の危機。それは何とか避けることはできたが、違う問題が残っている。それは

 

 

(もうこれ以上エリーに魔導精霊力を使わせるわけにはいかない……! もし使わせて、記憶が戻らなくなったら今度こそ取り返しがつかない……)

 

 

エリーにはもう魔導精霊力を使わせることができない、ということ。今回はたまたま一時的な記憶の喪失で済んだが次もそうだとは限らない。おそらくエリーの記憶の喪失は消費した魔導精霊力に比例する。自分の知っている限り、エリーが完全に記憶を失ったのは五十年前レイヴを生み出した時とエンドレスを倒した時。それに比べれば昨日の自分との修行、というよりはその後の制御訓練の消費量は微々たるものだったのかもしれないがそれでも影響はあった。今回はたまたま運が良かったが次はどうなるか分からない。

 

 

(ってことは……俺、エンドレス以外の全員の相手をしなきゃいけないってことか……?)

 

 

改めて今の状況を考えて戦慄する。当初自分はエリーと協力しながらエンドレスたちと戦うことを計画していた。もちろん全てエリーにやってもらおうなんてまでは思ってはいなかったがそれでも魔導精霊力の力を目の当たりした手前、何とかなるかもしれないと希望を抱いていたのだが現実はそんなに甘くはなかった。いや、、むしろ状況は悪化していると言っても過言ではない。

 

DC、BG、ドリュー幽撃団、鬼神、四天魔王。

 

DB、エンドレスの力を持つ者たち。彼らは自分の持つシンクレアとエリーが持つ魔導精霊力を狙ってくる。しかもどういうわけかマザー曰く、シンクレア持ちの三人に加え、四天魔王のジェロは自分を優先的に狙ってくるらしい。加えて自分にはハルのように一緒に戦ってくれる仲間もいない。DBを除けばたった一人。四面楚歌どころの話ではない。文字通り世界の全てが敵といってもおかしくない状態。

 

 

(エリーを守りながらエンドレスの元まで連れていく……そんなこと、俺にできるのか……?)

 

 

『エリーを守る』

 

 

言葉にすれば単純な、当たり前の答え。でもその言葉を口にするが、覚悟がない。それは文字通り、世界の全て、現行世界とたった一人で戦うことを意味している。想像するだけで、知らず体が震える。世界の命運が自分にかかっている。そんな信じられないような状況。ただ自分が生き残ることだけ考えていた頃のほうがよっぽど楽だった。どうしてシバやハルはこんな重圧に耐えながら戦うことができたのか。そんな出口のない袋小路に再び溜息を吐きかけた時

 

自分の顔に向かって突然柔らかい何かが触れる。しかもそれがアキの顔を抑え込んでしまう。まるで福笑いのような顔にされながらも呆気にとられてしまう。

 

 

「……はんのふもりだ、へりー……?」

「そうそう。怖い顔ばっかりしてたら疲れちゃうよ、アキ? いつもの困ってる顔の方がアキには似合ってると思うの。そう思わない、ママさん?」

 

 

満面の笑みを見せながらエリーは自分の顔を引っ張って遊び始めてしまう。本当なら恥ずかしさからすぐに振り払う所なのだがはされるがまま。単純にエリーの笑顔に見惚れてしまったのが一つの理由。もう一つが自分がこんなに悩んでいる原因がこんな調子なのに呆れてしまったから。

 

 

『ふむ、それについては同感だな。エリー、お主もアキのイジリ方が分かってきたではないか』

「はい! お褒めいただきありがとうございます、隊長!」

「……ったく、もういいだろ。いいからさっさと服着てこい。ほら、マザー達は俺が預かっておくから」

「うん! あ、それとアキのえっち! あたしのおっぱいまた見てたでしょ?」

「えっちなのはお前だろうが……」

 

 

げんなりしながらマザー達を回収。そのままお風呂上りスタイルのエリーはバタバタと部屋へと帰って行ってしまう。そのあまりの変わりなさに惚れ惚れしてしまうほど。

 

 

『何だ、まだ何か考え事をしておったのか。お主も変わらぬの』

「うるせえよ……はぁ……俺もエリーみたいになれたらいいんだけどな……」

 

 

昨日と同じように悩んでいる自分に呆れているマザーの言葉にそう愚痴をこぼしてしまう。自分と同じぐらいの少女が世界を救うために五十年前からたった一人でこの時代までやってきている。そこにいったいどれほどの覚悟があったのか。そんな状況でありながらあんな風にいつも通りに自分を気遣うことができるエリーの強さ。それにはただただ憧れるしかない。その分、自分の情けなさが際立ってしまう気もするが。

 

 

『ふむ……そう見えるか。やはりお主はヘタレじゃの』

 

 

そんな自分にマザーはいつもの返しをしてくる。もはやそれに反抗する気も起きない。自分がヘタレであることは自分が一番分かっているのだから――――

 

 

 

(ね、眠れねえ……!)

 

 

日は沈み、辺りは暗闇に包まれているというのに全く眠気が襲ってこない。考え事がありすぎてなかなか寝付けないことはあるのだが、今は事情が違う。それは

 

 

(エリーの奴……何だって今更別々に寝るなんて言い出したんだ……? ま、まあこっちは助かるっちゃ助かるんだけど……)

 

 

本当なら自分の隣に寝ているはずのエリーの姿がなかったから。エリーの記憶が戻った時から一緒に寝ることが何故か当たり前になってしまっていたのだが、そのエリーの姿はない。

 

 

『あ、今日から別々に寝よっか、アキ。アキも疲れちゃってるみたいだし』

 

 

お風呂から上がって着替えた自分に向かってエリーはいつもの調子でそんな風に提案してきた。こちらとしては断る理由もなく渡りに船だったのだが理由が分からない。もしかしたら自分が寝ているうちにエリーにえっちなことをしてしまったのか。いや、それなら平手打ちかマザーの頭痛がなくてはおかしい。とにもかくにも自分はようやく安眠を取り戻すことができた……はずだったのだが

 

 

(どうなってるんだ……? エリーがいないのが逆に落ち着かないなんて……!?)

 

 

それが逆に落ち着かない。エリーが隣に寝ていないことが逆に落ち着かない。あり得ないような事態。本当に人間の慣れというのは恐ろしい。人間というよりは自分限定の話かもしれないが。あんな美少女と一緒に寝る、しかもえっちなこともなにもなしでが当たり前になるなんてどうなっているのか。他人に知られたら逆の意味で心配されかねない事態。

 

 

(下手したら俺の方からエリーに一緒に寝るぞって言いかねないな……)

 

 

気を付けないと無意識にこっちからエリーにそう言ってしまいかねない。そういえばそんなノリでエリーも最初自分に一緒に寝るように言ってきたような気がする。そんなことを考えていると

 

 

『なんだ、まだ寝ておらんかったのかアキ。さっさと寝たらどうだ。それともダックスドルミールで強制的に眠らせてやってもよいぞ?』

『い、いいっつーの!? あんまりそればっかりやってたら体に良くなさそーだし……癖になっても困るしな……』

『ふむ、せっかく生み出してやったのに自分勝手なやつめ。だが必要なDBがあるのなら早めに言っておけ。恐らくそろそろ我には制限がかかるじゃろうからな』

『制限……?』

『こっちの話じゃ。それよりもさっさとエリーのところに行ったらどうじゃ。一緒にいなければ寝れなくなったのじゃろう?』

『お、お前!? 人聞きが悪いこと言うんじゃねえよ! 俺はただ……』

『言い訳はよい。さっさと行くがいい。それが今の主に一番必要なことじゃ。全く、なんで我がこんなことを……これではバルドルとやっていることが変わらぬではないか……』

 

 

夜中で騒いではエリーを起こしてしまうかもしれないと念話でマザーと言い合うもどうもマザーは要領を得ない。どうにも歯切れが悪いというか、いつものマザーらしくない。それに釈然としない何かを感じながらも追い出される形で自分はエリーの部屋に向かうことになってしまったのだった――――

 

 

 

(なんで俺、こんなことしてるんだろ……?)

 

 

こそこそと自分の家の中を歩いている姿は不審者そのもの。場合によってはエリーに夜這いを仕掛けてると思われてもおかしくない状況。そういえば最近、同じようなことがあったような気がする。確かあの時はエリーは部屋にはおらず、海岸で踊りを踊っていたはず。もしかしたら踊りに行きたいから今日は別々に寝るということだったのかもしれない。

 

 

(マザーの奴、何か変だったよな……? いつもならエリーのところに行こうとすると邪魔してくるくせに……)

 

 

やはりおかしい。あの一件以来、マザーはエリーと仲直りはしているが対抗意識は変わらず持っている。そのせいか自分がエリーと二人きりにならないように邪魔してくるのが常。なのにどうしてこんなことを。

 

そんなことを考えているうちにあっという間にエリーの部屋に着いてしまう。どうしたものか。一緒に寝よう、なんて言えるわけもなし。かといっても何を話せばいいのか。もう後は野となれ山となれ。意を決してノックをしようとした瞬間、

 

 

「うぅ……ぐすっ……ひん……」

 

 

そんな、聞いたことのある、聞いたことのない少女の声が聞こえた。

 

 

そのまま、知らずわずかに開いていたドアの隙間から中を覗き込んでしまう。自分が何をしているのか分からない。ただ声をかけることもできず、ただ見ていることしかできない。

 

そこにはエリーがいた。ベッドに横になっているエリー。でもそこにいるのは自分が見たことのないエリーだった。体を震わせてシーツを掴み、枕に顔をうずめながら、涙を流し、嗚咽を漏らしている小さな少女の姿。いつもの太陽のように明るい少女の姿はどこにもない。あるのは

 

 

「何で……ぐす……ひっ……何でまた忘れちゃうの……? もう、忘れたくないのに………ひっく……」

 

 

不安と恐怖で涙を流す女の子の姿。瞬間、息を止めてしまった。時間が止まっているような気さえする。ただ、全てを理解した。

 

 

エリーの行動の意味も。マザーの言葉に意味も。自分の馬鹿さ加減も。

 

 

その全てが頭を、体を駆け巡っていく。知らず体が震えていた。いつもの震えではない。心臓の鼓動は早くなり、手は知らず握りこぶしになっている。

 

 

いつか聞いた、彼女の言葉。自分が生きているんだと思えるような、何か。自分に足りない何か。

 

 

 

「誰か……助けて……」

 

 

 

エリーの心からの言葉。それを胸に刻みながらアキはそのまま自らの部屋へと戻っていくのだった――――

 

 

 

「ハアッ……ハアッ……!」

 

 

ただ踊る。全てを忘れて、踊り続ける。観客は誰もいない、あたしだけの舞台。舞台の夜の海岸という踊るには適さない場所。それでも構わなかった。

 

ただ踊る。全てを忘れて、踊り続ける。観客は誰もいない、あたしだけの舞台。舞台の夜も海岸という踊るには適さない場所。それでも構わなかった。

 

今はただ、何も考えたくなかった。でも、それができない。頭の中に、いろいろなことが巡っては消えていく。考えたくない、目を背けたくなる、怖いこと。

 

魔導精霊力の副作用。それをあたしは忘れてしまっていた。ううん、忘れた振りをしていた。だって壊したくなかったから。

 

アキがいて、ママさんがいて、他のみんなと賑やかに騒ぎながら過ごす生活。もう二度と手に入らないと思っていた、家族との暮らし。それがまたなくなってしまうのが怖かった。忘れてしまうのが、怖かった。悲しかった。

 

 

「うぅ……ぐすっ……」

 

 

いつの間にか涙が流れていた。本当に嬉しかった。もう一度アキに、みんなに会えたことが。でも、そのせいでもっと怖くなった。こうなることは五十年前から分かっていたはずなのに。エンドレスを倒せたとしても、あたしは記憶を失ってしまう。あたしはもう……みんなには会えない。分かっていたのに、覚悟していたのに。

 

知らない間に踊りを止めてしまっていた。全然楽しくない。踊っていても、楽しくない。きっと何度踊ってもそれは変わらない。それでもそれを振り払うようにもう一度踊りだそうとした瞬間

 

 

「え……? アキ……?」

 

 

いつからそこにいたのか。今一番会いたいけど、会いたくない人がそこにいた。

 

 

「いや……ちょっと前からいたんだけど、邪魔しちゃ悪いかと思ってさ」

「も、もう! いるんならいるって言ってよ! あたしだって勝手に踊り見られたら恥ずかしいんだから!」

「わ、悪い悪い! 今度からは気を付けるから!」

 

 

慌てて涙を見られないようにこすりながらアキに文句を言う。アキはそんなに言われると思っていなかったのか目に見えて慌てて困ってしまっている。とりあえず泣いているところはみられていなかったみたいでほっとする。

 

 

「よろしい! それよりもどうしたの、アキ? もしかしてまた探して来てくれたの? 心配しなくてももう少ししたら帰るから」

「いや、俺もちょっと寝付けなくてさ。散歩がてらに寄っただけで……」

「くすっ……じゃああたしと一緒だね。あたしもアキと一緒じゃないと寝れなくなっちゃってたみたい」

「な、何だよそれ!? 変な冗談は止めろよな……」

「嘘じゃないよ? あたし、アキと一緒に寝ると安心して眠れるもん」

 

 

ちょっと意地悪過ぎたかもしれないけどいいか。勝手にあたしの踊りを見たお返し。もちろん言ってることも嘘じゃない。アキやママさんと一緒に寝ることはあたしにとっては大好きなことの一つ。懐かしい、パパやママと一緒に寝ていた頃のことが思い出せるから。でも今はそれもできない。今一緒に寝たらきっとあたしは我慢できずに泣いてしまう。そうなったらアキに心配をかけてしまう。そんなことはしたくない。

 

 

「……お前、だんだんマザーに似てきたな」

「そうかな? そういえばママさんはいないの? いつも一緒なのに」

「あいつなら家で寝てるぞ。DBが寝るってのもおかしいが」

「そっか。でも勝手に出かけたって知ったらまたママさんに怒られちゃうんじゃない?」

「う……だ、大丈夫だって……多分」

 

 

あたしの言葉に思わずアキは困った顔をしている。いつも通りのアキの姿。うん、やっぱりあたしはいつものアキが好き。夕方みたいに怖い顔をしているアキは見たくない。その理由も分かってる。きっとあたしのせいでアキはあんな顔をしてたんだって。だから心配かけないようにしないと。

 

 

「ふふっ、じゃあママさんに怒られないうちに帰ろっか。あたしも眠くなってきちゃった」

 

 

少しだけ元気が戻ってきた気がする。それだけでもここに来た甲斐があったかもしれない。そのままアキと一緒にママさんがいる家に帰ろうとするもアキはそこから動かない。どうしたんだろう。

 

 

「アキ……? どうしたの、まだ散歩するの?」

「いや……散歩もそうだったけど、なんだ……本当はこれを渡すためにここに来たんだ」

「え……?」

 

 

どこか歯切れが悪い様子でアキはそれをあたしに手渡してくる。それが何か、すぐに分かった。忘れるはずがない、あたしにとって大切な贈り物。

 

 

「この前はマザーとのゴタゴタで渡しそびれちまってからな……今度こそ忘れないうちにって思ってさ」

 

 

マジックディフェンダー。身に着けることで魔力を探知されなくなるマジックアイテム。狙われているあたしにとっては身を守るために必要な物。

 

 

「……うん、ありがとうアキ! 大切にするね!」

 

 

でもそれ以上にあたしには大切な贈り物。大切な人に贈ってもらえた二つ目の腕輪。一つ目はもう持ってはいないけど、この二つ目はきっとずっと自分が持っていられるはず。

 

 

「あ、でも外した時になくさないように入れ物がいるかな? どこかにいっちゃったら困るし」

 

 

そういえばと思い出す。マジックディフェンダーは魔力を探知できなくなるだけでなく、魔法も使えなくなってしまう。魔導精霊力を使う間は外さなくてはいけない。そのままではどこかにいってしまうかもしれない。なら何か入れ物のようなものがいるかもしれない。けどそんなあたしの心配は

 

 

「……外さなくていい」

 

 

そんなアキのぶっきらぼうな一言によってなくなってしまう。

 

 

「え……?」

「だから、それは外さなくていい。ずっと着けてればいい……」

「それって……」

 

 

アキがいったい何を言っているのか分からなくてぼーっとしてしまうけど、すぐにその意味を理解する。同時に思わず笑ってしまう。知らずに自分の目から涙が流れてしまうぐらいに。

 

 

「俺が……」

 

 

恥ずかしさに耐えられなくなったのか、それともママさん曰く、ヘタレさんになってしまったのか。そっぽを向きながらアキはそのまま行ってしまう。でもあたしは知っていた。アキがその先に何を言おうとしていたのか。だってあたしはその言葉を一度、聞いたことがあるのだから。

 

 

「……うん! これからもヨロシクね、アキ♪」

 

 

そのまま追いかけてアキの手を握りながら家路につく。まだヘタレさん、ううん、ずっとヘタレさんだけどやっぱりアキはあたしが知っているアキのまま。だからきっと大丈夫。

 

 

それがあたしがアキと本当の意味で再会した瞬間。でもその後、いつもと同じようにアキはママさんにお仕置きされてたのだった――――

 

 

 

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