ダークブリングマスターの憂鬱(エリールート)   作:闘牙王

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第四十八話 「開幕」

(どうしてこうなった……?)

 

 

ただただ呆然とするしかない。現実逃避と言い換えてもいい。ジンの塔での戦いから始まった時の交わる日。エンドレスの復活を経てのシンクレアの奪取。時を超えてのリーシャとの邂逅。この時点でもうこれでもかと言うほどの事態の連続。もう何が起きても驚かない。そんな自分であってももはや言葉もない。何故なら

 

 

(何で俺……野外にパンツ一丁で正座してんの……?)

 

 

青空の下、草原のど真ん中でパンツ一枚で正座。変態だった。どっからどうみても変態だった。誰かに見られようものならそのまま留置所に一直線間違いなしの状態。もちろん自分にそんな趣味はない。ないのだが、そうせざるを得ない状況に陥ってしまっている。誰のせいでもない、自分のせいで。自業自得。ただ勘弁してもらいたいのは

 

 

「うーん……やっぱり何もないなー……」

 

 

きょろきょろしながら自分の周りをぐるぐるしているエリー……もといリーシャの視線。年頃の(というか幼い)少女の前で下着一枚の姿を晒し、それを観察されている。端から見たら変なプレイにしか見えない有様。この場合逮捕されるのはやはり自分だけなのだろうか。そんなことを考えながら変な汗を流すしかない。というかもういいのではないだろうか。

 

 

「あ、あの……エリーさん? もう服着てもいいかな……? いい加減風邪ひきそうだし……っていうか着させてください」

「え? あ、そっか、そうだね! でも残念だなー……何か手掛かりになるようなものが書いてたら良かったのに……」

 

 

残念、とばかりに本当にがっかりしているリーシャの姿に罪悪感を覚えながらもあきれるしかない。どうやらリーシャは自分の体に何か手掛かりが書かれているかもと思っていたらしい。あれか、マジックペンでの悪戯のような物だろうか。だが全く的外れとは言い難い。事実、これから一年後にはエリー自身が自分の腕に手掛かりの入れ墨を行うことになるのだから。

 

 

「書いてたらって……そんな物あるわけないだろ。名前でも入れ墨で彫っとけば別だけどさ……」

「そっか、そうすれば記憶喪失でも名前が分かるもんね! アキ頭いいんだ! あたしも、もしものために彫っとこうかな……あ、またあたしのことエリーって言ったでしょ? 何度言ったら覚えてくれるの? あたしはリーシャ!」

「わ、悪い……つい癖で……それよりも名前を彫るのは止めとけって……あの、マジで止めてください……」

 

 

そんな自分の冗談を真に受けたのか、それとも冗談なのか。リーシャは自分が記憶喪失になった時の為に名前を彫ろうかと悩み始めてしまう。こっちとしては必死に止めるしかない。ELIEならともかく、リーシャなんて入れ墨された日には全てが破たんしてしまいかねない。というかもう既に自分のせいで本来の歴史からはかけ離れてしまっているのだが。

 

 

(待てよ……? よく考えたら、リーシャの墓ってどうなってるんだ……? もしかして、ジークの骸骨も俺のせいでなかったことになってるってことか……?)

 

 

そんな中、ふと気づく。本来の歴史でエリーが記憶を取り戻すために必要だったリーシャの墓やそれを守っていたジークの骸骨はどうなっているのか。よくよく考えれば自分のせいでエリーが記憶を取り戻した段階でリーシャの墓に向かう必要も、エリーが五十年前にタイムスリップする必要もなくなってしまっている。ということはジークも五十年前に来ることも、死ぬこともないということなのか。それとも。そんな答えの出ない疑問に頭を悩ませていると

 

 

「大丈夫だよアキ! まだ手掛かりはいっぱい残ってるんだから! ほら、持ってた物全部こっちに広げてみよ!」

「え? あ、ああ……そうだな……」

 

 

自分が手掛かりが見つからなくて沈んでいると思ったのか、リーシャはこっちを元気づけようとしてくれる。色々と規格外なところはあるがやはりエリーは優しい。リーシャであってもそれは変わらないらしい。もっともそのせいでこっちは罪悪感で一杯なのだが今更嘘でした、なんてとても口にできない。そんなこんなで自分の記憶探し(偽)は身体検査から持ち物検査へ移行……されたのだが、すっかり忘れてしまっていた。

 

今の自分が、文字通り持ち物検査をされればそのまま監獄メガユニット送り間違いなしの危険人物であることを。

 

 

「わー! きれーい! これ全部宝石なの?」

「さ、さあ……どうかな……? はは……」

 

 

宝石じゃなくて魔石です、と心の中で白状しながら乾いた笑みを浮かべるしかない。対してエリーは目を輝かせている。初めて見た魔石に目を奪われているのか、珍しい物を見たからなのか。どちらにせよ、さっきまでとは違う意味で自分は戦々恐々とするしかない。

 

目の前にはピクニックで使われたシートに広げられた自分の持ち物一式。フリーマーケット……と言いたいところだがどう見ても窃盗犯の押収物一覧さながらの有様。何よりもその内容。

 

シンクレア×5 六星DB×2 デカログス(準シンクレア) ワープロード(最上級) イリュージョン、ハイド(上級) エンド・オブ・アース(子供) スピーカー(翻訳兼拡声)

 

ダークブリングマスターセット(完全版)DB総数23個 これさえあればあなたも今日からダークブリングマスター! 世界征服も次元崩壊も思うがまま! さあ今すぐエンドレスへ! 

 

といった感じである。いつぞやのラーバリアでの検閲からまだ一週間も経っていないのにこの有様。何だろうか。改めて客観的に目の当たりにすると一体自分はどこに向かおうとしているのか不安になる。今からでも返品できないだろうか。割と本気で。価値的には億エーデルを軽く超えるのだろう。もっとも欲しがるのは闇の組織かどっかのルビーぐらいだろうが。

 

 

「へー、あ、アキ、この虫っぽい宝石には見覚えある? こんなにいっぱい持ってるんだからきっとアキのだよね?」

「む、虫っぽいかは分かんねえが……うん、見覚えはあるような気がするな……うん」

 

 

きゃっきゃとはしゃぎながらリーシャはDBを手にとっては空にかざしたり、触ったり、覗いたり、しゃべりかけたりやりたい放題。そのことにDB達は怒り心頭……ではなく、同じくはしゃぎっぱなし。自分も自分もとリーシャは本人は知らぬ間に大人気っぷり。あれだろうか。エリーの時もそうだったが、リーシャもDBに愛される特技があるのだろうか。三代目レイヴマスターではなく、二代目ダークブリングマスターを継いでくれないだろうか。もっともそうなったら自分は死んでしまう事になるので冗談にもならないのだがそれはさておき。

 

 

「ねえねえアキ、あたしこの子が気に入っちゃった! もらっちゃってもいい?」

「ぶっ!? い、いいわけないだろ!? い、一応俺の持ち物なんだぞ!?」

「えー? こんなにいっぱい持ってるんだから一つぐらいくれてもいいのにー」

 

 

けちー、とばかりに頬を膨らませているリーシャの姿は傍目から見れば可愛らしく、一個ぐらいあげてもいいかな、なんて気の迷いを起こしかねないのだがこればっかりはどうしようもない。歴史通りであれば今この国、シンフォニアは敵国であるレアグローブと戦争中。レアグローブはDBによって武装している。レイヴを造り出すはずのリーシャがDBを持っているなんて洒落にもならない。何よりも

 

 

(な、何でよりにもよってマザーを!? あれか、五十年前から世界滅亡コンビの布石があったってことか……!?)

 

 

リーシャが一番気に入ったと手にしているのは紛れもないマザー。23個の中からピンポイントでそれを選ぶなんてあまりにも出来過ぎている。この子、なんて呼んでいるせいでもしやDBの声が聞こえているのかと戦慄するもそういうわけではないらしい。DBたち(主にマザー)にはスピーカーの能力を使用しないように厳命済み。もっとも押すなよ、絶対押すなよ状態だったので気が気ではなかったのだがどうやらそこまでする気はマザーにはなかったらしい。その代わりと言っては何だが、マザーは自分が選ばれたことにドヤ顔し、バルドルはそれを持ち上げ、ラストフィジックスは何故か羨ましそうにしている。一体こいつらは何をしているのか。それはともかく

 

 

「エ、リーシャ……ちなみに聞くけど、どうしてそれを選んだんだ……?」

「え? んー、なんて言うのかな? この子が他の子よりもすごいって思ったの」

「す、すごい……?」

「うん。うまく言えないんだけど、がーっとするっていうかわーってカンジ? 何だが凄いカンジがするの」

 

 

両手を上げて、身振り手振りでリーシャは自分の感じたものを表現してくれているがさっぱり伝わってこないのはともかく。リーシャがDBの力、存在感を感じているのは間違いない。その証拠に

 

 

「じゃあ聞くけど……今持ってる奴以外で凄いって感じるのはどれなんだ……?」

「これ以外で? えーっと……これとこれと……あとはこの二つかな? このおっきい剣もそうだけど、やっぱりこの五つ!」

 

 

どう、すごいでしょ? とばかりにリーシャは迷うことなく五つのシンクレアを選び出してしまう。あれだろうか。魔導精霊力を持っているリーシャだから気づけるのだろうか。本当なら大正解と発表しながら贈呈したいところだがそんなわけにもいかない。だがそれよりも早く反射的に体が動く。そう、それはシンクレアの輝き。エリーが手にしているシンクレアの一つ。三日月を模した形をした

 

 

「ちょ、待――――へぶっ!?」

「きゃっ!? あ、アキ!? 大丈夫!?」

 

 

ヴァンパイアの能力発動。明らかにリーシャを殺すつもりでの引力支配。何とか寸でのところで制御するも勢い余ってそのまま頭からすッ転んでしまう。エアバックならぬラストフィジックスによって痛みもダメージもなし。本当に助かるのだがシンクレアの無駄遣い感は否めない。

 

 

「だ、大丈夫大丈夫……俺、こうやって転ぶのが癖みたいだから……とりあえず、その石たち返してもらっていいか?」

「う、うん……でも、あ! 記憶の方はどう!? さっきのショックで何か思い出したりしてない!?」

「ざ、残念ながら……この調子で転んでたらどっちかっつーともっと忘れかねないな……」

 

 

ショック療法ならぬ転倒療法なのか。もう一度頭を打ったから思い出した? とばかりに聞いてくるリーシャに苦笑いするしかない。本当にこのままでは頭を打って記憶喪失になりかねないなと冗談を口にするも、それを本気にしたラストフィジックスがヴァンパイアと喧嘩を始めてしまう。もっとも喧嘩にすらならず、ラストフィジックスは大泣きし、マザーたちはそれをあやすために必死になっている大参事。どうしたものかと頭を抱えていると

 

 

「でもこんなにいっぱい持ってるってことは、アキ、この石が好きなんだね」

「そ、そうなるの……かな……? まあ、うん、そうなんだろうな……」

 

 

まるでそんなDBたちの事情が聞こえているのではないかと思えるようなタイミングでリーシャはそんなことを口にしてくる。何の冗談なのかと反論したいが状況証拠的に、というよりもう誰がどう見てもそうなのだろう。何か悟りを開いたような感覚を覚えながらもリーシャの持ち物検査は続いていく。

 

 

『うーん……お、重い……アキ、こんなのどうして振り回せるの?』『この手紙読んでみてもいい? もしかしたら何か書いてあるかも!』

 

 

デカログスを持って振り回そうとしたり、クレアから預かった手紙を勝手に読もうとしたりの大騒ぎ。手紙については自分も気にはなるが流石にあそこまで言われて勝手に読む勇気は自分にはない。何とか理由をつけてリーシャを誤魔化し、デカログスについては大怪我しかねないので即没収。

 

 

「ハァッ……ハァッ……! も、もう夕方か……」

「あ、ほんとだ。あっという間だったね。まだ全然手がかり見つかってないのに……」

 

 

何故かこっちは息も絶え絶え、対してリーシャはまったく疲れを見せていないどころかまだ遊び足りな……ではなく、自分の記憶探しを手伝い足りない様子。こっちは途中からいったい何をしているのか分からなくなってしまっていたのだが、リーシャ的には真剣にやってくれていたらしい。もっとも素で楽しんでいたのは間違いないが。

 

 

「そろそろ帰らないとみんな心配するかな……あ、そうだ! 村のみんなに手伝ってもらったらどうかな? 事情を話せばきっと力になってくれるよ? みんないい人ばっかりだから!」

「い、いや……それは、その……」

「どうかしたの? そんなに心配しなくても……あ、でも今はちょっとタイミングが悪いかな? 今日すっごく怪しい不審者が村に出たってみんなが言って……あれ? それってもしかして」

「…………多分、俺のことです。すみません」

 

 

自分から土下座したい気持ちで正直に白状する。多分どころかそれ以外に有り得ない。というかそんな話を聞きながら一人で出歩いて、不審者そのものと言っても過言ではない自分(言ってて悲しくなる)に話しかけてくるリーシャは大丈夫なのか。将来が心配……するまでもない。もはや手遅れ。

 

 

「そっかー、アキ、不審者扱いされちゃったんだ。石が好きで、えっちなだけなのにね」

「ちょ、ちょっと待て!? 百歩譲って石が好きなのはいいとして何でえっちなんて言われなきゃいけないんだ!?」

「だってアキ、あたしのおっぱいばっかり見てるでしょ? そういうの分かるんだから」

「そ、そんなことは……!? 痛てててっ!?」

 

 

さらっと爆弾発言してくるリーシャに唖然とするしかない。確かに自分が知っているエリーより小さいなとか、衣装の違いで何度か見たのは確かだがそんなにえっちだ何だの言われるほど見てはいないはず。にも関わらずもはや様式美ともいえる頭痛が襲い掛かってくる。どうやらラストフィジックスの子守は終わったらしい。

 

 

「だ、大丈夫アキ? ちょっとした冗談だったの。さっきのお返しと思って……でもちょっとは見てたでしょ?」

「の、ノーコメントで……ふぅ……そ、それより何で俺に声かけてきたんだ……? 不審者だと思わなかったのか……?」

「不審者かどうかは分かんなかったけど……でも、すっごく近づきにくいカンジはあったかな? さっきの石よりも何倍もすごいカンジっていうか……」

「お、お前……人が臭いみたいに言うなよ……」

「あ、そっか! うん、臭いっていうか、すっごく嫌な匂いがしたの! でも逆にそれが気になっちゃって……きっと村のみんなはそれが嫌で逃げちゃったんじゃないかな?」

 

 

だから気にしなくていいと思うよ、と全方位からこっちに止めを刺しに来るリーシャさん。そして明かされる衝撃の事実。どうやら今の自分はシンクレアの何倍も邪悪な臭い、もとい気配を発しているらしい。着実に魔石殺しとして成長している証だとマザーは笑いを堪え、バルドルはジェロの冷気に比べたらまだまだよ、とPTSDを発症し、ラストフィジックスはママの匂いみたいで安心すると慰めてくれる。泣けばいいのか笑えばいいのか分からない。そういえば自分の知っているエリーはそんな臭いが好きだと言ってくれたがあれだろうか。癖になる臭さということなのか。臭いが前より薄いだのなんだの言ってた理由がようやく分かった瞬間

 

 

「でも、うーん……そうだ、じゃああたしの家に泊まる? それならきっと大丈夫だし」

「な、なんでそうなる!? もっとヤバいことになってるじゃねえか!?」

 

 

思わずいつものノリで突っ込みを入れてしまう。当たり前だ。何でそこでリーシャの家に泊まることになるのか。というかこの娘は意味が分かって言っているのか。分かっていないに違いない。あれだろう。自分を虫っぽいもの、もといプルーぐらいにしか思っていないのだろう。そういえばプルーはもういるのだろうか。それはともかく

 

 

「え? でも他のみんなには断られちゃったんでしょ? あたしなら大丈夫だよ、匂いは我慢できるから」

「そういう問題じゃないだろ!? 男の俺が女の子一人の家に泊まれるわけないだろ!?」

「え……? あ、そっか……あれ? でもアキ何で」

「とにかく、俺は今日はその辺で野宿するからエリーはもう村に帰ってくれ。村の人たちが心配するだろうし……そ、それと、うん、ありがとな。色々助かった」

「う、うん……」

 

 

リーシャには悪いが有無を言わさぬ勢いで話をまとめさせてもらう。五十年後ならともかく、今の状況でそれはいくら何でもマズすぎる。リーシャだけならともかく他の村の人たちの目もある。何より恐ろしいのはそれでもいいかと思いかけてしまった自分の感覚。明らかにこの半年以上のエリーとの生活で感覚がマヒしてしまっている。このままではまたヒモ生活になりかねない。ギャンブルではなく踊り子で稼いだお金で養ってもらうようになるのが目に見えている。遅いか早いかの違いでしかないぞ、とマザーに突っ込まれるが無視するしかない。そんな中

 

 

「これからアキはどうするの? 記憶探しの旅に出るとか……?」

 

 

どこか心配そう、というより真剣にリーシャはそんなことを尋ねてくる。当たり前と言えば当たり前の質問。記憶喪失(偽)である以上、そうするのが普通。エリーも本来の歴史では同じように自分探しの旅に出ていたのだから。もっとも自分にそんなものは必要ないが、元の時代に帰るためや現状確認などやるべきことは山積み。

 

 

「そ、そうだな……でも今のところはまだ先かな? とりあえず拠点、というか足場がないとどうにもならないし……」

 

 

頭をかきながらそう答えるしかない。記憶喪失ではないが、五十年前のシンフォニアという自分にとっては右も左も分からない土地に着の身着のままで放り出されてしまったのは変わらない。自分の臭い、もとい気配のせいでまともに人とコミュニケーションを取るのは難しい。衣食住もままならない現状、とにかく食住だけでも早急に何とかしなければ。これまでとは全く違うベクトルで途方に暮れるしかない。だが

 

 

「そっか! ならあたしがご飯作ってきてあげる! 食べるものも困ってるんでしょ?」

 

 

そんな自分の姿を見て何を思ったのか、目に見えてリーシャは嬉しがって、というか元気になっている。どのあたりに元気になる要素があるというのか。というか一体何を言っているのか。

 

 

「え……? それは助かるけど、そこまで」

「ううん、心配しないで! あたし、これでも料理にはちょっと自信があるの! サンドイッチばっかりじゃ飽きちゃうだろうから、明日は違う物作って来るね! 明日も同じぐらいの時間でいいかな?」

 

 

うんうん、と勝手に納得して頷いているリーシャさん。何度か声をかけるも全く耳に届いていない。こうなったら何を言っても聞かないのは身を以って知っているのでもはやあきらめるしかない。

 

 

「じゃあまた明日ね、アキ! 約束守らないとここに不審者がいるって言いふらしちゃうんだから!」

 

 

またねーと恐ろしいことを言いながらぶんぶん手を振ってリーシャは村に走って行ってしまう。男の子顔負けのやんちゃっぷり。お淑やかさは欠片もない。幼さもあるのか、自分が知っているエリーより五割増し元気な気がする。そしてシンクレアも五倍。果たして自分はやっていけるのか。色んな意味で。

 

 

「…………とりあえず寝床、確保しなきゃな……」

 

 

変わらずぎゃあぎゃあ頭の中のうるさい騒ぎにめまいを感じながらも、とりあえず今日を生き抜くために動き出す。ひとまず雨風が凌げる場所を。別れて数分でリーシャの誘いを断ったことを後悔しながらも魔石殺し(ダークブリングマスター)アキの極限(サバイバル)生活が開幕したのだった――――

 

 


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