艦シーメールの鈴谷になってとある鎮守府に着任した少年の話 作:ゔぁいらす
俺は
男でも男性機能を持ったまま艦娘になれる技術が政府から公表され、なんの取り柄もなかった俺に適性がある事がわかり、誇れる特技も将来の夢も無かった俺は艦娘になる事を決意し志願した。
そんな事があって俺は麻酔をかけられ今艦娘になる手術を受けている最中なのだ。
そして
「終わったわ。気分はどう?」
そんな声が俺の意識を暗闇から引きずり上げる。
「はい・・・・大丈夫です。」
俺はその声にそう返した。
手術を受ける前から投薬を始められていた俺は薬のせいか日に日に声も高くなり、身体付きも少しづつ丸みを帯びて来てはいたが、自分の発した声は最早以前の自分の物ではなく完全に女性の物になっている。
それにその声はどことなく今俺に話しかけている声に似ている気がする。
「そう。最終調整は成功みたいね。これであなたは今日から私達艦娘の仲間入り!おめでとう鈴谷」
その声はそう言った。鈴谷。そうか。それが今日からの俺の名前。今日から俺は鈴谷という艦娘なんだ。
初めて呼ばれたその名前だったが不思議と違和感はなかった。
しかしまだその名前を自分の物だと完全に認識するまでには少し時間が必要だろう。
俺はまぶたを開けたその先には俺に話しかけた声の主、そして病室の天井が見えた。
「色々ありがとうございました夕張さん。」
彼女は艦娘になるまで俺の事をサポートしてくれた。そしてサポートしてくれた人はもう一人。居たのだが彼女の姿は見当たらない。
「あの・・・夕張さん。明石さんは?」
俺は彼女にそう尋ねた。
「ああ明石?明石なら昨日から一晩中君の最終調整手術の準備とかで寝てなかったから寝ているわ。それで私が君の看病してたって訳」
「そうですか・・・色々お世話になったので一言お礼が言いたかったんですけど」
「別に今じゃなくたって良いじゃない。これから私達同じ鎮守府で一緒にやっていく仲間なんだから!そうだ。君は私と明石が発案した適合手術で艦娘になった初めての艦娘なの。これから身体にどんな変化があるか逐一レポートを出して欲しいんだけど良いかしら?それと・・・まだ手術が終わってそれほど時間も経ってないんだからもう少しお休みしてて。その間に君の制服とか準備しておくから。」
そう言って夕張さんは出て行ってしまった。
「あっ・・・はい。それじゃあお言葉に甘えて。おやすみなさい」
俺はそう言って再びまぶたを閉じた。
それからまたしばらくすると
「鈴谷・・・起きてください!」
という声に起こされる。まだ余り鈴谷という言葉が自分を示しているものだとは認識しきれていない。
「んっ・・・あっ・・・明石さん。」
その声の主は夕張さんと共に俺をサポートしてくれた明石さんだった。
「おはよう鈴谷!どうですか身体の方は?痛い所とか無いですか?」
明石さんはそう言って俺を舐め回すように見つめた。
「えっ・・・ああはい。今の所は特に・・・でも少し胸にまだ違和感があるかなってくらいで・・・」
俺がそう言うと
「胸も自然に大きくなってくれて良かったですね。でも大丈夫ですよ。すぐに慣れます。そうだ!夕張が色々準備してくれてるんです。立てますか?」
そう言って明石さんは俺に手を差し伸べた。
「はい。ありがとうございます」
俺は明石さんの手を取りベッドを降りる。まだ少し足下がおぼつかないが明石さんに手を引かれ俺は別室へと通された。
「鈴谷!待ってたわ。あなたの制服とか一式揃えておいたわよ」
その部屋には夕張さんが居て、なにやら制服の様な物を持っている。
もしかしてアレを着るのか・・・?
「えーっと・・・これは?」
俺は恐る恐る尋ねる
「今日からあなたの着る制服に決まってるじゃない」
夕張さんはそう答える
今日からこんな服を着て生活しなきゃいけないのか!?
「だ・・・だってそれ・・・・・女物で・・・」
「当たり前じゃない。あなたは今日から艦娘なんだから!ほら。サイズは多分これで合ってるはずだから着てみてちょうだい」
夕張さんは手に持っていた服を俺に手渡してきた。
「あっ・・・ありがとうございます。」
俺はそれを手に取った。
「それじゃあ着替えてみてくださいよ!」
明石さんが俺にそう言う
「えっ!?ちょっと待ってください、俺・・・一応男なんですよ!?そんな2人の目の前で着替えろだなんて・・・」
俺はもう身体付きや声見た目はどれをとっても女性と寸分違わぬ身体にはなっていたもののいまだにそれを否定するかのように男性器が股のしたからぶら下がっている。これが今の俺の唯一の拠り所と言っても良い。しかしそれは本来艦娘に有ってはならないものだ。俺はそんな物を果たしてこの2人の前に晒していいものなのかと躊躇ってしまう。
「大丈夫大丈夫。私達気にしないから!あっ。それとこれ、下着ね。付け方わからなかったら教えてあげるから着替えてみて。」
夕張さんはそんな俺に追い打ちをかけるかのように女性ものの下着を手渡す。既に最終調整を受ける以前から胸は膨らみ始めていて、スポーツブラ的な物は既に着けてはいたのだが、こう言ったフリルのついたパンツやブラジャーを身につけるのはこれが初めての事なのでなんというか緊張してしまう。しかしこのままでは埒が明かない。
「わっ・・・わかりましたよ。でもあんまり見ないでくださいね!!」
やはり人前で、それに異性の前で女の子の服を着ると言うのは今までに経験した事が無かったからなのかとても恥ずかしい。俺は着ていた病衣を脱ぎ捨て、まずはパンツに足を通した。そのパンツは男物に比べぴっちりと股にフィットするがどうしても異様な膨らみが出来てしまう。
「どう?女性ものの下着を履いた感想は?サイズは大丈夫だった?」
夕張さんはそう聞いてくる。
「サイズは大丈夫なんですけどあの・・・何より恥ずかしいです・・・それにちょっと股間が変な感じで・・・」
俺は顔を真っ赤にしてそう応える。
「良かったぁサイズは明石の見立てた通りみたいね。あと股間の違和感はそのうち慣れるわ!大丈夫大丈夫」
夕張さんは俺の方をとんとんと叩きそう言った。そして俺は次にブラジャーを着け始めた。スポーツブラはシャツの要領で手を通せば良いだけだったのだがホックがしっかり止まらず苦戦してしまう。何やってんだろ・・・俺
俺はそんな事を思いながらとりあえずブラジャーを着けた。なんだか男としての大事な何かを失った様な気がした。
それを見た夕張さんがこちらに歩いて来て
「あっ、そんな付け方じゃおっぱいの形悪くなっちゃうわよ」
後ろから俺の胸を掴んできた。
「うひゃぁ!ななな何するんですか!!!」
俺の胸には今までに感じた事の無い感覚が走り、俺は情けない声を出してしまう。
胸が膨らんだせいで少し敏感になっているのか!?
「驚かせちゃった?ごめんなさい。私がブラの付け方教えてあげるからちょっとくすぐったいかもしれないけど我慢しててね?」
夕張さんはそう言うと慣れた手つきで俺の胸をブラジャーの中に収めていった。
「はい。これでおしまい!どう?何も着けてない時よりちょっと大きく見えるでしょ?」
俺は鏡で自分の胸をまじまじと見つめる。俺・・・男なのにこんな谷間まで作れるくらい胸がデカくなってしまったという現実を突きつけられ情けなさに苛まれる。そんな事を知ってか知らずか
「それにしても鈴谷もう私よりおっぱいおっきくなって羨ましいわ」
夕張さんはそう言って俺の胸を揉み始めた。
再びくすぐったいんだか気持ちが悪いんだかよくわからない感覚が俺を襲い
「うぁっ!?ちょっ・・・ひゃめっ・・・」
また情けない声が出てしまう。
それからしばらく夕張さんは胸を揉んだ後
「うん!感度も良好みたいね!形も柔らかさも問題無し!!」
夕張さんは親指を立てた。
「もう!そんなの急に調べないでくださいよ!」
俺は自分の胸を押さえてそう言った。
「ごめんなさい。綺麗だったからつい・・・」
夕張さんは頭を掻いて誤摩化した。
「それじゃあ次は制服ですね!」
明石さんが催促するように言った。
俺はあまり気は進まなかったがその制服に袖を通す。
そして鏡には制服を着た緑髪の少女が立っている。
「これが・・・俺・・・」
今まで自分がどんどん男らしくなくなって女らしさが増して行き自分が自分でなくなるようで怖くてあまり鏡は見ないようにしておりこうまじまじと久しぶりに鏡を見ると、それが自分だとわかるまでに数秒の時間を要した。そして完全に自分は以前の自分ではなくなってしまったんだと寂しさを覚えた。
「よし!制服のサイズもバッチリですね!似合ってますよ鈴谷!」
後ろで見ていた明石さんがそう言った。
「ええ・・・はい。ありがとうございます。」
俺は頭を下げる
「それじゃあ準備もできた事だし今から提督に挨拶しにいきましょっか。」
夕張さんはそう言った。
「ええ!?夕張さん、もう行かなきゃいけないんですか?俺・・・まだ心の準備が・・・それにこれ・・・股がスースーして・・・・」
俺は心の準備ができていなかったので少し緊張してしまう。それにスカートと言う物にはまだ慣れない。手術を受ける前から慣れておいた方が良いとスカート付きの服なんかを着せられた事は何度かあったがやはり履き慣れておらず、抵抗もあるので落ち着かない。
すると夕張さんがすこし真面目そうな顔をして
「鈴谷、言い忘れてたけどこの鎮守府にはもちろん女の子の艦娘も沢山居るわ。そんな娘達にあなたが男だってバレたらお互いに気まずいでしょ?だからちゃんと女の子として振る舞うようにね!大丈夫!スカートも最初は変な感じかもしれないけどすぐに慣れるから!!それにもう私達仲間なんだから夕張さんなんて水臭い呼び方しないで呼び捨てで呼んでよ。ね?」
と言った。
「あっ・・・はいわかりまし・・・わかったわ。夕張さ・・・・夕張」
俺はたどたどしい女言葉を使い返事をした。
「よろしい。それじゃあ私が一緒に挨拶しにいってあげる!明石はまだ工廠のお仕事残ってるんでしょ。もう私に任せてくれればいいからそっち行ってて」
夕張は明石さんにそう一言言うと
「はーい。それじゃあ夕張後はよろしくね!あっ!そうだ。鈴谷、これ差し上げます。着任記念・・・と言ったらちょっとささやかなんですけど余ってた鋼材で髪留め作ったんです。きっと似合うと思いますよ。それではまた!何かあったら相談乗ってあげますから工廠に来てくださいね!それじゃあ頑張って!」
そう言って明石さんは俺に髪留めを手渡して部屋を後にした。
「あら。可愛い髪留めじゃない。私が付けてあげる」
夕張は髪留めを俺の髪に着けてくれた。
「うん。流石明石が作っただけあって似合ってるわ!」
夕張はそう言って俺の髪を撫でた。
「あっ・・・ありがとう・・・」
「いいのいいの!それじゃあ行きましょうか」
夕張は俺の手を引き提督が居る執務室へと案内してくれた。
そして提督への挨拶が終わり
「はぁ・・・・俺の挨拶どうでした?変な所なかったですか?」
俺は夕張に聞いた
「だーかーらーもっと女の子らしくだって!挨拶は問題無かったからもっと自信もって!!」
夕張はそう言って俺の頭をこつんと叩いた。でも自分の事を私とかアタシと言うのはどこか抵抗がある。それならばと
「すっ・・・鈴谷の喋り方・・・あんな感じで良かったの・・・かな?」
俺は自分の名前を一人称にする事にして、またたどたどしく夕張に聞いた。
「ええ。まだちょっと危なっかしい所もあるけどこれから慣れていきましょ!次は鈴谷がこれから住む部屋に案内するわ。こっちよ」
そう言って夕張は俺の手を引き部屋の前まで連れて来てくれた。
「はい。この部屋が今日からあなたの暮らす部屋!私と明石はその向かい一つ左の部屋に居るから困った時はいつでも相談に乗るわ!それにもし身体に変わった事があったらすぐに教えてね!しっかり私と明石がメンテナンスしてあげるから!それじゃあ今日は色々疲れたでしょうし部屋でゆっくり休んでたら?それじゃあまたね。」
「はい・・・じゃなかったうん!鈴谷今日はゆっくり休むよ。夕張、今日は色々ありがとう。これからもよろしくね!」
俺は夕張に頭を下げた
「ええ。こちらこそ改めてよろしくね鈴谷。それじゃあごゆっくり」
俺が部屋に入るのを見届けて夕張は何処かへ行ってしまった。それを見届けた俺はベッドに倒れ込み
「あ”ああぁああああああ女の子の振りするとか必要以上に疲れたぁぁぁぁ」
と一人ぼやいた。そして落ち着かなくなり部屋を見渡すと
「あれ?あっちにもベッドが有る・・・なんでこの部屋ベッド2つもあるんだろ・・・?誰か同室の娘とか居るのかな?嫌だなぁ俺ずっと女の子の振りしなきゃいけないじゃん・・・」
俺はそう不満を漏らしていた。それからしばらくベッドでゴロゴロとしているとコンコンとドアを叩く音がするので
「はーい。カギなら空いてるよ〜」
と俺は少し声を高めにして返事をする。どうせ夕張か明石さんだろう。そう思った刹那
「失礼致します」
という声と共にドアが開かれポニーテールの少女が部屋に入って来た。なんて可憐で可愛らしい娘なんだろう・・・どことなく気品すらも感じる。ってそんな事考えてる場合じゃない!
「だっ・・・・誰!?」
俺は突然の来客に慌てふためいてしまうすると
「あらあら。元気の良い人だこと。ごきげんよう、わたくしは最上型重巡、熊野ですわ。あなたがルームメイトの鈴谷さん・・・ですの?」
熊野と名乗る少女はそう言って俺を見つめる。何か気の効いた返しをしなければ・・・・
「えっ!?ええはい!そうだよ!鈴谷だよ!!よろしくねー!!ってええ!?ルームメイト?今ルームメイトって言った!?」
俺は彼女の発した言葉を聞き返す。
「うふふ・・・本当に変わった方だこと。そうですわ。提督にこちらの部屋にいる方とルームメイトになるからと言われましたの。鈴谷さん、それでは今日からよろしくお願いしますわ」
熊野は少し笑みを浮かべた後深々と頭を下げた。
「うっ・・・うん・・・・・」
こんな上品そうな娘と同じ部屋で暮らすだなんて・・・・俺は男である事を隠し通す事が出来るのだろうか・・・・そんな不安感が俺を包んでいた。