艦シーメールの鈴谷になってとある鎮守府に着任した少年の話 作:ゔぁいらす
熊野が部屋にやって来た事によって俺の平穏は完全に破壊された。部屋の中では女の子の振りなんかしなくていいと思ってたのにもうこんなの気の休まる所が無いじゃないか!!
ともかくこのままだと気まずい・・・・なんとかして会話をしなくては・・・ところで女の子ってこういう時どんな話をするんだろうか?俺がそんな事を考えていると
「あのー・・・・よろしいかしら?」
と熊野が俺に話しかけてくる
「はいぃっ!何か鈴谷にご用!?」
俺はそうおどおどしながら返事をする。もしかして男だってバレてる!?いやいやそんなはずは・・・・
「ふふっ!そんなびくびくしないでくださいな。わたくし今まで同年代の方とお話する機会があまりありませんでしたの。なので鈴谷さん・・・もし宜しければわたくしとお友達になって頂けませんか・・・・?」
彼女の口から放たれた言葉は予想外の物だった。この年齢まで同年代の子と話した事があまり無い?今時そんな娘居るんだなぁ・・・・それにしても気の毒だ。俺は少し彼女を可哀想に思えた。折角の良い機会だしあちらから話しかけて来てくれた上に距離を縮めようとしてくれるとは願ったり叶ったりじゃないか!何より拒否する理由も無い。
「うん。いいよ。熊野・・・さん」
俺はそう頷いた。すると
「本当ですの!?わたくし嬉しいですわ!!」
熊野はそう言って俺の両手を取り俺の顔を見つめる。
「あっ・・・うん・・・ちょっ・・・・近いよ熊野さん・・・」
俺は異性に手を握られ顔が約5cm程前の距離にあるこんな状態で早速ボロが出そうになってしまう。
「あら失礼しました。わたくし初めてお友達ができて嬉しくて・・・でもお友達というのはさん付けでお互いを呼び合わない物なのでしょう?わたくしの事はどうぞ熊野とよんでくださいな!!」
熊野は嬉しそうにそう言った。
「そ・・・そうだよね・・・熊野」
俺はそう言った
「ひゃぁ!初めてお友達に呼び捨てて頂けましたわ!!わたくし本当に嬉しいです!!」
熊野は再び俺の両手を握りしめ顔を俺に近づける。
「だっ・・・だから熊野・・・近いよ・・・・」
俺は恥ずかしくなり離れようとするが
「あら鈴谷?顔が赤いですわよ?熱でもあるんじゃなくて?」
そう言って熊野は俺の額に額を当てた。
「!*※□◇∠#△!!!!!!!」
俺は声にならない声を出してしまった。
「あらあら少しお熱があるようですわ。お風邪を引いているの?」
熊野は心配そうに俺を見つめるが俺はそんな事など関係無しに鼻血を噴出させてしまう。
「鈴谷!?どうしましたの!?鈴谷?鈴谷ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は薄れ行く意識の中必死に俺の名前を呼ぶ熊野の声が頭に響いていた。
結局その日はそのまま寝てしまっていた様で早速初日から大失態を犯してしまった。これから先が思いやられるよ全く・・・
・・・・・・
「なんて事があったんだ」
俺は次の日早速夕張や明石さんに話を聞いてもらうため工廠へ来ていた
「鈴谷ったらおでこくっつけられただけで鼻血出しちゃうなんてウブなんだから」
夕張はそう言って笑った。
「そんな。からかわないでよ!!」
俺はそう言った。
「まあでも最初はみんなそんなもんですよ?目のやり場とか困るんですよねぇ。でもこれも慣れですよ。はいコーヒー」
明石さんがコーヒーを淹れてくれた。
「あっ・・ありがとうございます。」
「もう、私にも夕張と同じでそんな気を使ってくれなくていいですから。私の事も呼び捨てで良いですよ。」
明石さんがそう言った
「そう・・・ですか。それじゃあ明・・・石」
俺はぎこちなく彼女の名前を呼ぶ。
「はいよく出来ました鈴谷」
明石はそう言って俺の頭をなでた。
「もう!子供扱いしないでくださいよ!!」
俺は少し怒る。しかし少し引っかかる所がある。前からすぐ慣れるとか目のやり場に困る・・・とかあたかも自信が経験したような口ぶりだ。思い切って聞いてみる事にしよう。
「あの・・・・明石?」
「ん?何ですか鈴谷」
「明石さっきから目のやり場に困るとかすぐ慣れるって言ってたけど鈴谷以外に男の艦娘からの相談とかって受けてたの?」
そう明石に尋ねると
「いえ。鈴谷が初めてですよ」
明石は首を横に振った。
「じゃあなんでそんなわかったような事を?」
俺は更に突っ込んだ質問をする。
「それはねー」
明石はそう言って俺の顔を見つめる。その時
「私達も鈴谷とおんなじだから!!」
夕張が突然声を上げた
「あ〜夕張ったら!私が言おうと思ってたのに!!」
「えー良いじゃない明石〜」
二人はきゃっきゃウフフと俺をそっちのけで話し始めた。一体どういうことなんだろう・・・・
「あの・・・鈴谷と同じってどういう・・・・」
「だから〜私も夕張も元は男の子だったって事!」
明石はそう言った。
「えっ!?ええええええええええええ!!!!」
俺は驚きの声を上げる
「そんな驚かなくても良いじゃない。私達高校の頃からのクラスメイトでお互い機械弄りが好きで運がいいのか悪いのか2人一緒に鎮守府からスカウトが来てね。ほらこれ昔の写真」
夕張がそう言いながら手帳に挟まっていた男性が2人写っている写真を見せて来た。
「あー懐かしいわねこの写真・・・こっちが私でこっちが夕張ね」
明石はそう言って写真を指差した。
「はっ・・・ははは・・・・・」
俺の口から乾いた笑いが出てしまう。
「だから。鈴谷の苦労はわかるなんて偉そうな事は言えないですけどわからない事も無いので困った事が有ったらいつでも相談に乗りますよ!」
「ええ!私もいつでもOKなんだから」
明石と夕張はそう言って笑った。しかし自分が現に艦娘になっているのだから少なからず自分と同じ境遇の艦娘は居るとは思っていたのでそこまでショックだったと言う事ではなかった。なので早速気を取り直して相談をしてみる事にした。
「それじゃあ相談なんだけど・・・」
「はい。何何?私と明石に答えられる事ならなーんでも言ってね!」
夕張は胸をポンと叩いた。
「女の子と同室ってどうすれば良いの・・・?ほら。ボロが出ないか心配じゃん?」
俺がそう質問すると二人は首をかしげ
「うーん・・・私は来たときから夕張と同室だったので・・・・」
なんだよ!!早速役に立たないじゃないか!!
「でっ、でもやっぱり慣れよ慣れ!!デンと構える事が大切だわ。あんまり恥ずかしそうにしてると逆に怪しいし私達も必死で努力したのよ!?ひとまずもっとお話する所から始めたらどうかしら?私もそうしたら女の子のお友達が一杯出来たわよ?さらにそうなったらバレちゃいけないって尚更思うようになるしボロも自然と出てこなくなるから。」
夕張が明石のフォローに入った。
「うーん・・・そっかぁ・・・やってみる。ありがとう。早速熊野と話してみるよ!」
俺は少し自信なさげに返事をする。
「うん!よろしい。最初はみんなそんなモンよ。もし進展が有ったらまた私達に教えてね。いつでも相談乗るから!!」
夕張はそう言った。経験者は語ると言った所か。少しは不安感が薄れたような気がした。
そして俺は2人にお礼を言って工廠を後にし、部屋へと戻ろうとすると
「あっ、そうだ忘れてたわ!はいこれ」
夕張が思い出した様に紙袋を手渡して来た。
「なに・・・?これ・・・?」
俺は袋の中身を確認してみるとフリルの付いた可愛らしい服が入っている
「あなたの寝巻きよ。昨日渡し忘れてて届けにいったんだけどあなた制服のまま寝ちゃってたみたいで起こすのも悪いかなーって思って渡しそびれてたの。今日からはこれを来て寝てね。ほかのお洋服はまだ届いてないんだけどジャージとかも入ってるからそっちも使ってちょうだい」
こんな可愛らしい服で寝なきゃいけないのか・・・少し落ち着かない様な気もしたが制服のまま寝たり下着で寝たりするよりはマシか・・・でも当分はジャージで寝る事にしようかな・・・
「あ・・・ありがとう夕張。それじゃあ鈴谷行くね」
俺は二人に別れを告げ、部屋に戻った。
「熊野ーただいまー」
しかし返事が無い。あれ・・・?どこか行ったのかな?
俺はあたりの様子をうかがうとシャワールームからシャワーのながれる音がする。シャワーを浴びてるのか。
結構早い時間にシャワー浴びるんだな熊野。
俺は熊野がシャワーを浴びている所を想像してしまう。
「あー何やってんだ俺・・・じゃなかった鈴谷!!これ以上熊野と気まずくなったらどうすんの!?」
俺はそう独り言を言った。それから少ししてシャワールームの戸が開く音がする。おっ、もう上がったのか。それじゃあ何を話そうかなぁ・・・そんな事を考えていると・・・
「私とした事が・・・・洗顔を鞄に入れっぱなしでしたわ・・・・」
裸の熊野がシャワールームから出てくる
「ちょっ!?くっ熊野!?」
俺は顔を手で覆った。
「ひゃぁ!?鈴谷!?帰ってましたの!?」
熊野も俺に気付き驚きの声を上げた。
「ごっ・・・ごめん!!鈴谷何も見て無いから!!!」
俺はそう言った。
「ほんとにおかしな方・・・別に女の子同士なのですから良いではありませんか。お父様にあまり他人に裸は見せる物ではないと言われていますが鈴谷はお友達ですから別に恥ずかしい事はないですわ!」
熊野は笑った。流石にこのまま顔を覆ったままだと逆に怪しまれる。俺は恐る恐る顔から手を話す。目前には一糸まとわぬ熊野の姿。胸は今の俺よりも小さくぺったんこ・・・・それに・・・・ん?アレは・・・・!?熊野の股下には見覚えのある物がぶら下がっている。
「くっ・・・熊野!?それ・・・・・」
「はい?なんですか鈴谷。わたくしシャワーに戻りたいのですが・・・・」
それを見られた熊野は一切動じなかった。普通男だとバレれば少なくとも動揺する筈だ。
俺がもし熊野の立場ならそうなっている。
「熊野"も"男だったの!?」
俺は単刀直入に聞いた。
「鈴谷?何を言ってますの?」
熊野はそうすっとぼける。
しかし熊野も男だったとは。そう言う事なら先に言ってくれればこっちも無理に気を使う事も無かったのに・・・でも俺が男だっていってないんだから当然か。このままお互いに男である事を隠すくらいなら俺も熊野に男だって伝えておこう。
そっちの方がお互いに楽になれる筈だ。
「いや何をって・・・熊野男の子だったの?実を言うと・・・・」
俺がそう言いかけた瞬間
「おかしな事言うのね鈴谷。わたくしはれっきとした女ですわよ?」
ん?なにかがおかしい。どう考えても彼女の股にぶらさがっているアレは男の象徴だ。
それに熊野が噓を付いている様にも男である事を誤摩化して足掻いている様にも見えない。
寧ろ俺の発した言葉こそが間違いだと言わんばかりに熊野は首をかしげている。
「熊野・・・女の子にはそんなオチンチンなんて生えてないよ?女の子ならなんでそれが生えてる訳?」
俺はそうさらに踏み込んだ質問をする。すると
「ああこれですの?鈴谷何も知らないんですのね。これは女の人にも生えていて、大人になったら縮んでなくなりますのよ?」
熊野は得意気に言った。
んん?熊野は何を言っているんだ?
彼女の表情には一切の迷いも無くそれこそが真実であるかのようだ。
「えーっとその・・・それはどういう・・・?」
俺は訳がわからなくなり熊野に聞き返す。
「鈴谷あなた本当に知らないんですの?これはお小水をする所で女性は大きくなるに連れてオタマジャクシの尾の様に無くなって行くんですのよ?お父様がそう言っていましたの!」
熊野の親父さんは一体どんな教育をして来たんだ!?もうこれは事実を打ち明けるしか無い!!
「熊野!!そんなのウソだよ!ホラ見て!!鈴谷にも生えてるの!!これは鈴谷が女の子だからとかじゃなくて鈴谷・・・実はもとは普通の男の子だったからなの!!熊野の言ってる事は間違ってるよ!!」
俺はそう言ってパンツをずらしスカートをたくし上げた。そして部屋は静寂に包まれたが
「ふふっ♪」
熊野の笑い声によってその静寂はかき消される。なんで熊野は笑ってるんだ?こんな・・・ルームメイトが実は男だなんて聞いたら驚くだろ?実際俺がいまそうなんだけど。
「鈴谷・・・あなたが男だなんて面白い事を言うのね。そんな冗談に騙されるわたくしじゃありませんわよ!どう見ても鈴谷は女の子じゃありませんこと?大丈夫ですわ。少しわたくしのより大きくて本当に無くなるのかどうか心配かもしれませんがきっと無くなりますから。そんな心配しなくて良いですわよ鈴谷。くしゅん!あらいやですわ。湯冷めしてしまうのでわたくしはシャワーを浴び直して来るわね。」
熊野はそう言ってシャワールームへ向かった。いやまあ・・・ココ以外はそんなもんなんだけど・・・・駄目だ。熊野は完全に自分の事を女だと思い込んでいる。いや話を聞く限り父親にそう"育てられた"ようだ。そんな十数年そんな歪んだ常識の中で彼女は生活して来たと言うのか?そんな彼女に俺は何と言ってやれば良かったのか・・・その時の俺にはわからなかった。