艦シーメールの鈴谷になってとある鎮守府に着任した少年の話 作:ゔぁいらす
「あら・・・?こんな時間にお風呂に入る物好きな子が私以外にも居たのね・・・」
加賀さんはそう言って俺を見つめくる。
ヤバいって・・・早くなんとかしなきゃ・・・私だけじゃなく熊野まで男だってバレちゃう!
俺はとっさに股間を手で覆う。
しかしそれも時既に遅しで
「あなた・・・男だったのね」
加賀さんがそう言った。
やっぱり見られてた!!どうしよう!!もし皆に言いふらされたら・・・・!
『私達の事ずっと騙してたの・・・?』
『二度と古鷹に関わるんじゃねーぞこの変態野郎が!!』
古鷹と加古の軽蔑の視線が俺の脳裏に真っ先に浮かんだ。だめだ・・・せめて秘密にしてもらわなきゃ・・・・
「あっ・・・あの・・・これは・・・」
俺があたふたしていると
「別に私は気にしないから」
加賀さんはそう言った。
「へっ・・・?気にしないって・・・!?それはどういう・・・」
予想だにしない言葉に俺は呆気にとられ、俺は加賀さんに聞き返す。
「だから別にあなたが男だろうがなんだろうか気にしないと言ったのだけれど。それより私はお風呂に入りたいの。そこを通してくれないかしら?」
しかしまだお風呂には熊野が居る・・・ここは退くわけにはいかない!なんとしてでも一旦ここから加賀さんを遠ざけないと・・・!
俺がそう考えていた瞬間
「鈴谷〜まだ服を着ていなかったんですの?風邪引きますわよ?」
そんな熊野がのんきな声と共に浴室から姿を現す。
なんて最悪なタイミング・・・・・こっちの苦労も知らないで・・・いや、でも幸い熊野はバスタオルをしてる・・・!これなら熊野だけでも誤摩化しが効くかもしれない!!足早にここを立ち去らなきゃ!!
「あら?その子は?」
加賀さんが尋ねてくる
「わたくし熊野と申します。よろしくお願い致しますわ」
熊野は頭を下げた。
「この娘が例のもう一人の娘なのね。私は加賀。よろしく」
加賀さんもそう言って頭を下げる。よかった・・・熊野の事は気付かれてないみたいだ・・・!ここはこのまま流れで!!
「熊野ー!!加賀さんの邪魔しちゃ悪いし早く部屋に戻ろー!!それじゃあ加賀さんお先に失礼しまーす!あははははは・・・・」
俺は急いで服を着替え熊野と共に外へ出ようとすると
「ちょっと鈴谷」
突然加賀さんに呼び止められた。
「はいぃ!!」
振り向くとそこには一糸まとわぬ加賀さんの姿があった。
道着を来ているときから主張していたその豊満なバストは道着から解き放たれても重力に逆らうようなハリをしている。
ってそんな冷静な分析をしている場合じゃない!!
「ちょっ加賀さん!?なんで裸なんですか!?」
俺は顔を手で覆う。
「何言ってるの?今からお風呂に入るんだから当たり前じゃない」
そっか・・・そうだった・・・それにしてもやっぱり綺麗な人だなぁ加賀さん・・・俺がそんな事を思っていると
「あなた・・・・明日空いている時間はあるかしら?少しあなたとお話したい事があるのだけれど」
と加賀さんは言った。話したい事・・・!?もしかして男だってバラさない代わりに何かしらの要求をされるんじゃ・・・そうなると断る訳にもいけないし・・・
「は、はい。」
俺は渋々頷いた
「そう。なら明日、弓道場へ来て。それじゃあおやすみなさい」
加賀さんはそう言うと浴場へと入って行った。
はぁ〜なんとか熊野が男だって事はバレずに済んだみたいだ・・・
でも俺・・・これからどうすれば良いんだろう?
そんな俺の苦労を知ってか知らずか
「鈴谷?何をそんなくたびれた顔をしていますの?」
熊野が声をかけてくる本当に呑気な子だ・・・熊野が自分の事を男だって認めればこんな事しなくて済むのになぁ・・・・
でも何で加賀さんは入ってきたんだろう?メンテナンス中の札がかけてあったはずなのに
「よかったですわ!メンテナンス中の札がかけっぱなしになっていましたので外しておきましたの!!外していなければ加賀さんがお風呂に入れない所でしたわね!良い事しましたわ。それにしても夕張さんと明石さんこれを外し忘れるなんてうっかり屋さんだこと」
熊野は得意げにそう言った。
熊野のせいだったのか・・・・・そう考えるとなんかさっきまでの事がばかばかしくなってきた。
「そうだよね・・・ははは・・・・」
俺は呆れてそう言う事しか出来なかった。
初の大浴場突入はこうして幕を閉じたのであった。
その次の日
俺はまた工廠を訪れていた。
「ええー!加賀さんに男だってバレた!?」
夕張は驚きの声を上げた
「しーっ!!声大きいって夕張!!でも別に気にしないって言われて・・・それで話したい事があるから今日弓道場に来いって」
「そうなんだ・・・でもあの人何考えてるかよくわかんないから・・・」
夕張はそう言った。
「夕張は加賀さんとあんまり喋らないの?」
「ええ。あの人あんまり他の人と話さないのよね。それに元々他の鎮守府から転属してきたみたいで他の子と話してる所は見た事無いの。それなのに話したい事があるって鈴谷を呼び出すなんて一体何を考えてるのかしら?まあ他の人にあなたの事を言いふらしたりする人じゃないとは思うんだけど・・・」
夕張は首を傾げた。
「とにかく行くしかないじゃん?今から弓道場行ってくる!」
俺は覚悟を決めて弓道場へと向かう
「終わったら何があったか教えてねー!」
夕張はそう言って俺を見送ってくれた。
その道中また古鷹に出くわす。
「あ〜鈴谷!その後どう?しっかり着けれた?」
着けれた?一体何の事だろう・・・?ああ!あのタンポンとかいうやつの事かな・・・・とりあえず適当に答えておこう。あそこに入れるものなんだからちょっと痛かったりするんだろう・・・うん!きっとそうだ!
「う・・・うん。ちょっと痛かったけどなんとかなったよありがと古鷹!」
「痛かった!?大丈夫?」
古鷹は心配そうに俺を見つめてきた。
だめだ・・・また古鷹を心配させてしまった。なんとかしなきゃ
「う・・・うん!ヘーキヘーキ!今は気持ちいいくらいだよー!」
これで大丈夫・・・だよね?
「気持ち・・・いい?そう・・・それなら良かった。私もあげた甲斐があったわ。またわからない事があったら聞いてね。私が力になれる事なら力になってあげるから」
古鷹はそう言って笑った。すると
「おーい古鷹ー!」
遠くから声が聞こえる
「あっ、加古!どうしたの?」
その声の主は古鷹といつも良く一緒に居る加古だ。
「おお古鷹、探したぜー。おっ、鈴谷じゃん。古鷹から聞いたぜー生理キツいんだって?色々大変だろ?」
これは面倒な事になった。ここでまた変な事を言ったら最悪俺の事バレちゃうかも・・・
「う・・・うん。大変なんだー」
俺はそう話を合わせる
「そうかー。辛いときはいつでも言ってくれよな!アタシも手助け出来る事ならしてやるからさ!!」
加古は笑顔でそう言ってくれた。
かっこいい人だなぁ・・・かっこいい!?俺・・・今なんて!?いや・・・あくまで女の人としてかっこいいなって思っただけで・・・
俺がそんな事を考えていると
「ん?どうした鈴谷?顔赤いぞ?熱でもあるんじゃないか?」
おもむろに加古が俺の額に手を当て顔を近づけてきた。
「ひゃっ・・・・!」
ちっ・・・近い・・・!それにひゃっ・・ってなんだよ!?なんで俺こんな情けない声出してんだ!?
「うーん・・・熱はないみたいだな。でもまだここにきて間もないんだから身体だけは気をつけろよな!」
加古はそう言って俺の頭をぽんぽんと優しく撫でて笑った。
はぁっ・・・加古様・・・・・って何この感情・・・俺・・・もしかして心まで女の子になってきてる!?いや・・・加古は女の子なんだしそんなことは・・・あくまで俺は男として加古をかっこいい女性だって思っただけで・・・
俺は自分にそう言い聞かせる。
「それにしても古鷹酷いよなーアタシいつもナプキンなのに間違えて買ってきちまってさー鈴谷はナプキン派だよな?」
加古はそう聞いてきた。
「えっ!?ええ!?鈴谷・・・まだ着けたばっかりでわかんないかな・・・」
私はやんわりとそう返した。
「んーそうか?あんなモノアソコに入れて生活するなんて考えただけでも気持ち悪りぃよなぁ?」
加古は言った。
「もー出撃とかでおトイレ行けなかったりするしあっちの方が便利なんだってばー!!」
古鷹は加古に言った。
「あーはいはい。その話は前聞いたからさー」
2人は言い合いを始めてしまったので俺はそのどさくさに紛れてその場を立ち去った。
そして弓道場の前にたどり着いた俺は
「とにかく・・・落ち着いて・・・・」
呼吸を整え覚悟を決めた。
「たのもー!!」
そんな勇ましい一言とともに俺は弓道場へと足を踏み入れる。
するとそこでは前に来たときと同じ様に加賀さんが1人で弓を射って居た。
そして加賀さんはこちらに気付いたのか弓を構えるのを止め
「あら、ずいぶんと仰々しい挨拶をするのね」
そう言うと弓を片付け
「まあそこに座って」
弓道場の隅に座布団が置いてあり、そこに俺は通された。俺がそこへ座ると加賀さんは黙って俺の目の前に座り、俺をただじっと見つめてくる。
一体何をされるんだろう・・・・
俺はそんな不安と沈黙を破る様に
「そっ・・それでお話ってなんなんでしょうか・・・?」
と話を切り出した。
すると
「ええ。あなた男なのよね?」
加賀さんはそう尋ねてきた。今更誤摩化しても意味は無いし
「はい・・・・」
俺は正直に頷いた。
すると
「そう。色々大変でしょう?」
加賀さんはそう言った。
「は・・・はい」
あれ?俺もしかして心配されてる?
そして次に加賀さんの口から発された言葉は驚くべき言葉だった。
「実は私も昔はそうだったの」
え?俺はそんな言葉に耳を疑う。
昔は?昨日裸を見たときは良く見て無かったけど確かに加賀さんにアレは生えていなかった。
一体どういう事なのだろうか?俺が呆気にとられていると
「ごめんなさい。いきなり言って驚かせてしまったわね。私も昔は男の子だったの」
私は突然の事に言葉を失った。一体どういうことなのだろう?
「えっ!?それはどういう・・・?」
俺は尋ねる。
「私、最初は戦艦の艦娘になる予定だったの。でも施術が終わった後に戦艦を減らすという方針が打ち出されて急遽私を艦娘にする施術は途中でストップしてしまったの。その時の私はもうただの人でも艦娘でもない中途半端な存在になってしまって・・・もう後戻りも出来なくなって私は懇願したの。戦艦じゃなくても良いからとにかく僕を艦娘にしてくださいって」
加賀さんはそう続けた。
「それで・・・どうなったんですか?」
「その時私にはもう一隻適合する艦娘がいると言われたの。それが空母の加賀。でも既に戦艦になる様に施術され始めていた身体で艦種の変化にはとても負担がかかるし前例も無いから何が起こるかわからないと言われたの。でも私にはもう戻る場所も何も無い。結局私は頷く事しか出来なかったわ。そして目が覚めたら私は晴れてこの身体になっていたの。でもこの身体になって数ヶ月は私の身体を突然激痛が襲ったりもしたわ。後で聞いた所によれば艦種が大幅に変わった事による副作用という事だったのだけれど・・・」
加賀さんはそう言った。そんな事が・・・・でもなんでそれを俺に話してくれたんだろ?
「なんでその話を私に?」
俺は加賀さんに尋ねた。
「それはあなたが男の子だからよ。それにいつも熊野・・・だったかしら?あの子と仲良さそうにしているのを見かけたから・・・私はもう身体は女性だから何も心配する事は無いけれど男の子の身体のままだと色々大変でしょう?それに女の子と同室なんだから尚更・・・だから私が元男としていつでも相談に乗ってあげる。だから困った事があったらいつでもここにいらっしゃい。それが言いたかったの。それに・・・私も話し相手が欲しかったから・・・・」
加賀さんは恥ずかしそうに言った。
よかった。熊野の事は気付かれていない様だ・・・それに冷たそうな人だと思ってたけど結構面倒見の良い人なのかもしれない。
「はい!よろしくお願いします!」
俺はそう笑顔で返す。
すると加賀さんは静かに微笑んだ。
その時加賀さんの笑っている所を初めて見たかもしれない・・・こんな顔するんだ・・・正に聖母と言った様な微笑みだった。それにしても元は男だった事なんか微塵も感じさせないなぁ・・・
それから俺は加賀さんと好きだったアイドルの話や中学生の頃の性の目覚めの話なんかのたわいもない会話をして、そんな話も一段落し俺は自分の部屋に戻る事にした。
「それじゃあそろそろ帰りますね。練習をあんまりお邪魔しても悪いですし熊野を放っておくと何しでかすか分からないですから」
俺がそう言うと
「そう、残念。また・・・来てくれる?」
加賀さんは少し残念そうに尋ねてくる。
ここまで好意的にされたのだから断る理由も無い。
「はい!わかりました!また来ます」
俺がそう言うと
「そう・・・それじゃあまた・・・来てね・・・あっ、私が元男だって事は2人だけど秘密にしておいてくれると嬉しいわ」
加賀さんはまた微笑んでそう言った。
加賀さんも俺の事黙っていてくれるんだから俺もそれくらいしなくっちゃ・・・そう心に決めた。でも夕張になんて言おう・・・・?
そんな事を考えながら弓道場を後にして俺は部屋へと戻るや否や突然熊野に詰め寄られる
「すーずーやー!!!」
「どっ、どうしたの熊野!?」
一体何をしたというのか?急な事で何故熊野が怒っているのか分からない。
「古鷹さんに聞きましたわ!たん・・・ぽん・・・?という物を貰ったらしいですわね!!それがあれば古鷹さん達とお風呂に入れると聞きましたの!!そんなものを独り占めするなんてズルいですわ!!それをわたくしにも渡してくださりませんこと!?ところでせいり・・・?とは一体なんなんですの!?おーしーえーなーさーいー!!!」
熊野はそう言って俺の肩を揺さぶった。
なんて説明すれば良いんだろう・・・・
「あーえっとそれはー・・・」
まだまだ俺の悩みの種は尽きそうにない。でも加賀さんに励まされてまだなんとかやっていけそうな気もしてきた。
「早く教えなさーい!!」
「あーそれはね・・・」
俺はいつもの様に適当な噓を付いて熊野を軽くあしらった。
それから熊野に悩まされつつも出撃任務や演習等をこなしていき、艦娘としての生活にも慣れてきてしばらくした頃、突然熊野と俺は提督の元に呼び出された。
「改装・・・ですの?」
提督の言う事には俺と熊野は練度が上がったので改装をする計画が出ているから工廠へ向かう様にとの事だった。
改装・・・一体これ以上何をされると言うのだろうか?でも改装するのも夕張と明石みたいだしそこは安心かな・・・
そんな楽観視をして俺と熊野は提督に言われた通り工廠へと向かった。