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「なんか知らないけど俺のミスでお前が死んじゃったみたいだわ」
「……はい?」
朝目が覚めたら俺は背景が真っ白な世界に炬燵だけが置いてあるよく分からない空間にいた。
あれ?俺昨日ちゃんと自分の部屋で寝たよな?あ、昨日飲み会だったから変なとこで寝たのか?
困惑していたらいつの間にか炬燵に入ってた自称神様っていうおっさんに「お前は死んだ」って言われました。
え、いつの間に死んだの?
てか神様こんなてきとーな感じでいいの?
混乱していた俺に説明した神様曰く、俺が寝てたアパートの隣の部屋が火事になってなぜか俺の部屋の火災報知器だけが作動せず、たまたま俺が目を覚まさずにそのままお陀仏……だそうだ。そうなった理由は神様が部下たちと麻雀やってて負けた腹いせだとか……
「おいこらふざけんな!?」
「いやー悪い、まさか人が死ぬとは思わなくてさ」
「そういう問題じゃないだろ!!」
自分がムカついたからって関係ない人間を不幸にするなよ。てか神様って麻雀するんだ。「神様が」って考えたらおかしいけど「目の前のおっさんが」って考えたら何ら不思議じゃない。そこらへんにいそうなおっさんだもん。
「悪かったって、だからこうしてここに呼んだんじゃん」
「……ここに来たからって何かあるのかよ」
「麻雀ができる」
おっさんがそう言った瞬間、炬燵が全自動麻雀卓に変わった。
「ふざけるなよ!?」
何でこんなよく分からない空間に来てまで麻雀しなくちゃいけないんだよ。いや、麻雀は好きだよ?でも普通この展開って、「お前の好きな世界へ転生させてやろう」とかそういう流れになるだろう。てか面子足りてないじゃん。
「心配しなくてももうちょっとしたらあと2人来るから」
「準備万端かよ!?てか誰が来るんだよ」
「営業課長と経理部長」
「………」
ここの世界観が全く分からない。
「お疲れ様でーす」
「神様来たぞー」
「おぉ来たか!!」
「来ちゃったよ」
「外回り行くって言って来てるからさっさと始めようぜ」
スーツ姿のおっさん2人が何もないところから急に現れた。さっき言ってた営業課長と経理部長なんだろう。……この人達会社員なの?
なんかよく分からないけどとりあえず一局だけ打とう。
「ツモ!!」
そう言っておっさん(神様)は牌を倒す。
「九蓮宝燈、役満だ」
「また役満かよ」
「お前いい加減力使ってイカサマするのやめろよ」
「だって負けたくないんだもーん」
「………」
駄目だこいつ。こんな奴が神様でこの世界って大丈夫なのか??さっきから神様の力とかなんかでイカサマしまくってあがりまくってるんだが……。営業課長も経理部長ももうお手上げだって顔してるし。てか何でこんなにイカサマして昨日負けたんだよ。
「さぁさぁ次つgぶべぇらぁぁぁぁ」
次の対局に進もうとしていたおっさんが急に吹っ飛んでいった。何が起きたか分からなかったが、おっさんが吹っ飛んだ逆の方を見るとスーツを着こなしたサラリーマン風の男性が立っていた。いかにも仕事ができる敏腕サラリーマンのようなその人がおっさんを思いっきりぶん殴ったようだ。
「また仕事をほったらかして麻雀していたんですか!!昨日あれほど言ったでしょうが!!」
「い、いやぁ、ちょっとぐらいいいかなって」
「あなたはちょっとって言いながら何時間もやるでしょうに!!そして何故連れてきた人にまで麻雀させてるんですか。早く転生させてあげてください。次が控えてるんですから」
「いやだってさ、たまたま麻雀分かるやつだったからさ…」
急に目の前で説教が始まった。しかも神様が説教されている。普通神様って最も偉い存在じゃないの?いや、でもこのおっさんが1番偉いっていうのは無いな。てか次って俺以外にも死なせたのかこのおっさん…
「申し訳ありません、この馬鹿が無能なあまり」
「い、いえ」
「申し遅れました、私そこにいるゴミグズの秘書をしている者です」
「あ、はい…よろしくお願いします」
しばらくおっさんが説教されているのを見ていたら、敏腕サラリーマン改め秘書さんが俺に声をかけてきた。一応の上司であるはずの神様をボロクソに言ってるのは気にしないでおこう。
「どこまで説明を受けていらっしゃるのか分からないのですが、あなたにはこれから別の世界へと転生させてもらいます。この説明はお聞きになられたでしょうか?」
「……まだ死んだってこととその原因だけしか」
「………」
無言でおっさんを睨む秘書さん。おっさん正座してるよ。
「あまり時間に余裕が無いので手短に説明させていただきます。これから転生していただく世界と、貴方に付加される能力等は基本的には自由に決めることができます。ですが先ほどお伝えしたように時間に余裕がありませんので、それらの設定を早急に決めていただく必要があります」
ここで俺は困った。転生したい世界の候補がありすぎる。あと秘書さん曰く麻雀してたせいで転生可能な制限時間まであと僅かだそうだ。ほんとおっさん何やってんだよ。
俺がうんうん唸って悩んでいると秘書さんが紙を数枚とペンを取り出して渡してきた。
「もし候補がありすぎて決めきれないようでしたら、この紙にそれぞれ条件を書いて頂いて、シャッフルして神がランダムに選んだ世界へと転生してもらうという形はいかがでしょうか?」
「あぁじゃあそれで」
ということで俺は急いで転生したい世界とそこでの自分の能力や状況などを書いていった。
「じゃあこれで」
「では今からあなたは転生します。目の前が真っ白になり意識を無くすと思いますが、次に目が覚めたときは転生後の世界となっています」
いよいよ転生らしい。
説明してもらってる秘書さんの後ろでは、神様が俺を転生させるために目を瞑って集中している。転生するのがどの世界になるのかはこの後分かるらしい。神様が俺が書いた紙の中から1枚を選んでその内容を俺に見せた瞬間に転生が始まるのだとか。
正直この神様に自分の今後を任せるのは不安しかないが仕方がない。
「じゃあお願いします」
俺の言葉を聞いた神様が紙に手を伸ばす。
「あぁ最後に私から一言。転生後の世界ではこの馬鹿神のやる気と調子によって幸不幸が左右されますのでお気をつけください」
「え、なにそれ聞いてな……」
俺が言い終わる前に目の前が真っ白になっていき、そのまま意識は無くなった。
意識が無くなる直前に見えた、神様が手に持っていた紙にはこう書いてあった。
インフィニット・ストラトス
目を開けたら知らない天井が目に入った。どうやら転生は成功したようだ。ゆっくりと起き上がり周りの状況を確認する。
まず、自分の体。転生前20代だった俺の体はおそらく小学校低学年当たりまで縮んでいた。
某名探偵の「目が覚めたら体が縮んでしまっていた!?」をまさか自分が体験するとは思わなかった。まぁ世界から変わってるんだけど。
次に今いる場所。見渡した限りどこかの家の和室の布団で寝かされていたようだ。辺りを見渡しながら、さてどうしようかと考えていると、部屋の襖が開き人が入ってきた。
「あら、目が覚めたのね」
「よかった」
部屋に入ってきたのは水色の髪の2人の少女だった。そしてその少女達は見覚えがあった。記憶している2人より幼いが見間違うわけがない。
「正門の前で倒れているのを見つけた時はほんと驚いたわ」
「でも、何ともなさそうで良かった」
目の前にいるのはどう見ても更識姉妹だ。しかもロリバージョン、いや別にロリコンってわけじゃないけど、凄いレアなものを見た気分になる。
俺がこの世界に転生するのに付いてくる条件の1つが"更識姉妹と面識を持つ"ということだったが、まさか目が覚めて初めに出会うのがこの2人だとは思わなかった。あのおっさんも何だかんだでちゃんとした神様だったんだな。
「ところで、貴方名前は?」
「どうして倒れていたの?」
楯無――あ、この時はまだ刀奈か――と簪からそれぞれ質問される。
ここで俺は困った。どう説明すればいいのだろうか。
名前は自分の名前を言えば良いけど、倒れていた理由をどう説明するか……。馬鹿正直に、転生してきましたなんて言えば精神科に連れて行かれるだろう。
さてどう説明しようかと考えていた俺は、とりあえずこう答えることにした。
「名前は
「「え?」」
とりあえず記憶喪失でこの場をしのぐことにした。
麻雀はこの作品に全く関係ないです。
ただ神様が好きだっただけ。