どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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お待たせしました。


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教室に乾いた音が響き渡った。一夏がラウラに平手打ちを喰らったのだ。それはもう、ほんと良い音したよ。

そして俺は頭を抱える。多分この初期のラウラが一番面倒な存在なんだよな。今もいきなり殴られて文句言ってくる一夏に対して逆に罵詈雑言で返してる。

俺が項垂れているのを見て、いろいろと察した本音は苦笑していた。そして最低限聞こえる声で「……どんまい」と言ってきた。あの野郎……。

 

 

その後も、流石の一言だった。休み時間とかは話しかけるなオーラを出して人を近づけさせず、誰とも話そうとしなかった。一夏に対しても言いたいことは言えたようで、それ以降は眼中になかった。いや、たまに睨んでたけど。

シャルロットはシャルロットで細かい仕草とかが女子丸出しだし、逆になんで気付かれないのかが不思議なレベルで女の子やってるし……。

 

色々知ってる俺は、無駄にハラハラしながら1日を過ごした。

 

 

放課後、ラウラはさっさとどこかに消えて、一夏達は特訓するとかでアリーナに向かった。俺も誘われたが今日はパスした。昨日連絡したタッグマッチでの簪の訓練機の武装のことで、彩さんがさっそくパッケージを持ってきてくれたので、調整することになった。

本音を言えば、ヒロイン達からの圧が凄いので行きたくないという理由が大きい。一夏達の特訓についていくと、何故か一夏は教え方が上手くない俺にばかり聞いてこようとする。そのたびにヒロイン達が敵意剥き出しで睨んでくるからやりにくくて仕方がない。といってもセシリアは理論的すぎるし鈴はアバウトすぎるから、俺と比べてもどっこいどっこいなんだけど。

その点で言えば、シャルロットの加入は俺の負担を軽減してくれた。それに関しては感謝している。

 

 

一夏とシャルロットが並んで歩く姿を後ろから睨みつけながら付いていく箒・セシリア・鈴を見送って、俺も簪と合流するために移動した。

 

 

 

 

移動中に彩さんから学園に着いたとの連絡が来たので、先に彩さんを拾うことにした。昨日連絡したときに、学園に付いたら正門のところで待っておくように伝えた。IS学園の敷地面積はかなり広く、建物も校舎や寮、アリーナなど様々にあり、始めて学園を訪れた人が気軽に立ち入ると即座に迷う可能性が高い。

なので、俺は彩さんに伝えたのだ、正門で待機していてほしいと。

しかし、俺が校舎を出て正門へと向かおうとしたのだが、なぜかそこには彩さんが立っていた。そして、隣には疲れ果てた豊の姿もあった。

 

 

「昨日、正門で待っててくださいって言いましたよね?」

「いやぁ、大丈夫かなと思って」

「結果は?」

「見事に迷いました☆」

 

だろうよ。この人ちょっと方向音痴なところあるから、学園が広いの抜きにしても絶対迷うと思ったんだよ。

けど、迷ったのならどうしてここまで辿り着けたのだろうか?

そう疑問に思った俺に、豊が代わりに答えてくれた。

 

「彩さんが歩いてた学生に声をかけて道を聞いたんですよ。まぁ話したのはほとんど僕でしたけど」

「うん、豊お疲れ。あとドンマイ」

 

華さんと彩さんは、さすが研究者というか何というか、話が噛み合わないことがよくある。ある意味でコミュ障だ。さすがに篠ノ之束ほど酷くはないが、初対面の人がコミュニケーションを取るのはなかなか難しいことが多い。俺も初めて会ったときは苦労した。

そして、豊は極度の人見知りである。コミュニケーションは取れるのだが、初対面の人と話すことを極力避けるようにしている。あと、本人は初対面の人、特に女性と会話をすると極度に疲れるらしい。現に今、豊は疲れ果てている。恐らく、彩さんの手伝いということで渋々連れてこられたのだろうが、本人からしたら来たくはなかっただろう。同年代の女子で豊が普通に話せる相手なんて簪と本音ぐらいだ。刀奈と虚ですらまだちょっと避けてるところがある。

 

 

整備室の途中にあった自販機で豊にジュースを買ってやり、二人を連れて簪の元へと向かった。

 

 

整備室に入ると、そこには簪に本音、あと刀奈の姿があった。本音はいるだろうと思ったけど、刀奈がいるのは予想外だった。

 

「あれ、刀奈は生徒会のほうじゃなかったのか?」

「昨日翔平が今日の分もやってくれたおかげで量が少なかったの。虚ちゃんがやってくれるから私はこっちに行っていいって言ってくれて」

「なるほどね」

 

原作と比べて刀奈のサボりグセはかなり解消されている。俺が仕事を手伝ってるのもあって、途中で逃走したりすることはなかった。なので、虚も1日ぐらいはサボっても見逃すようになっている。

というか、俺がいない時点で作業効率はかなり落ちる。虚もこの前そう言っていた。

 

「さて、じゃあぱっぱとやっちゃおうか」

 

彩さんの一言でそれぞれが作業に取り組む。と言っても、俺と刀奈と本音は蚊帳の外だ。ところどころのサポートはするが、ほとんどは彩さんと簪の2人でセッティングを行なっていった。時折タッグを組む俺との意見交換も交えつつ、パッケージのインストールは無事に終わった。最後の方は本音はやる事がなくて暇になったようで、どこからか持ってきたお菓子を食べながらやる気のない声援を簪に送っていた。

 

 

「よし、これで終了ね。そのタッグマッチが終われば弐式に組み込むよう設定し直すから」

「い、いえ!!それぐらい自分でやるので」

「いーよいーよ。さっき私のやりやすいように設定しちゃったからちょっと面倒臭いと思うから私がやるよ。最近ちょっと暇してるからちょうどいいや」

「そうなんですか……。ありがとうございます」

 

程なくしてセッティングが終了した。流石に彩さんがいると作業が早い。もっと時間がかかるかと思っていたが、あっという間に終わってしまった。そのため、この後やる事が無くなってしまった。ここ最近は生徒会の方が忙しくバタバタしていたのだが、その分仕事もきっちり処理していたために、久しぶりの放課後の空き時間となった。生徒会室に行って虚を手伝おうと思ったら、さっき虚から連絡があって今日の仕事は終わったのでこっちと合流するらしい。あと本音はどこかに消えた。暇すぎてクラスの女子のところにでも遊びに行ったんだろう。従者が主人ほっといてどこかに行くこと自体おかしいのだろうが、今に始まった事じゃないのでもう気にしない。

どうするか……と考えていたところ、彩さんが手を挙げて口を開いた。

 

「私この学園の中を見て回りたいな」

「ひえぇ!?」

 

彩さんの言葉に豊が驚きの声、というよりほとんど悲鳴をあげた。そりゃそうだろう。学園内を見て回るということは必然的に学園内を歩き回るということになる。ということは学園の女子生徒に会うことも当然あり得ることで、学園内では珍しい男が歩いていれば当然女子生徒が興味を持って話しかけてくるだろう。豊にとっては間違いなく地獄だ。

 

「彩さん、流石に豊が可哀想です」

 

俺と同じ考えに至ったであろう簪が、豊に同情の視線を向けながら彩さんに言った。今この整備室は俺たち関係者しかいないが、豊としてはここから出たらならばすぐさま出雲に帰りたいはずだ。

 

「じゃあ、豊君は先帰ってていいよ。私は残って案内してもらうから」

 

すでに案内してもらうことは決定事項らしい。まぁ構わないけど。

となると誰が彩さんを案内し、誰が豊を駅まで送り届けるかを決めなくてはならない。彩さんは「豊君1人で大丈夫でしょ」と言っていたが豊は即行で首を横に振っていた。豊1人で駅まで歩いたら、話しかけてくる女子から逃げて学園内で迷う姿が容易に想像できた。

結局彩さんの「じゃあそこのバカップル、案内して。簪ちゃんは豊君をお願い」という言葉で、俺と刀奈、後から合流する虚が彩さんを案内して、簪が豊を駅まで送り届けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「彩さん、わざとあの2人だけにしたでしょ?」

「あ、やっぱ分かった?」

 

簪と豊が歩いて行くのを見送り、俺は気になってたことを彩さんに聞いた。隣の刀奈もうんうん頷いている。彩さんの返答からして、俺たちの予想通りだったらしい。

 

「だってさー、あの2人もちゃっちゃと引っ付いちゃえばいいと思うんだよねー」

「まぁそれに関しては同意します」

 

簪と豊は、まぁいわゆるお似合いのカップルに見えるというやつだ。俺と刀奈の話で最近はうやむやになってるが、"あの2人も早く付き合えばいいのに"という気待ちは、更識・出雲の共通認識だ。

側から見てると、どう考えても両想いなのだ。お互い人見知りなのだが他の人に対しての時と比べて2人の距離は近いように思える。何かと2人でいることも多いし。というか、今の豊を見ていると付き合うとしたら簪としかあり得ないと思う。

 

「先に言っとくけど、君は人の事言えないからね」

「あ、はい」

 

彩さんに突っ込まれた。もういいじゃん。今は刀奈と付き合ってるんだからさ。告白までかなり時間がかかったことは認めるけど…。

 

 

現在更識・出雲では「あの2人がくっ付いたんだから、簪と豊も引っ付けてしまおう」と一部の人が考えているらしい。主に動いてるのは目の前の天才科学者(アホ)とその双子の姉なんだが。

 

「で、豊はどんな感じなんですか?」

「全然ダメ。あの子自己評価低すぎるのよ」

「やっぱりですか…」

「昔の簪ちゃんも低かったけど、豊君は簪ちゃん以上なのよね」

 

原作と比べて姉と自分を比べることが少なくなり、マシになったとは言えやはり簪の自己評価は低い。だが、それ以上に酷いのが豊だ。原作の簪より酷い。だから恐らく簪と自分が付き合えるとは思えないのだろう。最近、俺が話を聞いたところ簪が好きだということは自覚しているようだ。けど、そこからどうすれば良いのか全く分かってなかった。俺が「告白しろよ」って言ったら即答で「無理です」と言われた。ついでに「翔平さんに言われたくないです」とも言われた。うん、何も言い返せませんでした。

 

結局は、簪が告白しちゃうのが一番手っ取り早いのかもしれない。豊はそもそも簪が自分のことが好きなはずないって思ってるみたいだし。

 

 

 

さらっとだけ学園内を彩さんに案内して、合流した虚も入れた4人でどうすればあの2人を引っ付けることができるかを話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「かんちゃん、ゆーくんとの関係について一言」

「ノーコメントで」



おかしい、話がなかなか進まない。
京子さんの墓参りのところを早く書きたいのに……。

最近原作関係なく翔平と刀奈の日常をだらだら書きたいなぁと思ったりしてます。
しばらくは原作に沿って書いて行くと思うけど。


まだ忙しい時期が続いてるので次の投稿も遅くなると思いますが、気長に待っていただけたら幸いです。

感想評価等よろしくお願いします。

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