……作者は原付しか乗れません。
「さて行くか」
「そうね」
迎えた週末、刀奈とのデートの日。
俺と刀奈は準備を整え、部屋から出た。
別にわざわざ時間をずらして待ち合わせて行くわけでもなく普段と同じように2人揃って出発した。強いて違う点を上げるとしたら制服じゃなくて私服ってところか。
今日の刀奈は白のブラウスに水色のカーディガンにデニムのパンツというコーディネート、俺が白のTシャツにグレーのジャケットにネイビーのパンツというコーディネートだ。
刀奈は普段はスカートとかワンピースを着ることも多いのだが、今日は訳あって控えている。
その訳というのが、今日のデートの移動はバイクを使うことを予定しているからだ。
俺がいつバイクの免許を取ったのかというと、16歳の誕生日を迎えて速攻で取った。
といっても、その前から更識の任務で乗ってたのもあって試験は簡単に通った。前世で普通車免許持ってたから学科試験もある程度復習すれば余裕だったし。
別に免許を取る必要は無かったんだけど、任務でバイク乗ってるうちにプライベートでも乗りたいと思い始めたから取ることにした。
まぁ一番の理由は葵さんが、息抜きにでもと言って免許の取得費用を出してくれたことかな。
さらに藤丸さんがバイク買ってくれたし。バカ姉妹がそのバイクを魔改造しようとしたのには焦ったけど……。
最高速300キロのバイクなんて何に使うんだよ。俺に死ねっていうのか??
そんな訳で無事に免許を取得してバイクも手に入れて、プライベートでちょくちょく乗ってたんだけど、それを影で羨ましそうに見てたのが刀奈だった。影、というのは俺が知らなくて簪が教えてくれたからだ。
俺がバイク乗ってるのを見て興味が湧いたらしいが、残念ながら時間が無くて免許を取る余裕がないらしい。
そんな中で、先月俺が免許を取って1年が経ったので2人乗りが可能になった。
それからは日用品を買いに出かけたりするときは、刀奈が後ろに乗って出かけるようになった。
「やっぱり気持ちいいわね。私も免許欲しい」
バイクでの移動中、後ろから刀奈が話しかけてくる。
ちなみに走行中でも話ができているのは、お互いのヘルメットにインカムを取り付けているからだ。
「夏休みに何とか時間作って合宿で取るか?」
「スケジュールを考えると難しいわね……」
「まぁ、そうだよなぁ……」
楯無としての仕事量を考えると、そう何日も時間は作れない。こればっかしは仕方ないか。
実は俺も大型二輪を取ろうかと模索しているが、難しいだろう。
そのうち刀奈と2人で取りに行くかな。
「まぁ私は今はこのままでいいわ」
「そうか?」
「だってこうして翔平の後ろに乗るのは好きだもの」
そう言って胸を俺の背中に押し付けてくる。
こいつ、分かっててやってるんだよな。ご馳走様です。
「…そうかよ」
「あ、照れてる?」
「うっせ」
「やっぱ照れてるじゃない、可愛い」
顔を手で覆いたいが、運転中のため適わない。後ろの刀奈に見られないだけマシか。
原作より頻度は少なくなってるものの、時折こうやってからかってくるのは相変わらずだ。
とは言っても相手が本当に嫌がることはしないのでそこは助かる。
今も抱きつかれたら俺が運転がしづらいことが分かっているので抱きついてきたのは一瞬だった。
そんなこんなで、割と時間かけて学園からそこそこ距離の離れた大型商業施設へとやってきた。
学園に近いレゾナンスでも良かったけど、あそこだと十中八九学園の生徒に見つかるので、タンデムを楽しむついでにこっちの施設にやってきたのだ。
目的としては夏物の服と水着を買うためだ。
今度俺が臨海学校に行く、という事で俺が水着を持っていないことが判明し、今日買いに来たのだ。
最近色々と立て込んでいてゆっくり買い物も出来ていなかったので、ひとしきり色々と片付いた今に、デートついでに買っておこうということになった。ちなみに、今日買った商品は更識の本家に郵送してもらう予定だ。
「さて、何から行こうか」
「ひとまず水着から見ちゃいましょう」
「了解」
刀奈に言われ、2人で水着売り場へと移動する。
「刀奈も水着買うのか?」
「考え中。一応去年買ったやつがあるけど、気になるのがあれば買おうかしら」
2人で話しながら歩く。
今日来ているのがかなり規模の大きい商業施設なだけあって、他の客も多いのだが、すれ違う人達からの視線が凄い。主に男から放たれる鋭い視線が。
『リア充死ね』という顔をしている。
まぁ隣の刀奈が手を繋ぐ通り越して腕組んできてるのが原因なのは分かりきった事だけど。
俺だってもし彼女いなくて目の前にこんなカップル現れたら間違いなくムカつくし睨むだろう。
ちなみに、今日は俺は一応の変装はしている。普段の眼鏡がサングラスになってるだけだけど。
ベンダバールの待機形態は普段は見た目普通の眼鏡なのだが、変装用としてサングラス状にもできる無駄な機能を持っている。いや、更識の立場的に物凄く助かってるんだけどさ。
今日はそのサングラス形態にしている。
一夏よりはマシだが、俺も一応世間から見れば2番目の男性操縦者な訳で、当然世界のニュースで俺の顔も放送された。
連日報道されていた一夏よりかは知名度は低いが、俺も変装も何もなしに歩いていると、結構騒ぎになったりする。
今日はデートなのだからそれは嫌、というわけで気持ちだけの変装をしている。意外とサングラス1つでバレないものなのだ。
周りの人からの羨ましそうな目線と、一部男からの殺意が困った視線を受けながらも、俺と刀奈は無事に水着売り場へと到着した。
「さて、じゃあ早速選びましょうか」
「そうだな。でも、ただ自分のを選ぶのもつまらないような……」
「じゃあ、私が翔平の水着を選ぶから翔平は私の水着を選んでよ」
「OK、そうしようか」
刀奈の提案を受け入れる。
ついさっき言ってた、"気になるやつがあれば買う"という考えは既に消えたらしい。
っていうか俺が入学した日も水着持ってたじゃん。あれじゃダメなわけ?
「じゃあ私翔平の水着探してくるから、後で合流ね」
そう言って男性用の水着売り場の方へ行こうとする刀奈。
当然男性用と女性用は売り場が別なわけで、別行動で水着を探すとなると俺は1人で女性物の水着売り場へと入らなくちゃいけなるわけで………。
「いやいやいやいやいや」
俺は慌てて刀奈を引き止める。
男1人で女性物の水着売り場とかハードル高すぎる。絶対変な目で見られるだろ。
「俺1人で女性物の水着売り場に入れって言うのか!?」
「ふふっ、冗談よ」
舌を出して悪びれる様子もなく言ってくる。くそっ、可愛いじゃないか。
それにしても、今日の刀奈はやけに機嫌がいい。
今みたいにからかってくる事が多い時は大抵機嫌がいいが、その中でも今日は相当だ。
「今日はご機嫌だな」
「だって、私達付き合い出してちゃんとしたデートは初めてよ」
「確かにな。生活品買いに行ったりしたプチデートは何回かあったけど」
かれこれ付き合い始めて2ヶ月以上経っているが、休日に1日時間を取って出掛けることが出来たのはこれが初めてだ。
というよりも、1日休日を作れたのが今日が初めてだ……。
どこのブラック企業だよ。仕方ないけどさ。
「虚に感謝しないとね。お土産買って帰らないと」
「簪にもな。本音は……どうせ何もやってないだろうから別にいいだろう」
今日俺たちがデートに来れたのは虚や簪が気を遣ってくれたらだ。生徒会の刀奈や俺にしか出来ない仕事は、昨日までと明日以降に割り振って何とかしたのだが、今日も処理しないといけない仕事はある。それを今日は虚と簪と、もしかしたら本音がやってくれている。
ほんと、有難い。
「刀奈の水着から選ぶか」
「お願い」
まずは刀奈の水着を選ぶために、女性物の水着売り場に2人で入る。
施設の規模が大きいので水着売り場も広く、時期が時期なだけに店頭には様々な水着が並んでいた。
色々並ぶ水着を適当に見ていく。こういうのは見ている中で目に付いた物を選ぶのが1番だ。
と言っても、初めから見ているのはビキニだけなんだけど。
その中で、1組目に付いた水着があった。
「これかな」
「あら、いいじゃない」
水色をベースに白のラインが入っている、シンプルな水着だった。
やっぱり刀奈といえば、水色とかの青系のイメージだな。本人も好きな色って言ってたし。
「凄いシンプルなデザイン選んだけど良いのか?」
「翔平が選んでくれたから良いんじゃない。それに、派手な水着は私も着たくはないわ」
「そういうものか」
「そういうものよ。あ、これパレオもセットで付いてるのね」
どうやら気に入って貰えたようだ。
「じゃあ買ってくる」
「よろしくね」
刀奈から水着を受け取り、俺はレジへと向かう。
俺と刀奈が付き合い始めた頃、会計になるといつもお互いが自分が払うと言って埒が開かなかった。
それからはその日その日でどっちが払うかを順番にしていこう、ということになった。今日みたいに買う物が多かった場合は午前午後で分けたりする。
ちなみに、2人とも更識で肩書きを背負ってることもあってそこそこの貯金がある。そもそも、更識家自体が結構な金持ちなのだ。
更識邸も自分達の生活スペースは自分達で掃除していたが、それ以外は基本的には雇っていた家政婦さん達がやってくれていた。
更識家の財政面の管理は以前は京子さんが担当だったが、今は葵さんが行なっている。刀奈は楯無を襲名したものの歳が歳なので、流石にまだ任されてはいない。ただ、学園を卒業する辺りで刀奈に任せるか、または虚に任せるか、と言った話が浮上している。恐らくは虚がやる事になるかな。
ちなみに、槍一郎さんはそっちの扱いは全くだ。京子さんが見兼ねて担当になったって話を昔聞いた。
会計を済ませて戻ると、刀奈は水着売り場の脇にある2体のマネキンを見ていた。
「何見てるんだ?」
「翔平、これ買わない??」
そこには、『カップルにオススメ!!ペアルックラッシュガード』と書かれていて、男性マネキンと女性マネキンがそれぞれ同じ柄とラッシュガードを着ていた。
「いいなこれ」
「でしょ?まだペアルック買ったことなかったし」
「だな。じゃあこれも買ってくるよ」
「お願い」
お互いのサイズのラッシュガードを持って、俺は再度レジへと向かった。
初のペアルックに俺も刀奈もご機嫌だった。
「2人がデートの間……」
「私達は仕事ですか……」
「2人とも頑張れぇ」
「「本音も手伝って(ください)!!!」」
作者はバイク乗らないのに何故バイクに乗る設定にしたのか??
………バイクで後ろから刀奈に抱きつかれるって最高じゃん?
デート回は1話で終わると思ってたら、全く終わりませんでした。
今後も何とか月一以上の投稿を目標に頑張ります。
感想評価等よろしくお願いします。