どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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投稿が遅れて本当に申し訳ないです。
仕事がかなり忙しくなっているので次の投稿まで、また少し時間が開いてしまうかもしれませんが、気長に待って頂きたいです。


33

浜辺にへとやって来た俺達は更衣室で一度別れた。

先に着替え終わった俺は更衣室の出口で刀奈達を待っていると、ちょうど一夏がやってきた。その顔には疲労の色が見える。

 

「よぉ一夏、お疲れだな」

「あ、翔平。そりゃ、海に男1人っていうのはキツいぜ」

「まぁそうだろうな」

 

俺だって同じ状況なら逃げ出すだろう。

 

「部屋に戻るのか?」

「いや、ちょっとここら辺を散歩してただけだ。翔平も来たし、浜辺に戻る」

 

よく1人で散歩なんか出来たな。絶対ヒロイン達の誰かしらが付いてきそうなのに。タイミングが良かったのか?

 

「翔平はこの時間まで何してたんだ?」

「館内設備の点検だな」

「…それ絶対楯無さんの仕事手伝ってただろ?」

「当たり前じゃん」

 

俺の返答に、恐らくは一夏は呆れた反応か鼻で笑われると思ってた。

が、一夏の反応は俺の予想とは違い、何か思い悩んでるようだ。

なんか怖いんだけど。

 

「なぁ翔平…1つ聞いていいか」

「俺に答えられることなら」

 

やけに改まった様子で聞いてくる一夏。言葉の通り答えられる範囲で答えてやろう。

 

「人を好きになるって、どんな気持ちなんだ?」

「………ん?」

 

その瞬間、時が止まった気がした。

 

あの一夏が、鈍感で有名なあの一夏が、まさかこんな事を聞いてくるとは思わなかった。

一夏は恥ずかしいのか顔を赤くして俯いてるし。

 

しばらく唖然としていると、空気に耐えきれなくなった一夏が口を開いた。

 

「何か言ってくれよ!?」

「あ、あぁ……悪い」

 

いや、うん…あの一夏がこんな質問をしてきたんだ。こっちも真面目に答えよう。色々詳しく聞きたいけど。

 

「人を好きになる気持ちがどんなものか…だっけ?」

「……おう」

 

改めて考えると、中々難しい質問だな。

誰かを好きになる気持ちなんて、人それぞれだろうし。俺の価値観を一夏に押し付けるわけにもいかない。というか、俺の場合かなり特殊だろうし。

 

「やっぱりそれは、人によって違ってくると思う」

「そういうものなのか」

「俺には俺の価値観とか考え方があるし、お前にはお前の考えがある」

「翔平の場合はどうなんだ?」

 

怖いぐらいにグイグイくるな、今日のこいつは。

でも、そうだな。俺の場合だと……

 

「俺の場合は……」

「お待たせ翔平」

 

俺が言おうとしたところで、刀奈の声がそれを遮った。声の方を見てみると、着替え終わった女性陣が更衣室から出てくるところだった。

 

「この話はまた夜な」

「お、おう」

 

恋バナを女性陣に聞かれたことが恥ずかしかったのか、一夏は海の方へと行ってしまった。

 

「何話してたの?」

「恋バナ」

「え!?あのオリムーが!?」

「明日は、雪でも降るんじゃ?」

「簪ちゃん、それは言い過ぎよ」

 

よっぽど一夏の恋バナに驚いたのか、簪と本音は2人で話を盛り上げつつ一夏と同じように歩いて行った。

俺と刀奈も、2人並んでそれについて行く。

 

「翔平と一夏君の恋バナね。私もちょっと興味あるわね」

「刀奈でも、流石にこの話は喋れないぞ」

「分かってるわよ。というか、どっちからその話が出たの?」

「一夏」

「…本当に驚きね、それは。けど、いい傾向なんじゃない?」

「まぁな」

 

恋愛とは無縁だった一夏が、恋愛に興味を持ち始めてるんだからな。いい傾向であることに間違いはない。ただ…

 

「あいつ、考えたら考えたで、難しくしすぎるとと思うんだよな」

「あぁ…それはちょっと分かるかも」

 

意識をしたらしたで、周りには女子がわんさかいるんだ。根が真面目な一夏の事だから、そこから1人を選ぶということは難しいかもしれない。

 

「けど、その中から1人選べるのなら、それだけ好きになれるってことじゃない?」

「まぁそれもそうか」

「私としては、一夏君が誰を選ぶかっていうのは結構興味があるわね」

 

それは、俺も興味がある。

 

「けど、誰かと引っ付いたら引っ付いたで、周りの女子が黙ってないだろうけど」

「特にあの5人が凄そうね」

 

5人、というのは箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラの事だろう。

シャルロットなんて、一気にヤンデレ化しそうで怖い。

 

 

話しながら歩いていると、道がだんだん開けてきて、浜辺が近づいてきた。それと同時に、なにやら盛り上がってる声が聞こえてきた。

 

「なんか盛り上がってるな」

「なにしてるのかしら?」

 

盛り上がっている方へと向かうと、人だかりが出来ていた。簪と本音もその中に入っている。というか、周りの人に手を掴まれて中心部に吸い込まれて行った。

 

 

「何やってんの?」

「あ、上代君!!」

 

この状況が何なのか気になったので、ちょうど近くにいた1組のクラスメイトに声をかけてみた。

 

「今ビーチバレーをやってるんだけど、あの2人が強すぎてさ」

「あの2人?」

「デュノアさんとボーデヴィッヒさん」

「「あぁ…」」

 

刀奈と2人で人混みの中心部が見える位置に移動すると、セシリアと鈴をフルボッコにして、仁王立ちしながら高らかに笑っているラウラと、ラウラ程ではないが嬉しそうにしているシャルロットの姿が確認できた。

まぁ確かにあの2人、元がハイスペックだし、仲が良いからコンビネーションも抜群なのだろう。セシリアと鈴はコンビネーションの差で負けたんだろうし。

 

「何ゲームかしてるんだけど、あの2人だけがまだ無敗なんだよ」

「…圧倒的ね」

「ラウラは手加減とかしなさそうだからな」

 

丸くなったとはいえ、戦闘狂な気が未だに残っているラウラはタッグマッチ以降でも、たまに俺に模擬戦を申し込んでくる。

ちなみに、一夏の呼び方は原作通り「嫁」だったが、俺への呼び方は「兄者」となった。…おい、誰かクラリッサ呼んでこい。今の時代、せいぜい「兄様」とかだぞ。流石に「兄者」は違う。

 

 

「舞い上がってるな」

「でも、本当にあの2人強いんだよね」

「学年最強じゃない?」

「いや、もしかしたら学園最強かも…」

「「………」」

「「「あ」」」

 

周りの女子生徒達が俺と刀奈を見た。もうこの後言われるだろう言葉が分かったよ…。

 

「上代君!!」

「更識先輩!!」

 

俺も刀奈もガシッと肩を掴まれる。ちょっと怖いんだけど。

 

「「2人ともビーチバレーできるよね!!」」

「いや、まぁやったことはあるけど…」

「わ、私も、昔ちょっとやったことはあるかな」

「「私達の仇を取ってください!!」」

「ビーチバレーで大袈裟すぎるだろ、お前ら」

 

仇って、たかがビーチバレーで何があったんだよ…。

あまりの勢いに2人して引いていると、後ろから肩を掴まれた。

 

「翔平さん?やってくださいますわよね?」

「楯無さん、お願いします」

 

振り向くと、俺の肩をセシリアが、刀奈の肩を鈴が掴んでいた。

 

「お前らまで、なんでそんなに必死な訳?」

「あの2人が強すぎるんですの!!」

「ムカつくほどにね!!」

 

興奮気味に言われたけど、よほど悔しかったんだろうか。

というかこれ、やる以外の選択肢ない気がする。

隣の刀奈も、俺の同じように察したらしい。

 

「どうする?」

「まぁちょっとくらいいいんじゃない?みんな私達がやるのを期待しているみたいだし」

「それもそうか…。分かったよ」

 

俺の刀奈がビーチバレーへの参加を了承した瞬間、周りから歓声が起こった。

すぐさま中央のコートへの誘導されて、ネット越しに絶好調ペアと向かい合った。

 

「む、次の敵は兄者か」

「絶好調らしいじゃないか。お手柔らかに頼む」

「兄者相手に手加減なんてできる訳ない」

 

好戦的な表情で俺を見るラウラ。一方で遠慮はしつつも、シャルロットも刀奈に対して宣戦布告している。

そこまで言うのなら、こっちも真剣に相手してやろう。

 

 

 

--ゲーム開始

 

 

 

「ラウラ!!」

「ハァッ!!」

「…ほい」

 

ラウラの渾身のスパイクを難なく拾う俺。

 

「オッケー」

 

ボールの落下地点でトスを上げる態勢を取る刀奈を確認し、俺もスパイクに向けて助走を取る。問題なのは右に上げるか、左に上げるか。

 

 

…右

 

 

…と見せかけて左だな

 

 

完全に裏をかかれたラウラとシャルロットは俺のスパイクを呆然と見送った。

 

「ねぇ、今の2人サイン交換とかしてた?」

「多分、してなかったと思う」

「サインなしで普通に連携できるってどうなの?」

「でも、あの2人だし…」

 

ハイタッチする俺と刀奈を見て、周りの女子生徒達が何か言ってるが気にしない。

刀奈とのコンビでサインなど要らない。お互いの考えが分かるしこれぐらいなら合わせるのは簡単だ。というか、合わされているっていう感覚じゃないんだけどさ。

 

その後も、俺と刀奈の連携にそれぞれの身体能力が合わさり、ラウラとシャルロットの得点をほとんど許さずに圧勝した。

 

「やっぱり、あの2人が最強だね…」

「デュノアさんとボーデビッヒさんも頑張ってたけど…」

「相手が悪かったよ…」

 

俺たちのコンビに勝とうと思ったら織斑先生でも連れてこないと…

 

「面白そうなことをしているじゃないか、お前達」

 

来ちゃったよ。

 

突然の織斑先生の登場に、この場の生徒達が騒然となる。織斑先生の水着姿を見て鼻血を出す女子生徒もいる。

…いや、BLとかNTRを押し付けてくるより、自分達の問題にまとめてくれるんなら、俺は特に何も言わないさ。

 

「どれ、私達も混ざろうか、山田先生」

「そうですね。折角ですし」

 

一部の女子生徒に呆れていたら、いつのまにか織斑先生、山田先生ペアが参戦する流れになっていた。

いつになくやる気だし、織斑先生…。ちょっと怖いんだけど。

 

「更識、上代。お前達もいいな」

「大丈夫ですけど…」

「いつにも無くやる気ですね、織斑先生」

 

刀奈もやる気全開の織斑先生に困惑しているらしい。引き攣った笑みを浮かべている。

これは逃げれないな。周りも俺たちの勝負を見たいのか歓声が上がってるし。

まぁ、たまにはこういうのもいいか。

 

「分かりました。やりましょうか、織斑先生」

「言っておくが上代、やるからには全力でこいよ?」

「当然ですよ」

「一度お前達のコンビとは勝負してみたかったんだ。ビーチバレーだが、まあいいだろう」

 

俺と織斑先生の間でバチバチと火花が散る。

俺は俺で相手が織斑先生だろうが、刀奈とペアを組む以上負けたくはない。織斑先生も織斑先生で己のプライドから負けたくはないだろう。

……ただの負けず嫌いだ。付き合わされる山田先生が可哀想だ。

と思ったけど、案外山田先生も乗り気だからいいか。

 

俺と織斑先生がバチバチやってる隣で、刀奈と山田先生は談笑していた。温度差が凄いな。

 

 

こうして、俺の刀奈ペアと織斑先生と山田先生ペアのガチのビーチバレー勝負が始まった。

 

 

 




虚「私だけ居残り……私だけ出番無し……」

虚さんの出番が用意できない…。


自分の投稿を見返していて、刀奈のアイデンティティである扇子要素をほとんど書いていないことに落ち込むけど、結局今回もかけていないっていう…。

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