シャワー室から出た俺に、ペットボトルが投げられてきた。投げたのはもちろん刀奈である。受け取ったペットボトルを見てみると俺がよく飲むスポーツドリンクだった。
「入学祝いよ」
「サンキュー」
ありがたくいただくことにした。貰ったスポドリを飲みつつ、更識家としての話を行い、任務に行っている仁さんからの報告やその他の報告などの情報共有を行う。なるほど、こうして同じ部屋になったことで、外ではなかなかできない話を、心配しないで話すことができる。
「今日あった報告ではこんなところね」
「仁さんが葵さんキレさせてボロボロになってることも含めていつも通りだな」
仁さんがまた何かやらかして葵さんが阿修羅化したらしい。
「それで、例の話だけど」
「例の?」
はて、なんの話だろうと考えていると、刀奈がその答えを言った。
「あなたの好きな人の話よ」
「あ、あぁその話ね……」
今からその話をしようとしていたんだけど、なんか出鼻をくじかれた感じだ。
「別にあなたが誰を好きになろうと、楯無としてそれにどうこう言うことはできないわ」
話の雲行きが怪しい気がする。
「でも、やっぱり思うところはあるわ。あなたはこれまで私を支えてきてくれた。でも…これからは……」
そういって悲しそうな表情を浮かべる刀奈。
……これはいけない。
深く考えずに言った俺の言葉が、刀奈を不安にしてしまったようだ。
軽い気持ちでカミングアウトした俺を殴りたい、いや……、これまでくよくよ悩んで告白しなかった俺を殴りたい。
「俺はさ」
下を向いていた刀奈は俺の言葉で顔を上げる。その眼には涙が溜まっているが、それでも泣かないようにしていた。昔、楯無襲名の後に責任と不安に押しつぶされそうになっていた時の表情をしていた。
……こんな表情をさせるのなら、早く告白してしまえばよかった。
でも、今は後悔するのではない。後でしっかりと反省しよう。
「俺は、これからもずっと、刀奈の隣で、刀奈のことを支えていきたいと思ってる」
刀奈は黙って俺の言葉を聞いているが、その頬には涙が流れている。
「俺が好きな人は、昔からずっと刀奈だけだ。これからもずっと、君を好きでいる」
前世から、10年以上も溜め込んでいた俺の気持ちを、ようやく伝えることができた。
そして刀奈は---
「やっと、……やっと言ってくれた」
泣きながら、そう言ってくれた。
「私も……翔平が好き。ずっと好きだった」
そのまま、刀奈は俺の胸に飛び込んできた。
「あなたがクラスで好きな人がいるって言ったのを聞いたとき、私だったらいいなって思った」
「うん」
「でも……もし違う人だったらって思うと、不安になった」
「…うん」
「でも…」
一旦俺の胸に当てていた顔を上げ、俺の顔を見ながら言った。
「今、ちゃんと伝えてくれて、本当にうれしい。ありがとう、翔平」
そう言って笑う刀奈は、本当に綺麗だった。
朝、目が覚めると目の前には見知らぬ天井があった。
というのは大げさで、ここがIS学園の寮の自室であるということはすぐに思い出した。
そういえば、ついに告白したんだなぁと思いながら昨日の夜のことを思い出す。
結局あの後、泣きつかれた刀奈はそのまま眠ってしまった。俺も入学初日ということもあったし、何より緊張したり感動したりと本当にいろいろとあった1日だったので、簪にきちんと告白した旨のメールだけ送って俺も寝ることにした。
そして今目が覚めたのだが、1つ気になることがある。
隣で刀奈が寝ているのだ。
おかしい、確かに昨夜俺は眠った刀奈を、刀奈のベッドへと移動させた。
ならば、なぜ今俺のベッドで眠っているのか。
「まぁいっか」
考えてもわからないし、何だかんだでこの状況は嬉しいので、受け入れることにした。
隣を見ると、刀奈が幸せそうな顔で眠っている。
うん、生きててよかった。
しばらく寝顔を堪能していると、刀奈が目を覚ました。
「おはよう翔平」
何で俺のベッドで寝てるの?とかいろいろと聞きたかったが、笑顔でそんなことを言われたらもうどうでもよくなった。
うん、生きててよかった。
「おはよう刀奈」
とりあえず、起き上がり顔を洗う。
顔を洗ったタイミングで刀奈がタオルを渡してくれたりして、それだけで幸せだなぁとか思ったり。こうしてみると、同じ部屋で本当に良かった。
「朝はどうするの?軽く体動かす?」
「そうだな、もう日課になってるし」
俺はISを動かせるようになってから、ほぼ毎朝軽いランニングなどをして体を動かしている。身体はチートであるが、きちんと毎日動かしておかないといけない。筋トレも必要である。俺の専用機はただでさえ、身体に負担がかかるのだ。Gに耐えれる身体はキープしなければならない。
刀奈も一緒に行くということで2人とも準備を始める。
俺はその途中、携帯にメールが届いていることに気付いた。差出人は仁さんだった。
任務の報告かなと思ってメールを開いてみると……
『おいおい聞いたぜ、お前クラスの自己紹介で好きなやついるってぶっちゃけたらしいな!!音声データも聞いたぜ。お前そんなこと言えるんだったら、とっとと楯無に告っちまえよ。そしたら俺も思う存分オヤジと話すことができるってのによ』
そんな内容だった。ちなみに、仁さんの言うオヤジとは槍一郎さんのことである。
……幸せだった俺の頭は急速に冷えていった。俺の様子に気付いた刀奈が「どうしたの?」と聞いてきたので贈られてきたメールを刀奈にも見せる。
メールの文面を読んだ刀奈は苦笑していた。
とりあえず、俺は仁さんに返信を送った。
『そのことは誰から聞いたんですか?音声データも誰からもらいました?素直に教えてくれたら、この前葵さんが大切にとっておいた日本酒を飲んでしまったことは黙っておきますよ』
返信を送って数分後、すぐに返事が返ってきた。
『本音だ。教えたからな、黙っといてくれよ。まじで頼むぞ!!』
……あいつには一度、ちゃんとしたお仕置きが必要なのかもしれない。
2,3日お菓子抜きにしたらあいつも懲りるだろう。
「じゃあ行こうか」
「あ、待って」
お互い準備もできたので、タオルとか携帯とか必要なものだけ持って外に出ようとしたら刀奈に呼び止められた。
何かと思って振り返ると、いきなり目の前には刀奈の顔があった。
そして、俺は刀奈にキスされた。
「ふふっ、行きましょ」
そう言って、刀奈は歩いて行った。
本当に、告白できて良かった。
朝練を終えて、部屋に戻りシャワーを浴びて俺たちは食堂に向かった。
「あ、お兄ちゃんとお姉ちゃん。2人ともおめでとう」
「おめでとうございます」
「「ありがとう」」
すでに食堂に来ていた簪と虚から、"おはよう"ではなく"おめでとう"と言われた。虚も簪から聞いたんだろう。
俺と刀奈も少し照れながらそれに応じた。
「簪、本音は?」
「まだ寝てる」
「相変わらずだな…あいつは」
本音が朝が弱いのは本当に改善されない。このメンバーで一番起きるのが遅い人物はいつも本音である。
「あ、ちょうどいいや。簪、今日から当分本音はお菓子厳禁にするから」
「どうして?」
「あいつ、俺のカミングアウトの音声データ仁さんに送りやがったんだよ」
「あぁ……分かった」
「報酬は最近お前が欲しがってたプラモで」
「絶対に食べさせない、何としても阻止する」
……そんなに欲しかったんだ、あれ。意外と高いけど、まぁ刀奈とのことでいろいろと迷惑かけたし背中押してもらったから、全然買ってやるけど。
それから数日間、本音の目は死んでいた。
「良かった……兄ちゃん、お姉ちゃん」
「え、かんちゃん泣いてる!?」
「だって、ようやくあの2人が、くっついたもん」
「まぁそうだね。ようやく私とかんちゃんの努力が報われたね」
「ほんと、そう。あの2人には幸せになってもらわないといけない」
というわけで、くっつけることができました。
この作品書こうと思ったきっかけは、オリ主と刀奈をイチャイチャさせたいっていうのがほとんどです。
感想評価等よろしくお願いします。