8月忙しい……。
ん……。
意識がスゥーッと浮かび上がる感覚を感じた。目を開けると、そこは見知ったグリフィンドール寮の天井ではなかった。
ここ、何処だろう?
首を左右に動かし辺りを見渡したところ、どうやら医務室のようだった。枕元には、お菓子が山積みになっている。なんだかクリスマスみたい。
そんなどうでも良いことを考えていると、私が起きた気配を察したのか、誰かがカーテンを開けて入ってきた。
「目覚めたようじゃの、ルクスリア。具合はどうじゃ?どこか痛むところはないかのぅ?」
ダンブルドア先生だった。
「大丈夫です。痛いところはどこもありません。」
そうだ、思い出した。私は賢者の石を守るためにクィレル先生と戦って負けたんだった。その後、魔眼を使ってハリーを助けようとして…………ハリー?
「先生、ハリーは⁉ハリーやロンは無事なんですか⁉」
「安心しなさい。二人とも無事じゃ。今はポピーが治療し、良く眠っておる。あぁ……心配せずとも防音呪文を使っておるから、わしと話していても彼らを起こすことはないぞ。」
良かった、二人とも無事で。
「あれから、どれだけ経ったんですか?」
「君達を医務室に運んでからまだ3時間程じゃよ。」
「そうですか。マダム・ポンフリーは凄いんですね。あの時は全身に力が入らなかったのに、今は 走り回れそうな位元気になってるなんて。」
もう、全身の痛みはなく健康体だ。
何故か私の言葉を聞いたダンブルドア先生は、顔をしかめ何かを考え始めた。
数十秒程考えていたダンブルドア先生は、顔を私の方に向け再び話し始めた。
「ポピーは君に何もしておらん。君を見つけた時には既に傷はほぼ治っておった。」
「えっ?どういうことですか?私は治療してないですし、ハリーもできないですよ。」
私は治療関係の呪文はまだ修得していない。
「わしにも全ては分からん。しかし、ある程度の推測なら話すことができるが、どうするかの?」
「それでも構いません。聞かせてください。」
「よろしい。じゃが、その前にあの部屋で何があったのか、それを話してくれんかのう?」
「分かりました。お話します。」
あの部屋で起こったこと、私が覚えている限りの事を話した。ダンブルドア先生は私を静かに見つめ、相槌を入れながら静かに聞いていた。
「話してくれてありがとう、ルクスリア。今の君の話で、推測が更に深まった。さて、それではその推測について話すとしよう。いきなりじゃがルクスリア、君はホグワーツの食事が何故あんなに量が多いか分かるかね?」
食事の量……。そんなこと考えたことなかった。
「ええと、魔法でいくらでも生み出せるからですか?」
「外れじゃ。魔法でできない事の一つが食べ物を無から生み出すことなのでのう。あれらの材料は、全て買っておる。正解は青年期の身体の成長と魔力の補充の為じゃ。魔力と言うものは、ここでは我々人間が魔法を使うための魔力のことじゃが、自然に湧いてくるものではなく、魔法使いの身体の中で生成されるのじゃ。その為には、栄養を消費する。魔力を使いすぎると青年期の身体の成長に必要な分まで使ってしまう場合もあるのじゃ。それを避けるためにホグワーツでは、あれだけの食事を用意し栄養を補給できるようにしておる。ここまでは良いかな?」
私は頷いた。でも、食事の量のことは分かったけど、それが私の怪我の治癒になんの関係があるんだろう?
「では、今話したが魔力についてもう少し話すとしよう。魔力には、どのような作用があるか知っとるかな?」
「魔法を使う力ではないんですか?」
「それだけでは、50点じゃ。一つ目は、君が答えた魔法を使うためのエネルギーとしての作用じゃ。人間は杖なしでも魔法を使うことができるが、杖を使った方が効率的で、かつ容易に魔法を使うことができる。そして、もう一つは魔法に対する耐性の作用がある。」
魔法に対する耐性?いまいち分からない。
「同じ魔法を使っても、人によって効き目が違うのじゃよ。君はクィレル先生から失神呪文を受けたが、おそらくほんの十分程で目を覚ました。普通ではありえん早さじゃ。わしやヴォルデモートでも、失神呪文を受けたらそんな短時間では意識が戻らん。つまり、呪文を受けたものの持つ魔力の量が多いほど効き目が薄れると言うことじゃ。ルクスリア、君の持つ魔力は凄まじいのじゃよ。ただし、どんなに魔力があっても効果の全てを防ぐことはできん。少しであっても、魔法の効果は受けるじゃろう。」
なるほど、私が持つ魔力がとても多いから失神呪文を受けてもすぐに目を覚ませたのか。例えると魔力が多いほどフィルターが多くて、そのフィルターを抜ける度に呪文の効力が弱まると考えればいいのかな。でも……
「ダンブルドア先生、私が目を覚ました理由は分かりましたけど、傷が治ったことは説明できないと思うのですが……。」
「話が長くなってしまって悪いんじゃが、もう少し待ってくれんかの。……すまんの、続けよう。さて、これらの事を前提にするとルクスリア、君は非常に良く食べるため魔力が多いことは予想できるじゃろう。」
私は、それこそ途中でやめなければいくらでも食べられる。その食べ物の内、成長に必要な栄養以外が魔力になっていれば、それこそどこまでも魔力が増えていくんじゃないかな。
「女性にこんなことを聞くのは失礼なんじゃが、大事な事なんじゃ、許しておくれ。ルクスリア、君の食事と君の排泄物の量は釣り合っているのかのう?」
「⁉……いえ、釣り合って……いないです。」
……どうしてだろう。今まで全く気にしたことが無かった。少し考えれば私の食事量と排泄物の量が釣り合っている筈がないとわかるのに。それに対して疑問を持つことが全くなかった。私にとって、それが当然かのように思っていたけど、どう考えても異常だ。だって……
「ダンブルドア先生、私は生まれてから一度も排泄という行為をしたことがありません。」
そう、したことがない。体に入っていったはずの食べ物、飲み物、その全てが何処かに消えている。どうして、今まで気がつかなかったんだろう……。
「答えてくれてありがとう、ルクスリア。ようやく、君の傷が治った原因について話すことができそうじゃ。おそらく君の身体は、摂取したものを全て魔力に変換しているのじゃろう。そして、必要な分だけ魔力を栄養に再変換している、だからどんなに食べても満腹にはならんし、排泄という行為もない。また、怪我をしたりすれば魔力を自動的に使い治療するのじゃろう。これがわしの推測じゃ。」
「お話しして下さってありがとうございます。……ダンブルドア先生、もし先生の推測通りだった場合、何故私の身体はそのような……普通の人と違うのでしょうか?私は、排泄について今まで疑問を持ったことがありませんでした……。これも何か関係してるのでしょうか?」
魔眼といい、食事といい普通の人間とは私は違う。それこそ魔法使いの中でも極めて特殊だろう。これではまるで、化物じゃないか。
「ルクスリア、君は確かに少し変わっておる。それは紛れもない事実じゃ。」
ダンブルドア先生はキラキラとした目で話しかけてきた。私なんかの考えなんてお見通しみたいだ。
「変わっているが君は人間じゃよ。ちっとばかし個性が強いだけじゃ。」
ダンブルドア先生はなんでもないことみたいに笑った。それだけで不思議とその通りかもと思えるから不思議だ。
「さて、君の質問に答えようかのう。恐らく、何かの意思が君の身体をコントロールしているのではないかとわしは考えておる。その意思が君の意識にも手を伸ばし、刷り込みをしているため君は違和感を感じなかったのではないかとな。」
「……その、何かとは……」
自然と手が身体の一部分を触った。
「君の右眼だとわしは思っておる。」
やっぱり右眼か。
右眼の意思が私をコントロールしているのか。
忌々しい。
「あくまで推測じゃよ。どれ、わしはそろそろおいとましようかのぅ。あまり長いこと話しているとポピーに怒られるのでな。」
ダンブルドア先生はそう言って、困ったように笑った。そして、椅子から立ち上がった。
「幸い明日、もう今日か、授業は休みじゃ。ゆっくりと休みなさい。」
ダンブルドア先生は去ろうとした。
「ダンブルドア先生、一ついいですか?」
「よいとも。」
ダンブルドア先生は満面の笑みでこちらを振り返った。
「右眼のことについて、ハリー、ロン、ハーマイオニーに話そうと思うんですけど、良いですか?」
「ルクスリア、君は何故話そうと思ったのかね?」
「三人は私の大切な友達です。ハリーには見られちゃいましたけど、秘密にしておくのはなんだか三人を信頼していないみたいで嫌なんです。」
「なら、わしの答えはイエスじゃ。」
ダンブルドア先生はウィンクをしながら、茶目っ気たっぷりに笑った。
「あともう一ついいですか?スネイプ先生との個人授業を来年も続けてもいいですか?」
「構わんよ、セブルスにはわしから言っておこう。」
そう言って、ダンブルドア先生は去っていった。
それからの日々はあっという間に過ぎていった。傷は治ったものの、マダム・ポンフリーに医務室での静養をしろと言われた3日間は、色んな人が御見舞いにきてくれて大変だった。知らない生徒も多くてちょっとびっくりした。そのおかげで、一年分位のお菓子の山ができあがった。……またパリンパリン言うものがあってそういうのはこっそり捨てた。
医務室から解放されて、大広間で食事をとる時に、ダンブルドア先生との話を思い出して食べる量を気にしていたら、クラッブとゴイルが来て一緒に食べてくれた。彼らなりに私を心配していたらしいとマルフォイがこっそり教えてくれた。
寮杯は、ダンブルドア先生の過剰とも言える私達への得点によって、グリフィンドールが手にすることができた。
ところで、なんで私達にネビルが立ち向かったことを知ってたんだろう?
ダンブルドア先生の許可が下りたことをスネイプ先生に告げに行くと、苦虫を100匹位噛んだ顔をされた。
それでも、去り際に
「何を学びたいのかを、夏休み中に纏めてきたまえ。」
と言ってくれた。やっぱりいい先生だ。
そして、今ホグワーツ特急に私達は乗っている。私、ハリー、ロン、ハーマイオニーでコンパートメントを一室占拠してしまった。
「ねぇ、ルクスリア、君は孤児院に戻るの?」
「私の場合孤児院に戻るのは良くないって、ダンブルドア先生が言ってくれて、漏れ鍋のトムさんの所で、夏休みの間御世話になることになってるんだ。」
魔眼の力は非常に強く、スネイプ先生が再び孤児院を訪ねたところ、どんなに忘却呪文をかけても私のことを求めていたらしい。
いつか、孤児院の人達の呪いを解くことができたらいいな。いや、解かなきゃ。
「そうなんだ。僕もルクスリアみたいにトムさんの所に御世話になりたかったよ。」
「それなら、二人とも僕の家に遊びにおいでよ!もちろんハーマイオニーも。」
「私の家にも招待するわよ。特にルクスリアには是非来て欲しいわ!」
そんな話をしながら、楽しく過ごしていると既にホグワーツ特急はキングスクロス駅まで残り半分ほどになっていた。
「ねえ、私、三人に話しておきたいことがあるの?」
「どうしたんだい?そんなにあらたまって?」
ロンが意図が分からないといった感じで首を傾げた。ハーマイオニーも同じだ。ハリーは察したみたいだ。
私は髪を左右に分け顔を出す。
「私の右眼について話したいの。」
ロンとハーマイオニーも以前から気になっていたのか、急に真剣な顔になった。
「私の右眼は、魔眼なの。それもとても強力な。私の右眼を見た人の心を魅了してしまう。そんな呪いをかけてしまうの。」
「そうだったんだ……。だからあの時クィレルとヴォルデモート「その名前を言わないでくれ‼」、ごめんよロン、例のあの人があんな風になったんだね。……でも、僕も君の右眼を見たけど平気だよ?」
ロンとハーマイオニーは予想と違った内容だったのか凄く驚いていた。
「私にも分からないんだけど、呪いにかかる人とそうでない人がいるみたいなの。でもらかからなかった人は、ハリーの他にスネイプ先生しかいないんだ。」
これが分からない。ダンブルドア先生に聞いてもスネイプ先生に聞いても分からなかった。ダンブルドア先生はある程度の推測ができてるみたいだけど、「今は話す時ではない」と言って推測すら教えてくれなかった。
「なんで、二人はかからないのかしらね?」
私とハリーとハーマイオニーが考え込んでいると、勘弁してくれとロンが立ち上がり
「そんなに考えても仕方ないだろ?魔眼があるかもしれないけど、ルクスリアはルクスリアだろ?」
ロンの言葉に私達は顔を見合わせ、笑ってしまった。
「なんだよ!何が可笑しいんだよ!」
「ごめんなさいね、ロン。まさかあなたの口からそんな言葉が出るなんて思わなかったから、つい。」
ハーマイオニーの言葉に私とハリーは同意した。
そのあと、ロンをなだめ残りの時間も楽しく過ごした。
キングスクロス駅に到着し、電車から降りた。
駅のホームは多くの家族で溢れかえっていた。
そのなかにいるトムさんを見つけた。こちらに手を振ってくれている。
「じゃあ、三人ともまたね!手紙書くね!私は漏れ鍋にいるから遊びにきてね!私も行けたら遊びに行くね!それじゃあ、よい夏休みを!」
そう言って、トムさんのもとへ私はかけていった。
「やはり、あの者にはかかったようじゃな。」
「貴方はどういうつもりなのですか?仮に戻ってくるような事があった時、狙われる可能性ができたのですぞ?」
「だから、君に任せているのじゃよ。」
「我輩にどうしろと?」
「彼女に必要な力を授けてくれ。あの者は必ず戻ってくる。」
「……承知しました。」
説明が分かりにくかったらすいません。
私にはこれが限界でした……。
何かありましたら感想等お願いします。