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ルクスリア視点
クリスマスが近づき、生徒達は帰省することを楽しみにしている。
私は、あの孤児院には戻りたくないのでホグワーツに残る予定だ。ハリーも私と似たような理由で残るみたい。
ハーマイオニーは帰省しちゃうらしい。家族がいるなら一緒に過ごした方がいいもんね。
ウィーズリー家は今年は都合が悪いらしく、皆ホグワーツに残るみたい。彼らのおかげで楽しいクリスマスになりそう。
「可哀想に。家に帰ってくるなと言われてホグワーツに居残る子がいるなんてね。」
声のする方を見ると、マルフォイが意地悪げな顔で此方に向かってきていた。皆凄くマルフォイを敵視してるけど、私はそんなに気にならないけどな。なんか構って欲しい子どもっぽいし。
「マルフォイ、違うよ。私には帰る家がないから帰らないだけだよ。」
私の話を聞いたマルフォイはバツの悪そうな顔になった。なんだかんだ他人の痛みがわかるんだよね、マルフォイって。皆気がついてないみたいだけど。
「そうかい、じゃあ精々お友達のポッターとウィーズリー達と仲良くすることだね。」
「そうするつもりだよ。きっと、私の人生で最高のクリスマスになると思ってるよ。」
マルフォイは面白くなさそうにスリザリンの生徒達の方に帰っていった。
「ルクスリアって、マルフォイのあしらい方が上手よね。」
ハーマイオニーがそんなことを言ってきた。ハリーとロンも同じことを思っていたようで、うんうんと頷いている。話を聞いていた他のグリフィンドール生も、思っていたみたい。
「そうなの?何も気にしてないんだけどなぁ。……強いて言えばマルフォイの事を皆みたいに敵視してないからかな?」
「そう言うところだよ。」
そうハリー達に若干呆れられた。なんでだ。
スネイプ先生との個人授業が始まってから一ヶ月が経った。スネイプ先生は、とても理論的に魔法を教えてくれるので、凄く分かりやすい。そのおかげか、他の授業でも理論的に考えるようになり、授業がより楽しくなってきた。
今までに教わったのは攻撃呪文の、武装解除、失神呪文、妨害呪文、粉々呪文だ。毎週呪文についてレポートを書いていき、そしてスネイプ先生の監督のもと、実際に呪文を唱えるという内容だ。
今のところ全ての呪文で、スネイプ先生から合格を貰っている。武装解除が最初の攻撃呪文と言うことで、要領が上手くつかめず時間がかかったが、そのおかげでコツをつかんだので、その他の呪文はすぐに使えるようになった。
「これらを覚えていれば、攻撃手段には困らないだろう。」とスネイプ先生が仰ったので、今回からは守りの呪文を教わる。
「さて、吸魂鬼についてのレポートは読ませてもらった。これらの事を君は理解したかね?」
「ひとつだけ質問があります。吸魂鬼はどうやって生まれるのですか?」
「吸魂鬼の最初の個体がどのように生まれたのかは分かっておらん。だが、その後の個体については分かっている。吸魂鬼は人から幸福感を吸うことで生きているが、最も効率的な吸い方がキスだ。吸魂鬼のキスを受けた者は、魂の脱け殻となり、ただ生命活動が行われるだけのモノとなる。そして、しばらくするとそのモノが魂を求め始め、吸魂鬼となるのだ。」
「……じゃあ、元々は人間なんですね。」
「左様。奴等を完全に消滅させる魔法は現在の所存在しいない。奴等を退ける魔法のみ存在する。それが守護霊の呪文だ。この呪文は非常に高度なもので、修得までに年単位が必要な場合すらある。それは、幸福な記憶を想起し、それを維持するのが困難という理由からだ。しかし、君はイメージをする力が強い。月単位で修得出来るだろう。では、実際に手本を見せる。」
スネイプ先生は杖を取りだした。
『エクスペクト・パトローナムー守護霊よきたれー』
スネイプ先生が呪文を唱えると、杖の先から何か銀色の煙の様なモノが吹き出した。そしてそれは徐々に何かの形に纏まり始めた。牝鹿だ。
「このように守護霊は、何等かの動物の形になる。これは、意識する必要はない。勝手に君に相応しい動物に変化する。さあ、やってみたまえ。」
まずは、幸福な記憶が大事なんだよね。私の幸福な記憶って何だろう?
きっと、ホグワーツに来てからの記憶は幸福だよね。そのなかでも特に幸福な時間は何だろう。
初めてちゃんと魔法を使えた時かな?マッチ棒を針に変化させられた時。自分にこんな力があるなんて感動したっけなぁ。
よし、この記憶でやってみよう。
『エクスペクト・パトローナムー守護霊よきたれー』
杖先からは、何も出なかった。杖も「そんな記憶じゃ全然足りねえよ。もっと思い出せ。」と言ってるように感じる。やっぱりこの杖には意思があるよね。
言われなくても考えるよ。さて、これよりも幸福な記憶って何かあるかな。
あの時かな。ハーマイオニーとお話して、トロールが急にきて、でも、ハーマイオニーを守りきることができたあの時。なんとも言えない充足感があった。ネビルの時にも思ったっけ。
誰かを救えた。誰かを守れたって思ったら、凄く満たされたんだよね。
その時の事を思い出す。
身体が温かくなるのを感じる。
筋肉が緩むのを感じる。
呼吸が落ち着くのを感じる。
頭がスッキリするのを感じる。
心が満たされるのを感じる。
凄く、凄く心地良い。
『エクスペクト・パトローナムー守護霊よきたれー‼』
瞬間、杖から勢い良く銀色の煙が吹き出した。煙が吹き出しきると急速に集まり始め、徐々にその姿を現し始めた。
狼だ。
凛とした佇まいの中に、何処か安心感を感じる。
触ってみると、記憶を思い出していた時のような心地いい感覚になった。
「狼とは予想外だった。名前からして、兎か山羊もしくは蠍かと思っていたのだが。」
スネイプ先生が皮肉げに言ってきた。
「流石に酷いですよ、スネイプ先生。名前がルクスリアなだけで、私自身がルクスリア(色欲の悪魔)の化身ってわけではないんですけど。」
「そんなことは分かっている。だがな……君は世の魔法使いの大半を敵に回したも同然なのだ。自分で言うのもなんだが、我輩は優秀な魔法使いの部類だ。その我輩でさえ、守護霊の呪文を成功するのに半年かかったのだ‼それにも関わらず、君はたった数時間で成功した。皮肉の一つでも言わねば気がすまん……。」
スネイプ先生は顔を手で覆って椅子に座ってしまった。そんなこと言われても、出来てしまったものはしょうがないじゃない。たった数時間って言われても。
…………ん?数時間?
「先生、今日の個人授業を始めてからどれだけ経ちましたか?」
「三時間だ。一度呪文を唱えて失敗した後、君は二時間以上記憶を思いだし、その感覚を体験していた。そして、再度唱え成功させたのだ。まさか、記憶を思い出すだけでなく、それを思い出した時の心身の感覚を体験するとはな。その様な方法なぞ考えつかなかった。この方法が他の魔法使いにも有効ならば本が一冊書けるぞ。」
「そんなに時間が経っていたなんて、先生の時間を奪ってしまってすいませんでした。おかげで成功させられました。」
普段なら一時間の所を三時間以上見て貰っていたなんて、申し訳なかったな。
「新しい可能性を見せて貰った。それで、許そう。良く成功させた。しかし、実際に使用する時は数時間もイメージする暇はない。次回からは瞬時に使えるように訓練する。今日はもう遅い。寮に帰りたまえ。」
今日の授業は終了となった。
あ、晩ご飯食べ損ねた。
朝の光で目が覚めた。ベッドの脇を見ると、プレゼントが置かれていた。今日はクリスマスだ。
早速プレゼントの開封に取り掛かろうとしたが、その量を見て手が止まった。
やけに多い。
交友関係は決して悪い方ではないし、友達も多いと思っているけど、クリスマスのプレゼントを贈り合うような関係の人はそんなにいないはず。恐る恐る見てみると、知らない名前が多い。特に男子からが多く、メッセージカードには口説き文句が書かれているものもある。
呪いはかかっていないはず。もしかかっていたら、もっと直接的な行動に出てくるはずだからね。そうすると、純粋に私に好意を寄せてくれている人達がいるのか。
……誰かに相談しよう。
正直初めての事で良くわからない。
とりあえず、プレゼントを仕分けよう。
ハーマイオニーからは新しい羽ペン、ハリーからは杖の手入れセット、ウィーズリー兄弟からは手編みの厚手のセーターが贈られてきた。その他には、ラベンダーとパーバティ、セドリック等からも来ていた。
どれも本当にうれしい。
さて、問題のそんなに親しくない人からの物は大半がお菓子だった。しかもどれも量が多い。私は良く食べる方だがこんなにお菓子ばかりは食べきれない。……いや、食べきれるか。
試しに一つ開けてみる。レイブンクローの上級生からの物だ。中身はクッキーでクリスマス仕様なのかとてもカラフルだ。一つ口に運んでみる。
パリン
ガラスが割れる様な音がした。慌てて口から出してもガラスが混入しているわけではなかった。気のせいかな?
もう一枚食べてみる。
パリン
また鳴った。
味は普通のクッキーなのに、ガラスの割れる様な音がしてたら流石の私も食べる気が失せるよ……。
その後、他のプレゼントも食べてみたけど、いくつか同じように音のなるお菓子があった。
魔法使いの最近の流行りなのかな?正直魔法使いのお菓子って食欲を抑えるもの多いよね。蛙チョコとか百味ビーンズとか。ダイエットが必要な人が多いのかな?
プレゼントの開封はここまでにして、談話室に行こう。せっかくのクリスマスをひとりぼっちで過ごすのは勿体無いからね。
昼間はウィーズリー兄弟、ハリーと雪合戦をし、クリスマスの豪華な食事を堪能して談話室に戻ると、ハリーが私とロンに耳打ちしてきた。
「この後、二人に見せたいものがあるからついてきて‼」
私とロンは顔を見合わせる。いくらクリスマスと言えど夜間寮を抜け出すのは禁止されている。見つかってしまったら、減点されるし良くないだろう。
「ハリー、それは今晩じゃなきゃ駄目なの?」
「今日見せたいんだ‼見つからない様にそこまで行く方法もあるからさ‼」
そう言うと、ハリーは何かを取り出したが全く見えない。
ハリーはクリスマスプレゼントに透明マントを貰っていた。それだろう。
「しょうがないなぁ。ついていくよ。でも、途中で誰かに見つかりそうになったら引き返すんだよ。」
「分かったよ。」
透明マントを三人でかぶり移動してある部屋にたどり着いた。そこには大きな鏡が置いてあった。
「これだよ‼ぼくの横に来て鏡を見て‼」
私とロンは言われた通りに移動した。
鏡を見る。
目を疑った。
私がいる。私の回りには多くの人がいて、皆笑っている。私はその中心で眼帯をはずし、前髪も分け、顔を隠さずに笑っていた。回りの人が呪いにかかっている様子はない。その中には孤児院の時に関わった人達もいた。
「ぼくのパパとママだよ。」
「凄いや、ぼく首席でしかもクィディッチのキャプテンだ。ハリー、これってその人の将来をうつすのかな?」
「違う。これは将来をうつすんじゃない。これは私達の願望をうつしてるんだよ。」
そうだ。これは将来なんかじゃない。己の願望だ。ハリーは両親との生活、ロンは成功、私は魔眼に縛られないことを望んでいる。
理解してもこの鏡は魅力的だ。まるで、吸い込まれるかのように見てしまう。
危険だ。
「二人ともこの鏡は危険だよ。望みを見せるだけなんてあり得ないよ。最悪鏡に魂を吸われそうだよ。」
「その通りじゃ。君は聡明じゃな。ルクスリア。」
振り向くとダンブルドアが立っていた。いったいいつの間に。
「その鏡はみぞの鏡といってな。ルクスリアの言った通りのモノじゃ。今までに何人もその鏡の虜となり、命を落としておる。生徒の少ないクリスマス期間のみ此所に置いておったのじゃが、わしの不注意じゃったな。すまん。この鏡は明日、他の場所へ移動させる。間違っても探そうとしてはいかんぞ。」
ダンブルドアは普段みるお茶目さ等微塵も感じさせないほど、真面目に話した。
「安心しなさい。夜間に出歩いていたことは咎めんよ。全てはわしの責任じゃ。さあ、寮に帰って休みなさい。」
ダンブルドアは最後に慈愛溢れる顔をして私達を送り出してくれた。
「まさか、あんなモノだったなんて。ごめんね。危険な目に合わせちゃって。」
寮に帰るなりハリーは謝ってきた。知らなかったとは言え、私達を危険に晒したことを気にしているようだ。
「知らなかったんだからしょうがないよ。おかげで自分の願望を確認できたから、良いところもあったし。」
「そうだよ、ハリー。僕達気にしてないよ。……それにしてもホグワーツって危ない場所が多すぎないか?魂を吸う鏡に、危険な森、それに三頭犬のいる部屋なんてさ‼」
「三頭犬?そんなのいるの?」
ケロベロスのようなモノだろうか?そんなのが学校にいたら、大問題な気がするけど。
「そっか、ルクスリアには話してなかったっけ。以前僕とロンとハーマイオニーで寮を抜け出したんだけど、フィルチから逃げてる途中に迷い混んじゃった部屋にいたんだ。ほら、入学式の時にダンブルドアが入ったら痛い死に方をするって言ってたところだよ。」
「そんなことがあったんだ。……なんで教えてくれなかったの?」
「もし広まったら僕達が罰則になっちゃうからさ、それを防ぐためだよ。」
仲間はずれにされてたみたいで不満だけど、とりあえず許してあげよう。
「ハリー、ルクスリアにもやっぱり協力してもらおうよ。ルクスリアだけ仲間はずれみたいになるのは良くないよ。」
「そうだね。ルクスリアなら大丈夫だよね。」
なんだか勝手に二人が決心を固め始めたぞ。まだ私に秘密があったのか?
「ルクスリア、僕達は三頭犬のいる部屋の奥に何かが隠されていて、それをスネイプが狙ってると思ってるんだ。……ハーマイオニーはクィレルを疑ってるけどね。それで、僕達で色々と調べてるんだけど、君も協力してくれないか?」
そんなことをやっていたのか。なんでスネイプ先生を疑ってるの?そんなことする人じゃないと思うんだけどな。むしろ、クィレル先生の方が怪しい。
「良いよ。協力する。だけど、私はハーマイオニーと一緒で怪しいのはクィレル先生だと思うよ。クィディッチの試合でハリーに呪いをかけていたし。」
「ハーマイオニーも同じ事を言ってたけど、僕にはそう思えないや。まあ、それはいったん置いておこう。それで、とりあえず今はニコラス・フラメルについて調べてるんだけど、心当たりない?」
ニコラス=フラメルってあのニコラス=フラメルかな?
「ニコラス=フラメルってたしか錬金術師じゃなかったっけ?賢者の石で有名な。」
ハリーとロンは顔を見合せた。
「「それだ‼」」
やっぱり仲いいねこの二人。
ルクスリアの強化が進む……。
三頭犬について、ようやくルクスリアが知りました。ちなみに、ハリー達はいつもルクスリアと行動を共にしているため、調べものは個人授業の裏でやっていました。
ルクスリア(色欲)の動物についてはWikipediaを参考にしています。
何か感想等ありましたらお願い致します。