独裁者の聖杯戦争   作:マルルス

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十一話 思惑

間桐家と同盟を結んで一日経った。

連邦陣営は小さな廃ビルで現状の確認と作戦会議を行っていた。

 

「バーサーカーの制御はまだ掛るのか?」

 

リカルドはカロリーザに質問する。

 

「サーヴァントの完全制御はまだ掛ります。もう少しお時間を下さい。」

 

カロリーザは気まずそうに答える。 リカルドは少し息を吐いて腕を組んだ。

間桐雁夜には秘密にリカルドはバーサーカーの支配下に置くためにカロリーザと魔術師チームに制御を急がしていた。

バーサーカーは血に飢えた獣同然だが支配下に置ければこちらの勝利の可能性がグンと上がるからだ。

もとより間桐雁夜など期待してない。戦いの素人で私怨ですぐ暴走する可能性が高いからだ。

だがバーサーカーを現界させておくための依り代として利用価値があった。

勿論、聖杯という報酬は渡すつもりだ。

 

「今の所、脱落者はまだ出てないか。」

 

「はい。埠頭以来、大きな戦いはなくどの陣営も拠点に籠り様子を伺っているのでしょう」

 

埠頭での戦いが終わって一日は経つが以前、どの陣営も動いていなかった。 セイバー陣営のマスターである衛宮切嗣はランサー陣営を潰すためにアレコレ動いていたが昨晩、連邦軍が襲撃を掛けたが途中、邪魔が入り死体などは確認できなかったという報告を受けていた。ただ連邦陣営の協力者である冬木警察の署長の指示で衛宮は部下らしき女性とともに指名手配されニュースなどでその顔を全国に晒された。どの道、奴はもう迂闊に冬木にうろつく事はできないだろう。

 

遠坂時臣は相変わらず工房でもある自宅に引きこもっている。リカルドとしてはそれは有難かった。下手に人込みに隠れてくれるよりは同じ場所にとどまってるくれる輩は始末しやすいからだ。

しかし彼のサーヴァントはこの聖杯戦争で間違いなく最強の存在であるあのギルガメッシュ王だ。あの黄金の王を何とかしなければこちらの勝ち目はない…。

 

ライダーのマスターであるウェイバーベルベットの行方はまだ掴めていなかった。何故なら彼はライダーの戦車と共に乗り高速で走り去るために追跡が出来なかった。さらに冬木市のホテルに宿泊してるという痕跡もなかった。ウェイバーは意外と隠密性に長けた男であるようだ。

 

ケイネスは工房としていたホテルが爆破解体されたためにその戦力を大幅に失った。 しかし依然、ランサーがいるので油断は出来ない。それにケイネスは神童と呼ばれた男で工房を失ってもまだ何か切り札があるかもしれない。 現在、ケイネスと婚約者のソラウは偵察機で確認したところ市街から離れた廃墟を新たな根城にしてる。

 

リカルドにとってこれらのマスターより言峰綺礼が最優先で排除したかった。 あの男は父である監督役と遠坂陣営と結・託・しており安全地帯である教会からアサシンを市街に送り込んで情報収集に勤しんでる。早い所、言峰とアサシンを潰さないとこれからの作戦に支障がでるかもしれない。

 

(とにかく、今はバーサーカーを支配下に置かなければ話にならない…)

 

だが他陣営のサーヴァントを支配下に置くのは先ほどカロリーザが言ったとおり時間がかかる。アレコレ考えても仕方がない…

 

「私は一旦本部に戻る。出来るだけ急いでくれ」

 

「承知いたしました」

 

リカルドは部下を連れて本部であるホテル・アルファ基地に戻ろうとした矢先、体中から寒気が感じた。

一瞬で懐から回転式拳銃を取り出し部屋の隅に向けて発砲した。

リカルドの突然の行動にカロリーザを初め護衛の部下達は驚くもすぐに銃や杖、黒鍵を構える。

 

「やれやれ… 年寄りに随分と乱暴ではないか。」

 

しわがれた声が部屋に響き黒い影が徐々に人型に変わっていく。

現れたのは和服を着込んだ小柄な老人の男性だった。

 

「おぞましい気配を感じたんのでな。何者だ?」

 

リカルドは銃を謎の老人に向けて警戒しながら問う。

 

「失礼した。儂は間桐臓硯という者ですじゃ。司令官殿。

愚息が世話になってるようでしてな 様子を見に来たのじゃ」

 

間桐臓硯

報告書によると間桐の真の当主と言える人物で数百年は生きている魔術師である。

様子を見にきたというが怪しい物である。

もしかしたら息子である雁夜を取り戻しに来たのかもしれない。

リカルドは最大限警戒して様子を伺いながら臓硯に質問した。

 

「息子の危機を感じて助けに来られましたかな? 臓硯殿。」

 

それを聞いた臓硯だが小さく笑った。

 

「助けにきたですと? 呵々。何をおっしゃいますか。 雁夜などという出来損ないのために貴方方と争うなど百害あって一利なしですぞ。」

 

確信したわけではないがどうも違うようである。しかし考えてみればこの老人がその気になったら何時でも取り返しせる感じはする。

 

「助けに来たのではないのなら無いなら何故、我々の前に現れたのだ?」

 

リカルドは間桐臓硯の真意を知るために理由を聞く。

 

「コマンダンテ殿。単刀直入に言いましょう。 我ら間桐家は貴方方、連・邦・と協力したいのです。」

 

間桐臓硯の口から出たのは予想外の事に協力関係を結びたいとの事だった。

しかしそれよりもこの老人は我ら連邦の存在の知っている…!

リカルドは顔は無表情だったが銃の引き金にそれとなく力が入った。

カロリーザや周囲の部下達もまた一段と緊張が走った。

僅かな動揺を知られないようにリカルドは口を開いた。

 

「協力? すでに我々はご子息である雁夜殿と関係を結んでいるのだが。」

 

「ククッ 何とも意地悪な事をおっしゃいますな。貴方方が欲しいのは雁夜のバーサーカーであって雁夜自身など使い捨ての道具に過ぎないでしょう。

それでもまだ生きていたのなら自分達に必要のない物を褒美として授ける、程度の存在でしかないのでしょうに。」

 

「…。」

ニタニタしながら臓硯は話す。それに対してリカルドは沈黙する。

だが臓硯の言う通りでもある。欲しいのは彼のバーサーカーであって雁夜など用はないのだ。先ほど言ったとおり生かしているのはバーサーカーの依り代として価値があったからだ。

というよりそれしか価値がないのだが…。

 

「だが自分は違いますぞ。 儂なら貴方方に大きな貢献が出来る。

そう… 例えば貴方方が制御に時間が掛かってるバーサーカーをホンの数分足らずで支配下の置くことなど容易いですぞ」

 

その言葉にリカルドを初め全員が驚いた。自分達が全力を尽くしても多くの時間を使わざるに得ないのにこの老人はたったの数分で出来ると言ったのだ。

 

「あり得ない… 我々が全力を尽くしてもこれだというのに出まかせを…!」

 

カロリーザは顔が屈辱が浮かぶ。臓硯の言葉はプライドを傷つけるには十分だった。

 

「やめるんだ。落ち着かないか。」

 

怒りに燃えるカロリーザにリカルドは嗜める。

 

「失礼しました…」

 

リカルドの言葉に頭を冷やしたのか、カロリーザは後ろに下がった。

それを見たリカルドは再び臓硯に顔を向けた。

 

「さて…数分で出来ると言うが本当なのか?」

 

嘘は許さぬという気配を放ちながらリカルドは臓硯に聞く。

 

「勿論。そもそもサーヴァントを制御下に置くために令呪を編み出したのは我ら間桐ですぞ。その事に関しては一日の長がありますからな。

では早速始めるとしましょう」

 

そう言い臓硯はバーサーカーがいる部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からいって臓硯は自身が言った通りバーサーカーを数分で連邦の支配下に置かせることに成功した。

これに対しカロリーザを初めとした魔術師達は苦い顔をしていたが大きな障害をすぐに乗り越えられバーサーカーを自陣営に完全な支配下に入った。これで対アーチャー戦に備える事が出来た。後は機を伺いながら遠坂陣営の攻撃の時を待つのみだった。

 

リカルドは間桐臓硯と協力関係を結ぶ事になった。事実、間桐臓硯は強力な同盟相手と言えるし敵に回すのは厄介な人物とも言える。ならば互いの利が一致しているなら敵対など避けるべきだ。

それにあの老人はこちらの計画に感づいてる節があった。もしも他の御三家や教会にその事を告げ口されたら面倒な事になる。

とにかく今回の同盟はリスクはあるがメリットは大きい。

そろそろこちらも本格的に動き出すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side間桐臓硯

 

(手間はかかったがようやく連邦と手を結ぶ事が出来た。)

 

間桐臓硯は人気がない道路を歩きながら帰路に付いていた。

臓硯が連邦の存在に気付いたのは偶然だった。あの埠頭で雁夜がもがき苦しむ姿を見ていた臓硯は雁夜が謎の集団に連れていかれた時だった。当初は無視しようと思ったがちょっとした好奇心で雁夜の体内にいる自身の使い魔で連中の話を聞いていた。そしてあの連中の首領と思われる男…コマンダンテを見た時、臓硯は前回の第三次聖杯戦争を思い出していた。

 

前回の聖杯戦争は第二次世界大戦中に行われた。聖杯を手にするために日本とドイツが軍を送り込んだ。

戦いは苛烈を極めたが結局、誰も聖杯を手にすることが出来なかった。

臓硯はその時、国家の力や正規軍の力を思い知った。一歩間違えば間桐家はドイツ軍や日本軍に滅ぼされていたかも知れなかった…。

コマンダンテを見た時、その時の感覚を思い出していた。軍人特有の気配というか軍隊の匂いというべきか…

そんな気配を感じたのだ。

 

臓硯は町中に使い魔を放って連中の事を徹底的にまた慎重に調べた。彼らの陣地…基地というべきか、それらには厳重な結界が敷かれており思うように事が進まなかったが臓硯は遂に彼らはザンディアナ連邦の軍隊と分かったのだ。

これには臓硯も焦った。先にいったように臓硯は国家の正規軍の恐ろしさを理解してる。雁夜が何らかの拍子で連邦を裏切ったら間桐は一族ごと連邦に滅ぼされるかも知れないのだ。

別に一族が根絶やしになっても臓硯自身が生きていれば問題はないのだがしかし魂の腐敗の影響で肉体は日に日に腐り果てていく…。この仮初の不死を聖杯で完全なものにするまではやはり一族は必要だ。

だから臓硯は自ら動き雁夜よりこっちの方がずっと役立てる事を証明した。連邦に令呪のシステムを明かす羽目になったが連邦と同盟出来れば安い出費だった。

 

(それに彼奴らの計画は面白い。 このまま有用性を示せば何らかのおこぼれがもらえるはずじゃ…)

 

連邦を調べていくうちに臓硯は彼らのある計画に気付いた。全容は分からないがかなり大掛かりでこの聖杯戦争で最も重要な物が関わる計画だ。

臓硯はその事をチラつかせながら連邦と同盟の足掛かりに利用した。

 

(此度の聖杯戦争は様子見だったが思わぬ収穫があった。 連邦の同盟は今後の聖杯戦争に大いに役立つはずじゃ… ククッそう遠くない未来に儂の手に聖杯がある)

 

臓硯は不気味に笑いながら闇に消えていった…。

 

 

 

 

連邦と間桐の同盟…。

第四次聖杯戦争は今、大きく動き出そうしていた

 

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