独裁者の聖杯戦争   作:マルルス

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十三話 脱落①

言峰綺礼は衛宮切嗣に会うために目的地であるアインツベルン城に向けて疾走していた。市街地を抜けて森に入ろうした。

「もうじき長年探し求めていた答えが見つかる…」

己の心を満たす空虚を消すためにあらゆるモノを手をつけたが結局見つからなかった答え…。言峰綺礼は答えを得るために突き進んでいた。

しかし森に入ろうしたその瞬間、殺気を感じその足を前に進むの止め素早く横に跳躍して地面に躰を伏せた。

先ほど自分が立っていた場所に銃弾の嵐が過ぎていく。代行者として数多くの修羅場にくぐり抜けて得た直感がなければ確実に死んでいた。

(待ち伏せか…。銃声から察するにライフル弾か…? )

綺礼は銃声から銃の種類を理解する。綺礼は身を伏せながら素早く近くの木に身を寄せる。

(厄介だな。拳銃弾なら防げるがライフル弾となると前に出るのは自殺行為…。)

綺礼が身に着けてるのはただのカソックではない。戦闘用に作られた戦闘服で防弾耐性についてるものだ。

それに数々の死線をくぐり抜けてきた綺礼の強靭な肉体を加えれば拳銃弾程度なら突っ込める程だが流石にライフル弾となると無理である…。

 

どうするべきか…と悩む綺礼。アサシンを使ってここから脱出すべきなのだろうが…そうすると相手側にアサシンがまた健在だとバレてしまう。()()()()()()()()()から綺礼は教会に保護されてるのだ。

それがアサシンはまだ()()だとバレれば他の陣営は教会に押し寄せて来るだろう。中立だと言っても相手は耳を貸さないだろう…。何しろ中立である教会が()()してるのだから…。

綺礼を悩ませてるのはもう一つある。

それは衛宮切嗣の事だった。衛宮の答えを問うチャンスがやっときたのだ。ここを逃すと次はないかもしれないのだ。

 

「ぐ…!」

 

腕に鋭い痛みが走った。ライフル弾が木を貫通して綺礼の左腕を貫いた。

少し考えているうちに敵は接近してきてる…。 もはや迷ってる場合ではない

 

「アサシン! 私は撤退する。 時間を稼げ」

 

「承知」

 

綺礼の呼びかけに応じて四人のアサシンが実体化する。アサシンは時間稼ぎのために相手側に突撃していき綺礼は銃弾の雨から逃れるために障害物が多い森に入っていく。

 

四人のアサシンは(マスター)の為に敵の前に現れ始末する止めに疾走する。

戦闘の力が低いアサシンクラスでも相手が只の人間なら恐れるに足らない…。何故ならサーヴァントに何の神秘もない銃弾など通じないのだから。

故に此処はアサシン達の一方的な殺戮が始まるだろう。そう…始まるはずだった。

 

「ガッ…!」

 

四人のアサシンの一人が突如、苦悶の声を上げながら斃れる。その胸には矢が刺さっていた。

残るアサシン達は一体何が起きたのかと驚く。

 

「ギッ…」

 

また一人アサシンが斃れる。

 

残ったアサシンが飛んできた矢の方向を見るとそこにはあの()()()()()()馬に乗ってボウガンを構えていた。

騎士は淡々とボウガンを残った二人のアサシンに向けて矢を放つ。

アサシンも短剣で矢を弾くが次の瞬間、それなりに距離が離れていたというのに騎士の馬は風のようにあっという間にアサシンに接近し騎士が手に持った剣で二人のアサシンの首を切り落とした。

アサシン達は何が起こったのか分からず消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

一方アサシンが時間稼ぎも出来ず斃された知らない綺礼は全速力で撤退していた。

 

(ようやく衛宮切嗣と問う絶好の機会だったというのに…!)

 

本来、()()()として教会の地下に身を潜めなければならない状態ながらそれを無視して外に出るほどの待ちに待ったチャンスが謎の襲撃者によって台無しにされたことに強い怒りと殺意を感じながら走っていた。

 

(教会に戻ったらアサシンにどこの回し者なのか調べてもらおう。

何度も邪魔されたら面倒だ。最優先に始末するとしよう)

 

そう考えながら綺礼は森の外に出るため足を止めず疾走する。だが…

 

「!?」

 

綺礼の前方に何かが飛来する…。綺礼を手に持った黒鍵でそれを防いだ。

カラン…と綺礼は足元に落ちたモノを見ると目を見開いた。

 

なぜならそれは自分が使用する同じ武器だったからだ。

 

(黒鍵だと…! まさか!)

 

前方から何かがやってくる。綺礼は己の武装である黒鍵を取り出し身構える。

現れたのは綺礼と同じく修道服を着こなし顔をフードで覆い隠している六人の男性だった。

綺礼は彼らは何者かすぐに理解した。

 

()()()か。 教会から派遣されたとは聞いていないが?」

 

綺礼の質問に彼らは答えなかった。そして無言で一人の代行者が目に見えぬ速さで綺礼目掛けて黒鍵を投げる。

常人なら何が起きたか分からず黒鍵がその躰を貫いただろう。しかし綺礼は彼らと同じ代行者として幾多の死線をくぐり抜けてきた猛者だ。

飛来する黒鍵を先ほどと同じく難なくと払い落し綺礼も代行者達に向けて黒鍵を飛ばす。

しかし彼らもまた代行者…。綺礼と同じく高速で飛来する黒鍵を容易く払う。

だが僅かな隙をついて綺礼は一気に代行者達の距離を詰めた。そして一人に拳を腹に叩き込んだ。代行者の一人はその威力に大きく飛ばされていく。

残った代行者達は黒鍵だけではなく懐からナイフやハチェット、背から剣を取り出し綺礼に接近する。

手練れの代行者数人相手の猛攻に流石の綺礼も防戦一方だった。僅かの隙をついて代行者の躰に拳を叩き込むが…。

 

(先ほど打ち込んだも時もだが…この感触… 奴らは服の下に何か仕込んでいるのか?)

 

綺礼が放つ拳は文字通り人間の肉体を容易く破壊し絶命させる凶器そのものである。その綺礼が感じた違和感…。

拳を彼らの肉体に打ち込んでも衝撃が吸収されていき散っていく感触だった。そのせいかダメージはあるものの致命傷に至ってないようですぐに戦線復帰するのだ。

 

厄介な…。

黒鍵はどっちかというと投擲用で接近戦ではあまり使い勝手が良くない。その接近戦に備えての拳法なのだがそれが今一つ効果が発揮してないという状況だ。

そして六人の代行者相手に流石の綺礼も徐々に押されつつあり躰の傷も増えていく。綺礼の焦りが生じる。

 

(不味いな…。何とか隙をついてこの場を抜けなければ…!)

 

どうにかして打開策を考える綺礼だが六人の代行者は綺礼の動きに慣れてきたのか僅かな隙すら見せなかった。

少しずつ六人の代行者達は綺礼を追い詰めていく。

 

「ぐッ!」

 

ナイフを持つ代行者が綺礼の足を、黒鍵を持った代行者が綺礼の左腕を投擲した黒鍵で貫く。

この傷が綺礼の動きを鈍くする。 勝機を見た代行者達が攻勢を強めた。

もはや綺礼が代行者達に勝つことは無くなった。故に綺礼は…

 

「…! 已む得ない… 令呪によって命ずる! アサシン!」

 

来い!

そう言おうと時、肉体が動かなくなる。全身が麻痺したかのように指一つ力が入らなくなる。

 

これは…?

綺礼は突如、自分の躰に異変に戸惑う。

そしてそんな隙を代行者達は見逃すはずがない。剣を持った代行者が綺礼の令呪が刻まれた左手を切り落とした。

切り落とされた痛みに顔に苦悶に歪める綺礼。 別の代行者は地面に落ちた綺礼の左手を拾いソレを奥に投げた。

そして飛んでくる左手をキャッチしたのはカロリーザだ。

彼女は綺礼の左手に自身の手で覆い詠唱を唱えた。

すると左手に浮かぶ令呪が輝き出した。そしてカロリーザは言葉を出す。

 

「令呪に命じる。 アサシン、自害せよ」

 

カロリーザに言葉に反応した令呪の一つが消える。

冬木市に散らばるアサシン達は手にした得物で自身の霊核を貫いた。アサシン達は何が起きたか分からず消滅した。

 

(これでアサシンは脱落したはず… さてマスターの方は)

 

カロリーザはアサシンのマスターである綺礼を視線を向ける。

綺礼は代行者達によって心臓を剣と黒鍵に貫かれ頭部はハチェットが深く叩き込まれていた。

これで綺礼は息絶えたのだが一人の代行者が念を押して大型のナイフで綺礼の首を切り落とした。

 

幾ら代行者とは言えどもアレでは完全に死んだろう。

安心したカロリーザは代行者達の近くまで近づいた。

 

「ご苦労でした。貴方達はアルファチームの援護に行きなさい。

後の始末は私達がやっておきます」

 

カロリーザがそう言うと代行者達は森の奥へ走り去っていく。

 

(念のためにと思ってガンドで援護したのですが上手くいってよかったわ)

 

あの時、カロリーザは綺礼に向けてガンドを放ち彼の肉体を麻痺させたのだが別に自分が援護しなくても言峰綺礼は代行者達に仕留められただろう。

まぁ早く仕留められたのだからこれで良かったのだろう。

 

(それにしても第三者が令呪を発動させられるとは… 間桐の秘術は侮れないですね… )

 

間桐臓硯から伝えられた秘術は相手の令呪を第三者が強制発動するものでカロリーザはこれを使い言峰綺礼の令呪を発動させたのだ。

正直、間桐臓硯は全く信用できない存在だが連邦の確実な勝利の為には仕方がない。大統領もそれを理解してるだろう。

 

(さてロドリゲスは大丈夫でしょうか? あの男の事だからヘマはしないと思いますが)

 

カロリーザは指を鳴らすと炎が綺礼の死骸から炎が上がり燃やし尽くしていく。

 

 

 

 

アサシン陣営 マスター言峰綺礼はこうして脱落した。




代行者達

「猟犬」の名を持つ連邦軍の特殊部隊で魔術師や代行者などの討伐を主任務としている。

元々は聖堂教会に属していたが連邦軍との戦いの際に捕らわれ捕虜になった。
リカルドとザンディアナ連邦軍は彼ら代行者の実力を知っており彼らを自陣営に引き込む事ができないか?と思い数々の説得または買収しようしたが当然ながら強い信仰心を持つ彼らは全て拒否した。

このままでは代行者を引き込む事は出来ないと悟ったリカルドと連邦軍は彼らをある組織に預けた、
それはザンディアナ連邦の諜報組織である「連邦総合情報局」だった。

連邦総合情報局は代行者達を連邦の領土である孤島に連れて行き彼らを底が深い穴倉へと閉じ込めた。
深い穴倉へと閉じ込められた代行者達に情報局は毎日、彼らに毒を混ぜた食事を出し続けた。
食事が終われば穴倉から代行者達を出し肉体への拷問、魔術と薬物を使った精神への拷問を昼夜問わず続けられた。
強靭な肉体と精神力をもつ代行者達だが毎日続けられる凄惨な拷問に徐々に心がすり減っていく。
一週間になり遂に心が打ち砕かれて廃人寸前なる者が現れた。
情報局はその者に薬物と魔術で新たな思想を植え付けた、否、作り替えたというべきか。
「ザンディアナ連邦に忠義を尽くせ」
「連邦に害をなす者を殺し尽くせ」
これらを代行者の心に刻みつけ洗脳していく。
こうして連邦は代行者を狩る代行者を作り上げたのである。
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