「■■■■■!!!!」
「ハッ!!」
辺りに響き渡る金属の奏でる嵐。
ランサーとバーサーカーは死闘を繰り広げていた。
長槍と短槍を巧みに操り怒涛の連撃を行うランサーとそれを戦斧で防いでいくバーサーカー。
互いに傷ついていきその躰を紅く濡らしていく両者。
数えきれない打ち合いの末、両者は一度離れ互いの隙を伺った。
「見事なものだ。狂戦士。 理性を失いながらもその武芸、その佇まい… さぞ名のある騎士だったのだろう。」
ランサーはバーサーカーの実力に感服する。狂戦士でありながらその見事な武芸に魅せられた。
「………」
バーサーカーは何も答えない。
「お前ほどの剛の者に出会えた巡りあわせに感謝すべきだろう。故に!」
「バーサーカー! 今夜、このディルムッド・オディナがお前を討ち取る! 覚悟!」
「■■■■■■■■!!!!!」
ランサーとバーサーカーは再び死闘を交えようとしたその時だった。
「ケイネス殿!?」
バーサーカーと戦っていたランサーはマスターであるケイネスの異変に気付いた。
マスターとサーヴァントのある繋がりがプツリと途切れたのだ。
コレが何を意味するのか…ランサーはすぐに理解した。
「そんな…主よ…」
ランサー・ディルムッドオディナは願いは{生前、忠義尽くせなかった故に今度こそ主への忠義を尽くす事}だった。
しかしソレがマスターであるケイネスの死によって終わった…。その事にランサーの心に失意と絶望が覆っていく。
「俺はまたしても…!」
歯をギリッと食いしばりランサーは己の無力を呪った。
そしてその怒りはバーサーカーに向けられた。
「バーサーカー せめて貴様だけでも討ち取らせてもらう!」
残り少ない魔力量でランサーはバーサーカーに突撃する。
最後の力を出し惜しみなく使い怒涛の勢いでバーサーカーに猛攻するランサーにバーサーカーは少しづつ押されていく。槍と戦斧ではリーチが違うということもあった。
バーサーカーは傷つきながらも致命傷にいたる攻撃は防いでいく。
そして徐々にだがランサーの躰は光の粒子が出しながら消えていく。
マスターであるケイネスが死んだことによる魔力のパスが消えている中、怒涛の猛攻撃にただでさえ残り少ない魔力が失っていくのだ。当然の結末だった。
(頼む…! もう少しだけ持ってくれ…! 我が主の名誉のためにもせめて一騎だけでも…!)
自分を召喚してくれたケイネスの為にランサーは何としてでもバーサーカーを仕留めるつもりだった。何より武人としてこのまま首級を挙げずに消えていくのは余りに情けなかった。
「オオオオォォォ!!!!」
大きく声を上げ己の現界を超えた攻撃を繰り出すランサーの猛攻にバーサーカーは完全に押されていた。
「これで…終わりだ!!」
そして一瞬の隙を見つけたランサーは紅い長槍をバーサーカーの心臓を貫いた…はずが…
「ガァッ…!」
ランサーは突然、背中に鋭い痛みが走るのを感じた。次に右足、左足と激痛が走った。
一体何が起きたのだと己の両足は矢が突き刺さっていた。
背中にも矢が刺さっていた。
一体誰がと後ろを見るとクロスボウをもった
「首無し騎士… そうか貴様らは手を…組んで…いたのか…」
息も絶え絶えに悔しそうに顔を歪めるランサー。
残り少ない魔力の中、限界を超えた攻撃を仕掛け背中と両足にクロスボウの
彼に出来る事はせいぜい
ランサーは迫りくる死に何もできない…。
「ここまでか…」
弱々しく声を上げランサーは無念を滲ませた表情を見せていた。
バーサーカーはランサーは動くことが出来ない事を確認するとランサーが持っていた短槍の宝具である
「か…返せ…!」
奪われた愛槍を取り返そうとするも最早、腕どころか指先一本も動かせなかった。
「く…!」
この地に召喚され生前の願いを叶えようと意気込み新たな主の為にその己の武と忠義を捧げようとした。
しかし現実はどうだ…。 己の武は只一人の首級も挙げられず、忠義を誓った主であるケイネスを守り切れなかった。
なんと無様なのだろう…ランサーは己の愚かさと無力にただ嗤うしかなかった。
「いや ランサー・輝く貌のディルムッド・オディナ
貴殿はよく戦った。負けたのは運がなかっただけだ」
「…!? 貴…様は…?」
ランサーは突如、現れた男を見る。
黒い迷彩服を着こなしボディアーマーを身に着け顔をバリスティックマスクを付けた男だった。
男の背後には同じ迷彩服をきて武装した兵士が大勢いた。
「そうだな… 君のマスターであるケイネスを始末したものだよ
おっと…正確には仕留めたのは私の部下だな。」
「何…!」
つまりこの男が今世における主人であるケイネスを討った者だということか…!
「くっ…貴様がケイネス殿を…!」
目の前に
出来るのは無意味な殺気を籠った貌で睨みつける事だけだった。
「ハハハ。 怖いな。そう睨みつけないでくれ。
心臓が止まるじゃないか」
後ろの兵士達も笑った。
「貴…様ら…!」
ランサーは今すぐにでもこの男どもを皆殺しにしたいが最早、それは出来ない。
歯を食いしばり悔しさを打ち震える。
「失礼した…すまない許してくれ。
君には不愉快かもしれんが言わせてほしい。貴殿の戦いぶりは見事なものだった。現にバーサーカーをあと一歩の所まで追い詰めたのだからな。
何より今回の敗北は君のせいではない。君は騎士としてケイネスに忠義を誓いその武も捧げたのだ。君に落ち度はない」
「だが… 俺は…ケイネス殿を…マスターを守り切れ…なかった…」
嘲笑われる思っていたランサーだが仮面の男からは自分への称賛の言葉が降りそそいだ。しかし結果的にマスターを守れなかったの事実だ。
ランサーはただ戸惑っていた。
ランサーは懺悔するかのように力なく言う。
「いや、君はマスターであるケイネスの命令に従ってバーサーカーを挑んだ。
悪いのはケイネスだよランサー。何の疑いもなく我々に突っ込んでいき敗死したんだ。
君の躰は一つしかないのだ。サーヴァントと戦いながら遠くに離れていったマスターを守るなど不可能だ。」
「しかし…。」
「先ほども言ったが君には幸運の巡り合わせがなかった…。本当にそれだけだ。
もしも君の心意気と騎士道を信じてたマスターだったならこんな結末ではなかったかもしれん…。
だからこそ私は君を称賛するのだ。最期までマスターであるケイネスに忠義を誓う貴殿を。」
「……。」
ランサーは何も言わずゆっくり光の粒子になって消滅した。仮面の男、リカルド・ベルブランコの称賛の言葉に何を思って逝ったのかはそれはランサーしか分からないだろう。
「アレは本心なのか? 司令官。」
護衛として傍に控えているロドリゲスは司令官のリカルドに問う。
「勿論、本心だ。
私は英雄を何よりも尊敬してる。
力なき者達の為に立ち上がった者
悪の行いをして結果的に信仰され英雄となった者
己の欲望の為に動き偉大なる事を成した者
皆、この星の歴史に刻まれた尊敬すべき偉大なる者達だ。」
リカルドは幼いころから英雄という存在に憧れていた。常人には不可能な事をやり遂げ歴史にその名を刻んだ彼らに尊敬の念を強く持っていた。
彼らのようになりたい・彼らのように歴史に己の名を刻みたいとソレを原動力にして今まで歩んできたのだ。
「ふっ… 相変わらずだな。
それにしても今夜は大戦果だな。ランサー陣営と厄介なアサシン陣営を討ち取ったんだ。
アサシンが居なくなったことで俺達は自由に動き回れる」
「そうだ。もう暗殺の恐怖に怯える必要もない。
この戦争は我々に完全に有利になった。」
アサシンが消えた事でもう今までように必要以上に警戒する必要は無くなった。アサシンは弱いサーヴァントだがそれでも人間ではまず太刀打ちできないためにリカルドを始めとした連邦軍は移動するだけでも大いに苦労していた。
だがそれも今夜で終わりだ。
「それにしてもセイバーは出てこなかったな…。
ランサーとは尋常な勝負をしていたからてっきり救援にくるかと思ったよ。
奴らご自慢の騎士道というやつでな」
「急いできたのですがもう終わったようですね」
現れたのは猟犬部隊を引き連れたカロリーザだった。
結局、セイバーは討って出てこなかったようだ。
対セイバーに備えて迅速にランサーとアサシンを仕留めたがどうやら無駄骨だったようだ。
「討って出ると危険と判断したのだろう。大方、マスターの方が許可しなかったかもしれん。
どっちにしろセイバーは右手は以前、
リカルドはバーサーカーの方を見る。彼の手にはランサーの宝具である
本来ならランサーの消滅と共に消えてておかしくないのだがバーサーカーの宝具である
そのため本来ならセイバーの右手の傷は治癒してるはずだが未だに治ってない。
「出てこない以上、ここに居ても仕方がない。
全隊撤収するぞ」
リカルドの命で連邦軍は速やかに森から消えていった。
こうしてザンディアナ連邦軍はランサー陣営と厄介な陣営だったアサシンとそのマスターを屠る事に成功した。
ニ陣営の脱落は第四次聖杯戦争を大きく動かしていく。
ランサー陣営とアサシン陣営はここで脱落です。
次回も気長にお待ちください