ケイネスと言峰綺礼が脱落した次の日の夜…。
アインツベルン城ではマスターである衛宮切嗣。
サーヴァントであるセイバー。
切嗣の妻で聖杯の守護するアイリスフィール。
切嗣の部下である久宇舞弥。
マスターである切嗣は何とか動けるまで回復した舞弥と作戦の立て直しと城のトラップの確認・調整をしながら過ごした。
セイバーは城の周囲を見回っていた。
アイリスフィールは森の結界が異常が無いか確認などしていた。
「結界の異常はないわね…。これで最後。」
フゥ…と息を吐出しアイリスフィールは作業を終えた。正直、結界に異常は無いと分かっていたがそれでも何か体を動かしてないと落ち着かなかったのだ。
それでもアイリスフィールの胸の中は大きな不安が渦巻いていた。
それは昨日の夜、あの武装勢力を追うか追わないかで切嗣とセイバーはとうとう一瞬即発になってしまった。
幸いアイリスフィールが何とか場を収めたがあれ以来、切嗣とセイバーはギスギスした関係がより一層高まってしまいセイバーはマスターである切嗣への不信感がより強まってしまい切嗣も切嗣でますますセイバーを遠ざけるようになってしまった。
(聖杯戦争はマスターとサーヴァントが互い協力しあっていかないといけないのに…)
このままだと自分達は自滅するのが時間の問題だ…。
勿論、アイリスフィールも何とかしようとしてるが切嗣とセイバーの二人に出来た溝は埋めるのは彼女だけでは不可能だった。自分に出来る事は二人の溝はこれ以上、深くならないように場を持つだけだ…。
(私達はこの聖杯戦争に生き残ることが出来るのかしら…。)
考えれば考える程、どうしようもない状況に不安と恐怖が沸き上がっていく。
憂鬱の中、アイリスフィールは疲れた体を休める為に自室へと戻りベッドに身を預けた。
それからしばらく経った頃。
「マダム。お休みの中、申し訳ありませんが起きてください」
アイリスフィールは自分の体が揺さぶらっていることに気付き目を覚ます。
「あっ… 舞弥さん。 ごめんなさい 今起きるわ。」
舞弥に起こされたアイリスフィールは服を着替える。窓を見ると外は日が落ち暗闇が広がっていた。
「舞弥さん。今、何時かしら?」
「今は夜の8時です。マダム」
どうやら随分と寝ていたようだ。
「マダム。切嗣が部屋に集まって欲しいとの事です。セイバーも向かっています。」
「分かったわ。」
支度を終えたアイリスフィールは舞弥と共に自室を後にし切嗣が待つ部屋へと向かった。
数分の時間が経ちアイリスフィールと舞弥は切嗣が待つ部屋に到着した。
部屋の中には夫の切嗣とサーヴァントであるセイバーと見慣れない男性が椅子に座っていた。
「マダムをお連れしました。」
「ごめんなさい切嗣…。遅れてしまって…。」
アイリスフィールは謝罪し切嗣は構わないよと言う。
「それで切嗣どうしたの? それにその人は?」
アイリスフィールは椅子に座る一人の男性が気になっていた。恐らく切嗣の知り合いだろうと考えていた。
「アイリ、紹介するよ。彼はジャック・ライゼン。
僕の友人でこの聖杯戦争の参加者など調べてもらっていたんだ」
切嗣が紹介するとジャックは椅子から立ち上がりアイリスフィールにぺこりと頭を下げた。
「初めましてMrsアインツベルン。
ジャック・ライゼンと言います。以後お見知りおきを」
「初めまして。Mr.ライゼン
衛宮切嗣の妻でアイリスフィール・アインツベルンです」
互いに自己紹介を終え全員、着席した。
最初に口を開いたのは切嗣だった。
「それでジャック。ここに何をしに来たんだ?
君との連絡は全て電話か手紙、FAXのハズだ。それなのに直にきたという事は
何かあったのかい?」
切嗣の問いにジャックは重い表情しながら答える。
「切嗣…まず全員を集めてもらって済まない。本来なら電話などで伝えるはずだが傍聴の可能性あったからこうして直に来たんだ。あんた方にどうしても伝えなければならなくてな…。」
「それは一体…?」
自分に狩りを叩き込んでくれた師に紹介されたからジャックとはそれなりに長い付き合いだ。
用心深い彼がわざわざ冬木に来たということはよっぽどの事だ…。
そしてジャックは切嗣に方に向き重い口を開いた。
「切嗣…単刀直入に言う。
今すぐセイバーを
「なっ! 貴様!!」
ジャックの発言は決して見逃すことが出来ないものだった。
セイバーは不可視の剣を手に持ち今にも斬りかかろうとしていた。
「待って! セイバー!」
アイリスフィールは急いでセイバーを制止させる。
「……説明してくれるかい?」
切嗣はジャックを殺気が籠った目で睨みつける。
セイバーもまたジャックを睨みつけていた。次にふざけた事を抜かせば躊躇なく斬り捨てるといわんばかりだった。
常人ならショック死してもおかしくない殺気と視線を真っ直ぐ受け止めるジャックはただ冷静に口を開いた。
「この聖杯戦争にザンディアナ連邦が関与している。
お前ならこの意味が分かるはずだ…。」
ザンディアナ連邦…。
ジャックが放った言葉に切嗣は自身の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。
言峰璃正は教会から随分と離れたある地下施設にいた。
そこは
現在、
璃正は神田の連絡で教会の地下にある秘密の通路を使って
’今回の聖杯戦争に独裁国家ザンディアナ連邦が参戦している’と…。
「その情報は間違いないのだな…。神田君」
「間違いありません。日本政府と関わり持つ者に聞きましたし何より私は実際
神田は躰はあちこち傷が付き包帯を巻いている状態だった。彼は連邦の猟犬部隊に襲われ辛くも逃走することに成功したのだから。
「何という事だ…! よりによってザンディアナ連邦が参戦してくるとは…」
璃正は焦燥に駆られた顔を両手で顔を覆った。今回の聖杯戦争は最早、最悪なものに変わってしまった。
聖堂教会にとってザンディアナ連邦は不俱戴天の敵だ。
事実多くの代行者が殺され挙句の果てに洗脳され連邦の配下となったのだから…。
「璃正神父! 一刻も早く聖杯戦争を中止にすべきです!」
「自分も同じです! このままいけばザンディアナは聖杯を手にするのは確実です!
もし連邦が聖杯を手に入れたら…!」
「只でさえ連邦は強大だというのに聖杯を手にしたらそれこそ文字通り太刀打ち出来ない存在になるでしょう…。」
ザンディアナ連邦の恐ろしさを理解してる部下達は璃正に聖杯戦争を中止すべきと進言した。
「神田君…。 君の意見を聞かせてくれ」
璃正は神田に顔を向ける。
「私は…聖杯戦争を続行すべきです」
その言葉に周りはどよめく。
「神田さん!正気ですか!」
危険すぎる! 何を考えているのですか!
部下達は神田に非難を言葉をぶつけてきたが神田は手で制した。
「皆が言いたいことはわかっている。
だが聞いてくれ! 例え聖杯戦争を中止を宣言したとしても連邦はそんな事はお構いなしに続けるぞ。
それに連邦以外の参加者はいきなり中止だと言っても素直に首を縦に振ると思っているのか?」
「むぅ…」
璃正は小さく息を吐き周りは押し黙る。
神田の言う通りだ。ザンディアナ連邦は中止を宣言してもやめるような連中ではない。他の参加者だって同じだろう。
「しかし! このまま何もしないという訳には行きません!」
「分かっている。神父…自分に考えがあります」
「何だね?」
神田は少し間をおいてその案を皆に聞かせる。
「まず監督権限で一旦聖杯争奪を止めて残りの陣営と協力して連邦陣営を討伐するというものです」
この夜、聖杯戦争は更に混迷を深めていくのであった…。