無限魔力の少女は12歳から人生を謳歌する~特異体質の最強少女~ 作:ぬこだいふく
「貴様らか、わしの特等席を勝手に使いおって!」
食事中に怒鳴り込んできた非常識貴族様が言うには、この個室は毎日昼食で使っていて自分専用らしい。お店の店員が言うには、普段は使う人がいないからいつも彼が使っているという。別に彼専用というわけではないらしい。
「お店の人が貴方専用ではないと言っているのに、勝手に自分のものだと勘違いしている自称貴族様がなんのようでしょうか。」
「貴様!貴族の私に対してその無礼な態度は何だ!これだから最近の平民は教育が足りていないと何度もいっているのだ!」
自分の言う通りにならない人は教育が足りない決めつける頭の足りない人間らしい。平民を見下し、己が無能ですと自分で言っているようなものだ。
「さっさと出ていきたまえ!ここは今から私が使うのだ。平民如きが来るところではない!そもそもここの料理は高価なものばかりなのだぞ?貴様達に払えるわけがなかろ…う!?。」
インベントリからミスリル硬貨の一段上の黒い硬貨を取り出した。ラヴィ以外の全員が目を見開く。
黒い硬貨はミスリルの1000倍の価値があり、漆黒鋼という文字通りの黒い金属である。魔力に反応し、滅多に手に入らない貴重な金属で、商人達の商取引でもほとんど使われることはない。持っている人間は国から信用を得ているのと同じ意味を持つ。
ラヴィ以外のその場にいた全員がその黒光りする硬貨に釘付けになる。
「な…何故貴様がそんなものを持っている!さては盗んだな!衛兵に突き出してやる!」
自称貴族の手がラヴィに伸びる。流石にここまで来ると我慢が効かなくなる。
「触らないで!」
貴族は見えない壁にぶつかったかのように跳ね返り尻餅をつく。
「貴方は何度か見たことあるから貴族なのは知っています。見かける度に他人にひどいことをしていたけど、別に私にはどうでもいいし。私に構わないなら放置しようと思ってた。だけどもう許さない。」
「前から…見ていた?…何を言ってる?」
貴族が知らないのは当然である。ラヴィは魔法を使って姿を見せることなく見ていたのだから。
「ラヴィちゃん?」
驚き戸惑うおじいさんの方を向き、凛々しい表情を作り仁王立ちして名乗る。
「私は、ラヴィ・クロアニカ。この王都を6年間守り通したものです!」
その場に驚きの声が上がった。何のことだか困惑している一同にたった今入ってきた人物が説明をする。
「その子は、6年間に渡りこの国に障壁を張り続け魔物達から王国を守ったのよ。あのモンスターの大軍が攻めてきた<大侵攻>の時もね。」
その声のする方に振り返ると、国一番の大魔導師ウィルノーラがいた。
「様子を見に来たらこんな半分ゴミみたいな人間に絡まれてるとはね。ラヴィも運が無いわね。」
貴族をちらりと見る目は『この子に手を出したら殺す。』と言わんばかりの怖さであったが、ラヴィには顔は見えなかった。震え上がる貴族に首を傾げつつ、今日あったことを話す。
「そうかも。でもおじいちゃんとご飯食べるの楽しかったよ。道案内してくれたんだ~。」
「よかったじゃない。でもまだ病み上がりみたいなものなんだから無理しちゃダメよ。」
ウィルの心配してくれていることを感じさせる一言は、ラヴィにとって心底嬉しいもであった。昔一緒にいた兄同然の人のことを思い出すからだ。ラヴィにとっては数少ない過去の思い出である。彼と共に過ごした日々は忘れることが出来ないとても暖かいものだ。
だから、それに応えるためにも彼女の役に立てるように頑張ろう。助けてくれただけではない、この暖かさをくれた彼女のために。
「うん、ありがとう。」
唖然とする一同をよそに、ラヴィは自分に今できる一番の笑顔でウィルにお礼を言うのだった。
ディングダッド王国には3つの学園が存在する。そのうちの2つは王都にあり、一つは貴族などの上級階級の子供と事前に測定装置にて高い魔導適正を叩き出した者が多く通うアルバン学園、もう一つはウィルノーラが学園長を務めている試験に合格したものが入れるセイルル冒険者学園である。
どちらとも国営だが、アルバンは貴族達が自ら資金を提供し貴族に相応しい学園となっている。学園施設から食べ物、学園に務める教師まで貴族の息がかかっている。メイドも学園に百人以上所属しており、貴族に必要なありとあらゆる教育が行われている。
セイルルは冒険者を育成する学園として、才能のある者がその才能を活かせるように試験さえ合格すればどんな人物でも入学できるようになっている。施設は本来アルバンに充てられる費用を貴族達のお陰でこちらに回すことが出来たため、実践でも耐えうる程のものとなっている。教師はウィルノーラ自らが厳選し、戦闘能力や知識、指導能力に優れた者を教師として採用している。カリキュラムはウィルノーラと教師達が前年を元に毎年組み直すほどだ。三学科から多数の専攻に分かれていて、入学ししっかりと学ぶことが出来れば立派な冒険者になれるのは確実とまで言われている。
セイルル冒険者学園の試験は二日に渡って行われる。
一日目は、筆記による知識をみる。全体で行うものと学科ごとに行うものの分けて2つの試験を行う。
全体で行うものは、読み書きが出来ればほぼ満点を取れる内容である。問題も難しいものは多くない。
学科別の試験はかなり専門的なものになっている。
学科によってかなり違うが一番問題数と記入する量が多いのは支援学科である。次に魔法学科、戦士学科と続く。これは、地図の読み書きからモンスターの特性やアイテムの製造法など膨大な知識を要するが故である。魔法もかなりの知識を必要とするが、知識として確実なものはそれほど多くないのである。
魔法は使う者の魔力や精神によって大幅に変化するためにどこまでを知識として良いものなのか把握できておらず、教師達も毎年試験問題作成に苦労している。その為か問題数はそれほど多くはないが難易度は高くなってしまっている。
戦士学科は己の技術を文面化できる程度に読み書きが出来れば問題ない。その為か脳筋が多いと他の学科の教師には言われている。技術があっても読み書きができない者も半数近くいるため、基本的には2択の簡単な問題ばかりである。
一見かなり難しいようにも見えるのだが、やる気があり少し勉強さえすれば誰でも入れるようには難易度は調整されている。魔法学科だけはある程度の前提知識を求める為、少し難しいくらいだ。これは入学後にしっかりと学んでもらえれば良いと学園側が考えているからである。
二日目は、実技試験である。基本的な体力測定と学科ごとに分けられたものに分かれる。
支援学科はかなりの重量を背負って冒険者と共に歩くことになるため、重しを詰めた巨大な背負袋を背負っての持久走。
魔法学科と戦士学科は実際に模擬戦をしたり魔法を使用したりして教師に判定してもらう。
二日目の試験が終わった後、面接を行ってすべての試験を終了する。
奨学生はすぐに合否が発表され奨学金と入学の手続を行う。
奨学金といっても実際には生活補助が目的である。生徒の生活を補助することで、本来学園に通うことが出来ない人達も安心して通うことができるのである。
その代わりに『数年間の冒険者として国へ貢献する。』か『一人前になったら学園に一年間教師として務める。』などの義務を負う。
奨学金とは与えられたものであり、義務などで返さなければならないものではない。
しかし、貴族達と国の利益を考えると多少は自国で活動してもらわないといけなかった。冒険者達もそのことは理解しているため、皆何も言わずに義務を果たしてくれている。
筆記と実技の点数の割合と合格に必要な点数は毎回変わる。面接で話したことも含まれるため点数が足りていても不合格、足りていなくても合格なんてことはよくあることである。
「ウィル、昨日はありがと。」
「いいのよ。結局私は何もしてないし。」
昨日起こったことは、ウィルの登場によって誰も怪我することなく終わった。貴族も流石にウィルには手出しできないらしい。
「でも今日は面接で忙しくなるから一緒にはいれないわよ?」
「入学試験に面接なんてあるんだね。」
「そうよ。試験では見られない才能があるかもしれないから。ラヴィは試験免除なんだけどね。でも、入学した後は実力測定のテストあるからそれは受けてね。」
「はーい。」
今日は何もすることがなかったので、面接を見学することにした。次々と数分おきに入ってくる入学希望者。服装は様々で、平民の人達がよく着る布の服、冒険者風の革鎧にブーツ、貴族なのか綺麗なドレスの人もいた。
ウィルは次々と質問をしていく。そこに悩んだり、考え込んだりする様子はない。返答によって巧みに質問を変えて相手がどんな人物なのかを見定めている。
ラヴィは横にちょこんと座ってそれを眺めていた。ウィルは人柄ややる気など人の中身を見ようとしていたがラヴィは違った。
(この人の魔力は大きいし蒼いから、水とかの魔法が得意なのかな。)
面接に来る人達をずっと見ていたラヴィは、面接での質問の内容と体から出ている魔力を見てその人が嘘をついているのかいないのか、悪意はあるのかを見定めることが出来た。
次の人は、そこそこ階級の高い貴族の人のようだった。
質問に答える時は相手がウィルなのに傲慢な態度なのが気になった。どうやら、彼は代々騎士の家系で一族の男は全員が騎士団に所属しているらしい。そして、他人を蹴落としてでも成り上がりたいという欲が非常に強く出ていた。
「では、学園に入学するのはあくまで経歴に箔をつけ騎士団に入団する足がかりであるということですね。」
「そうだ、私の一族は騎士団に所属し、国へ貢献するのが決まりなのだ。冒険者などというつまらんものには興味がない。」
ウィルの魔力を見なくても面倒くさくなってるんだろうなというのはすぐにわかった。
彼の魔力は黒に非常に近い灰色だ。まだ他人を蹴落とそうという意思はないが、その機会があれば躊躇わずにやるだろうと思えた。
「…魔力結構黒いなぁ。」
ラヴィがそう呟いた途端。ウィルは何かを察したのかすぐに面接を終了させた。
彼が部屋を出ていってすぐに先の言葉の意味を聞いてきた。
「悪意を持っている人は灰色、悪意を実行に移す可能性があるに比例して黒くなっていくの。さっきの人はかなり黒に近かった。」
「そう…。」
少し考えた後、ウィルは一つ提案をしてきた。
―――合格発表の時、不合格者達の中から才能がありそうな人って見つけて欲しい。
読んでいただきありがとうございます。表現がうまく出来ず四苦八苦しておりますが、少しずつ書いていきたいと思います。