無限魔力の少女は12歳から人生を謳歌する~特異体質の最強少女~   作:ぬこだいふく

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入学試験の合格発表の日、ラヴィはウィルノーラから頼み事をされる。それはラヴィが魔力を目で見ることで才能が眠っている者を学園に迎え入れることであった。


三歩目

 セイルル冒険者学園は合否の発表も早いことで知られる。貧しい生活から早く寮生活に入りたい生徒もいるだろうとウィルが考えたためである。教師達の中にも似た考えの人が多いらしく、合否の判定は異常なまでの速度で終了した。

 

 その結果、わずか三日後には結果が学園正門前に張り出されることになったのである。

 

 

 

 

「んぅ~。」

 

 午前11時の少し前、200人近くと前年の1.5倍程になった志願者達の試験の結果発表が張り出された。ラヴィは先日ウィルに約束された為、合否が張り出されている約5時間はここで来る人を見定め、魔法の才能がありそうな人を見つけ出さねばならない。

 

(ウィルとの約束だしなぁ…。眠いけど…ものすごく眠いけど。)

 

 志願者達でまだ来ている人はいない。『早く来ても11時ぴったりに張り出すから、待つだけ時間の無駄よ。』とウィルが事前に知らせているためだ。

 

 今回のラヴィの仕事は、合格者に別館までの案内をすることだ。しかし、本当は合否の結果を貼り付けた掲示板の隣に座って不合格者の中から教師達が取りこぼした才能の芽を見つけることにある。

 

 11時丁度になり、数組が家族を連れてやってきたが、そこから昼過ぎまでほとんど誰も来なかった。ラヴィにとっては楽でいいのだが、この後残りが殺到してくると考えると少し頭が痛い。

 お昼にと、ウィルが持ってきたハムサンドはとても美味しかった。

 

「ん、お前は確か…。面接の時にいた平民か。」

 

 ぼーっとしていたからか、話しかけられるまで気づかなかったが。目の前にいたのは面接でウィルが唯一嫌な顔をした貴族様だった。

 

 変に絡まれたらやだなぁ。

 

 そう思いつつも、丁寧に合格したことへの祝福の言葉と別館への移動を促す。

 

「そうか。すまないな。」

「え…、あ…はい。」

 

 面接での彼のことを知っている人なら驚くだろう。彼が一見ただの平民にしか見えない少女に例を言ったのだから。

 

(え?彼って、こんな人だっけ?面接の時は危ない感じがしたのに…。)

 

 ちらっと彼の顔をみるとたまたま目が合ってしまった。しかし、彼は顔を少し赤くして顔をそらしてしまう。更には

 

「別館は向こうだったな。」

 

 と言って足早に去ってしまった。

 

 ラヴィは気付いていなかった。彼がは面接の時、自分をずっと見つめていたラヴィが自分に気があると勘違いし、それからラヴィのことが気になってしょうが無いのだということに。そして、面接の時は制服だったがラヴィが、今日はウィルに買ってもらった私服を着ていて、あまりの可愛さに彼が必死に冷静を取り繕おうとしていることに。

 

(面接の時、何かしたっけ?魔力を見てたくらいしか記憶に無いんだけど。)

 

 気が付かないうちに貴族を虜にしていたラヴィであった。

 

 

 

 

 それからというもの、特にこれといった人物とは出会うことはなかった。それっぽい魔力の持ち主は何人か見かけたが全員合格者だったし、教師達がそれほど取りこぼすとは思えなかった。

 

「あぁ…やっぱり駄目だっタヨ。頑張ったけど…私には無理だっタヨ…。」

 

 何人かのせいでほとんど隠れて見えなかったが、奥にはがっくりと肩を落とした少女の姿があった。どうやら、他国から来た人らしい。この国ではめったに見られないピンクの髪はツインテールになっている。成人前であろう少女の体は一箇所だけオトナな雰囲気を醸し出していた。

 

(…年上だから。年上だから大丈夫…多分。)

 

 ラヴィは彼女の胸を見つつ、自分にはまだ来ていない時間があると未来の自分に託した。

 

 彼女の胸…ではなく魔力を見ていると、他の人とは少し違うことに気がついた。魔力は人並みクラスなのに、体から放出されている魔力が極端に多いのだ。このままではすぐガス欠になってしまうレベルで。

 

(この感じだと意図的にやってるわけではないだろうし…体質なのかな。)

 

「あ…あの。」

「私に何か用があるのダヨ?」

「少し聞きたいんですが、貴方は…魔法使えるんですか?」

「…使いないんダヨ。魔力はあるはずなのに魔法が使えないんダヨ。」

「そうなんですね…。ごめんなさい、いきなりこんなこと聞いてしまって。」

「気にしなくていいんダヨ。私は気にしてないんダヨ。」

 

(魔法が使えないのは体の魔力を放出しきってしまっているからだろうけど…。あ、もしかして!)

 

「あの!お願いがあるんですけど!」

「な、なんダヨ!?」

 

 小さな名刺ほどのプレートを机に置く。そして、小さく走り書きをして手渡す。

 

「これを持って別館にいってください。」

「わかっタヨ。でもこれはなんナノ?」

「偽装不可の魔法金属プレートです。学園長の作ったものですのでなくさないようにお願いしますね。」

 

 事前に、ラヴィはこの金属プレートを数枚預かっていた。才能ありと判断した人に手渡し、学園長に会わせる為だ。走り書きしたのは、ラヴィが見た時の感想や。該当するであろう能力についてだ。

 今回は『魔力の放出量が桁違いすぎて自身の魔力が尽きている。』と書いてある。この後学園長とラヴィで再試験を行い、ラヴィの話を聞きつつ学園長が判断することになっている。

 

「行ってみるヨ!ありがとダヨ!」

 

 その後は、二人ほどプレートを手渡し時間となった。プレートを渡した3人は別のところで再試験だ。

 

 

 

 

 セイルル冒険者学園第6訓練場には5人の人影があった。ラヴィとウィルノーラ、そしてプレートを渡した3人だ。

 

「では、3人にはこれから再試験を受けてもらいます。名前を教えてね。」

「ローヌ・ルヌーレヌ…ダヨ。」

「レグダッド・バルデルトです。」

「…ル…ルポン・オグレイです!」

 

 3人共緊張した面持ちだ。いきなり連れてこられたら再試験で、しかも相手が学園長なら当たり前か。

 

「ローヌさんは、魔力供給補助を受けての魔力放出量の測定。レグダッドさんは、魔力濃度を測定するので、この金属棒に魔力を流し込んでね。ルポンさんは、ラヴィから防御魔法を教えてもらって耐久力の測定ね。」

 

「「「了解です!(ダヨ!)」」」

 

 まずは、ローヌとレグダッドの測定から始まった。ローヌはラヴィと手をつなぎ、レグダッドは金属棒をしっかりと握って試験の開始の合図を待った。

 

「試験…始め。」

 

 開始の合図とともにローヌは試験的に向かっての魔力を放出、レグダッドは金属棒に魔力を全力で注ぎ込んだ。

 

「ダ…ダヨッ!」

 

 ローヌの魔力放出力は予想通りかなりのものだった。ラヴィの魔力が一気に吸われていく。そして、レグダッドの握っていた金属棒は紺色から薄い桃色になっていた。

 

「そこまで、レグダッドさんは金属棒をこちらに。ローヌさんは休憩しててね。」

 

 測定が終了し、ウィルの元へ向かう。ウィルはレグダッドから受け取った金属棒を見て驚いていた。

 

「流石ね、ここまで魔力の濃度が高いなんて。これなら、魔法が魔力供給過多になって暴走するのは納得だわ。」

 

 レグダッドは試験の実技の際、試験場を吹き飛ばしかけるほどの魔法暴走を引き起こした。その時は魔力制御の未熟さのせいだと教師達は判断したのだが、それは間違いであった。

 魔力の濃度が高いということは、魔法を唱えた際の魔力の加減を少し間違えただけで暴走してしまうということだ。

 果汁ジュースに例えるなら、一般的な濃さが100%。もし濃縮して果汁が200%なら水で薄めて飲まなければ濃すぎて飲めないだろう。そして、300%や400%など更に濃い場合には、より多くの水が必要になる。しかし、ジュースなら水で薄めればいいが、魔力は薄める手段がないのである。

 

 ファイアーボールが100の魔力が必要だったとしよう。平均的な濃さであれば、100の魔力を消費すればいい。しかし、レグダッドは脅威の平均値の約5倍の濃さを持っていた。つまり、100の魔力消費に対し自身の魔力を20程使えばいい計算だ。

 しかし、そんな繊細な魔力制御を入学前の成人していない子供ができるはずがない。その結果、20以上の魔力を魔法に使用して魔法暴走したのだ。

 

 これを、ラヴィは初見で見抜いた。ウィルのラヴィの評価は限界上限一杯だったが、その上限を振り切った。

 

「レグダッドさんは、合格ね。」

「お…俺が合格…しかも魔法で?」

 

 剣士として、試験を受けていたレグダッドは空いた口が塞がらなかった。

 

 5歳の頃、魔法暴走を引き起こし、それ以来親に魔法を使うことを禁止され、『一族の落ちこぼれ』と呼ばれたのが悔しいからと必死に剣の腕を磨いたのだ。結果として、剣は合格ラインに届かなかったが、彼女はレグダッドの才能を見抜いたのだ。家族も認めてくれなかった自分を認めてくれたのだ。

 

 嬉しかった。やっと努力が報われた気がした。これから学園でも頑張ろう。そう誓ったのであった。

 

「ラヴィ、ローヌさんはどう?」

 

 ローヌの魔力の瞬間的、平均的な放出量は、どちらも桁違いであった。これなら自身の魔力などすぐに尽きてしまう。

 

「予想通り。魔力制御をしっかり身につければ瞬間的に高火力の魔法が使えるようなると思う。」

「そう。じゃぁ、ローヌさんも合格ね。」

「ほ…本当ナノ?ありがとうダヨ!」

 

 ローヌは嬉しさのあまりラヴィに抱きついた。余程嬉しかったのだろう、目は涙に濡れている。

 

「喜ぶのはいいけどルポンさんの試験が残ってるわよ?」

「ご…ごめんなさいダヨ!?」

 

 慌ててルポンに謝罪するローヌ。

 

「気にしないでください。ローヌさん、合格おめでとうございます。」

 

「ウィル、ルポンさんの試験は正直なくてもいい気がするの。」

「どうして?」

「彼女の魔力量は、平均の10倍以上。これで十分。」

「あら、なら最初からそう言ってよ。」

 

 ルポンは、試験がいらないと言われてもしかしてやっぱり不合格なのかとビクビクしていた。しかし、合格と言われて座り込んでしまった。

 

「あぁうぅ…。よかったですぅ…。」

 

 そしてついに泣き出してしまった。ボロボロの服、手入れのされていないぼさぼさの髪を見ると彼女の生活が酷いものだと用意の想像できた。

 

「よかったね。本当に良かったね。」

 

 ウィルは優しく頭を撫でながら言葉をかけ続けた。それは彼女が泣き止むまで続いた。




無事役目を果たしたラヴィ。これからは学園での生活が始まります。そして、ついにラヴィも一人暮らしが始まる!?かもしれません。
読んでくださっている方ありがとうございます。これからも少しずつ頑張って書こうと思いますのでお付き合いくださいませ。(๑•̀ㅂ•́)و✧

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