無限魔力の少女は12歳から人生を謳歌する~特異体質の最強少女~   作:ぬこだいふく

4 / 4
クラス振り分けの為に再度試験を行う新入生達。学力テストを免除され、適正の測定のみとなったラヴィは会場で早起きした分を寝直すことにする。目が覚め、最後に魔法科教師長と測定のための模擬戦を行ったが、3人の男に言いがかりを付けられ…。


四歩目

試験から一週間、入学の日がやってきた。といっても本格的な授業は明日からだ。今日はクラス振り分けの為の学力テストと教師を相手にした他の武器の適正の測定だ。入学試験では殆どが剣だったし、魔法も攻撃、支援、回復と分かれている為に能力測定をして分ける必要がある。

 教師達も生徒の未来の為とやる気になっている。高ランクの卒業生を出せば自分達も評価されるとわかっているから尚更だ。

 

「えぇ、無事試験に合格し入学することが出来た新入生の皆さん。知っている人がほとんどでしょうが、私が学園長のウィルノーラです。これから皆さんの学園生活が始まり、皆さんは教師達と自分を磨くことに努めていくわけです。ここに入学したからには貴族などの社会階級は意味をなしません。先に言っておきますが、ここでは実力が全てです。だからと言って、下位の者達をどうこうするようなことはあってはいけません。冒険者の評価を落とすような者は、即刻学園から去っていただきます。そのことには十分注意するように。」

 

 今のウィルの姿は凛々しい学園のトップに達人間のそれだ。普段の優しいお姉さんという雰囲気は一切ない。聞いている教師達や新入生達も一人を除いてウィルの話に聞き入っている。

 

(眠い…。私は学力テスト免除なんだし別にお昼からでもいいと思うんだけどなぁ。)

 

 ウィルと日常会話で魔法の知識などを話していた為、学力は問題なしとして午前の学力テストは免除されているのだ。

 

「魔法科 ローヌ・ルヌーレヌ。」

「はいダヨ!」

 

 既にウィルの話は終わっていて、新入生の名前を読み上げているところだ。

 

「特待科 ラヴィ・クロアニカ。」

「はぁ~い。」

 

 ラヴィの名前が読み上げられた途端に新入生がざわつく。

 特待科という今までにない学科は新入生達の間でしばらく話題になるのだった。

 

「以上、新入生計50名。皆さんを歓迎します。これで入学式的なものは終了。担当の教師達と共に学力テストと適性の測定に入りなさい。」

 

 学園長の説明の後、教師達が声を張り上げながら新入生達を各会場に案内していく。ラヴィは魔法科の測定の時間まで何もない。

 

(まだ寝足りないし、会場には測定を行う教師達がもう準備を開始しているだろうから会場で寝てれば起こしてくれるよね?全然寝足りないし。)

 

 他の慌ただしく動く新入生達を横目にゆっくりと教師達に混じって測定の会場へと向かう。ちらちらと視線が向けられているような気もするが無視する。自分の睡眠が第一だ。

 

 

 

 

 無事学力テストが終了し、適性の測定も新入生達の半数が終了した頃。ラヴィはスッキリとした気持ちで目が覚めた。測定をしている教師達の元へ向かうと、一番最後だからこのまま待っていて欲しいと言われる。

 

 教師達に混ざって何も考えることなくただ測定の様子を眺めているラヴィに他の新入生達は様々な視線を向けていた。疑問の眼差しがほとんどであったが、中には嫉妬する者や怒りを抱く者の目もあった。

 

 そんな視線が向けられているのは何となくわかっていたが、ラヴィにとってはどうでもよかった。

 

(おぉ、カラフルな魔力でいっぱいだ。)

 

 くらいにしか思っていなかった。先日追試験の時に会話をした3人のことも興味はない。話しかけられたら返せる程度に、追試験の時多少会話をした記憶が残っているだけだ。

 

「では、ラヴィ・クロアニカさん。貴方の測定は実戦形式の模擬戦。相手は魔法科教師長の私が努めます。よろしくお願いします。訓練場に出てきてください。」

 

 魔法によってマイクで喋っているかのように大きなアナウンスで順番が来たことを告げられる。教師達を待たせていることを考えることもなく、ゆっくりと訓練場の中央部に向かう。

 

(早く終わりにして、本でも読んでいよう。ご飯を食べるのもいいな。) 

 

 対峙した男は、35歳くらい。細身の長身でそこそこのイケメンなのだろうが、目の下にあるクマがそれを台無しにしている。そしてセンスのないネックレスや腕輪が悪い部分を引き立てている。

 

「今、ウィルノーラ様が障壁を最大まで強化なさっている。ここで多少暴れた程度では壊れないとは思う。ラヴィ殿のことだから確実に保証はできないが。」

「適当でいいですよぉ。防御してますからどんどん撃ってきてください。」

「そうか、ではいくぞ!」

 

 教師長の右手から雷、左手から炎が生み出され、両手の掌を近づけると2つが合わさって渦を巻いた。

 

「敵を貫く雷よ、焼き尽くす業火よ。互いの力を喰らい力を増せ。我が敵にその力を示し給え。」

 

 混ざりあった力の渦は螺旋を描き、両手から放たれる。

 教師長の最大火力である<雷炎の渦>はティア1から10の中で6に位置する。火力的にはティア5なのだが、難易度と周りへの影響を考えると6にせざるを得ない。周囲に可燃物があれば燃え、水があれば電気が走る為だ。

 

(最初から飛ばすなぁ。この威力を防ぐなら…これくらいかな。)

 

「障壁。」

 

 たった2文字の詠唱だが、ラヴィにとっては関係ない。膨大な魔力を持つが故に、圧倒的なまでの魔力操作の技術があるが故に、呪文の詠唱など必要ないのだ。それでも詠唱をしたのは、他の人達に詠唱が必要なのだと思わせるためである。

 

 教師長から放たれた魔法は、ラヴィの5メートルほど手前で見えない壁に衝突し、消滅した。

 

 しばらく、沈黙が流れ。

 

「流石です、ラヴィさんの測定はこれでsy…。」

「ちょっと待った。」

 

 誰かが教師長が測定終了の宣言を遮る。声がした新入生達の中から、3人の男が新入生達をかき分けて出てきた。

 

「今のは八百長ではないですか?教師長。」

 

 黒縁メガネをかけた男が、最初に声を上げた。

 

「そうだ。ズルをしてるに決まってる。」

「あんな魔法を防ぐ障壁を新入生が行使できるはずがない。」

 

 両隣の頬に入れ墨がある男とガリガリに痩せ細った男が続く。入れ墨の方は先程測定で雷の刃を使ってみせた。痩せた方は泥人形を10体も召喚してみせた。そしてメガネの男は黒い炎を纏う黒竜を召喚した。特にメガネの方はラヴィがいなければ主席だったであろうほどだ。

 

「どうすれば認めてくる?」

「私と戦ってもらう。勝てたら認めてやろう。不正防止のため、私達以外の魔法行使は禁止でな。」

「何を言っているんだ!それは障壁も使わないということだろう!死んでしまうかもしれんぞ!」

 

 教師長が声を荒げるのも無理はない。二人以外の魔法の行使を禁止するということは、今訓練場に張ってある障壁も解いた状態で戦うということだ。実戦も同然である。

 

(ウィルが見ているはずだし、危ない時は止めに入るよね。適当にやって早く終わらせたほうが楽でいいかな。)

 

「あぁ…順に相手するのは面倒くさいから3人まとめてでいいよ。」

「ラヴィ殿!?流石に貴方でも無茶ではありませんか?」

 

 いくら障壁が強くても主席クラスの3人から集中砲火を喰らえば、その合計火力は先程教師長が放った魔法の倍近くにはなるだろう。教師長も流石に耐えられないだろうと思っているらしい。

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。必要ならウィルが止めるでしょうし。それにこの人達相手でも負ける気どころか、傷を負うこともないでしょうから。」

「舐めたことを…。今言ったことを後悔するがいい。」

 

 既に男3人は訓練場のフィールド内に入っている。いつでも戦闘を始められる状態だ。二人に至っては、既に詠唱を始めている。

 

「絶望の炎よ。それを生み出す竜よ。数多の力を捻じ伏せたその力を今ここで見せよ!」

 

 メガネの頭上で爆発が起こる。煙が周囲を覆い隠し、晴れるとそこには絶望の竜の姿が見える。

 

「ギャアオオオオオオオアアアア!!!」

「竜よ!奴を消し去れ!」

 

 メガネの竜への指示と同時に待機していた二人も合わせて魔法を放つ。雷の刃が10本と巨岩の槍が5本飛来した。

 

「ラヴィ殿!」

「こんな弱いやつを特待にするとは学園長も大したことがないのかな?すぐに追い抜いてみせよう。この私がね。」

 

 勝利を確信し、メガネを抑えながらクククと笑う。教師長は呆然と眺めていた。

 

 徐々に煙が晴れ、薄っすらと周りが見えてきた頃。

 

「つまんない。やっぱり余裕だった。」

 

 傷どころか服に汚れさえ付いていなかった。

 

「ば…ばかな。3人の同時攻撃で耐えられる訳がない!それに魔石を使って火力を上げてあるのに!」

「へぇ~。そんなものを使っても勝てなかったんだ。」

 

 魔力量と障壁の厚さから白く半透明になっている障壁の中からラヴィは3人を睨みつける。

 

「さっき、ウィルのこと悪く言った。報いを受けるべき。」

 

 ラヴィが息を吸うと、周囲の気温が一気に下がった気がした。実際には周囲の空間にあった魔力が根こそぎ吸われたのだが。

 

「我は神を凌ぐ者成。創造<ドレッドノート>。」

 

 黒竜を召喚した時よりも遥かに巨大な銀色の渦が上空に現れる。

 その中からは機械仕掛けの人型が出て来る。歯車や各部品が金属音を上げながら絶え間なく動いている。頭部には青く光る目のようなものがある。左腕には3本の指のアーム、肘から指先の1メートルほど先まで巨大なチェーンソーが腕に取り付けてある。右腕には5本の指の人間と同じような手、そしてチェーンソーと同じ部分に巨大なキャノン砲が付いている。

 チェーンソーは人間どころか魔物ですら真っ二つにできそうで、右腕のキャノン砲は目標を跡形もなく消しされるであろう。

 この世界には、機械兵器は存在しない。似たような姿のものはあるが、ここまで複雑ではなく、ほとんど魔力を頼ったものだ。しかし、ドレッドノートは魔力に頼らなくとも動き続けることが出来。魔力によって全能力が強化されている。

 

「こ…こいつは…。」

 

 メガネが声を上げなくとも。その場にいた教師、新入生は既に気付いていた。

 

 

 この人型はかつてこの都市に住む全員が恐怖した<大侵攻>の時にこの都市を守った存在と同じものだということを。 




読んでくださってありがとうございます。更新がバラバラで申し訳ありません。これからもまったりとお付き合いください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。