Pの日常SS   作:天河 龍汰楼

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正月限定茄子が欲しかった


幸運の女神(鷹富士 茄子)

 

平凡で、特筆するほど幸運でも、不幸でもない。

プロデューサーになるまで、いや彼女に出会うまでは、そんな人生だった。

大学受験に落ちたことは、人並み以上の不幸だと自負するほどのことじゃないだろう。

まぁ、それ以来こうやって神社に来ることは無くなったが……。

 

「プロデューサー? どうかしましたか?」

「ん……なに、久しぶりに来ると変な気分になってな」

「あら、プロデューサーは神頼みしないんですか?」

「まーなぁ……経験上、困った時の神頼みは役に立たんからな」

 

なるほど~、と独特の間延びした口調で納得した言葉を漏らす。

物思いを首を振ってかき消す。

ニコニコとした彼女と目を合わせると、彼女はコテンと首を傾げた。

つややかな黒髪のボブショート、神秘的な琥珀色の瞳。

何よりも彼女の特徴と言えば、その幸運。

 

「カコさーん、もうそろそろ撮影はじめますよー!」

「は~い。じゃあ、行ってきますね。プロデューサー♪」

「おう、がんばってこい」

 

今年も幸運の女神としての仕事が多くなるだろうなぁ。

正月早々からお疲れさまなことだが、逆にこれ以上の稼ぎ時もない。

茄子には悪いが、頑張ってもらわないとな。

 

__________

 

 

特に何事もなく撮影は終わった。

今日の仕事はこれで終わり。

昼下がりのやることの無い時間帯なこともあり、茄子の提案で初詣をする。

 

「おみくじも引いていきましょうか」

「別に良いが、お前さん大吉しか出ないだろう」

「いえいえ、恋愛運とかの細かいところは結構違うんですよ~」

 

やっぱ出るのは確定なんだなぁ。相変わらずなんでも楽しむ奴だ。

いつも通りニコニコしながらおみくじを買ってわたしにも手渡してくる。

特に何気なく、おみくじを開く。

 

「ほら見てください、大吉ですよ♪」

「おーぅ。俺も大吉だったよ」

「願望、願い続けるべし。待人、来たり。あ、恋愛にこの人を逃すなって書いてありますよ、プロデューサー♪」

 

自分のおみくじを読むふりをして、茄子の危ない発言はさらっとスルー。

もう、なんて言って膨れた後、ぴょこぴょこと後ろに回り込んでくる。

 

「プロデューサーの恋愛は……素直に災いなし、ですかー。ん~?」

 

願望、叶いがたけれどいつかは成就す、ねぇ……。

叶うに越したことは無いだろうけども、意味深なことで。

にしても、恋愛のところが的確すぎる。これも茄子の幸運パワーだろうか。

 

「プロデューサーって好きな人がいるんですか?」

「はぁ? なんでそうなるんだよ」

 

積極的にアプローチしてるのはお前だろうに。

 

「プロデューサーは、誠実な人ですから。素直じゃないプロデューサーっていうのはあんまり想像がつかないんですよね~」

「誠実と素直は違うと思うがなぁ」

「つまり、いつものプロデューサーは素直じゃないんですね?」

「いや、そういうわけでもないが」

 

コロコロと表情を変えながら質問を続ける彼女。

相変わらず好意というか、気持ちを隠さないやつだ。

それが彼女の魅力でもあるんだがな、うん。

二人で参拝を済ませ、参道で甘酒を貰う。

 

「プロデューサーは何をお願いしましたか? 私は去年と同じです♪」

「いや、神頼みはしないし。特に何も願ってないが」

「……何のための参拝だったんでしょう?」

「ほら、新年のご挨拶だよ」

 

軽口を叩きつつ、少しぬるくなった甘酒をすする。

まだちょっと熱い。体があったまるのは良いが、猫舌にはきつい。

しばらく甘酒をすすっていると、茄子が唐突に口を開く。

 

「今日の夜って空いてますか?」

「んぁ? 別に予定は無いが……なんか用か?」

「ふふ、久しぶりに一緒に飲みませんか?」

 

あー、そういうことね。

アルコール無しじゃなくて普通に酒が飲みたいと。

別に問題は無いだろうが、茄子は酔うと理性に悪いんだよなぁ。

高垣Pぐらいのうわばみならいいんだがなぁ。間違いが起きないようにしないと。

 

「どこで飲むんだ?」

「私の家、なんていかがですか?」

 

間違いが起きそうな場所ナンバーワンだな。

 

「アイドルの家にプロデューサーが出入りとかスキャンダラスだわぁ……」

「ふふっ。大丈夫ですよ、なんてったって「幸運ですから」」

 

いつものセリフにかぶせて言う。

嬉しそうに笑う彼女に渋々と肯定を返しておく。

はてさて、初夜がダブルミーニングにならなければいいが。

 




限定かな子が当たりました
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