ポキポキ
深夜に鳴った音に目を覚ます。
もともと眠りは浅い。こうやって起こされてもどうこう言うことは無いが、まぁ人としては非常識に当たるだろう。
そして、オレにはそんな非常識な知り合いがいるわけで。
一ノ瀬志希。
非常識と言えば非常識な、あるいは非常に知識深い、オレの担当アイドル。
内容としては、暇だから会話しよう。とのこと。
研究でもしてたのかと思えば、失踪した先でなんとなく眠れないから。だと。
「あほか、お前は」
「にゃははー、そう言いながら電話してくれるキミのことが大好きだよー」
疲れた声でふざけたことをぬかす。
「とりあえず、今は何も考えなくていいだろ。明日はオフにしといてやる」
「いやいや、明日には帰るつもりだよ?」
「知らんな」
不服そうにぶーたれる志希を無視して予定を立て直す。
そういや、パッションとこの高森Pは毎日予定見直してるんだっけ、たいへんだなぁ。
「んで、今どこに居んの」
「んー……和歌山のどっか?」
昼まで仕事してたくせに、なぁ。
金持ちが羨ましいというほど俗ではないが、好きなことができる金があるのは良いものだ。アイツの好きなことかどうかは、考える理由がないが。
「プロデューサーは何してたの?」
「午前2時に眠らないのは幽霊か、気まぐれな猫ちゃんぐらいだろうな」
「にゃははー、謝った方が良いかなー?」
謝る空気には聞こえんな。
黙殺すると、それっきり志希は黙ってしまった。
窓を開けて、窓枠に腰掛ける。
「……こっちじゃ星は見えんな」
「……こっちは良く見えるよ」
「未来は見えるかー?」
「にゃははー、お先真っ暗ー♪」
おどけたやり取りで間を持たせつつ、すこしだけ考えをまとめる。
「ま、心配すんな。信じろとまでは言わん、それでも、理解を放棄するようなアホではあるまい? だからこそ悩むかもしれんが……お前さんはオレとは違うしな」
「……んー、70点?」
「赤点は回避だな」
俺なりに他人のことに興味を持ってみたというに。
一応は、担当しているアイドルのことだ。赤点回避ができれば重畳というわけにもいかない。プライドとは関係なく、興味がある。
「どうしたいんだ?」
「うーん。とりあえず、待っててくれる?」
「おいおい、オレを誰だと思ってる?」
「杏ちゃんにも負けない引きこもり、でファイナルアンサー!」
「100点だ、褒めてやろう」
わーい、と本気かどうかわからない喜びの声を上げる志希。
最近じゃあんまり引きこもってないが、双葉も似たようなもんだしな。
ケラケラと笑って窓枠から降りる。
「よし、担当からのお願いくらい快く聞いてやるよ」
「にゃふふ。ありがとね」
「さっさと帰ってこい。もうそろそろ夜もあけるからな」
「White nightってやつだねー」
「北極圏ロケか、考えとく」
特に意味もなく、笑った気配がした。
「眠れない夜に、夜もすがら。ギフテッドな志希にゃんも人だったってことかにゃー」
電話を切る直前に、そんな声が聞こえた。