「バラにヒマワリ、カサブランカもいるだろ。あと……」
ピコピコと片手でスマホをいじりながら、企画書に書き加えていく。
結構な大仕事だし、それに相応しいものにしてやりたいが……。
「あれ、プロデューサーさん? まだ残ってたんだ」
「んぁ? なんだ夕美か」
「なんだ、とは何かなー。もう」
怒ってますと言わんばかりに頬を膨らませるが、いつものことなので放っておく。
それより、丁度いいや。
「お前って、結婚式にはどんな花が良いんだ? なんか希望あるか?」
「へ……? 結婚式、のお花って……ふぇっ」
あ、赤くなった。こりゃ勘違いさせたかな。
面白そうだけど仕事が長引くのは嫌だし、さっさと解かないとな。
「ほれ、資料きてっから。目通しとけよ? ブライダル特集♪」
「え、あ。えっと! もー! からかわないでよー!」
勘違いするほうが悪い。っつうのも変な話か。
そうでなくとも人気のアイドルが電撃結婚なぞ流石にシャレにならん。
いや、したくもねーし。……まだはえーし。
「まぁ……こういうのは新婦の意見も聞かないとな?」
「茶化さないでって言ってるのに……もう」
資料を手渡すと、すぐに目を通し始める。
その間に俺はスマホのページを進める。
結婚式で定番の花を調べてみたが、どうにもイメージが浮かばん。
「……文香と、ナナちゃんかぁ……」
「珍しく全員結婚できる年齢だな。別枠の方はダメだったらしいが」
このロリコンどもめ。などと言いつつ、少し浮かない顔の夕美に視線を向ける。
「不安か?」
「うーん……そういうのじゃ、ないと思う」
「おう、そんな顔して何を抜かす。大方、力不足だと思ってるのか?」
「そう、かなぁ? そうかも」
確かに、阿部も鷺沢もそこそこ人気だ。
と言っても、夕美も十分に遜色ない人気を誇っているのも事実。
「気にするだけ無駄だろ。お前を待ってるヤツも多いんだし」
「ふふっ、そうだね。私は私らしく、頑張らなくちゃ!」
ん、やる気を出したようで結構。
……いっそ誕生花でも混ぜてやろうか。
「バラ、ヒマワリ、カサブランカ……定番だねっ」
「それが一番いいかと思ったんだが……なんか、いい案有るか?」
二人して顔を合わせて悩む。
一応、手がないわけじゃない。
いつものように、彼女を花として仕立てるのも、一つの案だと思っている。
「……ガーベラ」
彼女がぼそっとつぶやいた名前を企画書に書き入れる。
また顔が真っ赤になってるが、恥ずかしいんなら気をつけろよ。
ぽかぽかと頬を膨らませて叩かれたので、とりあえず消しておく。
「別に良いだろうに」
「私が恥ずかしいの! そういえば、今回はお花のドレスは無しなんだね」
気づきやがったか。資料にも載ってないはずだが。
「だって、いつものプロデューサーさんなら『お前を飾り立ててやる』って言うから」
「言わねーよ」
そんな痛いセリフを日常的に使ってたまるか。
そうでなくとも男が花屋に行くのは恥ずかしいってのに。
渋谷の店が使えるようになってからマシにはなったが……。
「今回は、お前は女の子だ。アイドルとしての相葉夕美である以上に、女の子の夢としての相葉夕美。つまり、お嫁さんなんだよ」
アイドルと花。この組み合わせで言うなら、夕美の隣に並ぶ者はいない。
だけど、それだけじゃない。相葉夕美も、恋して、憧れる女の子だから。
「だから、今回は……大切な人と結婚するイメージを大切にしたいんだ」
「大切な人と……」
相葉夕美は、花で飾らなくたって、綺麗で可愛いアイドルだってわからせてやりたい。
ぼくの担当しているアイドルは、世界一だ。そう信じているから。
「……そうだ、プロデューサーさんっ」
「なんかいい案でも思いついたか?」
「”私”がいいなっ」
ぱぁっと眩しい笑顔で、彼女はそう言い放った。
私、わたし、ワタシ。はて、そんな花があっただろうか。
「私、大切な人のために、咲く花を知ってるんだ」
慈しむように、目を閉じて、彼女はかみしめる様に言う。
「大切な人の隣にいるときに咲くのは、”恋の花”だよっ」
顔を真っ赤にしながら、まっすぐに俺を見つめて微笑む。
「……わかったよ。思いっきり咲いてこい」
「うんっ!」
ちなみに、タグにある通りデレステPなので[祝福の花]については調べました。
一応シリーズとしてはあと一人です。5人も決められない。
楓さんに恒常があればなぁ……。