ギャグセンスが欲しい(切実)
いつの間にやらみんな酔いつぶれていた。
3本目のウォッカを開けながら、少し辺りを見回す。
くすくすと嬉しそうに揺れながら笑っている楓さんが少しホラーだ。
一緒に飲んでいた川島Pや三船Pも完全につぶれて眠っている。
一応この宴会場は貸し切りなので、明日まで眠っていても構わないだろう。
二日酔いに苦しむかもしれないが、収録はほとんど終わっている。
ごくん、と一口。流石にうつ伏せはまずいだろうと、回復体位を取らせておく。
寝ゲロするほどわきまえないアホはおらんと思うが、万が一もある。
「楓さん、部屋に戻りますよ」
いまだに揺れている楓さんに声をかける。
彼女もかなり強いはずなのだが、浮かれて飲み過ぎたらしい。
「ぷろでゅーさ~?」
「ハイ、これ飲んでください」
酔い止めの漢方薬を水に溶かして手渡す。
酒と勘違いしたのか、一気にあおってむせた。
「ごほっ。これ、お酒じゃないですね」
「私は知ってます」
アイドルらしからぬ音が聞こえたが、少しは気付けになったらしい。
意識がはっきりしたらしく、ちびちびと顔をしかめながら飲み干した。
すっごい苦いらしい。俺は飲んだことないけど。
「ひどいです」
「あんなに飲む楓さんが悪いですよ。ちょっととはいえ明日も撮影あるんですから」
「むー……あ、そうだ♪」
何やらいたずらな笑顔をこぼしたと思ったら、いきなり両腕を伸ばしてきた。
見つめてもニコニコとするだけ。こうなると楓さんは譲らない。
「一応私も飲んでますから、危険なんですよ?」
「プロデューサーなら、大丈夫ですよ」
ため息を一つついて、そっと腰と首に手を回す。
いわゆる、お姫様抱っこだ。楓さんは嬉しそうに俺の首に手を回して身をゆだねた。
「ふふ、なんだかお姫様みたいですね」
「……実際、そういう役柄多いですよねぇ」
高垣楓というアイドルは、ミステリアスだ。
女神だとか、お姫様だとか。そういう、手の届かない者だ。
それが、世間一般における高垣楓。
実際には、ファンの間で25歳児などと言われる程度の人柄である。
親父ギャグが好きで、お酒が好きで、綺麗な衣装が好きな、普通の女性ともいえる。
「プロデューサーは、どう思ってますか?」
「何をですか?」
部屋でおろすと、彼女はそう問いかけてきた。
「私は、高嶺の花……でしょうか」
あんまり疑問に思ってなさそうな、答えの分かった問い。
はてさて、それは。
「酔っているんですか?」
「どうでしょう? 私でも、大胆だなぁ、とは思います。だって、プロデューサーはいつだって、私の隣にいますからね」
「だったら、聞く必要もないでしょう」
くすりと、彼女は一つ笑って、いつも通りの口調で続ける。
「妄言かい? なんて、もう限界♪ ふふっ」
イベントを走っているので、短めでごめんなさい