Pの日常SS   作:天河 龍汰楼

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宝くじでスカチケ当たったらほしいアイドル ③


酸いも甘いも一片に (白菊 ほたる)

 

不幸、と言っても人それぞれ。

 

「それでも、不幸か?」

 

遣らずの雨に降られて、二人で事務所のソファーに陣取っていた。

いつでも眉をハの字して、所在なさげにしている儚げな少女。

白菊ほたるの黒髪を撫でながら、なんとなく聞いてみた。

 

「……すぅ」

 

答えは返ってこなかった。

そりゃそうか。さっきまでレッスンだったもんな。

不幸な人生だったと、聞いているが。

さっきまでの彼女を見れば、それだけではなかったこともわかる。

 

「なぁ、ほたる?」

 

不謹慎だろうか。

努力しても報われなければ、不幸だろうか。

成功しなければ、不幸だろうか。

何もなければ、不幸だろうか。

 

「……んぅ? あ、すみません……寝ちゃってましたか……?」

「気にするな。あれだけ頑張ってたんだ、当然だろう」

 

寝ぼけながら、俺の肩から頭をはなす。

もう一度聞いてみようか、やめておこう。

 

「ほたる、今のところは幸せか?」

「ふぇ? は、はい。幸せ……です。……とても」

「どうして?」

「……プロデューサーさん?」

 

ほたるがコテンと首をかしげて覗き込んできた。

怪訝そうな顔に我に返る。

デリカシーが足りんな、まったく。

 

「すまん、別にお前を責めるわけじゃなくてな。もちろん、事務所が倒産することも無いぞ? 心配かけさせたか?」

「いえ、プロデューサーさんは……不幸を気にしないですから」

「そんなことはないさ。俺だってツイてないと思うことくらいある」

 

レジで1円玉が足りなかったり、仮眠室のベッドが空いてなかったり。

そんな些細なことでも、人は不幸だ。

 

「俺が気にしないのは……ただ、自信があるからだ」

「自信、ですか?」

 

あぁ、と静かにうなずく。

 

「そんな不幸くらい、俺なら吹き飛ばせる」

 

いつだって自信がある。

それだけの努力もしてきた自信がある。

どんな時でも大丈夫だと自信を持っている。

だから、不幸があっても気にしない。

 

「……すごい、です」

「お前もだよ、ほたる。ほら、もっとシャキッとしろ」

 

初めて会った時のように。

あの時のように強い意志を、また見せてほしい。

そんな思いを込めて、彼女の頭を少し強く撫ぜた。

 

「あぅ。でも、私なんか……」

「幸せも、不幸せも、大して変わらん。心の持ちようだろう? だったら、一片に片づけた方が得だ。トップアイドルになりたいってんなら、後ろ向いてる暇はもったいないしな」

 

そして、不幸を不幸のままにさせないのがプロデューサーの役目だ。

 

「ありがとうございます……。とってもとっても、嬉しいです……」

 

またウトウトとし始めた彼女の髪をとかしながら、少しばかり微笑む。

すこし、いや。かなり不幸だとして、何が問題だろうか。

この諦めの悪い少女一人、トップまで連れていけなくて、何が自信家か。

酸いも甘いも、花弁の一片ごとく蹴散らしてみせよう。

かつてないほどの自信をもって言える。

彼女は……俺の担当は、絶対トップになれる。と。

 




調べている最中に見つけた 神よ、足だけは引っ張らないで というセリフに痺れました。薄幸に見えて芯の強いほたるちゃん可愛い。
(ヴォヤージュ・ブレイバーが来るまでクールだと思ってました)
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