魔剣物語外伝 語られざる物語   作:一般貧弱魔剣

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番外編

かつて。一つの魔剣と呼ばれるものがあった。

 

曰く、破滅を呼ぶ。

 

曰く、破壊を生み出す。

 

曰く、死を撒き散らす。

 

曰く、手に入れたものは魔王と成り果てる。

 

ドラグナール大陸を長い戦乱と混沌の中へと落としたそれを巡り、人々は争い、傷つけあった。やがて、蓄積された憎悪と悲劇は世界を終末へと向かわせるべく三つの巨悪を生み出した。しかし、人類絶滅の危機を人々は跳ね除けた。大魔王は打倒され、千五百年にも及ぶ魔剣の呪縛から解き放たれた。

 

これは、それより遥か先で始まる物語である。

 

 

 

 

 

季節は夏に差し掛かったばかり。神話は終わり、三千年の時を経て魔法と錬金術はその全盛期から大きく劣化した。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ふぁ~……誰だぁ、オイラを起こしたのは?」

 

平凡な毎日を謳歌していた女子高生のモードレッドはある日、倉庫に仕舞われていた本の封印を解いてしまい、伝説の竜を名乗る精霊ビィと出会う。

 

「つまり、俺がその封じてたもんを砕いちまったってことなのか?」

 

「オイラの見立てではそうだな! んで、モードレッドには欠片の回収を手伝って欲しい。オイラの祝福を受けて魔法少女になって欲しいんだ!」

 

「えぇー……オレそういうのは小学校で卒業してたってのに……」

 

封印を解いてしまった反動で、本の中にビィと共に封じられていたあるもの(・・・・)が砕け散り、欠片が飛び散ってしまった。ビィは、その欠片を集めてほしいとモードレッドに懇願し、封印を破ってしまった申し訳無さからモードレッドはそれに了承し、魔法少女となった。

 

 

 

「お、おい! このフリフリしたのは何なんだ!?」

 

「ちゃんと鎧もついててかっこいいだろ? 由緒正しい戦闘装束なんだぜ!」

 

「いやそうじゃなくてだな!? すっげー落ち着かないんだけどこれ!?」

 

「それより来るぞモードレッド! クラレントを構えるんだ!」

 

始まったのは、非日常の連続。欠片を取り込んだものとの戦い。それはかつて、魔法と錬金術が全盛であった時代を再現するような、現実離れした現象の数々。しかし彼女はそれをものともせず、欠片を回収していく。

 

 

 

「その欠片は私が回収します、貴女には渡しません」

 

「お、オレとそっくりな顔……!?」

 

「うふふ、面白くなってきたわねぇ……」

 

しかし、彼女の前に立ちふさがる者がいた。モードレッドとそっくりな顔をした謎の魔法少女、Xオルタ。そして彼女を支援する謎多き少女、沙条愛歌。モードレッドは食らいつくも、Xオルタに敗れ欠片を奪われてしまう。

 

 

 

「全く、どうして外れて欲しい予測ばかり当たってしまうんですかねぇ……!」

 

「は、ハザマ兄ちゃん!?」

 

「彼女には指一本手出しはさせませんよ!」

 

次第に明らかになっていく、親しい人々の正体。幼馴染の一人で、兄のように慕っていたお隣さん、ハザマ。彼が大学で研究していたのは、モードレッドたちが追っていた欠片と同じものであった。

 

 

 

「はやく……にげなさ、い……」

 

「嫌だ! ハザマ兄ちゃんを見捨てるなんてオレは、オレは絶対に嫌だ!」

 

「モードレッド! それはダメだ、モードレッドまで飲まれちまうぞ!」

 

「力を貸しやがれ、クラレントォォォォ!」

 

ハザマは彼女を欠片の魔獣からかばい、重症を負ってしまう。その時、彼女の心のなかで何かの鍵が外れる音がした。クラレントは開放され、今までとは別人のように変貌するモードレッド。

 

 

 

「そうか、知ってしまったんだねモードレッド」

 

「父さん、オレは……オレは一体何なんだよ……!?」

 

「知る必要がある。モードレッド、君の先祖が何者であったのかを。そして君が何者なのかを」

 

父から語られる、衝撃の事実。かつて魔法少女であった曾祖母が封じたというものの正体。そしてモードレッドの秘密。古の時代に巻き起こされた戦争の戦端を開いた者。初代魔王にまつわる魂の流転。

 

 

 

「オレはオレだ、他の誰でもないモードレッド自身だ!」

 

「よく言った! なら俺もとことん付き合ってやるぜ!」

 

「ハザマさん、あんちきしょう付き合ってる相手がいるのに別の娘口説いてますぜ」

 

「ちょっと体育館裏に来てくださいエド」

 

「いやそういう意味じゃねぇから!?」

 

内から湧き上がる闇を制するべく、ハザマが研究をしている大学へとやって来たモードレッド。ハザマの研究仲間であるエドワード・エルリックにその覚悟を問われ、己は己であると答えを得た。そして、力に飲まれないよう試行錯誤が始まった。

 

 

 

「今度は負けねぇ!」

 

「くっ、以前よりも強いっ……!」

 

「あらあら、これはひょっとしてひょっとするかも?」

 

Xオルタとの再戦。以前は歯が立たなかった相手に善戦するモードレッド。

 

「やべぇ、このままだとこの街が跡形もなく消し飛んじまうぞ!?」

 

「こりゃ、ヤバイな。争っている場合じゃねぇ」

 

「ええ、少しだけ手を貸してあげましょう」

 

「へっ、オレが手を貸すんだよ!」

 

しかし、激戦は欠片へ目覚めるための衝撃を与えてしまった。暴走する魔力、街そのものが消し飛んでしまいかねないそれを止めるべく、二人は一時休戦し共闘する。

 

 

 

「「海に行きましょう(行くとしよう)」」

 

「玲とハゴロモは突発的すぎんだよ!」

 

「どうだエド、オレ様の水着姿は可愛いだろ?」

 

「クッソ悔しいけど超かわいいですはい!」

 

「孫は結構早く見れるかもしれんのぅ」

 

「ジャンヌ、もっとこっちを向きなさい! 顔が写りませんよ!?」

 

「お父さん写真を撮るのやめてください! 恥ずかしいです!」

 

「は、ハザマ兄ちゃん……その……オレの水着、どう、かな?」

 

「おーいハザマー、戻ってこーい。……ダメだ立ったまま気絶してやがる」

 

とある休日。幼馴染二人の突発的な思いつきから仲の良い友達や幼馴染、そしてその関係者らと共に海へとやって来たモードレッド。束の間の平和な日常を謳歌し、改めて大事なものを再認識する。

 

 

 

「この森には昔、処刑場があってのう。今でも首を探した罪人の魂が……」

 

「ピィィィィッ!?」

 

「こらこら、子供を必要以上に怖がらせるのはやめなさい。そしてディアーチェはどさくさに紛れて私のポケットに手紙をねじ込まない」

 

「チッ、バレておったか。だがドッキリラブレター作戦以外にもまだ手は残っている……!」

 

「お化けなんてぶん殴ればいいんですよ!」

 

「いやいやいやジャンヌ、普通幽霊に物理は通用しねぇって」

 

「俺の炎が鬼火代わりかよ……もっとこう、かっこよく派手にだな……!」

 

「ルークさん森が焼けるのでやめてください、というか先生が火傷したら木刀で頭かち割りますよ?」

 

「いや待てアリーシャよ、何故木刀を常備しておるのだ。というか何故俺の腕に当たり前のように腕を絡めておるのだ」

 

肝試しで森の中を散策するモードレッドとハザマ。ただ手を繋いでいるだけなのに、何故かドキドキが止まらない。しかし欠片の怪物は空気など読んではくれないのだ。

 

「あれは幽霊じゃねぇ、あの爺さんに欠片が宿って操られてるんだ!」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

「……爺さんが呼び出した骸骨の群れに錯乱しながら突っ込んでったぞオイ」

 

「モードレッドはおばけが大の苦手なものでして……」

 

幽霊の正体は、脅かし役として待機していた老人モモンガであった。彼は欠片の力に操られ、モードレッドの大嫌いなゾンビや骸骨を次々と呼び覚ます。モードレッド、ある意味大ピンチ。

 

 

 

「貴様がモードレッドか、さっそくだが死ね」

 

「なんなんだ、こいつ……!」

 

「モードレッド! あの弓はヤバイ、絶対に撃たせちゃダメだ!」

 

そして。現れた3人目の魔法少女、アルタイル。

 

「お前にあの人を殺させはしない! ここで消え果てろ!」

 

「オレは決められた運命なんて認めねぇ、オレはオレが行きたい道を行くんだッ!」

 

繰り広げられる大魔法戦。かつてこの大陸より失われた、神秘の再演。苦戦を強いられる中、現れたのは好敵手Xオルタだった。

 

「個人的に恨みもありますので、ちょっとボコられてください」

 

「邪魔立て、するなァ!」

 

「モードレッド、今だ!」

 

「行くぜ、オレのありったけをぶち込んでやる!」

 

 

 

欠片が全て集った時。待ち受けていたのは、討ち果たされたはずの絶望。

 

「もっとだ。もっと、私を楽しませてみせろ!」

 

「ハゴロモ! 正気に戻れ!」

 

欠片の力に囚われ、享楽のために暴れまわる従姉。

 

「イライラするのよ、当然のようにあの人の隣りにいる貴女を見てるとね……!」

 

「じゃ、ジャンヌ!? どうしちまったんだよ!?」

 

欠片の力で、己のうちに秘めていたものを憎悪とともに吐き出す親友。

 

そして。

 

「汝の使命を果たせ。我は大悪、討ち果たされるべき者である」

 

「いいや、オレは諦めない! 必ずお前を正気に戻してやるぞ、ビィ!」

 

ドラグナール大陸に三千年の時を超え、今再び伝説が幕を開ける。

 

 

 

 

 

「え? 私は黒幕じゃないわよ?」

 

「嘘つけ触手ロリ」

 

「どう考えてもラスボス」

 

「オイラもそう思う」

 

「ひどいわ~、こんな可憐な少女を捕まえてラスボスだなんて」

 

「貫禄ありすぎじゃねぇか」

 

「同感ですね」

 

「残当アンド残当」

 

「……ユウキちゃんにバラしちゃおっかなぁ、机の引き出しの奥に隠してる……」

 

「やめてくださいしんでしまいます」

 

「??? なあハザマ兄ちゃん、えっちゃんはなんで急に震えだしてんだ?」

 

「……貴女は知らなくてもいいことですよ」

 

 

 

――魔剣少女プラズマ☆モードレッド、開幕。








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