バグラチオン作戦その14
激しく砲火を交わす共和国軍ワイアット艦隊と連合軍のモゴメリー艦隊は、戦闘を開始してからずっと共和国軍優位に推移していた。
敵に対して2倍の数と後方の重砲兵師団も合わさってそれ以上の火力を叩きつけるワイアット艦隊に対し、寡兵で応戦せざるを得ない連合軍は当初から劣勢を覚悟せねばならなかったのである。
「怯むな!斜線陣を敷いて敵の火力を逸らしつつ一ヶ所に砲火を集中するんだ」
「敵との接触時間を伸ばしつつ、味方の増援が来れば戦力で逆転できる!」
モゴメリー提督の指示で連合軍第10艦隊は陣形を横陣から斜線陣に変更しつつ、右翼と中央が距離を稼ぐ間に戦力を集中した左翼でもって重厚な壁の様な横陣を敷く共和国軍の右翼に火力を集中していく。
「閣下、敵は斜線陣を敷いて応戦する模様です。こちらも陣形を変えますか?」
旗艦バーミンガム艦橋にて幕僚の1人がワイアット提督にそう伺うも、しかし提督の余裕に一切の乱れは無かった。
「無用だ、右翼には無理な反撃をせず防御に徹して抑えれば良い。その間に残りの中央左翼がこのままの陣形で押し込めば、後は敵は自然と崩壊する」
ワイアット提督がそう予想した通りそもそも寡兵の連合軍は斜線陣を敷いても右翼突破の戦力が足りず、また共元々守成を得意とする和国軍が無理な反撃をせず防御に徹した結果右翼の壁は鉄壁と言うに相応しかった。
連合軍の攻撃が跳ね返されている間に前進した左翼と中央の艦隊は敵艦隊を射程に納め、ただでさえ右翼突破に戦力を割いていた連合軍の薄い防衛ラインに次々とビームやレールガンにミサイルが突き刺さっていく。
月面の宇宙に爆発の次々と打ち上がり連合軍は何とかしようと虎の子のMSストライクダガーやMAコスモグラスパーを発進させるも、共和国艦隊に近づく前に戦艦の長距離ビームや対空ミサイルで叩き落とされる。
決死の覚悟で敵の迎撃を掻い潜った先でも、今度は待ち構えていた共和国軍MSハイザックの数の暴力の前に擦り潰され追い回され無惨な残骸を虚空に漂わせるだけであった。
「戦艦ワリャーグ通信途絶、護衛艦ポメリー戦線を離脱していきます!」
「出撃したMA隊全滅!同じくMSも戦力の90%を喪失に撤退の許可を求めています」
「味方艦隊から救援を乞う通信多数!既に我が方左翼は壊滅状態です」
「艦隊の残存数45%に低下、このままでは突破された左翼からこちらが包囲される危険性が…!?」
旗艦のオペレーター達からは次々と悲痛な報告が送られ、モゴメリー提督は指揮官席の肘掛けを思いっきり握り締めて怒りを堪えようとする。
当初の計画では敵の右翼を突破し中央の敵旗艦バーミンガムを討つ事で敵に混乱を引き起こし、敵を各個撃破する筈であったが今や自分達の方が敵に各個撃破されつつあったのだ。
「く、突破に拘り過ぎて戦力を引き抜き過ぎたか。しかしまだ右翼の突破に成功さえすれば…それに援軍は既に近くに着ている筈だ!?」
僅かな希望に縋りモゴメリー提督は自身が立てた作戦に拘泥していく、自身でもこの作戦は失敗だと悟っていてもこれを完遂する以外彼と連合軍には生き残る目は無かったのである。
更にここで粘り月本部プトレマイオス基地で再編を終えた味方艦隊が到着すればまだ逆転の目は残されていた、だがその最後に残った希望の糸をオペレーターの悲鳴を上げるかの様な叫び声が断ち切った。
「艦隊後方から新たな敵艦隊を発見!これは…機雷原で足止めしていたはずの敵本隊です!?」
「なん…だと…!?」
このタイミングでの新たな敵の登場に思わずモゴメリー提督は腰を浮かし動揺を隠せず驚きを言葉にして露わにしてしまう、驚愕の表情に歪みながら思わず艦橋内に聞こえる声でそう言ってしまうモゴメリー提督だが、しかしこの時既に連合軍は提督の声を聞く暇も無く新たな敵の出現と包囲の危機に混乱と悲鳴と戸惑いの三重奏を奏でていたのである…。
ワイアット艦隊とモゴメリー艦隊、両軍が激しい砲火の応酬を続ける中シャワルに進撃を続けている共和国軍第1、第3、第4連合艦隊でも動きがあった。
「ワイアットめ、このまま美味しい所を1人で持っていくつもりか!?」
共和国軍第4連合艦隊提督ジーン・コロニー提督はワイアット艦隊が戦場に到着し戦端を開いたとの報告を聞き、苛立たしげにそう呟く。
現在シャワルに迫る各連合艦隊は敵が敷設する機雷原によって身動きが取れず、遅々として艦隊の速度を上げる事が出来なかったのだ。
敵と交戦できずまた幾度となく機雷原に遭遇して将兵のフラストレーションが溜まる一方であり、幕僚の中にも多少の被害を織り込んでも無理やり突破すべきではと言う意見さえで初めていたのである。
コリニー提督にすればやるなれば他の艦隊にやって貰い、自艦隊の被害を引き受けさせようという魂胆であるが名目上のトップである共和国軍宇宙艦隊司令長官マクファティ・ティアンム大将の前では口を閉じざる得ず、その間にも時間だけが刻々と過ぎていった。
このままただ指を咥えてシャワルがワイアット提督の手に陥ちるのを見ている事しか出来ないかに思えたが、しかしコリニー提督の焦りは他の提督も同様に感じていたのである。
共和国軍第1連合艦隊提督にして宇宙艦隊司令長官であるマクファティ・ティアンム提督の元には、連日各艦隊の諸提督から様々な献策が持ち込まれていた。
このまま功績をワイアット提督1人に独り占めされるにを嫌った他に、将兵のフラストレーションと士気低下を気にする声もあり“大胆な方法“で機雷原を突破すると言う声が大きくなっていたのである。
しかしながらティアンム提督はそれらの提案に頑として応じずその尽くを退けたのである、曰く「功を競って将兵に要らぬ犠牲を強いるは邪道である」として血気に逸る者提督を諌めつつも、彼自身状況の打開策を検討していた。
そして実際にワイアット艦隊が敵艦隊と交戦を開始したタイミングでティアンム提督は、ある決断を下す。
連合艦隊総旗艦タイタンの艦橋でモニターに各艦隊の提督達の姿が映し出され、等々決断したのかと逸る提督達の前でティアンム提督はある指示を出した。
その内容は実に共和国軍らしく単純明快で馬鹿馬鹿しいものであったが、しかし現状シャワルのその“先“を見据えるティアンム提督にあってこれ以上の策はなかったのである。
こうしてある提督は渋々とまたある提督は粛々と言った風に準備を進め、各連合艦隊は所定のポイントに集結していく。
3個連合艦隊600隻を越す大艦隊が一ヶ所に集まり、流石に連合軍の機雷敷設艦隊も敵に何か仕掛けて来ると悟り同じく各宙域に散っていた敷設艦を呼び寄せ、それまで以上に敵の進行方向を塞ぐべく濃密な機雷原を敷設する。
それは正に機雷で出来た檻と言って相応しいものであり、上下左右どちらの方向に行ったとしても機雷原が立ち塞がる様に巧妙に配置されていた。
しかも今回は相手の熱に反応する熱探知式となっており、戦艦が発するスラスターの燃焼や爆発に反応して機雷が自動で動く様セットされている。
ここまで少なくない犠牲を払ってきた連合軍機雷敷設艦隊の総力を上げたその仕事は、共和国軍が保有する掃海艇を総動員しても手に負えない程濃密で執拗であったのだ。
完全に敵艦隊を封じ込める事に成功した連合軍敷設艦隊の司令官は、その事を後方で督戦しているはずのモゴメリー提督に伝えようとするが、その彼等の眼前で共和国軍が奇妙な動きを見せる。
密集した敵艦隊はその前面に輸送艦を集結させ、箱型の船体から次々とパネルが運び出されていく、MSや作業用MA(ボールのこと)が運び出されたパネルを綺麗に並べ始め、その妙な行動に連合軍は訝しんだ。
そうこうしている内に長方形に並べ慣れたパネルは、太陽光の反射を受けて輝き始める。
「ソーラー作戦開始!」
ティアンム提督号令の元、並べられた発電用のソーラーパネルが光輝き始め前方の一点を強く照らし出す、その余りの眩しさに連合軍の将兵は思わず目を覆い、一点に集中された太陽光エネルギーの圧倒的な熱量により機雷原が次々と爆発していく。
艦隊のエネルギー補助に使われていたソーラーパネルとこれまでに解放した各都市の発電用パネルを用いて、送電用のマイクロウェーブ波を攻撃に転用する即席の「アルキメデスの鏡」で連合軍の機雷原を焼き払っていく共和国軍。
太陽光の圧倒的なエネルギーによって誘爆し高温を発する艦隊正面の機雷原、艦隊の周囲を囲んでいた他の機雷原も熱探知システムが災いして誘爆する機雷に惹かれて次々と溶鉱炉となった艦隊正面方向に突っ込んでいく。
あっという間に機雷原はモノの見事に焼き払われた、この成果には敵は無論の事作戦を計画し実行したティアンム提督自らも驚いた。
精々正面を焼き払い艦隊が通れる程度の穴を開けるだけだと思われソーラー作戦が、結果として機雷原の包囲網それ自体を壊滅させるなど彼は予想だにしていなかったのである。
この想定外には共和国軍の諸提督達も驚いたが、彼等は逆にこれもティアンム提督の計算の内ではと思い還って提督への評価を大きく上げた。
今や縛る物も無くなった共和国軍はそれまでの鬱憤は晴らすが如く猛進撃を再開し、自分達渾身の機雷原包囲網を破られた連合軍の機雷敷設艦隊は急いで逃げようとするも、復讐に燃える共和国軍から逃げられる筈もなく次々と戦艦のビームや追撃のMSからの執拗な攻撃を受けて全滅していく。
連合軍機雷敷設艦隊の司令官はモゴメリー提督に知らせる暇もなく艦と共に運命を共にし、今や自由の身となった共和国軍の大艦隊は一路月面都市シャワルを目指し、暴力の津波となって押し寄せていくのであった。
共和国軍本隊が戦場に到着した時、戦況は最終盤を迎えつつありワイアット艦隊によって作戦が破綻し戦力の大半を失った連合軍第10艦隊の残存艦隊に向けて、残りの獲物に群がる獣が如く共和国軍は後方から襲いかかったのである。
重砲兵師団の陽電子砲が戦艦のビームやミサイルが容赦なく敵艦隊に叩き込まれ、出撃したMSハイザック、マラサイ、ガルバルディ、ゴブリンやMAビグロにガトルが終末に謳われる
戦艦1隻当たり10機以上ものMSが飛び交い、連合軍は必死に対空砲火で迎撃を試みるも次から次へと襲撃するMSの大群に抗う術も無く飲み込まれ、月面上でも火星師団を包囲しにかかっていた連合軍地上部隊は頭上から共和国軍MAの猛爆撃と艦砲射撃を受けて灰燼に帰していった。
「敵を一兵たりとも逃すな!手柄の上げ時だぞ」
「七面鳥撃ちだ、他の部隊に横取りされるなよ」
「撃って撃って撃ちまくれ!!逃げるヤツは
最早戦いは戦いの体を為しておらず、完全に包囲された連合軍は共和国軍にとって単なる功績稼ぎのマトにしか過ぎず、寧ろ味方同士で競うように遮二無二攻め立てていく。
連合軍は逃げ場を求めて逃げ惑うも降伏すら許さない共和国軍の勢いの前に次々と部隊は壊滅し、何とか血路を開いて月面都市シャワルに逃げ込めたのは第10艦隊旗艦を含む数隻のみであった。
こうしてシャワル近郊の戦いは連合軍の壊滅に終わり、共和国軍はアリの子1匹逃す隙も無い大軍勢で持って都市を完全に包囲下においたのである。
時にC.E.71年5月24日、地球北米時間では深夜を廻り24日終わりかけの出来事であった…。
何とか月面都市シャワルに逃げ込んだ連合軍第10艦隊だったが、旗艦を含めて数隻のみで最早艦隊の体を為しておらずまたどの艦も深く傷付いていたのである。
大きな損傷を負った旗艦から降りたジョージ・モゴメリー提督は、月面都市シャワルの接収した高級ホテルに設置した司令部に逃げ戻っていた。
司令部の執務室の席にドカリと座り込み敵を罠に嵌め意気揚々と出撃した時とは違い今や提督の顔には焦燥感と脂汗が滲み出ており、戦いが始まって僅か1日足らずで彼の艦隊は壊滅し書類上の存在となっていたのである。
都市から出て防衛ラインを構築していた連合軍の陸戦部隊は反撃に出た共和国軍によって殲滅され、敵揚陸艇から降下した陸戦部隊に当たっていた部隊も既に音信普通になってから久しい。
最早都市を守る戦力は何処にもなく完全に丸裸の状態であり、後は白旗を上げて降伏するかそれとも玉砕するしか彼等には道は残されてはいなかったのである。
しかしどちらを選ぼうとも彼等の末路は一緒であった、例え降伏したとしても連合軍が月で行った数々の蛮行を月市民が許す筈がなく、共和国は民衆達への生け贄の祭壇に自分達を投げ込むだろう事が予想された。
それを思えば自爆覚悟の玉砕しか残されてはいない様に思われたが、しかし追い詰められたことでモゴメリー提督はある悪魔的発想に行き着く、そして執務室の通信機を手に取り生き残った士官全員に集合命令を出した。
「おい、士官で無事な者全員集合させろ新たな指示を出す」
提督に呼び出された艦隊の生き残りの士官達は、てっきり提督が降伏の決断を固めたのだとばかり思っていた。
しかし執務室に入って恐る恐る伺った提督の表情がこれから投降しようという将の気配で無い事に気づき、集まった士官達は何か良からぬ事を考えているのではと悪い予感が脳裏をよぎる。
「これより最終作戦を命令する。今から言うポイントに…」
一方その頃月面都市シャワルの地下に潜ったレジスタンス組織「自由シャワル同盟」は、都市に潜入した共和国軍の工作員からの情報で都市近郊の戦いで連合軍が大敗し共和国軍が勝利し現在都市を包囲しているとの情報を受け取っていた。
元々彼等「自由シャワル同盟」は共和国軍の進撃に前後して同都市で一斉蜂起をするて筈であったが、都市を守る連合軍第10艦隊提督ジョージ・モゴメリー提督の執拗なレジスタンス狩りと都市中に隈なく配置された警備兵によって身動きが取れなくなっていたのである。
その為レジスタンス内にはこのままでは都市は解放されてもその功績は全て共和国軍のものとなり、自分達はただ手をこまねいているだけで都市解放に何ら協力も成果も残せないとあっては戦後彼等の立場は無きに等しかった。
都市の政治家や有力者からの資金援助やを受けるレジスタンス組織にあって、その存在意義を問われる事態に彼等の焦燥感は募るばかりであった。
しかし、地下に潜る彼等のネットワークに連合軍の不審な動きがキャッチされる、それは都市内部の重要拠点や主要道路に配置されていた連合軍がトラックに乗って撤収を始め、また宇宙港でも慌ただしく出航準備が進められ連合軍は撤退の準備を始めたと言うのだ。
それ自体は包囲下にある敵が逃げ支度を始めたのだと言う事で納得はできた、しかし同時に宇宙港に潜ませた諜報員から連合軍はMAに爆装させているとの情報も入りこの明かに撤退とは矛盾する動きに「自由シャワル同盟」のレジスタンス幹部達は頭を捻る。
何故撤退しようと言うこのタイミングでMAに爆装させるのか?破れかぶれに打って出ると言った風でも無く、その疑問には新たに届けられた情報によって解き明かされた。
都市主要施設から撤退した連合軍は発電所や大気循環施設、水道局、リニアレール駅、市街地の各所等々都市のライフラインを含む重要インフラに、爆発物を満載したトレーラーを向かわせていると各地に潜入させた諜報員から報告が届く。
ここに来て「自由シャワル同盟」のレジスタンス幹部達も連合軍が何を目論んでいるのかに気づいた、連合軍は都市を撤退する置き土産にシャワルの主要施設を破壊し、都市機能に致命的なダメージを与えようと各地に爆発物を設置しようとしていたのだ。
これで何故MAに爆装させているのかにも彼等は合点がいく、連合軍は都市主要インフラを爆破しトドメに爆撃によって都市そのものを焼き払おうと言うのである。
基本的に宇宙都市と言うのは密閉空間である、隔壁一枚挟んだ向こう側は何者の生存も許さぬ冷たい漆黒の宇宙が広がり仮に都市内部で大規模な破壊と火災が発生した場合、例えシェルターに逃げ込めたとしても多くの犠牲者が出るのは必至であった。
「自由シャワル同盟」のレジスタンス幹部達は直ちに行動に出る事を決定する、連合軍による
ラジオや電波放送ネットと言った主要情報伝達施設は連合軍によって接収或いは占拠封鎖されていた為、予めこの日の為に災害時用の緊急放送回線に仕込んだ文章の内容を使って都市全域に潜むレジスタンス達に蜂起の合図を送る。
『秋の日の…』
この日の為に用意されたそれは、旧世紀地球の古史に倣いとある秋の日の情景を謳った詩の一節から引用したものであり、「自由シャワル同盟」の先達である遥か昔の伝説的なレジスタンス達が海の彼方から来援する味方と共に自分達の国を邪悪な敵国から解放すべく蜂起した故事に準えたものであった。
連合軍の将兵達は突然災害時用の緊急回線から詩の一節が詠われ、災害放送に似つかわしくないその内容に彼等は何が起きたのかと疑問に思ったが、放送が終わるや否や都市各地のマンホールの下やビルの地下或いは隠された秘密の地下通路から一斉にレジスタンス達が飛び出して来る。
都市全域で突然現れた「自由シャワル同盟」のレジスタンス達に、撤退の準備を進めていた連合軍兵士達は虚を突かれレジスタンス達の銃弾の前に碌な抵抗も出来ず倒れていく。
「事前の計画通りに放送施設、郵便、警察、官庁街を抑えるんだ!不審なトレーラーには注意しろ、連合軍が爆発物を仕掛けているぞ」
「発電所、大気循環施設、水道局には特別チームを派遣する。俺達の街に傷一つつけさせるな!」
レジスタンス幹部達は自ら武器を手に取って陣頭指揮に立ち仲間を鼓舞し、放送施設を奪取に成功したレジスタンスの一部は都市全域に向けて市民の蜂起を促した。
「我々は自由シャワル同盟である、今こそ我らが故郷を敵の手より取り戻す時が来た!同志達よ今こそ立ち上がる時だ」
この日の為に共和国軍からの援助も受けて潤沢な武器弾薬を貯蓄していたレジスタンス達は、それらを市民に配ることで戦力比を一気に傾けようとしたのである。
蜂起を促す放送を受けて今まで連合軍に協力させられてきた警察官達は持ち場を離れてレジスタンス側につき、また彼等の協力を受けて警察署に突入したレジスタンス達は逃げ出そうとした警察所長らを捕えて武器庫を開放しレジスタンス側についた警察官達に配っていく。
時に25日未明人工の都市であるシャワルは夜の時間であり都市の各所では蜂起したレジスタンスと抵抗する連合軍との戦闘によって火の手が各所に上がり、ドーム内は燃え上がる炎が煌々と照らす赤と立ち込める黒煙の黒に染まっていた。
レジスタンス達から事情を聞いた警察の爆発物処理班は都市のライフラインに仕掛けられた爆発物を処理すべく敵から奪った装甲車で戦火の中を駆け抜け、それを阻止せんと連合軍はバリケードを築いて抵抗しようとするも、都市の地下に縦横無尽に張り巡らされた秘密の抜け道によって逆に背後を取られ包囲されていく。
都市内部から兵の大部分を引き上げていた連合軍は市内に残る兵力だけでは到底対抗出来ず、司令部に何度も増援を乞う通信を送るもその司令部からは無視され、連合軍兵士達は都市各所で分断包囲されレジスタンスに投降する者が相次いだ。
市民達も蜂起に加わり数の上では戦力を逆転させたレジスタンス達は堂々と官庁街を行進制圧し、最早誰の目にもシャワル解放は目前に思われた。
しかし未だ不気味な沈黙を続ける連合軍本隊が籠る宇宙港の守りは硬く、軽装備のレジスタンス達だけでは近づけず都市解放その最後の一歩は遠い所にあったのである。