機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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今回少し“アレ“な描写がありますので、苦手な方は読み飛ばして可です。

つまりいつものSEEDクオリティ、と言う奴です。


第36話

バグラチオン作戦その16

 

月面都市シャワルを開放した共和国軍は早速後方との連絡線を繋げ、都市には続々と後方の補給拠点から物資がリニアレールで運び込まれる。

 

ここまでの戦いで物資が欠乏しかかっていた共和国軍将兵は、運び込まれた膨大な量の物資を前に目を輝かせ指揮官達は当初の目的を完遂し、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 

都市内部に派遣された共和国軍の陸戦部隊やパワードスーツ歩兵達はレジスタンス達と協力して都市各地に隠れ潜む連合軍兵士達の残党狩りに精を出し、また工兵部隊は戦闘によって受けた都市内部での被害の修繕や道を塞ぐ残骸の撤去作業を行なって行く。

 

都市開放に浮かれ市民達の顔は明るく道ゆく人々は交通整理を行なっている共和国兵士達に、笑顔で手を振り或いは心ばかりの差し入れをするなど彼等なりの感謝を示す一方で、別の通りでは苛烈なリンチが行われていた。

 

連合軍に協力した裏切り者達が“善良な“市民達に狩り出され、殴る蹴る服を破かれる髪を剃られるなどの暴行を受け、中には連合軍にモノを売った、買った親しげに喋ったなどという理由で売国奴やスパイと書かれたプラカードを首から下げられ、街灯に吊るされて見せ物にされる始末。

 

時折路地裏では乾いた音が鳴り響き、レジスタンスの捕虜となった連合軍兵士達がそれまでの鬱憤を晴らすが如く激しい暴行を加えられた末に、気が済むと抵抗出来ない兵士達をレジスタンス達は次々と銃殺し処刑していく。

 

中にはどさくさに紛れて脱獄し火事場泥棒や略奪を行う犯罪者も現れ事が露見すると自分達の罪を連合軍に擦りつける始末、騒然とする都市に上陸した共和国軍は治安部隊や憲兵を派遣して事態の収拾と治安秩序の回復に奔走しなければならなかった。

 

臨時の捕虜収容所が頑丈なビルの地下や警察署の独房に公園や広場など面積のある所に設置され、レジスタンス達から捕虜を引き取りまた現地の治安組織と協力して脱獄した犯罪者の再逮捕や市内の警備などを行い、漸く事が治ったのは地球標準時で昼過ぎの事であった。

 

収容された連合軍捕虜達の多くは顔や体のあちこちに暴力を振るわれた痕跡があり、敵とはいえその哀れな姿に多少なりとも気の毒な気持ちになる共和国軍兵士達。

 

憲兵達がやっとの思いで任務をやり遂げたその時、都市郊外で残党の探索を行なっていた兵士から妙な施設を発見したとの報告を受け、その時は特に何も考えず近場の手が空いた人員を派遣し念の為工兵隊の爆弾処理班も同行させ施設の調査を命じる。

 

この時まで共和国軍は何故連合軍は都市の破壊に拘ったのか?またレジスタンスや市民達が過剰なまでに捕虜となった連合軍兵士達に暴力を振るうのか?その理由に検討もつかずあまつさえ疑問にすら思っていなかったのだ。

 

しかしこの時の判断が地獄の釜の蓋を開ける事になるなど、命令した憲兵隊の指揮官や命じられた調査隊の誰もが予想だにしていなかった…。

 

調査を命じられた憲兵隊の一団は耐爆車両に乗ってきた工兵隊の爆発物処理班と合流してから、都市郊外にある施設に慎重に踏み入っていく。

 

周囲から隔絶された地区にあるそれは、奇妙な事に窓が一つもなくまた中からでは無く外から閉じられたかの様な建てられ方になっており、不気味な気配を漂わせていた。

 

固く閉ざされた扉を何とかこじ開け、中に入った調査隊は照明もなく真っ暗な通路をライトで照らして奥へと進む。

 

隊員の1人が壁にライトを向け、おそらくこの施設を指すネームプレートなのか掃除も手入れも碌にされていないのか汚く汚れたそれを読んだ。

 

『シュービッツ区特別収容施設』

 

不気味な文言が並ぶそれを調査隊は気分が悪くなりつつも奥へ奥へと進んでいった、そして彼等がそこで何を目にしたのかについては、残念ながら当時共和国軍のどの報告書にも調査記録にも残されてはいない。

 

全ては軍が機密指定をし関係者全員に緘口令を敷いた為であり、公的な記録からは全て抹消され軍の機密情報データバンクにのみ登録されたからだ。

 

しかしながらこの施設発見を気に共和国軍兵士達からは連合軍兵士への同情や憐憫といった感情が消え、かわりに激しい憎悪と復讐心が生まれこれ以降の戦いが更に苛烈さを増していったと言う事は事実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時にC.E.(コズミック・イラ)71年5月25日、地球標準時早朝、先の「オペレーションスピットブレイク」の失敗により後がなくなったザフトは、地上に残された力を振り絞ってパナマに軍を集結させていた。

 

南北アメリカ大陸と大西洋太平洋の両洋を陸と海で繋ぐパナマは旧世紀から続く交通の要衝として栄え、現在は連合軍に残された宇宙への玄関口であるマスドライバー「ポルタパナマ」を守るべく大規模な防衛部隊が集結させている。

 

連合軍は何重にも張り巡らせた防衛ラインに高高度から侵入する突入カプセルを狙う対空陣地、対MS地雷、対MS塹壕、巧妙に偽装されたトーチカ群に戦車部隊などの機甲戦力、更にはパナマの地下秘密工場で生産されたばかりの虎の子のMSストライクダガーも配備されその、総兵力は連合軍全体の30%にも及んだ。

 

先の連合軍総司令部アラスカ基地攻略で「サイクロプス」の自爆で戦力の大半を喪失したザフトには、これに真っ向から挑んでマスドライバーを攻略しパナマを占領する力は残されてはおらず、しかしプラントの現政権パトリック・ザラは失った権威回復を目的にパナマ攻略を強行を決定する。

 

だが宇宙でも地球と宇宙との中間地点であり補給路の要衝である宇宙要塞ボアズでは現在共和国軍の大艦隊と交戦中であり、増援を含む宇宙からの援護は絶望的かに思われた。

 

しかし共和国軍の真の目的が月の連合軍にあり、ボアズ戦線が一旦小康状態に落ち着いたのを期にプラント本国からパナマ攻略の秘密兵器を積んだ輸送船を出発させ、小規模の護衛と共に地球軌道上の連合軍宇宙艦が張り巡らせた警戒網を掻い潜って予定日時にパナマ上空に到達する。

 

これは、先の共和国軍による月への一斉侵攻により艦隊の大半を地球軌道上の守りに派遣していた連合軍月本部は虚をつかれ、連合軍は慌てて地球軌道上より艦隊を呼び戻し結果としてその警戒網に穴が生じていたのだ。

 

この幸運に救われた輸送部隊は予定時刻通りパナマ上空に到着し、速やかに地上に向けてとあるモノを投下する。

 

地上では既にザフトによるパナマ攻略戦が始まっており、パナマ周辺は両軍が撒き散らしたNJとジャミングの影響で戦況は要として知れず、事前の計画通り降下地点を確保出来ているのかさえ不明であった。

 

任務を完了させ急いで地球軌道上を離れようとした輸送部隊であったが彼等の幸運はそこまでであった、パナマ上空の軌道を守る連合軍第4艦隊の哨戒機に見つかったザフトは輸送船を見捨ててでも逃げようとするが時すでに遅く、急行した艦隊によって包囲殲滅される憂き目に遭う。

 

ザフト輸送部隊に生存者は無く連合軍は当初宇宙からの敵の降下と増援を阻止したと思ったが、それが誤りであったことに気づいた時既にパナマ基地との通信は途切れていた。

 

輸送船が軌道上より投下した秘密兵器「グングニール」は強力なEMPを発生させ周囲の電子機器を破壊する戦略兵器であり、マスドライバー周辺の降下地点を決死の覚悟で確保したザフトはこれを一斉に起爆させ、発生した電磁波により連合軍の通信機器は疎かバッテリー駆動の兵器が次々と行動不能になっていく。

 

その中には連合軍虎の子の量産MSストライクダガー部隊も含まれており、当初こそビーム兵器の実用と量産化に成功しその優位を持ってザフトのMSを次々と撃破していったが、グングニールの影響をモロに食らい機能を停止してしまう。

 

特に超伝導体で構成されるマスドライバーには効果覿面であり、グングニールから発せられた超高出力のEMPによって施設その物が崩壊しこうして半日と経たずにパナマは陥落することとなった。

 

ザフトMSの前で連合軍のMSは完全な棒立ち人形となり、それまでの鬱憤やアラスカでの恨みを晴らすが如くザフト兵達は身動き出来ない敵機や投降した連合兵に対し、無慈悲な砲弾をもって応えた。

 

パナマのあちこちでザフトパイロット達による虐殺が相次ぎ、トドメとばかりに洋上のボズゴロフ級潜水艦から対地ミサイルが雨の様に降り注ぎパナマの地下司令部を壊滅させ、それだけで無くパナマ周辺の民間空港や港までをも巻き込んで爆撃していく。

 

このパナマにおける虐殺を軌道上の連合軍第4艦隊は黙って見ている事しか出来ず、しかし彼等が記録した軌道上からの映像はザフトの戦争犯罪の証拠として、連合軍と加盟国国内に浸透するブルーコスモスのプロバカンダ報道に利用され、ナチュラルのコーディネイターに対する増悪をますます煽る事となる。

 

プラントの公式見解では虐殺の事実を否定してはいたものの、当の評議会議長であるパトリック・ザラは堂々と「アラスカでの蛮行に対する懲罰である」とメディアの前で述べ、国民の敵愾心を地球に向けるように仕向けていく。

 

当初は単なる独立戦争であったプラントと連合との争いは、アラスカを契機に次第にコーディネイター至上主義を掲げるプラントとコーディネイター廃絶を掲げる連合ナチュラルとのイデオロギーの違いによる人種間闘争に変化し、互いが互いの殲滅を目指す絶滅戦争へと成り果てていく事になる。

 

尚同じ頃地球は南米ジャブローの共和国軍地上軍でもパナマ攻略戦の様子はモニターされており、マ・クベ中将を含む地上軍司令部はザフトが投入した戦略兵器を調査すべく戦闘終結後に偵察機や諜報部隊を潜入させ、その結果現地でより詳細な情報と記録をグングニールの破片と虐殺の証拠と共に回収する事に成功していた。

 

地上軍での調査の結果は直様共和国本土へと送られ、以降共和国軍はグングニール対策の対EMP処置を施す事を決定し、これを受注したグラナダのアナハイム社が更に儲けたのは別の話である。

 

共和国軍地上軍に協力する南米解放戦線はこれを気にパナマに侵攻し奪われた領土を奪還するべきだと息巻いていたが、連合軍は北米大陸から救援部隊を速やかに送り込んでおりまたグングニールの被害地域がマスドライバー周辺に限定され、パナマ全域では依然として連合軍は戦力を保っていた。

 

特に第2第3のグングニールを警戒して連合軍は軌道上の警戒網を強化し、また引っ切り無し哨戒機や早期警戒機を各地に飛ばしており、共和国軍地上軍や解放戦線が戦力を移動させれば立ち所に察知され先制攻撃されてしまうのは必定に思われたのである。

 

これらは理由に合同作戦会議でマ・クベ中将は解放戦線の提案を退けるも、代わりに連合軍に占領されている旧南アメリカ合衆国首都ブエノスアイレスへの奪還を目的とした攻撃計画を明らかにした。

 

旧首都奪還作戦に備えて、解放戦線にはジャブローの工場で新造されたMSの内ゴブリンだけでなくハイザックも引き渡す事で解放戦線メンバーの意識をパナマから逸らした。

 

だが同じ場で地上軍のイーサン・ライヤー大佐などは準備不足を理由にこれに否定的な意見を示すも、しかしマ・クベ中将がアフリカのキリマンジャロ基地に送る補給の一部を渡す事を約束し、また新型MSマラサイをコジマ大隊に優先的に配備する事で同意したのである。

 

地上軍内部の派閥だけで無く現地の協力組織やゲリラとの折衝を続けるマ・クベ中将の心労はどれ程のものかと副官のウラガンは心配するも、そのマ・クベ中将は表情や態度に出す事なく精力的な活動を相変わらず続けていくのであった。

 

因みに共和国地上軍との協力関係構築を機に、各地の反連合反ザフト組織による美術品の強奪事件が多発しブラックマーケットでの取引を通じて何処かへと送られていたが、それがマ・クベ中将と一体どんな関係があったのかについては関係者の誰もが口を閉ざしている事をここに記す。

 

尚著名な美術品の移送や宇宙への引越し業務を行う事で政財界で高名なビスト財団の船が、時折共和国を訪れる様になったのは大戦勃発後暫くした後であったと言う。

 

 

 

 




いつものアレでお茶を濁す、これがこの作品の常である。
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