機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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第39話

プトレマイオス基地攻囲戦その3

 

連合軍月本部ことプトレマイオスクレーターに築かれた巨大基地要塞、プトレマイオス基地とそれを守る大型レーザー砲台「オプティクス」を攻略すべく201、203高地を抑えた共和国軍は同地に堅牢な砲陣地と観測所を設置した。

 

各連合艦隊、火星師団、重砲兵師団より集められた大小様々な重砲やレールガン、中距離支援MS部隊、大型ミサイル、ロケット砲システムが陣地に配置され、特に目を引いたのはコロンブス級輸送艦から直接高地頂上に運ばれた巨大MAであった。

 

「よーしゆっくりと降ろせ、来たばかりでぶっ壊すんじゃないぞ」

 

「ワイヤーの取り付け強度、ちゃんと調べたか?こいつはただの兵器とは違うんだ」

 

船底を魚の開きの様に大きく左右に開いた特別仕様のコロンブス級輸送艦2隻から、ワイヤーに吊るされて高地頂上にゆっくりと巨大な影が降ろされていく。

 

共和国軍カラーの濃緑色と灰色の2色で塗り分けられたそれは、巨大な砲門を抱えた胴体の左右から脚部が伸びており、先のコンペイトウの戦いで活躍した共和国軍巨大MAビグ・ザム、その量産型モデルが今まさに月の荒涼たる大地に2機降り立ったのである。

 

量産型ビグ・ザムと名付けられた巨大MAは元となった機体と違い60mから40mにダウンサイズされ、原型機にあった20門を超えるビーム砲をなくした分コンパクトになり武装は胴体部に抱えた大型陽電子砲1門だけと量産性を意識したコストダウンを達成していた。

 

しかし輸送には専用のコロンブスを必要とし自衛兵装も無く、一応装甲表面は耐ビームコーティングが施されているものの防衛は護衛機に頼りきりであった。

 

非常に用途が限定されるものの共和国軍は伝統的に大火力主義であり、長距離高威力かつ大量の砲で雲海の如く攻め寄せる敵を焼き払うというコンセプトのもと、度々この様な巨大兵器もといロマンの塊を建造している。

 

共和国軍火星師団第3軍から高地を引き継いだノーギ司令率いる攻城砲部隊に配備された量産型ビグ・ザムは、その圧倒的火力で敵基地の一角を崩し内部への突破口を開く役目を期待され態々本国からここまで運ばれて来たのだった。

 

専用輸送艦のコロンブスから直接所定の射撃位置に降ろされた2機の量産型ビグ・ザムは(歩行機能はあるものの非常に歩くのは遅い)、機体内部に備えた大型戦艦用のジェネレーターを起動し胴体部中央の陽電子砲にエネルギーをチャージしていく。

 

そも陽電子砲とはC.E.71年現在の時点で核兵器など大量破壊兵器などを除けば最大の火砲であり、連合軍が建造したかのアークエンジェル級やオーブのイズモ級にも搭載されるなど、その威力は折り紙付きであった。

 

本来ならば戦艦や要塞砲クラスに搭載される巨砲であり、巨大で複雑なシステムと膨大な電力を必要とする為MSやMAへの搭載は多くの困難が伴ったのである。

 

しかし前述の通り共和国軍は呆れるほどの大火力主義者であり、この陽電子砲の大量配備を実現すべく様々な方法を模索した結果一応の成果としてメガランチャーやバストライナー砲など、MSが“運用“するサイズにまで小型量産化する事に成功していた。

 

小型化に伴い威力は半減しまた専用の動力炉やMSのジェネレーターを1射毎に使い捨てにするなど運用面で大きな制限があり、共和国軍が夢想するMSやMAに戦艦以上の火力を持たせて優れた機動性と自由な射角による飽和攻撃行うと言う計画は破綻する結果となる。

 

(因みに上記の案をある程度現実に落とし込んだのが重砲兵師団設立の理由であったりするが、それは本筋とは関係がないので割愛する。)

 

結果共和国軍はMSへの陽電子砲搭載は時期尚早(つまりまだ諦めてはいない)だと判断し、計画を変更して陽電子砲の運用のみに特化した兵器を建造していた。

 

つまり最強の火砲の機動化を一旦は諦めて、今度は恐竜的に膨れ上がったシステムを用いて生まれたのがこの量産型ビグ・ザムであり、言うなれば現代に蘇った列車砲とでも言うべき存在であったのである。

 

射撃位置で陽電子砲にエネルギーをチャージしつつ2機のビグ・ザムは月面の大地に確り両足の爪先を食い込ませ、脹脛の部分からサブレッグを展開しアンカーの様に打ち込んで射撃姿勢を固定化していく。

 

元のビグザムと違い大きさと質量が少ない分、原型機と変わらない威力の陽電子砲から発射時に発生する反動に耐える為に、この一連の動作が必要であり一度発射体勢に入った量産型ビグ・ザムは身動きが取れないのである。

 

つまり射撃間近の今が最も無防備な状態であり、陽電子砲を操る砲手にノーマルスーツの中で緊張の余り冷や汗を流す。

 

「エネルギー充填開始、セイフティーロックを解除」

 

「ターゲットスコープオープン、目標敵基地大型レーザー砲台」

 

「ジェネレーター出力安定、エネルギー充填率120%」

 

「総員耐閃光、耐ショック防御、最終安全弁解除」

 

予め定められた手順に従い量産型ビグ・ザムに乗り込んだ指揮官、砲手、操縦手の3名は何度も訓練で繰り返した動きを再現し指示を復唱していく。

 

しかし訓練と違うのはこれが本当に目標に向けて実射すると言う事であり、発射直前の動作であるノーマルスーツのヘルメットに備えられた遮光グラスを下ろしたことでいよいよその時が来た。

 

「陽電子砲、発射!」

 

砲手の号令と共に陽電子砲のトリガーを思いっきり押し込み、その瞬間機体メインカメラは眩い光で覆われた。

 

事前にモニターに表示される光量は最低限に絞っていたが、それでも遮光グラスを下ろしていなければ失明するかもしれに程真っ白な輝きが操縦室を照らし出し、機体外側でもビグ・ザムから発射される光に周囲にいたMSや兵士達は思わず顔を手で覆ったのである。

 

次の瞬間強烈な衝撃が機体を揺らし、事前に打ち込んだ脚部クローやアンカーが大地を捲りあげ40mを超す巨体を大きく後退させた。

 

本来なら60mクラスの超巨大MAでやっと使用可能となる代物を、無理やり40mに納めた反動がモロに来たのである。

 

操縦手は必死に姿勢を安定させようと舵を両手で力一杯握り締め、砲手は衝撃に堪えようとトリガーにしがみ付き指揮官もまた座ったままの姿勢で居られず目の前のコンソールに両手をついて、上半身が倒れ込もうとするのをなんとか堪えた。

 

漸く閃光と衝撃がが収まって視界が晴れ、何とか機体も乗員も無事なままで済んだ彼等はしかし目の間のモニターに表示される光景に我が目を疑う。

 

先ほどまで荒涼たる灰色の大地が広がっていた筈の月面に、2本の真っ直ぐに伸びる半円状にえぐれた地形が何処までも続き、円の下側は地獄の釜の底の様に赤黒く溶けていたのである。

 

2機のビグザムから放たれた陽電子砲は月の大地を半円状に削りつつ目標まで真っ直ぐに進み、プトレマイオス基地を覆うクレーターの縁に突き刺さりそこにあった大型レーザー砲台ごと、堅牢に要塞化された壁を吹き飛ばしたのだ。

 

たったの一撃で基地を守る12基の「オプティクス」の内1基を失い、しかも基地内部への突入口さえも開かれてあまりの現実離れした光景に、驚愕に震えるしかない連合軍と地下総司令部。

 

かつてコンペイトウの戦いその最終盤において、要塞砲ヨルムンガンドとドッキングし単騎で超長距離狙撃成功させ敵旗艦を消滅させたその威力は、月面で再び証明されたのである。

 

一度の射撃で機体の全エネルギーを消耗し尽くした2機の量産型ビグザムは、再度の発射に備えて砲身の冷却とエネルギーの再チャージを行なっていく。

 

その間共和国軍も連合軍もただ黙って見ているはずもなく、共和国軍は穿たれた突破口を目指し部隊を出撃させ、連合軍もまた突破口から侵入する共和国軍を待ち構えるべく守備隊を集結させると共に、再度の発射を阻止すべく決死隊の爆撃機を送り込もうとする。

 

こうして、プトレマイオス基地を巡る攻防戦は新たな局面を迎えるのであった…。

 

 

 

 

 

連合軍の戦いが新たな戦端を開く一方で、共和国軍第3連合艦隊提督ヴォルグガング・ワッケイン中将はティアンム大将の命令でプトレマイオス基地包囲網には加わらず、別動隊を率いて月面に残る連合軍支配地域の解放作戦を行なっていた。

 

当初ワッケイン提督の部下達はこの命令に不満であった、折角の功績を上げる機会を取り上げられたと思っていたからだ。

 

しかしワッケイン提督は部下達とは全く違う考えであり、彼には今回の別働任務に際しティアンム大将直々に自由裁量権を与えられており、つまり用兵や解放した占領地の行政など個人の判断で行う事が出来たからである。

 

これは偏に能力は高くとも何かと人格面に問題の多い共和国軍高級士官にあって、その清廉実直な人柄から何かと気苦労の多いティアンム共和国軍宇宙艦隊司令長官が信頼できる数少ない軍人であり、その全面的な信頼を受けるからこそ今回の任務が与えられたのだった。

 

その期待にワッケイン提督等は見事に答え、本来の指揮する第3連合艦隊から足の速いムサイ級やサラミス級の快速部隊50隻を抽出して自ら指揮を取り、本隊から離れて月の連合軍支配地域を次々と解放していったのである。

 

これ以前プトレマイオス基地での決戦に備え連合軍は事前に月面各地の部隊を集結させていたが、準備が間に合わない等のなん等かの事情で集結な困難な部隊に対し、現地に留まって共和国軍の後方を扼すゲリラ戦を行わせようとしていた。

 

補給線を守るためまた追い詰められた連合軍が月都市そのものを人質にとる可能性もあり、ワッケイン提督の役割は地味に思えて非常に重要な役目を負っていたと言える。

 

こうして基地攻略戦が始まって1週間余り、ワッケイン提督率いる別働艦隊は都合10数回の戦闘を行いこれに尽く完勝し、月面都市や採掘基地を次々と解放し再び月市民の自治に任せ自身は都市間の輸送航路を守るのに腐心したのであった。

 

大兵力を抱えたプトレマイオス基地攻略戦が長引く一方で、次々と勝利を重ね都市と市民を解放したワッケイン提督の部下達も当初の不満など何処かへと吹き飛び、寧ろ現状では唯一功績を上げていると言っていい状況に気分を良くし士気も上がっていた。

 

この功績のため後年ワッケイン提督の名は「月の解放者」として、長く語り継がれる事となる。

 

さてワッケイン提督の元に解放した都市市民からとある情報提供が為され、連合軍に残された最後にして月面最大の都市フォン・ブラウン市に残存兵力が集結中であると言う情報が入ってきたのだ。

 

司令官の口から直接その事を伝えられた部下達は俄かに騒めいた、フォン・ブラウン市に集結中の敵戦力は25隻程度と小規模ではあったものの分艦隊程度はあり、対して現在ワッケイン提督の手元には16隻の艦隊しか無く敵よりも少なかった為である。

 

「さて諸君、この状況如何すべきか?」

 

「ワッケイン司令、ここは一旦引いて戦力を集結すべきです!」

 

そう進言した部下の1人がワッケイン中将を思わず「提督」ではなく「司令」と呼んでしまう、一応彼は今も宇宙要塞ルナツーの司令官であるからして間違ってはいないものの、言った本人は間違いに気づいて罰が悪そうに俯いた。

 

ワッケイン提督は部下を咎める事なく思案深げに顎に手を当てて考え込む間、別の部下が最初の発言を引き継いで提案を続ける。

 

「提督、現在我艦隊は航路安全確保の為各地に散っております。一度態勢を立て直すべく部隊を集結させ、敵に当てれば2倍の戦力となり勝利は確実です」

 

部下の提言は最もらしく思われた、事実ワッケイン提督の前に集まった他の参謀達もその意見に同意するように頷いていた。

 

しかし、ワッケイン提督本人の考えはまた違った所にあったのである。

 

「しかしそれではコチラが艦隊を集結させる間に、敵にも準備する時間を与えることになる。また何時迄も敵が同じ所に止まる保証はどこにも無い、再び分散し行方を眩ませたのならそれこそ厄介だ」

 

ワッケイン提督が敵連合軍の指揮官なら、共和国軍が艦隊を再集結させている間に守りの手薄になった箇所を攻め、相手が来たら再度バラバラに逃げて適当な所で再集結させて、可能な限り同じ事を繰り返す。

 

そんな事をされてしまえば今のワッケイン艦隊ではお手上げであり、最悪プトレマイオス基地攻略作戦に悪影響を与えかねなかった。

 

「敵が態々自分達からひと所に集まってくれたのだ、私は寧ろこれを一網打尽にする好機だと思う」

 

ワッケイン提督は続けて自らが計画した作戦を部下達で説明する、それは快速部隊から成る足の速さを活かした電撃作戦であり、その作戦の肝となる部隊を提督自らが指揮する事も同時に伝えられた。

 

流石に指揮官自らが陣頭指揮に立つ事に部下達も驚きと動揺を隠せなかったが、しかし現状考えられる中でこれ以上のものも無く、またワッケイン提督も普段と変わらぬ態度に彼等も自信を持ったのである。

 

こうして作戦準備は粛々と進められ、僅か16隻の艦隊で25隻以上もの相手に戦いを挑むと言う共和国軍の戦術では考えられない戦いが、今火蓋を切られようとしていた。

 

 

 

 

 

さて月面最大都市フォン・ブラウン市上空に集結を完了させた連合軍残存部隊は今やその数を30隻にまで増やし、共和国軍を待ち構えていた。

 

これはプトレマイオス基地の月本部からの指示では無く前線指揮官たちの独自判断であり、彼等はワッケイン艦隊によって次々と少数の味方が各個撃破されるのを見て、恐怖に駆られて一箇所に集まり守りを固める事を選んだのである。

 

その為、指揮系統がはっきりせずただ集まっただけの烏合の衆にしか過ぎない彼等であったが、数だけはありまた万が一に備えて都市そのものを盾にして立て篭もる事も考えていた。

 

フォン・ブラウン市の市民達が不安げに天井ドームを見上げる先で、連合軍と共和国軍ワッケイン艦隊との決戦が行われようとしていた。

 

「態々ヤられに来たのか?主砲斉射、一気に片付けてしまえ」

 

最初の攻撃は連合軍から行われた、と言っても前述の通り統一された指揮系統も無くそれぞれの艦が個別に攻撃を仕掛けてきたものであり、見た目は派手でも散発的であり共和国軍は艦隊前方にアンチビーム爆雷を投射して相手のビームを防いでいく。

 

空母が前にその隣に戦艦が後ろにあり護衛艦といった風に雑然と横並びになる敵艦隊に対し、共和国軍は右翼と左翼とに分かれ左翼が前に出て少し下がって右翼が続く所謂斜線陣の構えを取る。

 

これは先のシャワル攻防戦のおり敵将ジョージ・モゴメリーがワイアット艦隊に対し使用した陣形と全く同じであるが、しかし今回は右翼後方にワッケイン提督自らが率いる少数精鋭部隊が隠れ潜んでいた。

 

「敵は思ったよりも統制が取れていないな?連合も人手不足と見える」

 

戦況をモニターしていたワッケイン提督は敵艦隊の雑然さに旗艦レナウンの艦橋で1人そう漏らした、長引く戦争で地球では10億もの命が失われにも関わらずまだまだ戦いは困難は極めていく事に、内心では胸を痛めていたのである。

 

「提督、何かおっしゃいましたか?」

 

独り言だと思って呟いたそれは側に控えていた参謀の1人に聞こえた様で、ワッケイン提督は帽子を深く被り直してから居住まいを正しこう答えた。

 

「何、寒い時代だと思っただけだ…」

 

そうこうしている内に前進し敵艦隊を射程に収め砲撃を開始した左翼と、敢えて時間差を作った右翼は敵と接敵する時間と距離を稼ぎ、統制も間々ならない相手の戦列に乱れが生じる。

 

その隙を提督は逃す事なく、右翼後方に控えていた部隊に一斉に出撃を命じた。

 

「今だ、全艦敵後方に喰らいつけ!」

 

ワッケイン提督の命令を受け旗艦レナウンと共にキャメル艦隊が猛然と速度を上げ、たった4隻の殴り込み艦隊が最大戦速を維持したまま後方から敵戦列の乱れに突っ込む。

 

「スワメル、トクメル主砲斉射!提督の旗艦に指一本触れさせるな」

 

ムサイ級軽巡洋艦キャメル艦橋で相変わらずノーマルスーツを着用せず、ドレン艦長は部下達に檄を飛ばしつつも的確な指示を行う。

 

2隻のムサイから放たれたビーム砲が敵艦隊後方に突き刺さり無防備な姿を晒していた敵艦を一撃で大破させ、この全く思いもしない方向からいきなり奇襲攻撃を受けた連合軍は、各々が勝手に反撃しようとする。

 

しかしタイミングを合わせて連合軍との距離を急速に詰めた右翼艦隊が攻撃を始め、唯でさえ指揮統制に問題を抱える敵艦隊は前と後ろどちらの敵に対応するか分からず、一瞬でパニック状態に陥った。

 

混乱する敵艦隊目掛け共和国軍旗艦レナウンから主砲が3連射され、7基の連装ビーム砲から放たれた光の渦が乱れた敵陣を切り裂き不運な敵艦が爆発と閃光と共に虚空に消え、それによって生じた敵艦隊の隙間に旗艦を先頭に4隻だけの艦隊が突入して戦列を分断していく。

 

後方から前方へと突き抜けた艦隊を反転させ、ワッケイン提督は再度敵陣に突入して敵艦隊を分断しそれを右へ左へと縦横無尽に繰り返す。

 

無論連合軍の一部の指揮官達は突入してくる敵をMSを使って包囲しようと試みたが、その都度キャメル艦隊の優秀なMS部隊マラサイとそのパイロット達によって阻まれ、また距離を詰めた共和国軍がMSハイザックを発進させてきたのでその対応にも追われて何の成果も上げることが出来なかった。

 

共和国軍はワッケイン艦隊の活躍で分断された敵を各個に撃破していき、最早連合軍が当初維持していた戦力の優位など意味を成さず、指揮統制も無い彼等は逃げることも出来ずに最後の1艦になるまで刈り取られていった。

 

最後に残った1隻が共和国軍に降伏し、戦いが終わるとフォン・ブラウン市の天井ドームを見上げたりあるいは街頭やそれぞれの映像端末で戦いの様子をじっと見守っていた市民達は、一斉に歓声を上げた。

 

都市が連合軍から解放された喜び半分、もう半分は戦争と言う壮大なスペクタル映画が自分達の目の前で行われた事に対するものであり、市民にとって戦争とは言わば画面の向こう側の出来事であったのである。

 

こうして月面最大都市フォン・ブラウン市は解放され、この功績を持ってワッケイン提督と彼の率いる艦隊は共和国軍2番目の“親衛“の称号を本国より与えられ、以降艦隊名を第2親衛艦隊に改名される事と相なった。

 

時にC.E.(コズミック・イラ)71年6月10日の出来事であり、フォン・ブラウン市を失った事により月の連合軍の残された拠点は辺境の戦略的価値の薄い小規模拠点を除けば、月本部事プトレマイオス基地のみとなってしまう。

 

以降連合軍はますますプトレマイオス基地防衛に拘るようになり、犠牲を顧みない戦いを繰り広げ共和国軍との間に屍の山を積み上げていく事となる。

 

それは、共和国軍が恐れる泥沼の消耗戦の開始を意味していた。

 

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