機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

123 / 133
第44話

ジャブロー降下作戦その2

 

「よし時間だ、信号弾を上げろ」

 

腕時計型のタイマーを見ていた隊長の指示に従い、音もなく密林に溶け込む迷彩服を身に纏った兵士達が手早く信号弾打ち上げ機を準備し、カラフルな色を発する信号弾がアマゾンの空に上がる。

 

同じ様にあちこちから同様の信号弾が打ち上がり、それらを双眼鏡で確認した隊長は直様部隊に次の行動に移るよう命じた。

 

「よし、直ぐに移動するぞ。うかうかしていると味方の爆撃に巻き込まれん」

 

彼らは再び密林の影に潜み素早く静かに行動を開始する、彼らは連合軍がジャブローに潜入させた特殊部隊であり、その任務はジャブローの最重要目標であるHLV及び宇宙港打ち上げ施設の探査であった。

 

彼等は宇宙港発見と同時に共和国軍に狙いを悟らせない為に、巧妙にも幾つもの信号弾を打ち上げて目標を欺瞞し、反対に連合軍を導いていく。

 

同じ頃アントニオ・カラス大尉ら共和国地上軍ジャブロー防空司令部でも、早朝のアマゾン川に打ち上がった信号弾を確認していた。

 

「いくつ上がった」

 

「4つ以上である事は確かですが、それ以上は…」

 

「欺瞞作戦か、どれかが本物で後はカモフラージュだな。敵の攻撃は近いぞ総員第一種戦闘配置、急げよ!」

 

こうしてジャブローの戦い、その長い1日が始まったのである。

 

 

 

 

 

南米大陸洋上に展開していた地球連合軍の洋上艦隊は、ジャブロー上空に打ち上げられた発光信号を確認し、艦隊旗艦から各艦に向けて攻撃命令が下される。

 

「発光信号を確認しました」

 

「よし巡航ミサイル発射、座標データ間違えるなよ。同士討ちに注意しろ」

 

旗艦タラワ級強襲揚陸艦からの指示に従い、各艦の艦長達は自艦の火力を最大限に発揮させるべく30分に及ぶ援護射撃を行う。

 

続々と洋上艦やフリゲート、空母、潜水艦から巡航ミサイルが発射され、300発を超えるそれらは一旦上空に上がると直ぐに進路を変えて一路ジャブローへと向かっていく。

 

巡航ミサイルの波状攻撃によって敵地下要塞を覆う厚い緑のジャングルを焼き払い、ジャブローを丸裸にしようと言う魂胆であり、同時に貴重な地球の自然環境を完膚なきまでに破壊する行為であった。

 

「敵の通信を確認!あ、来ましたミサイルです、洋上と海中から同時多数」

 

「迎撃、それと発射位置の特定を急げ。沿岸の部隊には、敵艦隊への迎撃に出撃させる」

 

敵の攻撃をキャッチしたアントニオ・カラス大尉ら防空司令部の指示により、ジャブロー各地に隠されていた迎撃ミサイルが姿を現し、敵巡航ミサイルを撃ち落とすべく噴煙を上げながら空へと飛び立つ。

 

対空砲から排出される焼けた薬莢や、ミサイルにロケットが上げる高温の噴煙によって密林を覆う草木に引火し、突然の轟音に木々の間で身を潜めていた貴重な南米の動物達が慌てふためき騒ぎ出す。

 

着弾したミサイルによって密林は焼かれ森林火災が発生し、焼け出された野生動物達が火を逃れようとアマゾン川へと飛び込むも、そこに共和国軍のミサイル艇が突っ込んできて動物達を轢き飛ばした。

 

この日の戦いで一体どれ程の貴重な生命や動植物が失われた事だろう、しかし戦い続ける人間にとって彼等の犠牲などまるで他人事であり、殺戮の勢いは益々燃え広がっていく。

 

 

 

同じ頃ジャブロー防空圏内に侵入した連合軍の大規模編隊に共和国軍迎撃機が気を取られている内に、別方向から超低空を超音速で侵入するスピアヘッド多目的制空戦闘機達。

 

管制機からの指示に従い、パイロット達は定められた目標に向かってスロットルレバーを引き絞る。

 

「管制機へこちら“タクシー“目標への突入コースに入った、これよりレーザー照準を開始する」

 

2人のりに改造されたスピアヘッドの後部座席で、火器管制管がレーザー照準器を慎重に操作していく。

 

目標突入まで超音速で侵入して10秒しか無くそれを過ぎれば狙いは大きく外れてしまう、その為レーザー照準器を合わせる手は機体の揺れと同様にブレて定まら無い中、彼等は時間までに目標を捉え続ける必要があったのだ。

 

「!?」「何が起きた!?」

 

突然機体が超音速の振動とは違う衝撃に襲われる、地上から分厚い密林に隠れて共和国軍が対空砲火の嵐を撃ち上げられ機体を激しく叩いたのである。

 

巧妙に偽装されたそれらは事前の調査では発見出来なかったものであり、スピアヘッド達はまんまと敵の対空陣地に入り込んでしまったのだ。

 

「メーデーメーデー!やられた」

 

「コックピットに火が!?誰か助け…」

 

既に爆撃コースに入っていたスピアヘッド達は進路を変える訳にも行かず、低空故に回避することも叶わないまま次々と共和国軍が構築した対空砲火によって撃ち落とされていく。

 

敵の攻撃が命中する度に僚機が火の球となって抱えた爆弾ごと空で爆散し、残骸が密林に散らばって黒焦げた影を残す。

 

既にレーダー上では編隊の反応が消失していき、残るは2機のみとなった所で彼等は目標上空に到達した。

 

「レーザー照準よし、気化爆弾投下」

 

機体の腹に抱えた気化爆弾、サーモバリック爆弾とも呼ばれる爆弾が全弾投下され機体を急上昇させていくスピアヘッドとパイロット達。

 

機体の背後では地表に命中した気化爆弾衝撃と共にジャングルを薙ぎ払い、宇宙港への入り口を露わにする。

 

「やった全弾命中だ!」

 

背後を振り返りキャノピー越しに戦果を確認するパイロット、しかし次の瞬間機体は爆散する。

 

迎撃に上がって来たコアファイターによって戦果確認の為速度を落とした所を撃墜され、スピアヘッド編隊の誰1人として生きて生還することは出来なかったのだ。

 

しかし彼等の眼下では焼けて燃え広がったジャングルから、立ち上った黒煙によって空は夜の様に真っ暗に染まり、レーダー上からはNJに妨害されても分かるくらい敵大編隊を示す光点が迫ってきている。

 

迎撃に上がったコアファイターのパイロット達が敵の狙いに気付いたのと同様、ジャブロー地下の作戦司令部でも連合軍の目標が判明していた。

 

「ジャブロー宇宙港のメインハッチで火災発生を確認。偽装材及び地表施設に延焼しています」

 

「連合の狙いは宇宙港か、どこかで情報が漏れたか?」

 

「直ぐに部隊を防衛に派遣させろ、侵入に備えてMS部隊は地下で待機」

 

オペレーターからの報告で、ジャブローの重要区画の1つである宇宙港の偽装が突破された事を知った参謀達は、連合軍の目標がここ司令部では無く宇宙港であると悟る。

 

地上軍は既にパナマでの戦いで連合軍はMSの量産化に成功した事を知っており、今まさに侵入してくる敵編隊が大量のMSを降下させてくるであろうと読んでいた。

 

その為、急ぎ部隊を派遣させると共に万が一の侵入にも備えてメインハッチ地下にMS部隊を集結させていく。

 

 

 

 

 

その頃、連合軍の空中管制機に乗り込んだパナマ基地司令*1ガルシア少将は、ジャブローへの扉が開かれた事を確認すると部隊に一斉降下を命じた。

 

「全機突入を開始せよ、宇宙港を確保し我らに宇宙への道を再び開くのだ!」

 

ジャブロー防空圏内に侵入した大型輸送機の後部ハッチが開き、仰向けの状態で格納された連合軍主力MSストライクダガーとそのパイロット達は、降下開始を告げるランプを睨む。

 

『ダイブ、ダイブ!!』

 

ランプが赤から青に変わり、勢いよく機外に排出されるストライクダガーとコックピットの座席に座るパイロット。

 

目まぐるしく高度計がメモリを減らす中機体が突如としてガクン、と衝撃と共に真上に引っ張られる様に感じて、同時に中のパイロットもシートベルトが深く体に食い込むのを耐える。

 

バックパックに装着されたパラシュートが開き、機体を安全に地表に降下させるため速度を急激に落としたのだ。

 

痛みに耐えパイロットはコックピットのモニターで周囲を見回すと、同じ様に続々と大型輸送機からMSや物資が投下されパラシュートを開いていく。

 

“この大部隊なら無事に降りられるはず“とそう楽観視しする連合軍のMSパイロット、しかし彼等の眼下に広がる広い緑の海とも思えるジャングルから次々と降下を阻止すべく対空砲火やミサイルの雨が打ち上がると、その余裕はすっかりと吹き飛んだ。

 

高射砲塔(フラックタワー)を起動します。付近の部隊は注意を」

 

「NJ濃度上昇、レーダーホワイトアウト、以後誘導は目視とレーザー誘導で行う」

 

「延焼地域Bブロックまで拡大、放水を開始」

 

ジャブロー防空司令部は連合軍の降下作戦を察知するやオペレーター達は対空砲火を集中し、地下に隠されていた長大な高射砲塔を起動して密林を切り裂く様にして巨大な塔が現れる。

 

フラックタワーと名付けられたそれは、共和国地上軍がジャブロー防空の切り札として建造を進めていた巨大な陽電子ビーム砲台であった。

 

頂上に陽電子砲を備え高高度を飛行する敵を狙い撃ちにし、同時にタワーの周囲には対空機銃座が配置され極めて高い対空防御性能を誇っている。

 

「あんな兵器があるなんて聞いてないぞ!?」

 

「クソ、やられる前にやってやる」

 

降下する連合軍兵士達は情報に無い敵の巨大兵器を前に動揺し、中には届く距離でも無いのにビームライフルを無駄に撃つパイロットもあった。

 

その間にも共和国軍の対空砲火やミサイルが、次々と降下途中で身動きの取れな連合軍のMSを狙い撃ちにしていく。

 

迎撃に出たコアファイターの機銃掃射を受けてパラシュートを穴だらけにされて、バランスを崩し速度を落とせないまま地面に激突する機体や、地上からの対空ミサイルの直撃を受けて火達磨になる機体が出始める。

 

「チャップマンがヤられた!」

 

「誰か火を、火を消してくれ」

 

無線からは引っ切り無しに悲鳴が鳴り響きストライクダガー達も無論黙ってはヤられず、手に持ったビームライフルや頭部のイーゲルシュテルンで敵機やミサイルを撃ち落とそうとするも、共和国軍の反撃はそれ以上であった。

 

「このままで本当に降りられるのかよ!?」

 

敵の反撃の激しさにストライクダガーのパイロット達は弱気になるも、降下途中で身動きが取れずこのまま敵に狙い撃ちにされるばかりだと思われたその時である。

 

「待たせたな、騎兵隊の登場だぜ!」

 

コックピットモニターの前を黒い影が猛烈なスピードで過ぎ去って行き、パイロットが機体の頭部カメラを最大望遠にしてみるとそれは空色をした人形とも航空機ともつかない奇妙な機体であった。

 

GAT-333レイダー制式仕様と名付けられたその機は、先のオーブ解放作戦で連合軍が投入した新型機GAT-X370レイダーその一般兵士向けの先行モデル、後の制式採用機である。

 

*2レイダー制式仕様は共和国軍が上げる対空砲火をモノともせず、逆に敵の火点を特定すると次々とそこに目掛けて、対地ミサイルやナパーム弾を投下しM2M376mm機関砲を撃ち込んで行く。

 

地表で爆発が連続し、その度に破壊された対空砲やミサイルの残骸が舞い上がり、共和国軍の対空砲陣地を沈黙させていった。

 

対し超低空で敵の反撃を受けながら攻撃したレイダー制式機の被害はごく僅かであり、これは連合軍が開発した新型装甲TP(トランスフェイズ)装甲のおかげである。

 

実体弾を無効化するPS(フェイズシフト)装甲を仕込んだ内部装甲と圧力センサーを挟んで外部通常装甲との間に置き、外部からの衝撃や圧力を受けた時のみセンサーが反応してPS装甲が起動し、これによってバッテリーの消耗を飛躍的に抑える事に成功した。

 

実体弾が中心の共和国地上軍にあって、まさにこのTP装甲のレイダー制式機は死神同然である。

 

レイダー制式機のお陰で対空砲火の脅威を減殺した降下部隊は、次々と予定降下地点へと無事に降下していく。

 

共和国軍は無論降下を防ごうとするも、その度にレイダー制式機によって叩き潰され対空砲やミサイルは沈黙を余儀なくされる、迎撃に出たコアファイターは所詮小型機でしかなくレイダー制式機どころかスピアヘッドにすら遅れをとる。

 

防空部隊の頼みの綱は、最早SFS(サブフライトシステム)ドダイに乗ったMS部隊だけであった。

 

「敵の新型機だ、実弾にえらく強いぞ注意しろ!」

 

「コアファイターを下がらせろ、射撃の邪魔だ」

 

コアファイター部隊を下がらせ、ドダイに両足を固定するように直立したハイザックD型や対空砲装備のハイザックキャノンが、レイダー制式に向かって120mmライフルや背中に装備した240mmキャノンの散弾を撃ち込んでいく。

 

如何にレイダー制式機とは言え、TP装甲を張られているのはコックピット周りなど機体重要防御区画(バイタルパート)だけであり、それ以外は普通の装甲と何ら変わりない。

 

そこに被弾してしまえば如何にレイダー制式機とて被害は免れないかに見え、事実編隊の1機が攻撃を受けて姿勢を崩したかに見えた。

 

「1機撃墜!やったか」

 

「いや、よく見ろ!?」

 

黒煙を吐いてジャングルに落下しようとするレイダー制式機、しかし共和国軍MSパイロットの目の前でなんと落下する機体が変形したのである。

 

MSの顔が正面についた奇妙な人面鳥の様な機体から、サブアームで保持していた副翼が離れ本体が何と人形に変形したレイダー制式機は、そのまま副翼に乗り込みスラスターを噴射して急上昇していく。

 

「MSがへ、変形しただと!?」

 

敵新型機の正体が単なる航空機でなく、MSに変形した事に驚いたハイザックのパイロットの反応が遅れる。

 

その隙を逃さずSFS機の弱点である真下から、AIM-957F キングコブラミサイル赤外線短距離誘導AAMを撃ち込むレイダー制式機。

 

咄嗟の事で回避も間に合わずミサイルがドダイの真下に命中し、慌ててパイロットは爆発し炎上するドダイから飛び降りるも真下から先ほどのレイダー制式機が迫ってきていた。

 

「こなクソおお!」

 

120mmライフルを構え敵機を正面から捉えようとするハイザック、しかし再度変形しMA形態を取ったレイダー制式機は攻撃を回避し、逆に頭上をとって両肩と副翼の機関砲で蜂の巣にしていく。

 

その間僅か3秒、変形には1秒とかからずMS形態MA形態の2つの形態を素早く切り替えるレイダー制式機はまさに空の王者であった。

 

所詮SFSドダイに頼らねば空も飛べぬ共和国MSと自在に飛行する連合軍のレイダー制式機とでは話に勝負にならず、一方的に狩られていく。

 

MS部隊が一方的に惨殺され共和国地上軍が誇る空中空母ことガウ攻撃空母は実弾が効かぬならばと、両翼付け根に配備されたビーム砲で敵機を叩き落とそうとする。

 

しかし当然の事ながら余りにも機動力に差があり過ぎ、簡単に頭上を取られた挙句脆弱な両翼のエンジンユニットの弱点も知られていた為、そこをミサイルで攻撃されて七面鳥撃ちの如くジャングルに叩き落とされていく。

 

その間にも連合軍は大型輸送機から第2波第3波の降下部隊を下ろし、最早ジャングルの空は連合軍によって覆い尽くされそうとしていた。

 

だが共和国軍防空部隊が時間を稼いでいる間に、ジャブロー防空司令部は切り札の準備が完了する。

 

「ジャブローの総発電量の30%を回す、陽電子砲スタンバイ」

 

「了解都市への供給を30%カット、エネルギー充填開始」

 

全員ノーマルスーツの着用を終え、アントニオ・カラス大尉の指示に従いオペレーター達はジャブロー地下発電施設の電力をフラックタワーの陽電子砲へと回していく。

 

電力を他所に取られたジャブロー地下都市では、ビルや街灯から灯りが消え代わりに非常灯のか細い灯りが点滅する。

 

「目標敵編隊、奴らを叩き落としてやる」

 

「陽電子砲スタンバイ、照準良し準備完了」

 

発射ぁ(ファイア)!」

 

フラックタワーの頂上が光り輝き、赤黒い光の帯が連合軍の編隊を穿つ。

 

射線上にいた降下部隊を巻き込みながら一瞬で複数の大型輸送機とその護衛機がバラバラに吹き飛び、連合軍はその威力に慄いた。

 

「い、今のは一体!?」

 

ガルシア少将が驚きのあまり管制機の指揮官席からずり落ちそうになるのを何とか堪えていたが、その間にもオペレーター達が口々に被害を報告する。

 

「5番機6番機7番機との交信途絶」

 

「輸送機がまとめて吹き飛んだぞ!?」

 

「急激に機外の汚染濃度が上昇中!?強烈なガンマ線の放射能反応です」

 

オペレーターの1人が機外の放射能濃度が上昇した事を伝えた瞬間、機内にはけたたましいアラーム音が鳴り響いた。

 

それはNJ投下以降あり得ない事であった、つまり核兵器あるいはその類似兵器による環境への急激な汚染を伝え、乗員に速やかに対NBC装備の着用を促すものであったのである。

 

慌てて機内にいた操縦手やオペレーター達が、防護服に着替えようとする中、ガルシア少将はもう一つの原因に思い当たった。

 

「や、奴ら陽電子砲を大気圏で使ったのか!?あ、頭がおかしいんじゃ無いか!?」

 

陽電子砲は極めて強力な兵器ながら、大気圏内では猛烈な毒性をもたらす故、連合軍やザフトはこれまで使用を自粛してきた。

 

地球にNJを投下し、敵味方諸共サイクロプスで吹き飛ばした彼らでさえ、地上での使用を躊躇うほどである。

 

念の為だが陽電子砲は確かに危険な兵器であるが、しかし南極条約には一切抵触しない。

 

繰り返すが、地球で使用しようものなら射線上数km周囲の大気と大地は汚染され、以後何十年何百年以上にも渡って生命なき不毛の大地と化すのにだ。

 

それを共和国地上軍は躊躇なく使用した、ジャブローを守る為とはいえここ南米アマゾンは環境悪化の激しい地球にあって、貴重な動植物の宝庫であり人類の守べき自然遺産その場所で、である。

 

植物は急速に枯れ、戦火に怯え飛び立った野鳥やフラミンゴの群が突然バタバタと地面に落ち、アマゾン川には魚の死体が急に浮き出てきた。

 

野生動物達は苦しみもがき、地表にいてノーマルスーツの着用が遅れた兵士が痙攣し血を吐いて倒れる。

 

そんな地獄絵図が地上で展開される中、共和国軍は躊躇う事なく2度目の射撃を行う。

 

「陽電子砲連続発射、連中を1機残らず叩き落とせ」

 

複数のフラックタワーから陽電子砲が連続発射され、ジャブロー上空の降下部隊と敵大編隊を薙ぎ払っていく。

 

その度にジャブロー周辺には破壊された敵機の残骸と汚染が広がるも、関係ないとばかりに共和国軍の蛮行は続けられる。

 

「全機緊急上昇!敵陽電子砲の射程外より離脱せよ、繰り返す射程外に直ちに離脱せよ」

 

ガルシア少将は顔面を蒼白させながらオペレーターから通信機をひったくると、冷や汗で濡れた手が何度も落っことしそうになるのを堪えつつ、慌てた声で全機に緊急指示を飛ばす。

 

幸い降下するMS部隊のパイロット達にはノーマルスーツが着用義務となっており、生身である自分達の安全さえ確保すれば当面は何とかなる計算であった。

 

「MS及び航空機各隊は敵陽電子砲を破壊せよ、これは至上命令である。奴らにこれ以上蒼き正常なる大地を穢させてはならぬ!!」

 

管制機を上空成層圏間近まで退避させたガルシア少将は、部下から渡されたノーマルスーツに着替えてジャブローに取り残した味方部隊に改めて命令を通達する。

 

最も敵味方が振り撒いたNJの濃度が濃すぎて、通信が届くのか分からず、しかし敵の蛮行を阻止できなければ、地球環境に致命傷を与えかねなかった。

 

そんなガルシア少将の思いが届いたのか、降下に成功したMS部隊は宇宙港では無く真っ直ぐに共和国軍のフラックタワーを目指し、進撃を始めていく。

 

現場判断とはいえ、伊達にブルーコスモスに思想教育されて来た訳ではない彼等は、地球環境を破壊する敵の邪悪な兵器を破壊すべく、任務そっちのけで突っ込んでいった。

 

地上のストライクダガー隊を援護すべく、残ったレイダー制式機はバッテリーも燃料も限られているのにも関わらず、果敢にも共和国軍の対空砲陣地に挑んでいく。

 

「敵のタワーを破壊しろ!俺達の地球を守るんだ」

 

「スペースノイドの方が、コーディネイターよりよっぽど野蛮じゃ無いか!?」

 

「体当たりしてでも止めてやる!」

 

連合軍の降下部隊が宇宙港のメインハッチでは無く、全機がフラックタワーへと攻撃を開始した事で、当初の配置を読み違えたと思った共和国軍は、慌てて部隊を移動させなければならなかった。

 

その間、工兵部隊が対MS地雷を仕掛け密林に隠れたマゼラアイン装甲車が敵MSの背後から対MSミサイルで攻撃したり、或いは砲塔だけ外に出したマゼラアタック自走砲が、敵機の関節部を狙って足止めしたりなどの遅滞戦闘を続けていく。

 

当然戦車や自走砲程度ではMS部隊を止められず、上空のレイダー制式機の援護もあって逆に蹴散らされていく一方であった。

 

共和国軍はフラックタワーの砲塔を上空では無く、地表に向けて陽電子砲でアマゾンごと連合軍MSを吹き飛ばすも、それにも怯まずパイロット達は仲間の屍を乗り越えて進んでいく。

 

ここに来て皮肉にも連合軍はブルーコスモスと当初の結成目的であった「地球連合軍」、その本分に立ち返っていた。

 

反コーディネイター主義に歪む前、ブルーコスモスが掲げる蒼い地球を取り戻そうという地球環境保護活動と、外的から地球国家を守るという連合とは実は思想的に共鳴する所が多い。

 

地球とそこに住む人々と環境を守る正に「地球」連合軍、それこそが理想とされた彼等の姿であったのである。

 

「アマゾンを、自然を皆んなで守るんだ!」

 

「私たちだけじゃない、明日の子供達のためにも」

 

「「「蒼き清浄なる大地の為に!!」」」

 

今や敵はコーディネイターでもスペースノイドでも無い、地球環境を破壊するのなら相手は誰であろうと、戦い叩き潰し地球と人々と愛する家族の生活を守る、その為に彼等は武器を手に取り立ち上がったのだ。

 

地球を守護する鋼鉄の巨人達は敵のタワーに群がり、足元からそれを崩し倒そうとする。

 

タワーからは機銃が撃たれ、巨人達は折り重なってバタバタと倒れていくも、その彼等の頭上を守る鉄の翼が敵の射手を破壊していく。

 

中には自らの身を犠牲にして、タワーに特攻し果てていく者もあったのである。

 

そうして遂に、根本から炎を吹き上げながら塔は崩れ倒れていった。

 

「フラックタワーが1基破壊されました!」

 

「残りの砲にエネルギーを回せ、何としてもこれ以上の被害を防ぐんだ」

 

一方の共和国軍とて彼等にも負けられない理由がある、例え本国から見捨てられ捨て石同然の彼等であっても、本国には命よりも大事な家族や仲間がいるのだ。

 

残忍で残酷な国家に仕える宿命を背負い、何を引き換えにしても、彼等にも守りたい物や誰かが居るのである。

 

その為には、後の世にどれ程の汚名や罵声を浴びせかけられようとも、彼等には戦いを諦める気は一切無かった。

 

両軍兵士達のここにはいない誰かの為と言う共通の思いと、決して相容れない両者の関係の結果がどの様になるのか、それはまだ誰にも分からない事である。

 

 

 

時にC.E.(コズミック・イラ)71年6月18日、共和国地上軍と連合軍その双方は互いに自らの本分に一時立ち返った稀有な戦闘であると、後世に伝わる事となる。

 

同日に発生したアフリカのマスドライバービクトリアを巡る連合軍とザフトとの戦いが、イデオロギーと人種差別剥き出しの原始的な闘争に退化した物に比べ、この時のジャブローを巡る戦いはそう評価される程この後の戦いは熾烈さと残忍さと冷酷さを極めていくのであった。

 

 

 

*1
アルテミスのガルシアとは別人

*2
以降「レイダー制式機」と記載




要は「EDF!EDF!」である、つまりスペースノイドとコーディネイターはインベイダーである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。