機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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第7話 エルビス作戦

アークエンジェル等一行が旧ヘリオポリスコロニーで羽を休めている間、月基地から地球に戻ったムルタ・アズラエルはグリーンランド地下にある新地球連合軍総司令部にて、熱弁を振るっていた。

 

「…つまり、僕が言いたいことはたった一言シンプルです。核を使ってさっさとこの戦争を終わらせましょう」

 

“核“と言う言葉を聞き、普段はアズラエルに阿るしか無い者達も流石に同様を露わにする。

 

「アズラエル理事…確かにNJC(ニュートロンジャマー・キャンセラー)を手にいれて我々も喜ばしいのは分かる。しかし今すぐに核をとは…」

 

普段はアズラエルの意見に対し、良い諾々と従う事が多い軍首脳の1人がそう言葉を漏らすと、それに同意する様に連合構成各国首脳の1人が同意を示す。

 

「核攻撃よりも今は、深刻なエネルギー問題を改善するのが先ではありませんか?このままですと、来年には主要国でも餓死者や凍死者が出ると計算で出ておりますし」

 

「うむ、それが良い。あの忌々しいNJのせいで国民には忍従を強いられ過ぎている…そろそろガス抜きをしなければ戦争どころではありません」

 

言葉を濁し問題を先送りにするかの様な、事実そうしている首脳陣の姿にアズラエルは腹の底から湧き立つ、苛立ちを隠せないでいた。

 

普段であればアズラエルは自身の周りをYESマン達や、同じブルーコスモスメンバーにそれに賛同する軍政府高官達に囲まれている。

 

しかし、この場にいるのは普段の彼の取り巻きだけで無く、ユーラシア連邦や東アジア共同体をはじめとする連合軍各国の軍政府の者達の姿もあった。

 

何故彼等がこの場に居るかと言うと、先の共和国軍による月への大規模侵攻作戦である所謂B号作戦が関係する。

 

辺境コロニーの田舎者と馬鹿にしていたスペースノイド達が、あろう事か連合軍に牙を向き信じ難い大兵力で侵攻し、結果月面都市を悉く奪われた挙句艦隊に大損害を被り月本部まで攻め寄せたのだ。

 

一時は月本部プトレマイオス基地を失陥寸前に追い詰められたが、しかしアズラエルが個人的なルートを使って何とか休戦に持ち込み、首の皮一枚で連合軍は助かったのである。

 

だが問題はここからであり、月では当然の事ながら来る宇宙での大反攻に備えて戦力を再編拡張している最中であり、新造艦や最新のMSも含め着々とその準備は進められていた筈であった。

 

しかし、共和国軍の月侵攻によって連合軍は再建した4個艦隊を壊滅させられ、また各月面都市に駐留していた戦力も失い月基地は完全に孤立した。

 

挙句にその月基地もメインゲートをはじめ大きな被害を被り、何よりも折角作ったMSを1ヶ月余りの戦闘で失ってしまったのだ。

 

連合軍は反攻戦力を確保する過程で、各地の前線から貴重なベテラン兵やパイロット、士官を引き抜き代わりに肉壁代わりの新兵を送り込んで時間稼ぎをしつつ、安全な後方で再編と機種転換訓練を施して反撃戦力を蓄える方針であった。

 

特に月は先述の通り宇宙での反攻作戦のおける最重要拠点であり、ここは単なる基地機能のみならず対プラントやMS訓練施設を含む、正に連合軍の心臓部であったのである。

 

そこを共和国軍の強烈な一撃を喰らい、折角各地から集めたベテランや優秀な士官に装備の数々を永久的に失ってしまったのだ。

 

これを取り戻すには改めて連合軍構成各国より兵力と再建用の資源を拠出してもらう他なく、仕方なくこうしてアズラエルが頭を下げ(実際に彼は下げないし、下げるつもりもない)て集まってもらったのである。

 

が彼の予想以上に集まった者達の動きは彼に言わせると『愚鈍』、極まるものであった。

 

イライラがピークに達し、思わず拳を振り上げて会議室の無駄にデカく長い机を叩きそうになったが、それより先にユーラシア連邦から出席した将軍の1人が発言を求めて挙手をした。

 

「発言をして良いかな、アズラエル理事」

 

「…どうぞ」

 

こいつもどうせ他の権力に執着する亡者共と同じだろうと、内心のみくびりを隠そうともせずにアズラエルは椅子にふんぞり返り、欠伸でもかこうかと思うのであった。

 

「ありがとうございます、まずはお礼を述べさせて頂きたい。貴方が手に入れたNJCの技術は大変素晴らしく、今の戦況を一変させることはまず間違いないでしょう」

 

「ですが、我々は連合軍であります。無論そこにいるムルタ・アズラエル氏は大西洋連邦の国防産業連合理事でありますが、連合軍の方針は“ワンアース“つまり地球全体のナチュラルの全体の連帯にあります」

 

「故に連合軍構成国の一員として、我々もアズラエル氏に協力を惜しみません。彼の言う通り、核兵器を使用しての早期戦争終結も場合によっては止むを得ないでしょう」

 

「しかし、連帯とはただ一方的な搾取を示す言葉ではありません。アズラエル氏がそして大西洋連邦が我々に更なる犠牲を求めるのならば、彼らもまた犠牲を払うべきではありませんか?」

 

今や会議室は先程までの喧騒を忘れ、誰しもが将軍の言葉に聞き入っていた。

 

つまり将軍が言いたいのは、今や連合軍の盟主となった大西洋連邦に対し何等かの対価を出せと要求しているのである。

 

あまりに無謀で不遜な態度に会議室全体に緊張が走り、快適な温度に保たれている筈の地下司令部空間の中で軍政府高官達は、背中に冷や汗が垂れるのを感じた。

 

「成る程お話は分かりました将軍。で、具体的に僕に何をして欲しんですか?MSの割り当ての増加、それとも新兵器の配備とか」

 

とアズラエルは事もな気に応えつつも、内心では「結局コイツもカネの無心か」と軽蔑を露わにする。

 

しかし、さしもの彼も返ってきた返答には思わず腰を浮かした。

 

「ではNJCの技術を全加盟国無償公開して頂きたい、この場で今すぐに」

 

その瞬間、静まり返った会議室は一瞬で沸騰したかの様に怒号と悲鳴が鳴り響いた。

 

ある者は「業突く張りのユーラシアめ、一体何を言ってるのか分かっているのか!?」と怒声を上げ、またある者は「そうだ、我々の犠牲に対する対価は支払われて当然だ」と同意の意を示す。

 

アズラエルの腰巾着達と構成各国の者達の間で、今や理性的な議論を通り越して感情的な怒りや罵倒のぶつけ合いの場と、会議室は化していた。

 

結局このままでは議論がマトモに進まないと言う事で、一時休憩と言う事で誰しもが会議室を強制的に追い出され、アズラエルもまた地下司令部内の豪華な自室に戻って苛立ちを当り一面に撒き散らしていた。

 

「クソ!クソ!一体アイツは何なんだ!?この僕に向かって、NJCの技術を無償公開しろだとぉ」

 

「一体!誰の!お陰で!あれを!手に入れたと!思ってるんだ!!」

 

高価な調度品の数々が床一面に撒きちらかされ、息を荒くするアズラエルに対し執務机に置かれたモニターから、腹心のサザーランド大佐改め出世して今は少将となった彼が諌める。

 

「お気持ちを沈めて下さい、盟主。誰が聞き耳を立てているのやも知れませぬぞ」

 

「はぁ…そうですね、僕とした事が取り乱しましたよ。で、裏は洗えましたか」

 

アズラエルは乱れた髪を手で整え、最高級のソファーに腰を深く降ろしモニターの向こうのサザーランド少将に向かって言う。

 

「例の将軍、どうも欧州本部の息がかかっている模様です」

 

欧州、と聞いてアズラエルには1人思い当たる人物がいた、何かにつけて自分の方針に反対する血統だけしか脳が無い男の事を。

 

「ジブリール君ですか、しかし今の本部に僕に逆らうなんてそんな度胸がありますかね?」

 

アズラエルとサザーランドが言う*1欧州本部とは、無論ブルーコスモスの事である。

 

地球環境保護団体であったブルーコスモスは当初、その本部を欧州に置きそこから各大陸に支部を置いていた。

 

その中で最大なのがアズラエルが率いる大西洋連邦の北米支部であり、今やその勢力は組織内随一どころか一国を乗っ取るまで来ており、欧州から盟主の座まで奪っている。

 

だからか何かとプライドだけは高い欧州は、同じブルーコスモス内でもアズラエルに対し反攻的でありその筆頭格が、嘗て盟主の座を争ったロード・ジブリールであった。

 

「ジブリール様かどうかは兎も角、厄介な事には変わりありません。いっそのこと、我々のみで事を進めては如何ですか」

 

「僕もそれを考えてみましたが、どちらにしろビクトリアのマスドライバーは必要です。パナマさえ無事ならこんな苦労をしなくても済んだのですが…」

 

現在地球連合軍の手にあるマスドライバーで無事なのは、奪還したばかりのビクトリアのマスドライバー「バビリス」だけであった。

 

東アジア共同体のマスドライバーカオシュンは撤退したザフトによって破壊され、大西洋連邦が総力を上げて守っていたパナマもまた、忌々しいザフトの新兵器によって崩壊している。

 

だからこそアズラエルはオーブのマスドライバーカグヤを狙ったのだが、結局それも失敗し結果反攻作戦に必要な戦力や資材を宇宙に持って行こうにも、現状はビクトリアを奪還したユーラシア連邦に頭を下げねばならなかった。

 

「アラスカで痛めつけたのに、大人しくなるどころか返ってこちらの手を噛みかねない勢いですな。これだからクマは手に負えない」

 

「危険な猛獣は鎖に繋いで檻に入れて管理するか、でなければ駆除すべき…と言うのが僕の持論なのですが、それが一応味方とあってはそう手を出せない」

 

先のアラスカで守備隊のユーラシア連邦軍諸共、ザフトをサイクロプスで吹き飛ばしたのは単に国家間の勢力争いのみならず、北米か欧州かどちらのブルーコスモスに従うのかと言う争いの結果でもあった。

 

これによってユーラシアの力を削ぎコントロールし易くし、大西洋連邦の下で真の地球意思の統一をする筈であったのだ。

 

「今思うと月本部の失態は非常に大きい、マトモに戦力さえ残っていたら僕たちだけで事を運べたものの」

 

結局の所、アズラエルの計算外は共和国の存在であった。

 

無論警戒はしていても、スペースノイド侮りいつでも始末できると見くびっていたからこそ、この窮状に陥っていたのである。

 

「引き続き、こちらも裏を洗うのと工作を進めます」

 

「お願いします、全く宇宙のバケモノ(コーディネイター)だけでも厄介だと言うのに…」

 

 

 

 

アズラエルがグリーンランド地下で憎々しげに顔を歪めている中、そこから遥か彼方の天空の世界、今や共和国とアナハイム社の天下となった月世界、その中で至宝とも言われる最大都市フォン・ブラウンにある豪華絢爛な別荘で、1人の女性が上機嫌に高笑いをしていた。

 

「オホホホ、それで会議はぶち壊し。アズラエル坊やもさぞ困った事でしょう」

 

グラナダ・アナハイム社社長夫人にして“月の女帝“の異名を頂く女傑にして怪女であり、世紀の悪女、マーサ・ビストはドレス姿に豊満な肢体を包み、優雅にソファーに身を横たえワイングラスを手に別荘のモニターの前にいた。

 

「全くです、私も奴の姿をこの目で見てみたかったですよ」

 

モニターの先では、普段は気難しい事で有名なロード・ジブリールことブルーコスモス本部総裁が、愛猫を膝の上に抱いて上機嫌であった。

 

「でも宜しかったの、折角コーディネイターを一挙に葬る好機を得たのに」

 

「あの宇宙のバケモノ共を殲滅する方針に変わりはない、問題はそれを“誰が“実行するかです」

 

だからこそ自分の息のかかった将軍を送り込み、会議を無茶苦茶にしたと言うわけである。

 

「まあ、私もNJCが本当に手に入れて来るとは思いませんでしたよ。最も、アレをアズラエルの手に握らせたまま戦後を迎える訳には行かないのですが…」

 

画面の向こう側では、まだ戦争が終わっていないにも関わらず咲の事を考えて、早くも組織内の抗争が行われているのだ。

 

無論、その後押しをしたのはマーサ・ビスト本人であるが、それでも噂以上に本部と北米いやロード・ジブリールとムルタ・アズラエルの仲は険悪そのものであった。

 

「では、今後も貴女とは良好な関係でありたいものです」

 

「私もですわ、“新盟主“様」

 

モニターからジブリールの姿が消えると、内心マーサは(バカな男共)とせせら笑う。

 

今回ジブリールに話を持ちかけたのは、当然彼女なりの理由があった。

 

マーサ・ビストは欧州の名門ビスト家の息女であり、現在はアナハイム社グラナダ支局長(実質月の半分を支配する男の)メラニ・ヒュ・カーバーインに嫁いでいる。

 

単なる北米に本社を置く家電電子メーカーでしかないアナハイム社が、欧州名門のビスト家と婚姻できたのは当然裏があり、彼らは所謂秘密結社ロゴスの一員であったのだ。

 

ロゴスとは自称有史以来から続く世界最古の組織であり、政治経済医療軍事問わず様々な分野を影から操る組織でありその影響力の無い地球上の企業国家組織は、皆無と言ってよかった。

 

アナハイム社はロゴスに加盟こそしているものの、組織内では若輩もいいところであり立場も低いため地球上での商売に見切りをつけて、宇宙での事業拡大に舵を切っていた。

 

その一環としてビスト家が主催するビスト財団と接触し、彼らは表向きは美術品や歴史的価値のある物品を環境の安定したスペースコロニーに移送する一方で、その実企業や名家の節税や脱税を目的としたマネーロンダリング機関であり、現在の闇の銀行やロスチャイルド家として裏ではその名を轟かせている。

 

当時、地球企業の多くが宇宙事業にまだ本格的に参入する前であり、アナハイム社とビスト財団が手を組むことで自分たちのロゴスを作ろうと画策したのだ。

 

その結果マーサがアナハイム社に輿入れし、両者の同盟は固まったがしかし性をビストから変えていないように、彼女は今もビスト家の一員であり単に家と家同士の間を繋ぐだけの、使われる道具のような女では無かった。

 

寧ろ月を中心とする地球経済圏支配を目指す夫メラニーとはまた別の野望を持っており、ビスト家とアナハイム社の力を使って地球圏全域に高度な情報網を持ち、それらを使って様々な策謀を張り巡らせているのだ。

 

今回も彼女の情報網にアズラエルの動向が引っ掛かり、グラナダと共和国との関係を気に共和国内に浸透したアナハイムの影響力を使って、L4はコロニーメンデルで起きた事の大体のあらましを掴んだ彼女は、特に通信傍受された『戦争を終わらせる鍵』と言う言葉とそれ以降連合軍の戦艦が急に脱出ポッド回収に乗り出した事も含め、様々な点で彼女の興味を引くに十分であった。

 

決定的だったのは、月基地に戻ったアズラエルが自室で廊下に響くくらいの上機嫌で高笑いする声が、“偶々“近くを通りかかった連合軍士官が耳にした事である。

 

アズラエルは若くしてアズラエル財団総裁の地位にあるばかりか、国防産業連合理事にして影ではブルーコスモス盟主でもあり、その地位に見合った才覚と立ち振る舞いを心得た人物であった。

 

決して悪どいだけの小、商人でもなんでもなく本物のエリート中のエリートであり地球連合を引っ張るリーダー的存在である。

 

その彼が人目も憚らずその様な振る舞いをした事自体が、事の大きさを知らしめたいたのである。

 

無論マーサは軍事や科学技術の専門家ではない、実際にフリーダムやジャスティスの活躍を目にした訳でもなく、現場に足を運ぶ様な事は彼女の一生で今後一切ないであろう。

 

しかし、その代わり彼女には魑魅魍魎渦巻くビスト家や地球圏を生き延びるどころか、汚濁の中を棲家とし悠々と権謀術数の中を泳ぐだけの才覚と力と美貌があり、何よりも男の企みを察知する鋭い勘を備えていた。

 

その“勘“が、アズラエルが本当に『戦争を終わらせる鍵』を入手したと彼女は本能的に気付き、後はそれが何であるかを専門家チームに丸投げして推測させ、同時に相手の性格から次の行動を予測することはマーサにとって実に容易かったのである。

 

後は先述の通り、欧州名家のネットワークを通じてロード・ジブリールに疑心を抱かせて、後はブルーコスモス内の勝手な身内争いでアズラエルの目論見をズタズタにする、それだけの簡単な仕事であった。

 

何故彼女がこうまでしてアズラエルを妨害したのかと言うと、一度ならずアズラエルとマーサは互いに共謀して共和国との一時休戦や、両者の機密情報をやり取りした仲でありまた非常に“親しい“間柄でもある。

 

しかし、それはあくまでも互いの利益が一致していたからであり地球のロゴス代表メンバーでもあるアズラエルと、ロゴス脱却を目指すアナハイム社とそれを密かに応援するビスト家は当然ながら敵同士であった。

 

特に「エイプリルフール・クライシス」によって地球産業はズタボロになり、代わりに急速に発展したのが月やコロニーをはじめとする宇宙企業である。

 

彼等は、時に連合や共和国に中立国の影に隠れつつ荒廃する地球を他所に、成長を続けていた。

 

特に深刻なエネルギーと通信インフラ危機に見舞われた地球に対し、高性能蓄電池バッテリーやレーザー送電システムの他に、プラントと戦争になってしまったが為に入手困難になった高性能工業品の数々は、今や月とコロニーの独占的な輸出品であった。

 

嘗て、地球各国とそれを裏で操るロゴスは地球から宇宙を管理し、開拓の名のもと文字通り金と資源を搾取する為だけに植民地(コロニー)を築いてきた。

 

しかし今やその関係は逆転し、地球が長年の搾取によって蓄え続けてきた富は宇宙に吸い出されそうとしていたのである。

 

その中で、アナハイム社とビスト家だけがほぼ一人勝ちし戦争がどの様な形で終わるにすれ、今後の地球圏は宇宙が主導する事は疑いようも無かった。

 

だがそれは今後も地球圏の混乱が続いたら、と言う但し書きがつく。

 

矢張り地球は荒廃しつつもロゴスの本拠地、戦争を継続しつつ徐々にだが経済やインフレを立て直しつつあったのである。

 

そこに今回アズラエルが入手したNJCである、彼が推す早期プラント攻略の為の核兵器の再配備は当然ナンセンスとして、その逆の原発復活による地球のエネルギーインフラ復興もまた、アナハイム社をはじめ宇宙企業としては看過し難い問題であった。

 

戦争を継続させつつ今以上に地球を荒廃させる、そうなって初めて宇宙の覇権つまりアナハイムとビストの覇権が約束されるのだ。

 

そうして覇権が成ったその先にこそマーサ・ビストは己が野望を実現し得、男の世界への復讐が出来ると言うものである。

 

「男共は戦争に夢中になっているわ、でも次の世界を導くのは女よ」

 

空いたグラスに新たに真紅の液体を注がれながら、マーサ・ビストは1人高笑いする。

 

この世を支配する“金“と“力“その両方を思うがままに振るう彼女こそ、真に男社会の体現者であるにも関わらず。

 

だが、この広い宇宙に陰謀を張り巡らす策略家は彼女1人では無かった。

 

ある者は力によって宇宙を手に入れる野心に燃え、またある者は徹底的な排外主義を掲げて人種殲滅を図り、またある者はカネの力によって宇宙の全てを手に入れられると思い上がり、またある者は情報を操り全てを手のひらで操っている気になっていた。

 

だがそんな野心家蠢く宇宙にあって、全ての生命を凍死させる絶対零度よりも冷たい心と、ありとあらゆるモノを焼き尽くす灼熱の太陽以上にドス黒く燃える復讐心を抱く人物が、存在したのである。

 

誰にも知られる事なく、狂気を帯びたその男が放った破滅の矢は既に、破滅へのカウントダウンを刻み始めていた…。

 

*1
この作品の独自設定




今回の要約 ユーラシア:「大西洋くん、協力して欲しかったら分かるよね。俺たち友達だろ?」大西洋:「ふざけやがってぇ!!野郎ぶっ殺してやる」
マーサ:「男共の不幸で酒が旨い」
以上
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