機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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第9話 エアーズロック降下

C.E.71年8月 連合軍上層部がグリーンランド地下基地でアズラエルが入手したNJC(ニュートロンジャマー・キャンセラー)の取り扱いとその分配で揉めている間にも、地上では着々とザフト軍の排除に動いていた。

 

6月にはザフトに奪われたビクトリアのマスドライバを奪還し、続く7月には第二次カサブランカ沖海戦の結果ザフト潜水艦隊を壊滅させ、同軍をジブラルタルから撤退せしめ欧州を解放。

 

反対にパナマでの勝利を最後にザフト地上軍は敗北に次ぐ敗北を重ね続け、結果として長らくプラントと共同戦線を組んでいたアフリカ共同体の脱落を防げず、他の地域も次々と連合軍によって占領されるかその傘下に下り、今や地球には大洋州連合一国を残すのみとなっていた。

 

大洋州連合はオーストラリア大陸とオセアニア地域を統合する地域統合国家であり、いち早く故シーゲル・クライン元最高評議会議長の「積極的中立勧告』を受けて、国内にザフトの地球侵攻の拠点たるカーペンタリア基地建設の要地を提供し、実質的な同盟関係を構築していたのである。

 

同国は連合軍に対し宣戦布告こそしていないものの、国内にザフトの基地を持ちまた同国出身コーディネイターによるプラント義勇軍を発足するなど、非常に深度の深い関係を構築していた。

 

大洋州連合は土地と資源と兵力を提供する代わりに、プラントから最先端技術や高性能な製品を受け取り、またその庇護を受ける事でエイプリルフール・クライシスに喘ぐ他国を他所に、非常に安定した統治を達成していたのである。

 

しかし、その関係にも翳りが差したのは最早言うまでもない。

 

アフリカのビクトリア失陥と北アフリカ共同体の脱落を受けて、風向きが変わった事を悟った大洋州連合は密かに連合軍にコンタクトを取り、彼等の和平と臣従を乞うも梨の礫でありすげなく拒否されてしまう。

 

この時点でアラスカ、パナマ、ビクトリアを経て、連合とザフト両軍双方は報復として互いに苛烈な捕虜の虐殺を行い、最早その関係は修復不可能どころか民族浄化の様相を呈していた。

 

また、中立国として長年に渡り安寧を貪っていたオーブを侵略した連合には、最早如何な条件を盛り込もうともプラント協力国に与える慈悲は一切なかったのである。

 

魔の悪い事に地上に残されたザフトは大洋州連合の裏切りに備え、今までの関係を反故にして首都ウェリントンを占拠し議会を強制解散させ、ザフト地上軍による軍政を始めたのだ。

 

これに同国国軍は同調し、一部の部隊を除き弱腰な政府を見捨ててザフト地上軍と協力する姿勢を見せ、本土決戦に備え民間人の動員を含む戦時体制を構築しつつあったのである。

 

大洋州連合国内の混乱を他所に、連合軍はC.E.71年8月8日に「八・八作戦」を発動し同国にとって絶望的な状況下で、陸と空の両方からオーストラリア大陸に攻め寄せたのであった。

 

攻め寄せる連合軍の陣容は主に2つからなり、海側からカーペンタリア湾を攻める大西洋連邦海軍の太平洋艦隊と東アジア共同体の降下部隊である。

 

太平洋艦隊がカーペンタリア湾に地上ザフト主力を惹きつけている内に、ビクトリアのマスドライバーで打ち上げて再度地表に降下したMS部隊によって、一挙に内陸部に橋頭堡を確保しようと言う作戦であった。

 

海と空の両方で展開されるこの作戦は、連合軍の圧倒的物量あってこそなのは言うまでもない。

 

先の、ビクトリアやジブラルタルでは短期間に圧倒的戦果を挙げたことで、連合軍内ではカーペンタリア攻めもまた、速やかに済む筈だという楽観論が指揮官達の間で蔓延していた。

 

しかし、此処を落されれば後がないザフト地上軍の抵抗は彼等の予想を、大いに覆したのである。

 

 

 

 

C.E.71年8月8日早朝の事である。

 

 

カーペンタリア湾に水中深く侵攻した連合軍の水中用MSディープフォビドゥンは、巨大な群れとなってザフト水中用MSであるグーンやゾノに急襲をかける。

 

発射されたスーパーキャビテーション魚雷が回避しようとしたグーンに命中して大爆発を起こし、ゾノが巨大なクローを煌めかせてディープフォビドゥンを切り裂こうとするも、ゲシュマイディッヒ・パンツァーによって簡単に防がれ、反撃のニーズヘグの鋭い大鎌の一閃が容易く重装甲の水中用MSの胴体を両断した。

 

長らく海の覇者であったグーン、ゾノが容易く撃破され守りを失ったボズゴロフ級潜水母艦に、ジェーン・ヒューストン少尉が駆るフォビドゥンブルーが迫り至近距離から放たれたフォノンメーザーが、深海の水圧に耐える頑丈な船殻に大穴を開ける。

 

一瞬にして大破孔から大量の海水が流れ込み、緊急排水を行う間もなくボズゴロフ級は浮力を失い暗く深い深海の底に沈み、やがて小さな爆発を起こして沈黙した。

 

上空ではスピアヘッドとGAT-X370レイダーの量産制式仕様が大空を埋め尽くし、対抗するザフトの空戦MSディンやインフェストゥ戦闘機は圧倒的少数でありながらも果敢に挑むも、イナゴの群が全てを飲み込むが如く黒い機影に押し潰されてしまう。

 

「連合軍のカーペンタリア湾に侵入を確認、既に水中部隊が交戦中です」

 

「基地上空でも同様に連合軍機を多数確認、現在防空部隊が応戦していますが劣勢です」

 

ザフト軍カーペンタリア基地司令であるロメル司令は戦況を素早く把握すると、矢継ぎ早に指示を出した。

 

「潜水艦隊は無理に応戦せず、湾内深くに後退せよ。撤退したと見せかけて敵を浅瀬に引き込み、足が鈍った所を地上のザウート部隊で攻撃しろ」

 

「防空部隊の応援を大洋州連合に要請。敵の新型に対しては対空ビーム砲の射線に誘い込め」

 

「それと、内陸部に配置した部隊にも警報を発令しろ。敵が何時何処から攻めてくるか分からんぞ」

 

ロメル司令はこの時40半ばであり、北国の荒れた海と空を思わせる灰色の髪と黒い瞳をしザフトブラックと俗に称される黒い軍服に、海で揉まれ日焼けした肌と精悍な肉体を包んでいた。

 

彼は元々、ジブラルタル基地に所属する潜水艦の艦長であり、主に大西洋と地中海で連合軍に対する通商破壊で功績を上げてきた。

 

その戦い方から『群狼』の異名を付けられ、先のカサブランカ沖では味方の敗北を悟りいち早くジブラルタルからの撤退を援護し、またアフリカに取り残されたザフト残党を救出するなど軍内部で武名を挙げ手織り、今のザフト内で部下以外からも広く信頼を寄せられている。

 

これらの功績から、カーペンタリア基地副司令に任じられるも現状は、彼が事実上の同基地司令官であった。

 

と言うのも、カーペンタリア基地司令部は大洋州連合首都を占領した後に基地守りをロメル1人に押し付け、自分達は本国に救援を請うと言う名目で我先に本国へと逃げ出していたのである。

 

アフリカの大敗と欧州からの撤退で、取り残されたザフト兵に対する連合軍の残党狩りの苛烈さを目の当たりにし、恐怖に駆られた為であった。

 

結果、白服では無く黒服を身に纏うロメルがカーペンタリア基地の責任者と言う事になり、部下達からも「白よりも黒が似合っている」と揶揄われてしまっていた。

 

ザフト潜水艦隊がカーペンタリア湾内に偽装撤退を始めると、それに釣られて一部の連合軍水中用MS隊が突出し、また海上の太平洋艦隊もまた敵を追撃すべく敵陣奥深くまで侵攻してしまう。

 

当然これを罠だと勘付く者もいて、ジェーン・ヒューストン少尉は敵にまだ余力があるのに余りにザフトが崩れるのが早いのと、撤退の鮮やかさ何よりジャブローで受けた手痛い失敗から、これが偽装撤退ではと疑った。

 

しかし連合軍は6月から続く勝ち戦にの連続に浮かれ、自分達が自他ともに兵器の質量で上回っている事もあり、それに驕り敵への警戒を薄れさせしまっていたのである。

 

その為、ヒューストン少尉の警告は誰の耳にも届かず湾内深くに侵攻した連合軍は、まんまと浅瀬に誘い込まれてしまう。

 

水中用は海中だからこそ本来の機動力を存分に発揮出来るのだが、パナマにおいてはザフトの水中用MSが上陸した時動きが鈍り、沿岸砲で撃破されたり地雷原に嵌ったりと散々な目に遭っている。

 

ヒューストン少尉もまた共和国地上軍のジャブロー基地を攻めた時に、まんまと敵の罠に誘い込まれ部下達全員が生き埋めにさせられていた。

 

本人は辛くも虎口から脱するも、それらの経験から如何に性能で優ろうとも本来のフィールドから飛び出した機は弱い事を、ヒューストン少尉は痛感していたのである。

 

にも関わらず連合軍はまたも同じミスを侵し、当然それを見過ごすザフトではない。

 

「今だ敵の動きが鈍った今がチャンスだ、一斉射撃を加えろ!」

 

ロメル司令の号令のもと一斉にザフト軍の砲が火を吹き、浅瀬に足を取られて動きの鈍ったディープフォビドゥンは激しい砲火に晒される。

 

ここで最も活躍したのは、以外にも普段は敵味方双方から何かとバカにされるザウートであった。

 

本機は重装甲大火力の地上砲撃支援機として開発されたが、動きが鈍くキャタピラ走行に変形出来る機構でありながらもその速度も遅く、火力だけが取り柄であるがその自慢の火力もビーム兵器の実用化と急速な普及によって影が薄くなっている。

 

しかし、本国からの補給も途絶えがちな今のザフト地上軍にあって本機の火力はこれでも貴重な戦力であり、その配置と運用には慎重がきされるなかロメル司令の配置は実に的確であった。

 

防空壕に機体を隠していたザウートは上半身だけを露出させ、両肩に装備された2連キャノン砲計4門が火を吹き、大質量の砲弾がTP(トランスフェイズ)装甲に守られた敵機を弾き飛ばす。

 

貫通は出来なくとも、巨大質量の衝撃は機体の内部機構やパイロットに大きなダメージを与え、また連続した打撃と衝撃はエネルギー効率の良いTP装甲であっても、急速にそのバッテリーを消耗させたのだ。

 

無論連合軍のディープフォビドゥンには、TP装甲の他にゲシュマイディッヒ・パンツァーを装備し、ビームさえもねじ曲げるこの強力な盾を掲げて無理やり前進しようとする機体も存在した。

 

だがしかし、そんな無謀な突撃を試みた敵機に対しては浅瀬に予め仕掛けられた地雷原や機雷によって足止めされ、挙句これらの強固な罠の外から海中から上半身を出したグーンやゾノによって、背後から攻撃される始末である。

 

如何な高機動高性能高火力を誇ろうとも、機動力を殺された機動兵器は単なる巨大な的でしかない事を、連合軍は自ら証明してしまったのだ。

 

次々とバッテリー切れで行動不能になる機体や吹き飛ばされて水底に沈む気が続出し、ヒューストン少尉は迂闊な味方を救うべく懸命に包囲網を突破しようと試み、また上空でも激しい空中戦を演じていた連合軍のスピアヘッドやレイダー制式仕様も、ザフトの砲撃陣地を破壊しようと急降下で襲いかかる。

 

だがしかし、敵の侵入する角度と方角を予め予想していたザフト防空部隊は、これまで隠していた対空ビーム砲と試作ビームライフルを装備したMS達が、一斉に荷電粒子の奔流を解き放った。

 

ザフト地上軍にはビーム兵器は配備されていない或いは極小数だと侮っていた連合軍は、ここにきてビーム兵器をモロに浴びてしまい、ディンや航空機相手に無敵を誇ったレイダーが黒煙を上げて撃ち落とされていく。

 

無論何機かはビームの弾幕を抜けて攻撃を仕掛けたが、ザウート砲撃陣地を完全に沈黙させるには至らなかった。

 

業を煮やした連合軍太平洋艦隊は今度は艦隊を湾内に入れて、一気にカーペンタリア基地その物を砲撃とミサイルの嵐で吹き飛ばそうと試みた。

 

この時の為に、連合軍はモスポール処理を施された旧世紀の戦艦を復活させており、近代化改修を施された戦艦モンタナとジョーンズの2隻が50cmにもなる主砲を、カーペンタリア基地に向けたのである。

 

主砲に装填された大口径大質量の砲弾は、直撃すれば一瞬で地表を月面の如くクレーターだらけにする恐るべき破壊力を秘めていた。

 

当然、その様な巨砲を搭載する巨大艦をカーペンタリア基地が気付かぬ筈もなく、即座にロメル司令に報告される。

 

「司令、湾内に侵入した敵大型艦を確認。恐らく砲撃準備中だと思われます」

 

「あんな骨董品を持ち出したのか、物持ちの良さは逆に感心するな」

 

と言いながらもロメル司令は内心冷や汗をかいた、当然船体の大きさと主砲の口径から推測される破壊力は、オペレーターらの計算では半日でカーペンタリア基地を更地すると予想された。

 

当然、それを許すほどロメル司令は呑気でもマヌケでもない。

 

「切り札はもっと先に取っておきたかったが…致し方ない、アレを出すぞ」

 

ロメル司令の指示に従い、カーペンタリア基地内部から巨大な砲がせり上がり地表に姿を現す。

 

それは元は宇宙要塞防空用に開発されたマスドライバーランチャーであり、一度解体してから地球に持ち込み、本来ならばビクトリアやジブラルタルなどの重要拠点に配備される筈であった。

 

しかし、配備するよりも前に上2つの拠点は陥落しこれを持て余したザフト地上軍は、長らくカーペンタリア基地地下格納庫に死蔵していたのである。

 

ロメル司令は基地防衛に際して、有りとあらゆる記録を洗った結果これを発見し、基地防衛用兵器として転用したと言うわけであった。

 

この様な巨大兵器はMS至上主義のザフトにしては珍しいものの、共和国との戦いで拠点とそれを守る為に配備された巨砲の数々に苦戦した結果、この様な兵器が開発配備されたという経緯がある。

 

基地内から電力を送電されてマスドライバーランチャーにチャージされ、砲口内加速され超高速で砲弾が撃ち出された。

 

音速を優に超える砲弾はm大気の壁にぶつかり灼熱で赤く染まりながらも、水平線の彼方に存在する目標を過たずに穿つ。

 

自身が搭載する主砲に耐えうる強固な装甲に守られた、モンタナとジョーンズの2隻の巨大艦だが現代のより強力な兵器が蔓延する中では、分厚い装甲もまるで紙切れのように切り裂かれる。

 

船体中央に大穴を開けられたモンタナは中央からへし折られ、続く第二射第三射を喰らったジョーンズはより悲惨で、艦橋構造物を全て薙ぎ倒された挙句弾薬庫に直撃し、モンタナから退避しようとする乗組員とそれを救助しようと近づいた僚艦を巻き込んで大爆発し、それらを道連れに轟沈したのだった。

 

一瞬で戦艦2隻を失った連合軍太平洋艦隊は、堪らず撤退を指示しザフトは辛くも海からの侵攻を跳ね除けるも、しかしこの時連合軍の二の矢は既に放たれていたのである。

 

奪還したアフリカはビクトリアのマスドライバーから、打ち上げられた連合軍MS部隊とその指揮官は東アジア共同体でありmこの戦いに彼らが賭ける期待は大きかった。

 

MSを開発しあまつさえNJCを入手した大西洋連邦と、その支援を受けたとは言えビクトリアのマスドライバーを奪還したユーラシア連邦。

 

それらに比べて今次大戦における東アジア共同体の影は薄く、一応自国のフジヤマ社が独自のMSの開発を進めていたもののその完成にはまだ時間がかかり、更には彼らが保有するカオシュンのマスドライバーはザフトに奪われた挙句に、撤退時に完璧に破壊されている。

 

ならばとかのアズラエルと協力してオーブを攻めるも、肝心のマスドライバーカグヤとモルゲンレーテ社の接収に失敗し、このところ失点続きであった。

 

だからこそ、ザフトの地上に残る最後の基地カーペンタリア攻略と、大洋州連邦開放に彼らは自国の国威を賭けたのである。

 

万が一にでもこれに失敗すれば、力で押さえつけている構成各国の離反を招きかねず、正に東アジア共同体の命運を握っていると言っても過言では無かった。

 

ビクトリアから打ち上げられた東アジア共同体のMS部隊は、弾道飛行そのままに大洋州連合はオーストラリア大陸のほぼ中央にある、エアーズロックに降り立った。

 

まさか、荒野のど真ん中にある世界遺産に降り立つとは予想していなかったザフトと大洋州連合軍の反応は遅れ、結果として連合軍降下部隊は無傷のまま橋頭堡を築く事に成功する。

 

エアーズロックエオ中心に橋頭堡を築いた連合軍は、陸路そのままに荒野を北上して、一気にカーペンタリア基地に迫った。

 

事前の作戦では、海と陸の2正面作戦によってザフトを挟み撃ちにし、もってカーペンタリア基地を包囲殲滅する計画であったのだ。

 

しかしここで誤算が発生する、ザフトのカーペンタリア司令ロメルの策略にまんまと乗せられた連合軍大西洋連邦所属の太平洋艦隊が大損害を被った挙句に一時撤退してしまい、降下した連合軍はまさか自分達が敵中孤立したとも思わず、敵を背後から攻撃出来ると思い込んだまま攻撃を開始してしまったのである。

 

無論それでも連合軍の兵力は強大であり、ストライクダガーばかりか105ダガーのバリエーション機であるバスターダガーも配備され、その陣容は完璧に等しかった。

 

形としては戦力の逐次投入と言う悪手でも、敵からすれば最悪の波状攻撃であった事には変わりなく、事実大陸内部に配置されたザフトと大洋州連邦の防衛ラインは次々と突破されてしまう。

 

とうとうカーペンタリア基地を視界に納め、このまま東アジア共同体軍が賭けに成功するかに見えたその時である。

 

敵の警戒ラインを突破する為、地表スレスレを高速で飛行するグゥルに乗ったMSが側面より現れた。

 

無論これを撃墜しようと連合軍のMS達はビームライフルやミサイルを構え、一気に叩き落とそうと待ち構えたのは言うまでもない。

 

しかし、連合軍の射程に入るはるか前からグゥルに乗ったMSから強力な長距離ビームが放たれる。

 

発射されたビームは真っ直ぐに、連合軍のストライクダガーが装備する耐ビームコーティングを施したシールドに命中し、それがまるで無意味かのように貫通して本体を撃ち抜いた。

 

「連合めざまあ見ろ、ビーム兵器はお前らだけの専売特許じゃ無い所を見せてやるぜ!」

 

ロメル司令麾下カーペンタリアの空をグゥルに乗って舞うそれは、ザフト地上軍に配備された最後の希望、ビーム兵器を標準搭載したプラント初の量産MSであるZGMF-600ゲイツ、それの地上用に改修された俗にG型と称される機体であった。

 

主な改修点として、砂漠地帯での運用を念頭に機体関節や各部に防塵処理とフィルターを施し、各部にスモークディスチャージャーを追加また地上ではデットウェイとになるエクステンショナル・アレスターEEQ7Rを除き機体重量を軽量化。

 

並びに地上に合わせてウェイトバランスの変更とパワーに出力をアップしスカートアーマーも延長によって、ザフト系MSにしては珍しい高速ホバー機動を実現し、放熱対策と新型冷却システムを兼ねたアイドラフライヤーに長期間作戦用の太陽光発電システムなどが新たに追加されている。

 

先述の通り元々は砂漠用、つまりアフリカのビクトリア防衛用に極小数が生産配備された本機であるが、連合軍の侵攻が早すぎて配備が間に合わず結果としてカーペンタリア基地に残されていた。

 

主兵装はビームライフルであるが、開けた砂漠での戦闘を意識してゲイツ本来の物よりも大型長砲身化及び高出力化と高収束を達成、エネルギーチューブで本体バックパックと接続し専用の大型スコープも合わさって長距離射撃戦を得意としている。

 

高出力化に伴って増大したバッテリー消費を克服する為、機体の省エネ化は無論のこと連合軍から奪取したG兵器に搭載された新型の大型バッテリーを参考に、より大容量化した物をバックパックに搭載した。

 

耐ビームシールドについては地上での走行と重量バランスと大型ビームライフルを両手で保持する事から、小型軽量の物に変更されておりまた重量削減と省エネの関係からMA-MV03 2連装ビームクローは外されていた。

 

その代わりに背中から左右にアイドラフライヤーが装備され、鏃型のこれは放熱板とシールド機能も兼ねており、また排熱を利用してヒートクローとして敵に叩きつけるなど、攻防一体の第三の腕とでも言うべき装備である。

 

上記の発電機能を合わせて、極小数あるいは単独での長期間作戦行動を実現化しまた高速ホバー移動もあってか、ザフト地上軍の泣きどころであった高機動MSバクゥに追従できる制圧戦力としても期待されていた。

 

グゥルから飛び降りたゲイツG型は連合軍の射程の外から、ビームライフルによる精密な狙撃を繰り返し、一方的な攻撃を加えた。

 

当然連合軍も距離を詰めて敵を射程に納めようとするも、その都度ゲイツは高速ホバー機動で距離を離す。

 

ならばと、一部隊を割いて残りをカーペンタリアに向かわせようとするも、今度は急接近して先鋒部隊にビームの嵐を喰らわせるのだ。

 

完全に敵の高速機動に翻弄され陣形を乱す連合軍であったが、その隙を突いて今まで防空壕と迷彩カバーの下に隠れ、息を殺していたバクゥ部隊が襲いかかって来たのである。

 

バクゥは四足歩行と言う奇妙な形態ながらも、ザフトが開発した高速機動と高火力何よりも優れた地形追従性を誇る、正に地上最強の陸戦MSであった。

 

戦列を乱れた所にバクゥは突撃して一気に戦線を食い破ると、そのまま敵陣の中で縦横無尽に暴れ回る。

 

背中に装備されたレールガンやミサイルポッドが火を吹き、頭部にまるで犬が棒を口に咥えて引きずるかの様に装備されたビームサーベルが、敵MSの脚部や胴体を両断した。

 

連合軍は圧倒的な数を誇っていたが、一度乱戦になると逆に数の多さが災いし、同士撃ちを恐れて上手く対応が取れずにいたのである。

 

しかも、混乱をさらに助長するようにゲイツからの長距離狙撃は続き、特に指揮官機が撃たれた場合さらに拍車をかけた。

 

くしくもそれは、宇宙で長らくザフトと鎬を削ってきた共和国軍が得意とする戦法であり、自分達がヤられて最も嫌な事を今度は連合軍相手に披露したに過ぎない。

 

皮肉にも自分達よりも遥かに強大な相手と戦う事を常に考え続けてきた2つの軍組織は、知らず知らずの内に相手の戦法を自分達の物としていたのである。

 

結局連合軍は這々の体で一時後退し、ザフトもまた一日中行われた戦闘が終わり両軍の兵士達は僅かな間休息を得たのであった。

 

数と装備の質共に劣勢な中で、これは奇跡にも等しい戦果でありロメル司令の巧みな指揮の他、異なる機種同士を組み合わせて最大限の効果を発揮する、まるで一つの群が如く目標に向かうそれは「群狼」の異名に相応しい闘いぶりであったのである。

 

その後も、連合軍は何度となくカーペンタリア基地に攻め寄せるも、その都度ロメル司令の計算された防御陣地と手腕により、作戦開始から1週間も経つ頃には戦線は膠着し結果終戦までの間同基地が連合軍の手に渡る事を阻止し続けたのである。

 

後年、ロメル司令はプラント国内でインタビューに答えこの時の戦いを述懐するに、一番の勝因は連合軍の戦略ミスにあると指摘した。

 

連合軍は海と陸の両方から攻め寄せたが、余りにカーペンタリア基地攻略に固執した結果、オーストラリア大陸の広大さと補給の困難さを見過ごしていた、と彼は言う。

 

当時、同大陸の大半は緑化事業が進められて尚その多くが荒野であり、各都市は鉄道や空路によって相互に接続されていた。

 

降下した連合軍はエアーズロックとその周辺の都市を抑えたが、それは単に孤立した点を抑えたに過ぎず、ザフトも大洋州連合も鉄道網を使って迂回することで、連絡や補給路を維持し続けたのである。

 

またその過酷な環境故に水は大変貴重であり、軍の展開が長期化すればするほどそれが大軍であればあるほど、水不足は深刻な問題であった。

 

敵海軍についても同様で、本来ならば揚陸戦力は長期間海上に留めおくべきでは無いと言うのに、迂回も別地点への上陸も敢行せず、何度撃退されてもカーペンタリア基地攻略に拘泥した挙句に、結局海上機動の優位性を全く活かせていなかったと、指摘している。

 

要は、敵が侵した戦略上のミスによりカーペンタリアは守られたと彼は主張したのであった。

 

事実連合軍が無謀な攻撃を繰り返したのは連合構成各国それぞれの上層部の政治的思惑が関係しており、東アジア共同体軍は他国に先んじてカーペンタリア攻略を目指し、大西洋連邦はその足を引っ張り続けたのである。

 

当然逆の事も行われており、カーペンタリア基地が最後まで落ちなかったのは正に、連合軍の都合によってであった。

 

無論その発言がそのまま取り上げられる事はなく、編集の結果ザフトが開発した優秀なMSが惰弱なナチュラルを蹴散らしたと改変され、晩年まで彼は口を閉ざす結果となる。

 

後世では彼の功績を讃えて、「砂漠の虎」アンドリュー・バルトフェルドと「宇宙の狐」ハインツ・ホト・マシュタインと並び、末期ザフトの名指揮官と称された。

 

しかし、この時点で既に主戦場は宇宙に移っておりロメル司令ら地上での活躍は、最早戦局に大した影響を与える事は無かったのである。

 

この戦いの裏では、連合軍は密かに大量の部隊や物資をビクトリアに集結させて宇宙に打ち上げており、将兵の間では決戦は近いとの噂も経っていた。

 

当然、その動きはザフトも共和国も察知しており彼等は来るべき最終決戦に備え、着々と準備を進めていたのである。

 

だが彼等は知らなかったのである、連合軍は禁断の兵器を復活させていた事に。

 

審判の火をもって、世界を宇宙を焼き尽くそうとするアズラエルとブルーコスモスのドス黒い妄執の炎は、確実にプラントまで伸びつつあった…。

 




乱れ桜さんは潜水艦でずっと、お留守番です
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やあ、おじさんは村娘に転生したよ。▼どうやら村長の一人娘みたいだから、将来子供を産んで村を存続させるのが役割なんだ。▼最初は受け入れがたかったけれど、まあ人生って諦めと妥協の産物だよねってことで受け入れたよ。▼せめて結婚相手は仲良い相手がいいなぁ、と思って幼馴染と親しくしようとしたけれど、あんまりうまくいかなくって。▼その子は村を出ちゃったんだ。▼しょうがな…


総合評価:12214/評価:8/連載:38話/更新日時:2026年06月25日(木) 06:03 小説情報


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