機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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長らく投稿が遅れて申し訳ありません。前回投稿した話の展開につまり放置してしまい新たに書き直しての再スタートです。

何とか完結を目指して頑張って行こうと思いますので、どうかよろしくお願い致します。


21話

21話「飛行場襲撃」

 

C.E.70 「血のバレンタイン」に端を発する戦争は既に半年を超え、いまだ冷めやらぬ戦火はしかし膠着状態に陥ろうとしていた。

 

南米のジャングルに寄る南米解放戦線と共和国地上方面軍に手を焼いた連合軍は、従来の方針を転換し空爆による補給線と敵戦力の破壊に切り替えた。

 

MSを要する南米に陸戦力で負ける連合軍であったが、こと空にあっては制空権を確固たるものとしていた。

 

南米解放戦線も少ない航空戦力で何とか対応しようとしているが、いかんせん数と質の両方が圧倒的に違いすぎ、更に保有する飛行場の数でも劣っていた。

 

連合軍の空中戦力に対抗するため、共和国地上方面軍では敵の飛行場に対し奇襲をかける作戦が立案されていた。

 

 

 

 

 

 

南米を東西に分断する峻険なアンデス山脈。

 

その狭く細い山道を共和国MS隊第08小隊が進んでいた。

 

先頭を走るホバートラックに先導されながら、崖が崩れないか慎重に進む3機の陸戦型ハイザック。

 

まるで細い糸の上を立ったまま歩くと言う緊張感が、中のパイロット達を襲っていた。

 

「ふーっ、本当にこの道であっているのか?」

 

08小隊の新米隊長、シロー・アマダ少尉はコクピットの中で額に落ちる汗をぬぐいながら、機体を慎重に進める。

 

「隊長、今更引き返す事なんて出来ませんよ。そもそも最初にゲリラを信用すると言ったのはアナタじゃないですか」

 

08小隊の最先任曹長たるカレン・ジョシュワが、恨みがましげにそう言う。

 

「よさないかカレン曹長!これは上の決定だ」

 

隊の最後尾を守るテリー・サンダースJr.軍曹がそう言ってカレンを嗜めるが、そもそもの事の発端はシローが地上に着任した頃にまで遡る。

 

新米少尉として問題だらけの部隊第08MS小隊に着任したシローだったが、着任そうそうとある重大なミスをしてしまい、その後なし崩し的にゲリラと深く関わっていく事になった。

 

このゲリラと言うのは南米解放戦線が出来る前から存在するする組織であり、つまるところ再構築戦争以前の独立国家だとか少数民族だとか、あるいはカルテルと言った本物の武装勢力であり、その出自から共和国、南米解放戦線共に相容れるものでは無かった。

 

それがどうしたものか、捕まったゲリラのリーダーの娘に気に入られてしまい、何やかんやあって物資と引き換えに情報を提供してもらうと言う奇妙な関係に繋がっている。

 

因み、着任早々ゲリラに捕まると言うミスを犯したシローには「ドラッグストア」と言うアダ名がつけられる事になった。

 

シロー達がゲリラから提供された情報により、アンデス山脈を走る細い山道を抜ければ、連合軍アンデス基地の後方に出られると分かり、上層部はこの山道を使っての奇襲攻撃を企てた。

 

そしてその任務を与えられたのが、そもそもの事の発端である彼ら第08小隊なのである。

 

その為部隊の雰囲気は最悪であり、崖から滑り落ちるといった緊張感の他に常にピリピリとした空気が流れていた。

 

「兎に角、あと少しすれば広い場所に出る。そこで一旦休憩しよう」

 

シローは隊長として未熟な自分を恨めしく思いつつも、今はただひたすらに任務に専念するしか無かった。

 

 

 

シロー達が山脈を進んでいる間、共和国軍も南米解放戦線と協力してアンデス基地包囲作戦を行っていた。

 

峻険な頂きの上に築かれたアンデス基地を包囲するにあたり、共和国軍は全く原始的な方法で対抗した。

 

車も通れない程の山中を、何と共和国軍は南米解放戦線協力のもとその人海戦術を持って野砲や重砲をバラバラにして運び込み、或いは山中をくり抜いてトンネルを掘ったりなど、それらの作業を急ピッチで進めた。

 

当然、これらの作業は連合軍に知られぬよう慎重に慎重を重ね行われたが、当の連合軍アンデス基地司令は、まさか敵がこの標高まで上がってくるとはおもわず、全くの無警戒であった。

 

そもそもアンデスの山脈では、脅威となるMSは運び込めず、そう言った思い込みが彼等の油断に繋がった。

 

しかし、それは正しくは無かった。

 

共和国は、何とMSさえも部品ごとにバラバラにして現地で組み立てると言う方法でアンデスの山中に運び込み、その数を着々と増やしていたのだ。

 

そしてこれ以外にも共和国にはある秘策があった…。

 

 

 

 

 

作戦決行日、何とか期間までに山脈を踏破しアンデス基地の背後に回り込む事が出来たシロー達は、作戦開始時刻たる正午を待つ。

 

カレンが長距離行軍用に装備されたコンテナから組み立て式の180㎜長距離支援砲を取り出し、何時でも飛び出せるようシローとサンダースが岩の裏に影を潜めザクマシンガンを構える。

 

そして、ホバートラックに乗っているエレドア・マシス曹長が数えるカウントがゼロになり…。

 

「作戦開始!これより攻撃を開始する」

 

岩の影からシローとサンダースのハイザックが飛び出し、長距離支援砲を地面に突き立てたシールドの上に構えたたカレンが開戦を知らせる号砲を鳴らす。

 

カレンが放った180㎜砲は格納庫を外れその手間に落着したが、しかしそれが与えた衝撃は実際の被害以上であった。

 

突如として背後から砲撃された連合軍兵士達は混乱状態に陥り、滑走路で離陸しようとしていた爆撃機を慌てて管制塔が止め、その結果滑走路で爆撃機の渋滞が発生した。

 

そこに更に追い討ちかけるように、シローとサンダースが操るハイザックが飛び出す。

 

2人の目的は奇襲攻撃による混乱を更に助長させる事であり、そして抵抗しようとする戦力の排除でもあった。

 

ハイザックのザクマシンガンが狙いを定め、その銃口から砲弾が吐き出され基地の防空を司っていた対空砲を破壊する。

 

彼等の任務には基地を守る対空砲の排除も含まれていたのだ。

 

対空砲ではMSの装甲を抜けないとは言え思わぬ一撃を被る事もあり、他にも歩兵が携行する対戦車ロケットは、MSの関節部に命中すれば擱座する脅威を備えていた。

 

シローとサンダースの2人は注意深く対空砲やミサイルを破壊し、また流れ弾がなるべく滑走路や格納庫、そして燃料タンクを傷つけない用に気を配った。

 

何故なら航空燃料とは可燃物であり、しかも今滑走路には爆弾を満載した爆撃機が渋滞を起こしている。

 

一度それに引火すれば、自分達など簡単に吹き飛んでしまう事をシロー達も順番承知していた。

 

だからこそ、素早く敵を制圧する必要があったが、しかしながらその為の肝心の歩兵戦力が彼等には無かった。

 

如何にMSが強力な兵器とは言え、それ単独で何でも行える訳では無い。

 

ザフトの様なMS万能主義と違って共和国軍は極めて合理的であり、MSも基本の兵器の延長線上である以上、結局の所最後は歩兵が制圧しなければならないのだ。

 

ではその歩兵をどうやって連れてくるかと言うと、これもまた共和国的合理性でもって行われた。

 

アンデス山中に運び込まれたハイザックのバックパックには、とある特別な装備が取り付けられていた。

 

それはHLVや宇宙船などに使われるブースターであり、それを2基バックパックに装備する他全機がカレン機と同様に長距離行軍用のコンテナを背負っていた。

 

そしてブースターに火が点火し、アンデス基地の麓から一気にハイザックが飛び上がる。

 

轟音と共に噴射炎が白い雲を描き、彼等はアンデス基地の頭上までくるとはブースターを排除し、滑走路へと降り立つ。

 

すると今度はコンテナを降ろし、中からパワードスーツを着た歩兵が現れた。

 

そう、コンテナの中身はパワードスーツを着た歩兵達が乗っていたのだ。

 

パワードスーツとは、MS登場以前医療用のマッスルトレーサーから発展した機械であり、人工筋肉とモーターにより稼働する。

 

特に軍用のパワードスーツはパワー装甲共に強化され、MS登場以降も各国軍ではパワードスーツ部隊が残っていた。

 

パワードスーツを着た南米解放戦線の歩兵達が続々と基地内に侵入し、外では随伴歩兵の援護を受け共和国のMS隊が戦闘を有利に進める。

 

中には、パワードスーツを着ている事をいい事にMSの背中に乗っかって周囲を警戒したり、MSの視界の外からの攻撃に対応したりなど、実に様々な方法が行われた。

 

後にMSデサントと呼ばれる事になるこの戦法が、初めて実戦投入された戦いである。

 

正午から始まった戦闘は、歩兵部隊が管制塔に突入したのを切っ掛けに収束し、3時間後には基地司令が降伏勧告を受け入れ戦闘は終了。

 

その後山脈を超えた本隊が占領を開始し、共和国軍は大勢の捕虜と、何よりも大量の航空機の鹵獲に成功した。

 

基地自体も目立った被害もなく、以後共和国、南米解放戦線の重要な航空基地として使われる事となる。

 

作戦の成功に大きく貢献した第08小隊であったが、結果として以前のゲリラに捕まった事が尾を引き功罪相殺すると言った形で落ち着き、再び次の戦場へと送られる事となる。

 


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