機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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31話

31話「地上軍」

 

アフリカでの事の顛末は、直ぐさま共和国本国へと伝わり、多くの将官級達はビッター少将を非難した。

 

与えられた機材と兵力を大きく損ない、しかも貴重なMSを落盤事故で失いそれを隠匿していた事が後になって分かり、それ故彼等の怒りも一入だ。

 

「彼の責任を追及すべく即刻本国へと召喚し査問会にかけるべきだ!やはり『大粛清』上がりは信用出来ん」

 

「それよりも彼を一刻も早く更迭して新たに方面軍司令を任命する方が早いのではないか?一時的とはいえ方面軍司令が不在なのは問題だ」

 

会議は半ばビッター少将を吊るし上げる方向に向かっていた、しかしそれに対し水をかける者達もまた少数だがいた。

 

「それは余りに早計ではないか?先ずは原因を精査してからでも遅くはあるまい。聞くところによると、今回の件で再招集組も動揺していると聞く」

 

「ビッター少将はあれで人望もあるからな」

 

彼等は今回の一件で、正規軍と予備役との間に亀裂が入る事を危惧していた。

 

国家総力戦の最中に、内紛を起こしては成らないとの思い出あり、故に彼等はビッターの擁護に回ったのだ。

 

「しかし信賞必罰は軍の常だ、ここでの対応を誤ればそれこそ軍の指揮統制に関わる!」

 

並み居る将官達はああだこうだと言い争ったが、一人がポツリと、

 

「…取り敢えず、当面の間誰がアフリカ方面軍の指揮代行をするか決めてからで良くはないか?」

 

こう漏らした事で、会議場は水を打ったように静まり返った。

 

取り敢えずビッター少将をこのままにしては置けないと言う事で、代わりの人材を如何するかと言う話になると、先程の喧騒が嘘の様に彼等は押し黙った。

 

誰もが敗残兵部隊の指揮など取りたくはないのだ。

 

そんな貧乏くじをそもそも引くはずだった予備役からの再招集組みも、今の状況ではそうは任命出来ない。

 

つまりここにいる誰かから、選ばれる公算が大きかったのだ。

 

こう言った場面では責任の押し付け合いが発生するものだが、しかし共和国軍人は時に沈黙こそ最大の武器である事を知っていた。

 

暗に様子を伺うだけでなく、各派閥との調整やリスクとリターンを鑑み、それでいて国益に最大限叶う方法は無いかと、探っているのだ。

 

だが、彼等にはそこまで熟考する程の時間は与えられてはおらず、そもそも長引かせるつもりも無かった。

 

「何か問題が有るのかな?たかが一方面軍程度の問題では無いか」

 

会議の内容を最初から聞いていたゴップ大将は、そらそろ頃合いと言った感じでとんでもない事を言い出した。

 

「恐れながらゴップ大将、その方面軍と言いましても…」

 

彼等はゴップ大将がもしや気でも触れたかとうとう呆けたかと疑ったが、しかし次の一言で更に驚愕する事となる。

 

「地上の事については、地上軍総司令官たるマ・クベ中将の管轄だ。彼に任せれば良い」

 

「⁉︎しかしそれでは」

 

ゴップ大将の言った事は、実質問題をマ・クベ中将に放り投げる事を意味していた。

 

しかもマ・クベ中将の事を南米方面軍司令とではなく、地上軍総司令官と表現した。

 

これはつまり地上におけるマ・クベ中将に他の方面軍よりも上位の権限を与えると同義であり、共和国軍内に新たな軍事組織を生む事を意味している。

 

今までは地上に派遣した軍は方面軍と言う名であっても、宇宙にある本軍とは同一の組織であった。

 

分かり易く言えば宇宙軍内部における地上部隊と言う事であり、つまりは身内であったのだ。

 

それが突然一軍として独立してしまったのだから、彼等の驚愕は計り知れない。

 

「と、統帥権の問題は如何するのですか?」

 

「何、既にマ・クベ中将は統帥本部の上位者権限を認めた。これからは宇宙軍と地上軍の両者が協力してやって行くと言うことだよ」

 

つまりは、既にゴップ大将とマ・クベ中将との間では話がついていたと言うのだ。

 

流石にこれには並み居る将官達も開いた口が塞がらなかったが、しかしここでゴップ大将は飴も忘れない。

 

「ああ、そうそう。政府は新たに地上軍創設を機に予算の大幅な増額をするそうだ。その予算には今回による宇宙軍の補填予算も含まれている」

 

予算の件をチラつかせつつ、彼等は渡された今回増額される予算規模の資料を見て目の色を変えた。

 

明らかに、地上軍が抜けた補填にしては有り余り過ぎる予算が付けられていたからだ。

 

「他に何か不満はあるかな?」

 

こうまでされては、流石に彼等はそれ以上追及する事は出来なかった。

 

元々地上に派遣した部隊は統帥本部直轄と言う事であり、つまりはゴップ大将直属の部隊に彼等が文句をつける事はつまりは統帥本部そのものに物申すと言う事になってしまうのだ。

 

しかも、今回の一件は悪くすれば統帥本部の監督責任を問われる事にもなり得たが、ゴップ大将はそれを地上軍の独立と言う離れ業で回避した。

 

こうなっては、如何に海千山千の政治屋気質の共和国軍人で有ろうとも、手出しが出来なかった。

 

そもそもそんな“些細な”問題が吹き飛ぶくらいの予算を獲得して、彼等の目は今後如何やったその予算と言う名のパイを切り取るかに集中していた。

 

しかしこれにより共和国軍は建国以来初の地上軍を持つという事であり、これ以降共和国軍は組織を改変。

 

宇宙軍と地上軍と言う二つの軍を持つ事となったのである。

 

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