40話
40話「マグリブ」
共和国国内で宇宙艦隊の整備が進められていく一方、第8艦隊と合流したアークエンジェル一行だが、途中クルーゼ隊の襲撃に遭い降下に失敗。
当初の予定ではアラスカ連合軍総司令部に降りるつもりがアフリカへと降り立ってしまい、そこでザフト指揮官「砂漠の虎」ことアンドリュー・バルトフェルド率いるバクゥ隊と遭遇した。
不慣れな砂漠の地形に当初苦戦を余儀無くされるも、その後ストライクのパイロット、キラ・ヤマトの驚異的な活躍により敵を撃退。
現地ゲリラ組織「明けの砂漠」の協力もあり、からくもバルトフェルド隊を退けたアークエンジェルはそのまま紅海に脱出するかに見えた。
バルトフェルド隊を退けたその日の夜、ゲリラ組織「明けの砂漠」と共に勝利の宴に興じていたアークエンジェル一行だが、その席の最中ゲリラのリーダー、サイーブ・アシュマンからこう忠告を受ける。
「今、アフリカにあるゲリラや反連合や反ザフトといった連中が共和国から武器の援助を受け始めている」
「噂では、奴らは共和国から新型のMSまで貰っているっていう話だ」
「近々、何かしらの動きがあるかもしらん。ここに長居はしない事だな」
そう一方的に言ったっきり、サイーブはマリュー達の質問には答えずに、宴の間中ずっと杯を空かし続けた。
その様子に困惑するマリュー達だったが、宴の喧騒によってその疑念も掻き消されてしまった。
翌日の早朝、紅海へ向け出港したアークエンジェルだが、その様子を遠くから覗く影があった。
「見つけたぞ、アレが例の木馬か」
砂漠に隠れる青色に塗装された共和国のMSディザート・ザク、そのパイロットであるエロ・メロエはアークエンジェルを見つけると、直ぐさま隣にいた青色のアイザックに本隊へと暗号通信を送るよう命じる。
『我レ木馬ヲ発見セリ、繰リ返ス木馬ヲ発見セリ』
アイザックが暗号通信を送っている間、メロエはアークエンジェルの事を憎々しげに見ていた。
「フランク(白人に対する蔑称)め、あんな船を作っていたとは…どれだけこの土地を汚せば済むのだ!」
彼等はアフリカの真の独立と解放を目指す反政府組織「マグリブ」に所属し、トゥアレグと呼ばれる少数民族で構成される部隊の一員である。
彼等の先祖は国を持たず、男は皆青い服やターバンを見に纏い砂漠を自由に行き来していた。
しかし先進国が勝手に決めた国境の線引きにより一族はバラバラに引き裂かれ、長年の間彼等は屈従と忍耐を強いられる。
だかそんな時連合とザフトとの間で戦争が始まり、アフリカの大地は戦場となって両者の軍が入り乱れ、街は焼け土地は汚染されていった。
そして戦火が彼等の住む街まで差し迫った時、汚された誇りと奪われた土地を取り戻すべく、トゥアレグの民は立ち上がったのだ。
同じ様な事は彼方此方の村や街で起き、それは当初明けの砂漠の様な小規模なゲリラ活動でしか無く、MSを有するザフトに簡単に鎮圧される様なものであった。
しかし、アフリカでのゲリラ活動に目をつけた共和国地上軍が彼等に対し武器や物資を提供し、やがてそれは地上軍司令マ・クベ中将の尽力により一つの組織が生まれる。
それこそが「マグリブ」であり、共和国地上軍から派遣された軍事顧問やゲリラコマンド部隊により、他勢力を吸収して急速に拡大。
青の部隊もその内の一つだが、彼等が参加する頃には既に共和国からMSまで提供される様になっていたのだ。
さて青の部隊から暗号通信を受け取ったマグリブ本隊は、アークエンジェルと「砂漠の虎」ことアンドリュー・バルトフェルドとの決戦の地、タルバディア工場跡地に集結していた。
廃棄された筈の工場跡の地下から続々と車両やMSが地上に現れ、砂漠に整列していく姿を青の部隊隊長ディドー・カルトハは感慨深げに眺めていた。
「これ程の戦力を集めるのに、どれ程多くの同胞の命が散っていった事か…必ずや先祖代々の土地を奪還せねば」
「カルトハ!こんな所にいたのか、準備は出来ているんだろうな?」
そうカルトハの背後から声をかける男がいた。
「ガデブか」
「お前の部下達のお陰で敵を見つける事が出来た。感謝するぞ」
そう言ってガデブ・ヤシンは大きく口を開けて笑う。
カルトハは、ガデブ程そこまで事態を楽観視してはいなかった。
「これに協力すれば、本当に我らが土地を解放してくれるのだな」
「同志の頼みなのだから当然だ。その代わり、しっかり働いてもらうぞ」
マグリブがまだ結成される前、カルトハとガデブは其々の故郷や先祖の為、共に立ち上がった同志であった。
各々掲げる信条はどうであれ、この時期のゲリラ組織は大なり小なり横の連帯感が強い傾向にあったのだ。
その後ガデブは何をどうやったのか、共和国からの支援を取り付けてマグリブを結成し、その指揮官に収まった。
マグリブが他のゲリラ勢力を吸収していく過程でカルトハ達にも当然声がかかり、ガデブ直々にカルトハ等を誘い、こうして現在に至る。
「お前の部隊にはハイザックを配備したからな、他の氏族は皆ゴブリンばかりだ」
ガデブがそう顎をしゃくって整列するMSを差した。
そこにはハイザックより一回り小さなMSが、片膝をついた状態で待機していた。
共和国からマグリブに提供された小型MSことゴブリンは、小さいながらも砂漠での機動性に優れ火力もまたMS並みであった。
「言いたい事は分かっている。期待には応えるつもりだ」
そう言って、カルトハは自分のMSに戻っていく。
その後ろ姿をガデブは見送った後、集まった部隊に号令をかける。
「聞け!ここに集まった各氏族諸君、我々は今日ついに故国を取り戻すその反撃の狼煙を上げる」
「既にこの地に砂漠の虎は無く、アフリカの民は我々が立ち上がるのを今か今かと待っている!」
「そして今日我々が掲げ聖戦、その最初の生贄に選ばれたのは木馬だ!フランクが作った船を沈め、連中に我々の力を思い知らせてやるのだ‼︎」
「奴らの血でこの土地の汚れを洗い落とし、父祖達への誓いとしようではないか‼︎」
ガデブの演説に、集まったマグリブの戦士達が大きく歓声を上げる。
手に持ったライフルを空に向けて撃ち鳴らし、次々とMSへと搭乗していく。
アークエンジェルは砂漠の虎という強敵を退けたが、今度は強烈な民族の意思に突き動かされた集団が襲いかかろうとしていた。
今回の理由、自分達(マグリブ)が、秘密の倉庫として利用していた廃工場(ダルバディア)で大天使と砂漠の虎が大激突。
あわや事が両者に露見しそうになり、結果ガデブ激おこぷんぷん丸。
大天使を攻撃←今ここ