機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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エピローグ

エピローグ「新たなる戦乱」

 

コンペイトウの戦いに勝利!その報に共和国の人々は祝杯に酔いしれた。

 

時の首相バハロは、この勝利をより印象づける為彼のアイデアで首都ズムシティで大規模な花火を打ち上げた。

 

以来これは大戦中の慣例となり、共和国軍が何か重要な戦いに勝利したとき、その規模に会わせて打ち上げられる花火の数も決まった。

 

人々はコロニーの人工の夜空に浮かぶ空の幻想的なアートに、人々は一時戦争を忘れたのだ。

 

首都ではパレードも開かれ、きらびやか軍服に身を包んだ勇ましい共和兵士達が隊列を組んで行進し、表通りは人で溢れ通りには花びらや花束が舞った。

 

兵士達は若い娘達から抱擁や祝福を受け、シャンパンのボトルが開かれる音は夜通し街のあちこちで鳴り響いた。

 

また大規模な論功賞与が開かれ、コンペイトウ防衛作戦全体の指揮をとったワイアット少将は中将に昇進し、新設される共和国宇宙軍第二艦隊提督に内定されこの艦隊は共和国初の「親衛」の名が冠せられる事となる。

 

また彼の下で戦った部下達や指揮官も軒並み昇進し、主だった者をあげると、まずライアン・エイノー准将は少将に昇進し一個艦隊を率いる身となり、コンスコン准将もまた彼の到着が敵の降服を決定付けた事もあり少将に昇進。

 

彼は引き続きワイアット中将の下で一個艦隊を率いる事となるが、これにあわせ共和国軍は大規模な人事移動も発表。

 

今までの防衛重視、鎮台的な運用を改め外征能力を持った現状に即した宇宙艦隊へと組織を改変した。

 

その一環として、現在ティアンム提督が進める「ビンソン計画」をより拡充し、ティアンム提督はその功績により栄えある宇宙軍第一艦隊初代提督並びに新設される共和国宇宙軍初代艦隊司令部長官を拝命。

 

第一艦隊のティアンム提督、第二艦隊をワイアット提督、そして第三艦隊のワッケイン提督からなる連合艦隊がここに結成された。

 

同時に第四、第五艦隊も順次再編中であり、今次大戦中の間に八個艦隊を揃えると豪語した。

 

完成すれば総艦艇数800隻を越え、全盛期の連合軍宇宙艦隊の凡そ2/3に相当する。

 

これらの大規模な祝典の様子やコンペイトウでの勝利は内外に大きく喧伝されたが、国内の盛り上がりに反してさほど各国メディアでは取り上げられ無かったのだ。

 

と言うのも、今次大戦を左右すると言われるプラントの新な議長に就任したパトリック・ザラは、就任早々に「オペレーション・スピットブレイク」を議会に提出。

 

即日全会一致で可決されたこれは、間違いなく次のザフトの攻撃目標がパナマだと言うことを指し示していた。

 

当然地球各国はこの事を大きく報じ、またコンペイトウの戦いの敗北を隠すべくこの事は必要以上に喧伝されたきらいもある。

 

そもそも地球各国にとって今次大戦は連合対プラントであり、言ってしまえば共和国などおまけでしか無かったのだ。

 

露骨に共和国の国際的な影響力の低さがつまびらかにされてしまったが、これは今に始まったことではない。

 

地球に住むアースノイド達にとって、所詮コロニーに住むスペースノイドなど、その程度の認識しか無かったのだ。

 

だが彼等が軽視するそのスペースノイドの力こそ、今次大戦を最も揺り動かすこととなろうとは、この時まだ誰も予想だにしていなかった...。

 

 

 

 

 

薄暗い部屋で、独りの裸体の男が呻いていた。

 

ベットの中でもがき苦しむその男は、震える手で机の引き出しから錠剤を取り出すと、何とか数粒出して口の中に放り込んだ。

 

奥歯でカプセルを噛み砕き、水も飲まないまま咀嚼し飲み込む。

 

そうして、身体の痙攣を押さえるように暫くベットの上で丸くなる男。

 

その姿は外界の全てを拒絶し、孤独に震える赤子の様にさえ見えた。

 

だが、苦しみそうもがくその男の口から、底冷えするかの様な暗く冷たい笑いが漏れる。

 

まるで地獄のそこからこの世を呪わんばかりに笑うその声の持ち主、ラウ・ル・クルーゼは独り暗闇にドロリとした黒色の炎を燃やしていた。

 

(全てはシナリオ通りだ...評議会を焚き付けて無用な共和国攻めをさせ、結果としてスピットブレイクの発動を早めた...)

 

(パトリックはよくやってくれたよ、あんな行儀の悪い男を送り込んで...共和国が此方が何をやろうとしたか知ったらと思うと)

 

(これで3国間の関係は決定的に崩れた!後はもう突き進むのみだ)

 

クルーゼにとって彼の野望を阻む大きな存在、それは意外にも共和国であった。

 

共和国が参戦したことにより、戦争は三竦みの状態になり戦局は膠着。

 

これでは彼の望む結末は得られない、故に彼はこの関係をどうにかして崩さなければならなかったのだ。

 

だからこそ、彼はプラント評議会の裏で暗躍しまた「ゾルゲ」の一人としてその情報を共和国にあえて流した。

 

その結果は、彼の予想以上の成果をあげた。

 

血みどろの戦いは一ヶ月以上も続き、両軍に夥しい犠牲者と憎悪を積み重ね、挙げ句失敗に終わったとは言え核兵器の使用にまで踏み切る始末。

 

邪魔なクライン派はこの戦いで憎悪の贄となるか、或いは生き延びたとしても敗戦の責任を問われ以前の様な勢力を持つことも不可能だ。

 

そして誰も止める者がない今のパトリックは、その憎悪と怒りが求めるまま突き進みその果てに...。

 

「ゴホゴホっ!」

 

クルーゼはその先を想像しようとして、突然の胸の苦しみにそれが中断された。

 

最早彼の身体は限界を来していた、そして自分には時間が少ないとこの時クルーゼは誰よりも彼の身体の事を知っていた。

 

人のエゴによって産み出された自分、その呪われた運命に彼は復讐を遂げるまで、残り少なくなった命の蝋燭に憎悪の炎を灯らせながら足掻き続けるのだ。

 

そして、戦争はまるでクルーゼの憎しみに応えるかのように新な犠牲を欲した。

 

地球では次なる戦いの気配が迫り、南海の孤島では運命に導かれた二人の子供が、その宿命を知らぬまま死闘を繰り広げる。

 

膠着した地球圏に、再び嵐が巻き起ころうとしていた...。

 

 

 

ハイザック戦記 第一部完

 




皆さま長い間の御愛読、誠にありがとうございます。

このような作者の趣味の固まりに付き合って頂き、本当に感謝しております。

切っ掛けは単純に某ガンダム二次創作スレのパクリであり、それまで一回の更新に時間がかかったのをなるべく早めにしようと心がけ、一話当たりの文字数をかなり圧縮しました。

その結果毎日更新とまでは行きませんが、毎週3~4話更新でき無理なく書き続ける事が出来ました。

その間、皆さまから頂いたサマザマナ感想や評価は励みになりまた創作意欲にも繋がりました。

重ねてこの場で感謝の意を伝えたいと思います。

さて第二部につきましては「SEEDの劇場版が上映した時」になります。

では皆さまがこれからも健やかでありますように、願っております。


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