機動戦士ガンダムSEED・ハイザック戦記   作:rahotu

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映画を観てプラズマを注入されました。


第11話

捨て石

 

 

 

時にC.E.71年4月 地球は南米大陸地下大空洞に存在するジャブロー基地は、地球に降下した共和国地上軍の総司令部が置かれる重要拠点である。

 

広大なアマゾンの地下に建設された巨大なジャブロー基地は単に軍事基地機能のみならず、コロニー維持に必要な大気と水を精製するプラントがありそれらを宇宙に送る為の宇宙港も兼ねた正に共和国の生命線とも言える場所であった...。

 

 

 

 

 

同基地司令にして共和国地上軍の総司令官たるマ・クベ中将はこの日、ジャブロー作戦司令部にて主だった幕僚を集め彼らから昨今の地上の戦況報告を受けていた。

 

「...次にアフリカにつきましては同地では連合軍の“木馬“によりかの“砂漠の虎“ことアンドリュー・バルトフェルド隊が撃破されて以降目立った動きはなく、また一部突出する部隊はでたものの現地武装組織マグリブとの関係も良好で引き続きビクトリア宇宙港への牽制を続けています」

 

「アジア方面ではマグリブと同様に潜水艦隊を用いた南洋同盟への支援を継続し、またニューギニアにおける拠点選定は先週のうちに完了しております。これにより工兵部隊の派遣が可能となり基礎工事の完了は凡そ三ヶ月程かかる見込みです」

 

作戦司令部の巨大モニターには地球全土の地図と各戦線の様子と軍の配備状況が表示されており、それらの画面を操作する端末の音と手元に配られた資料のめくる音が会議室に響く。

 

時折幾つかの質問と応答が繰り返されるも、会議全般としては粛々と進行していた。

 

「全体的に地上各戦線は小康状態を維持していると言えるでしょう。しかし懸念点としてやはりパナマにおける連合軍の戦力増強が目下の所我が方が対処すべき問題だと存じます」

 

作戦司令部のモニターは大きく切り替わり、画面には南北アメリカ大陸および大西太平洋など陸と海の交差点たるパナマの様子が映し出される。

 

パナマの港や空港には続々と輸送船や輸送機がやってきては兵器や大量の兵士達を吐き出し、それが終わると順番待ちしていた次の輸送船や輸送機から同様に人と物資が運び込まれていく。

 

最重要施設たるマスドライバー周辺にはいくつもの対空砲火やミサイルが配置され、周囲を覆うジャングルにはそれ以上の兵器と兵力が巧妙に配備されていることを窺わせる。

 

「我が方の偵察によれば既にパナマの戦力は当初の3倍を越え尚続々と増え続けています。また周辺地域への治安警戒活動も大幅に強化されておりゲリラ掃討部隊を頻繁に繰り出しています」

 

「これにより解放戦線側では現地部隊に地下に潜るか拠点放棄せざるを得ない状況が続いており、今後の情報収集活動に困難をきたしつつあります」

 

報告を聞いていた者達は皆一様に渋い顔を浮かべた、連合軍は開戦当初以来ザフトに苦戦を続けていたもののそれでも尚これ程の物量を用意する事ができる国力に、自分達との差をまざまざと感じざるを得なかったのだ。

 

「全く新議長は好戦的とは聞いていたが、そのおかげでこれか」

 

会議に参加している1人がそう毒づき、他の参加者達も同意するように頷く。

 

今月の始めプラントでは議長選を前に現役のシーゲル・クラインが退きタカ派で知られる国防委員長パトリック・ザラが大方の予想通り新議長に就任し、所信表明演説にて内外に向けて大々的にオペレーション・スピットブレイクの発動を宣言していた。

 

作戦目標こそ明示しなかったものの、地球に残る最後のマスドライバー「ポルタ・パナマ」を完全攻略する意図は誰の目にも明らかである。

 

事実パトリックの新議長就任の前後、地上カーペンタリア基地に大規模な増援と地球軌道周辺へのザフト艦隊の侵入が頻繁になっていた。

 

ザフト連合双方命運をかけた決戦が間近に迫る中、相変わらず共和国軍は蚊帳の外に置かれていたのである。

 

「報告は以上かね?ならば引き続きパナマ周辺のみならず南米軌道上の監視も現に密にせよ。連合ザフトの目が必然的にここ南米に集中するのだから警戒してもし過ぎる事はあるまい」

 

マ・クベ中将がそう言って会議を締め、以後細かい指示を任せると作戦司令部から退出し居並ぶ将官達は敬礼の姿勢で見送った。

 

司令部を後にしたマ・クベ中将はジャブロー地下坑道を走るエレカに乗り、次に予定されている視察の現場へと向かう。

 

未だ拡張を続けるジャブロー基地は、その全容を司令部のコンピューターだけでは管理しきれず時折こうしてマ・クベ中将自ら作業の視察をしなければならない程共和国地上軍は人手不足であった。

 

元々ここジャブローは旧世紀に宇宙開発用の資材を打ち上げる目的で建設された宇宙基地がその始まりであり、豊富なアマゾン川流域の地下水脈と大空洞を拡張たし人工河川による物資の搬入と宇宙への打ち上げを行なっていた。

 

最盛期には地球最大の打ち上げ施設としてその威容を誇っていたが、再構築戦争勃発により基地は軍事目標として攻撃され結果表の構造物を破壊された後地下施設は放棄され長らくジャングルと地下水に埋もれる事となる。

 

長引く戦争によって当時の地球では様々なデータや技術が散逸する中で、やがて南米の宇宙港ジャブローの存在ははるか過去の存在として忘れ去られていった。

 

しかし反対に戦争を逃れ遠く離れた宙域に建設されたコロニーでは、膨大な避難民と共に戦前の地球が保有した技術資料やデータを保管した俗に言う“賢者の遺産“と呼ばれるものが持ち込まれており、地球側で断絶や喪失を余儀なくされた技術や各国のデータが残される事となる。

 

初期の宇宙植民と開拓はこの“賢者の遺産“からサルベージされたデータ資料が大いに活用されており、当時の過酷な宇宙生活を支え現在でも宇宙開発機材の分野において共和国は地球各国のそれを大きく凌駕していた。

 

“賢者の遺産“から解析されたデータの内直ぐに役に立たないものは厳重にデータベースに移管保管され、その後長らく共和国資料庫の肥やしとなっていたが、しかし今次大戦勃発により再びこれに陽の日がりが当たることとなる。

 

切っ掛けはスペースノイド達の間で長年悪税として知られてきた空気税であり、もともと共和国を構成するコロニーの大半は開拓最初期に建設された古いもので占められており、当時の技術や資材の不足からこれらのコロニーは十分な水や空気の濾過循環装置を備えることが出来ず、その為一定の周期毎にこれらを交換する必要があったのである。

 

共和国は毎年莫大な費用をかけて地球から水や大気を輸入していたが施設そのものは国際機関の持ち物であった、がこれに目をつけたのが長年宇宙開発で共和国と対立してきたプラント理事国達であった。

 

彼らは当時の国連を動かして地球資源保護を名目に地球からの大気と水の輸送に規制をかけるよう働きかけ、またマスドライバーでの精製された大気や水の打ち上げに際して法外な関税までかけ始めたのである。

 

この水と空気という地球では極ありふれたしかしコロニー生活者にとって生命がかかったものを人質に取られた共和国はこの人道にもとる行為を強く非難したものの、結局国民の生命を天秤に乗せられた結果、理事国に大きく譲歩せざるを得なかったのだった。

 

その後毎年莫大な額の空気税を理事国に支払わせられてきた共和国だが、同じく理事国からの不当な搾取に抵抗するプラントと組んでMSを開発し、連合とプラントとの間で戦争が勃発した結果最終的に連合による水と大気の禁輸措置を切っ掛けに地球侵攻に踏み切ったのは前述のとおりである。

 

つまりジャブローは単なる地上における一大拠点のみならず、共和国国民の生命を握る重要な施設なのだ。

 

ちなみにジャブロー制圧のオマケとして連合軍特に大西洋連邦によるの南米支配に反抗する元南アメリカ合衆国軍兵士達で構成される南米解放戦線との協力関係は構築にも成功する。

 

本来全く関係の無い両者だが、地球における拠点を確保したい共和国軍とMSを含む軍事援助が欲しい南米解放戦線とで目的が一致し結果として南米大陸に確固たる足場を築くことに成功した。

 

この経験を奇貨とし、ジャブローを拠点とする共和国地上軍の方針は以後現地の反連合反プラント勢力や組織の活動を支援し提供したMSを用いたゲリラ戦を展開する事となる。

 

尚、大戦を通して共和国軍が地上で無法図にバラ撒いた兵器や武器のせいで、終戦後も彼方此方でMSを用いたテロや紛争が繰り返されその火消しに地球各国が頭を悩ませ続ける事となるのだがそれはまた別の話であった...。

 

 

これまで再三に渡り述べた通りジャブローの重要性は明らかでありながらも、共和国が地上に派遣した兵力はその任務の重大性に比べ明かに不足していた。

 

現在共和国軍が地上に派遣した兵力は大凡200万人、しかも大半は先の大粛清のおりコロニーを追放された者達で構成されておりまた戦争難民上がりの志願兵もここに加わっている。

 

判明しているだけでも戦前地球連合軍の総兵力は約4000万の内地上に限れば3200万人以上、ザフトはパトリック政権以降軍事力を増強し総兵力内半分を地球に派遣し大凡350万人〜400万人弱、これに親プラント国家の兵力が加わるので地球上において共和国軍は圧倒的に劣勢の立場であった。

 

にも関わらず共和国軍の主力とも言える兵力は未だ本国にあり、共和国地上軍は殆ど孤立無縁の上に孤軍奮闘を余儀なくされている。

 

唯一明るいのはコロニー本土の重要な生命線を守る神聖な任務だという使命感が、兵士達の心の拠り所でありその士気は依然として高いことであった。

 

果たして共和国本土は地上軍のことを見捨てたのか、それとも何か考えがあってのことか?唯一それを知るのは共和国地上軍総司令マ・クベ中将ただ1人である。

 

 

 

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