バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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第十二話

そして清涼祭当日。

学園内ではこの日のために準備してきたことを出し切ろうと生徒達が躍起になっていた。

 

それはAクラスも同じことで、教室内は色とりどりの装飾が施されていた。

 

「メイド喫茶 ご主人様とお呼び!」

 

これがAクラスの出し物。

今さらだが、この店名はないと思う。

まあクラスの総意だから仕方ないか。

 

今はそれよりも気にしなくてはいけないことがある。

 

「どうしてこんなことになった…?」

 

俺は今置かれている状況を確認する。

 

今日は清涼祭当日。よし。

 

俺が今いるここはAクラス教室内に急遽作られた更衣室。

うん、Aクラスの教室は広いからまあこれはいい。

 

俺が今着ている服は執事服。

うん?

違和感の正体はこれだ。

 

「何故俺が執事の格好をしなきゃならないんだ…」

 

「ふーむ、さすが倉木君だね。よく似合ってるよ♪」

 

「そう言われても…って工藤さん、俺今着替えてる最中なんだけど?」

 

「気にしない気にしない。それにもう着替え終わってるじゃん…」

 

何故か少し残念そうに工藤さんが言う。

あえて理由は聞かないでおこう。うん。

 

「やっぱり納得がいかないんだけど…」

 

俺は今置かれている状況を確認するべく、この前の話し合いを思い出す。

 

 

 

***

 

 

 

「…………じゃあうちのクラスはメイド喫茶をやる」

 

壇上では相変わらず冷静な代表がいる。

いつも雄二といるときとは性格が全然違うよな。

 

「あっ、代表。一つ提案があるんだけど、いいかなー?」

 

議論がようやく終わろうという時に、工藤さんがさらなる爆弾を投下した。

 

「やっぱメイドだけだと男子のお客さんしか来ないよね?だからさ、執事役の人も入れて、客層をさらに広げるっていうのはどうかなー?」

 

「工藤さんにしては珍しくまともな意見だね。その執事役の人が少しかわいそうだけど」

 

だって執事って、「お帰りなさいませ、お嬢様」とか、「お嬢様を守るためなら火の中水の中うんたらかんたら」とか言うんだよな。

俺だったら是非とも遠慮したいところだ。

 

「なに言ってるのさ倉木君。執事役はキミだよ?」

 

「はい…?」

 

ふう、この子はいったい何を言っているのやら。

 

「だって倉木君が一番適任だし。ねえ、優子?」

 

「あ、あたし!?」

 

「はあ。木下さんからも工藤さんに言ってくれよ」

 

「えっ?えっ?」

 

木下さんは俺と工藤さんを交互に見ながら慌てている。

意外と優柔不断だったり?

 

「あたしは…倉木君だったら似合う、とは思うけど…」

 

「き、木下さんまで…」

 

「あ、あくまでも客観的に見てよ!べ、別にあたしの趣味じゃないんだから!」

 

趣味?

ああ、執事とかそういうの好きそうだからなー。

 

「で、でもなあ。急に執事って言っても、服とか用意できないんじゃ…」

 

「ふふー、代表?」

 

「…………用意できる」

 

なに!?

 

代表の家って万能だな。

何でも用意しちゃうのかよ…

 

 

 

ー回想終了ー

 

 

 

「倉木君だって納得したじゃん♪」

 

「俺だって自分から進んで着てるんじゃないよ…」

 

「まあまあ、ほらもうすぐ開店だよ」

 

「へいへい。はあ、こりゃ黒歴史決定だな」

 

言いながら服を着終わり、更衣室を出ると…

 

「うおっ!?」

 

目の前にいるのはメイド服を身にまとったAクラス女子陣。

 

おおー、みんななかなか似合ってるじゃないか。

 

「「「っ!?」」」

 

女子たちは更衣室から出てきた俺に気付いたようで、全員の視線がこちらに集中した。

ここまで注目されると、さすがに恥ずかしいな…

 

「「「キャー!!」」」

 

「(びくっ)」

 

女子たちが一斉に悲鳴にも似た歓声を上げた。

何事だっ!?

 

「あははー、キミ予想以上に似合っちゃうもんだから、みんなびっくりしてるんだよ」

 

「そんなに似合ってるか?」

 

「「「それはもう!」」」

 

そんなもんかね。

こんなの誰が着てもい同じだと思うんだが。

 

「ん?木下さんはまだ着替えてないの?」

 

「ううん。今代表の着付けを手伝ってるところだよ。っと、噂をすれば…」

 

そう言われ、更衣室のドアが開いた。

 

「おまたせ。あら、倉木君も着替え終わったのね」

 

「………」

 

「って何よその目は。あたしどこかおかしな所あるかしら?」

 

「いやいや!な、なんでもないよ」

 

「?変な人ね」

 

言えない。

一瞬見とれてたなんて言えない…

 

「じゃあそろそろ料理の準備でもしようか」

 

「そうね。って、倉木君。ちゃんと約束覚えてるでしょうね?」

 

「約束?ああ、この前言ってた召喚大会のことか」

 

この学園の文化祭では、二日間を通して召喚獣同士を戦わせる大会が開かれる。

一日目は予選で、そこで勝ち残ると二日目に行われる決勝戦に出ることができる。

 

なお、その大会は二人一組で参加可能。

そこで俺は木下さんに誘われたってわけだ。

 

「もちろん覚えてるよ。時間になったら教えて」

 

「ええ。わかったわ」

 

そう言うと女子たちは数人が厨房スペースに入っていき、早速調理に取りかかった。

 

俺はというと、やることがないので接客の練習をしている。

 

えーと、使う言葉は…

 

・お帰りなさいませお嬢様

 

これは来店してきた客に言う言葉だな。

 

・いってらっしゃいませお嬢様。くれぐれも夜遊びのなさらぬよう

 

これはその逆か。二言目はまたのご来店を、ってことかな?

 

・お嬢様、お飲み物はどうなさいましょう?

 

これは注文を取るときか。

ここまではいい。

この三つさえ覚えておけばたいていの客は平気だって言われたし。

だが渡されたメモにはさらに言葉が書かれていた。(ちなみに書いたのは木下さん)

 

・私はお嬢様だけの執事ですから。

・お姫様だっこはお嫌いでしたか?

・お嬢様は黙って守られていてください

・私の命に代えてでもお嬢様をお守りいたしましょう

 

などなど。

 

木下さんの頭はどうなっているんだか。

というかこの言葉を使う場面が想像つかないな。

 

俺はとりあえず最初の三つを覚えるだけにとどめた。

 

 

 

***

 

 

 

「「「お帰りなさいませー、ご主人様」」」

 

いよいよ清涼祭がスタート。

Aクラス教室内には開店と同時にわらわらと客がなだれ込んできた。

 

確かにAクラスはきれいどころが集まっていて人気は高いからな。

 

そして時折、メイドではなく別のものが目当てで来る客もいる。

 

「お帰りなさいませお嬢様方」

 

「あっ、ふ、2人なんですけど…」

 

「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」

 

女子の客が来たので、工藤さんに出撃命令を出された。

そして2人のお嬢様方を席まで案内しているんだが、2人とも緊張しているようだ。

雰囲気になれてないのかな?

 

「こちらのお席になります」

 

「「あ、ありがどうございます」」

 

「お飲み物はどうなさいましょう?」

 

「えーと、み、ミルクティーを」

 

「わ、私も同じのをお願いします」

 

「かしこまりました。ご一緒に『ふわふわシフォンケーキ』をいかがでしょう?紅茶とはとても合いますよ」

 

「「じゃ、じゃあお願いします!」」

 

「かしこまりました。少々お時間をいただきます」

 

一礼して厨房へと急ぐ。

 

「ミルクティーが二つとシフォンケーキを2つでございます」

 

「はーい♪って、厨房では普通に話していいよ?」

 

「おっと、つい流れで…」

 

しまった。知らぬうちにこの状況を認めてしまったか。

 

まあFクラスの連中と一年間過ごしてりゃ大抵のことには適応できるからな。

 

 

 

***

 

 

 

「ふぅ、大分繁盛してきたな」

 

いつの間にか教室内はほぼ満席になり、想像以上に忙しくなっていた。

 

「倉木君、そろそろ召喚大会よ」

 

「ん?ああ、もうそんな時間か」

 

「予選は校庭でやるみたいよ」

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「ええ。って、この格好のまま!?」

 

「仕方ないだろ?時間もないことだし、店の宣伝だと思ってさ」

 

「うぅ、着替える時間を考慮してなかったわ…」

 

こんな木下さんは珍しいな。

いつも細かいことまで計算してると思ってたが。

文化祭ってことで少し気が抜けてるのかな?

 




いよいよ清涼祭スタート!

刹那の執事役については、作者の想像です。
メモに書かれてたセリフはネットで探して見つけたものを使ってみました。
なにせ執事なんて見たことないし、執事喫茶なるものも言ったことないので…
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