あれからさっきの男たちはAクラスにはこなくなった。
たぶん雄二たちが何とかしてくれたんだろう。
そして時は流れて一日目もいよいよ大詰めになってきた。
「大分客も落ち着いてきたし、そろそろ準決勝だな」
「そうね。これまでは特に苦もなく勝ち進んできたけど、次の対戦相手は三年生のAクラスよ?」
あのあとトーナメントは順調に消化され、俺と木下さんのペアは準決勝へと駒を進めていた。
「対戦科目は保健体育ね。点数はそこそことれていたはずだけど…」
「木下さんのそこそこってどのくらい?」
「大体300点ちょっとね」
「じゃあ俺の方が高いな。一応400点は超えたからさ」
「あら、意外ね」
「これでもムッツリーニと工藤さんに続いて学年三位の実力だよ(笑)」
さすがにあの二人は次元が違いすぎるし。
やっぱり努力じゃ越えられない壁かな。
ムッツリーニのは…
なんて言うか、情熱?
俺にはそれがないからなー。
「とりあえず作戦でも決めとこうか」
「相手は三年生…召喚獣の操作経験は向こうの方が上なんだし、手強そうね…」
「出し惜しみできる相手じゃあなさそうだし、開始早々から腕輪能力でごり押してみる?」
「それが今とれる最善策かしらね。倉木君の腕輪能力は強力よ。タイミングさえ間違わなければ避けることはほぼ不可能なはずだし」
「でもあまり数は出せないよ?武器一つを出す度に点数が減っていくから、剣で弾幕を張るようなことも難しい。まあ、科目が数学ならそれもできたけど」
「どちらにせよ相手の点数がわからない以上はろくな作戦も立てられないわね」
「だな。ここは思い切って『行き当たりばったり』作戦で!」
「それは『作戦なし』ってことかしら…」
「そこは気にしない方向で(笑)」
色々と思案してみた結果、こちらの作戦は「ガンガン行こうぜ!」に決まりましたとさ。
***
「それではこれより準決勝第一試合を始めます!」
いよいよか。
ちなみに逆ブロックでは明久・雄二ペアと、代表・工藤さんペアが勝ち進んでいた。
やっぱあいつ等も参加してたか。
「まずはこのペア、倉木・木下ペアです!二人は二年生Aクラスからのエントリーですねー。これはまた華やかな二人ですねー。一人はメイド。方やもう一人は執事のコスプレをしての登場です」
会場からは拍手が沸き起こり、俺たちの入場を歓迎してくれた。
「へー、準決勝ともなると観客が多いなー」
「こ、こんな大勢の前でメイドのコスプレをするなんて…」
作戦を考えていた結果、時間的にメイド服のままここへ来てしまった木下さん。
かわいいのでいいでしょう!
「続きましては三年Aクラスの常村・夏川ペアだー!おやー?一人は頭に女性の下着をつけていますねー。これもクラスの出し物か何かなのでしょうか?」
そんな出し物あるかい!
てか対戦相手はあの二人か!
「おい、そこの執事!さっきはよくもやってくれたな」
「借りは返させてもらうぜ!」
「おや?私に変態の知り合いはいないはずなのですが…」
あ、間違えた。
二人ほどどうしようもない変態の親友がいたなー。
「変態+ばか」と「変態×変態×むっつり」の二人だ。
「とぼけやがって!」
「まあいいさ。二年の癖に召喚獣で三年に勝てると思ってんのか!?」
まったく、これだから笑えないバカは嫌いなんだ。
「てめーも吉井も坂本も、二年には本当にくずみたいな奴らが多いな!はっはっはっ!」
あん?
「それにお前がAクラスだと?どーせカンニングでもしたんじゃねえのか?」
「カンニングできるだけましだって!吉井とか、多分それすらもできないくらいバカだぜ?」
「あっはっはっ!言えてる言えてる」
ぷちん。
「すみません木下さん。この試合、召喚獣を出したあとは手を出さずに見ててくれませんか?」
「えっ?あんたいったい何を…」
「私は仲間を見下すのは誰であろうと許しません」
「ちょっと!あんな安い挑発に乗ったら相手の思うつぼよ!?」
「安い挑発、ね。結構です。そんな小細工は力で叩きのめすとしましょう」
「それでは試合を開始してください!」
静止しようとする木下さんだったが、もう時間がなかった。
「それじゃあお願いしますね、サモンです」
「ああ、もう!どうなっても知らないわよ!?サモン!」
二年Aクラス 倉木刹那
保健体育 427点
木下優子
330点
三年Aクラス 常村勇作
268点
夏川俊平
259点
「あら」
「うげっ!?」
「400越えかよ!?」
表視された点数に、早くもビビり始める三年生達。
「なーに、操作技術は俺たちの方が上なんだ。あいつ等の攻撃なんて当たら…ん?」
「さてさて、『具現』」
開始早々腕輪のキーワードを口にし、武器を出現させる。
「えっと…倉木君?それ、何?」
先輩たちはもちろん、隣にいる木下さんまできょとん顔。
「はい。単なる小型ミサイルでございます。多少オプションとして永続追尾機能を備えておりますが」
「その能力ってそんなものまで出せるんだ…」
「はい。では先輩方、せいぜい逃げまわりな!」
ボフン!
狙いを常村、とかいう先輩の召喚獣へとむけ、弾を発射させた。
「くそっ!?なんだありゃ!?どんだけ逃げても追いかけて来やがる!!」
常村も必死に逃げ回るが、逃がさない。
そのうちミサイルの速度が召喚獣に追いつき、健闘虚しく命中。
召喚獣の点数は即座に0を示した。
「くそっ!何だよあれは!反則じゃねえか!」
「まずは一人。ではもう一人の方。『具現』」
続けてキーワードを口にした。
すると、明久の時と同じように召喚獣の上空に無数の剣が現れた。
「これだけの数の攻撃をかわせますかね?いくら操作技術が高くとも、常識的には不可能です」
「く、くそっ!」
続いて夏川の召喚獣に具現化された剣が襲いかかった。
「へえ。なかなか粘りますね。でも、これで最後だ」
明久の時とは違い、夏川の召喚獣は点数がある分、かすり傷程度では倒せない。
だがこちらの攻撃は不可避の斬撃。
夏川に勝ち目はない。
「う、うわああ!」
「はい、これにて最後でございます」
ザシュ!
最後に残った剣が夏川の召喚獣にクリーンヒット!
わずかに残っていた点数が0になり、召喚獣は消滅した。
「勝負あり!勝者、倉木・木下ペア!というより倉木選手の圧勝でしたね」
会場内は拍手喝采に包まれた。
「ふん。人を見下してるやつはいつか足下をすくわれる。ざまあないな」
「倉木君、素が出てるわよ」
「おっと失礼。ではクラスに戻りましょうか」
「あら?次は代表たちの試合だけど、見ていかないの?」
「では応援は木下さんに任せます。私は疲れたので教室へ戻りますね」
「そう。わかったわ」
これで明日の決勝に進めるわけか。
相手は代表たちか雄二たち。
どっちが勝ち上がってきても今までのようにはいかなさそうだな。