「・・・・・・以上が明日の学力強化合宿の日程です。明日の朝は学園からバスで現地に向かうので、送れずに登校するようにしてください」
教壇の上でいつものごとく高橋先生がホームルームを終えた。
「いよいよ明日から強化合宿かあ」
「学園祭が終わったと思ったら次は強化合宿…本当にこの学園は行事好きよねえ」
「そういう優子だって楽しみにしてるくせにー♪」
「ば、バカね!そんなことないわよ!」
「あれれー?じゃあこのしおりに書いてるメモは何かなー?」
「お、本当だ。さっきの先生の話が事細かに書かれてるね」
「…………なんだかんだで楽しみにしてる」
「みんなやめたまえ。木下さんも年頃の女の子なんだし、こういった行事を楽しんでいたっておかしくないだろ?」
気づけば俺と木下さんの席の近くに工藤さんと代表、そして久保までが集まってきて、いつものメンツが集まっていた。
「あー!もう!みんなうるさいわね!ええそうよ、楽しみよ?悪い?」
「おお開き直ったね」
とまあ木下さんをいじるのもこの辺にしておこう。
俺たちも明日の合宿は楽しみだしね。
にしても学力強化合宿か…
一番強化が必要な連中が趣旨を忘れて遊び倒す姿が目に浮かぶよ。
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そして翌日。
「いやあ、文月学園も太っ腹だねえ。生徒の送迎にリムジンバスを用意するなんて」
俺たち生徒の前には豪華なリムジンバスが。
まさかこれで合宿所まで行くことになるとはな…
「でもこれってAクラスだけみたいだよ?」
横にはいつも以上にうきうきしている工藤さんが。
「なんでも、クラスごとに交通手段が変わるみたいなんだよねー」
「なるほど。Aクラスだからこれだけ豪華ってわけか」
「まあそのへんも文月学園らしいよね♪」
「じゃあFクラスはどうなんだろうな。おんぼろバスか?それともつり革とか…」
「んーとね、しおりによると、『Fクラス‐現地集合』だってさ♪」
「案内すらないのかよ!」
明久たちの境遇に同情を隠せず、心の中で涙を流してしまった。
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「どうしてこうなった…」
学園を出発してから一時間が経過しようとしていた。
先生の話ではあと三十分ほどで着くらしいが…
「すー…すぅ…」
出発から今まで車内では生徒たちがわいわい騒いでいた。
そんな中で一人、木下さんは眠りについていた。
それ自体は別にいい。
俺の肩がその枕になっていなければ…
「ったく、どうしろってんだよ…」
そんなつぶやきも虚しく、俺の顔の右横数センチほどの距離に木下さんの整った顔がある。
軽く寝息がかかるほどだ。
そこは俺も年頃の男の子なわけで、そこはかとなくムラっと来てしまうのも仕方がない。
周りからいくつもの視線が飛んでくるのも、前の席に座る工藤さんがにひひと笑いかけてくるのも仕方ないと割り切るしかないだろう。
「いやあ、役得だねえ倉木くん♪」
「そもそもなんで俺が木下さんのとなりなんだ?こういう時って普通男同士女同士で座るものじゃないかな?」
「そんな世間一般の常識が文月学園に通じると思ってるのかなー?」
「ですよねー…」
そこはもう少し世間一般に寄せてもいいと思います。
とはいえ学園長があの人だし、仕方ないね。
「うーん、むにゃむにゃ…」
「まったく、人の気も知らないで」
まあかわいいからよしと…
「うぇへへ~。健二ったら、隆明にべたべたしちゃってえ~」
「一体何の夢を見ているんだ…」
幸せそうな顔して、えぐい趣味だね。
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「ふう、やっと着いたか」
バスが到着したのは緑豊かな山の中。
そこにある旅館だった。
「いやあ、綺麗なところだね~」
旅館の綺麗さに感動している工藤さん。
「空気がおいしいな」
メガネをくいっと上げて微笑む久保。
「………楽しみ」
珍しく雄二のいないところで笑顔になる代表。
「・・・・・・」
そして顔を真っ赤にしてうなだれる木下さん。
「木下さんはどうしたの?到着早々元気がないようだけど」
「倉木くんにもたれかかって寝ちゃったのが今になって恥ずかしくなったんじゃないかな?」
「恥ずかしい?人の肩にヨダレ垂らして幸せそうに寝てたのが?」
「グサッ」
「倉木くん、ちょっと根に持ってない?」
「別にー?今日の合宿が楽しみで夜眠れないなんて、小学生みたいで可愛いじゃん」
「グサグサッ」
刹那は特になんとも思ってないが、次々と無意識な言葉が優子に突き刺さるのであった。