バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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ここから原作へ入っていきます。
個人的には合宿編は好きなので、書いていて楽しいですね。


第十九話

「ふう、ようやくゆっくりできるな」

 

「そうだね。さすがの僕も移動で疲れてしまっったよ」

 

到着してから、今日一日は自由行動ということで久保と一緒に宿泊部屋へと着ていた。

 

「にしてもさすがは文月学園だな。俺たち二人だけでこの広い部屋に泊まるとは」

 

「ほかのクラスは4、5人ほどで宿泊するようだが、そこはAクラスということで優遇されているんだろうね」

 

「おまけに部屋の冷蔵庫の中身は飲み放題に、さらには個室一つ一つに露天風呂までついてる。Aクラスさまさまだな」

 

「それに関しては僕も同意だ。まあ僕としては大浴場で広いお風呂に入りたいがね」

 

「でも大浴場は入浴時間がクラスによって違うからなー」

 

時間を気にせず入りたければ部屋の露天風呂に入れということか。

 

「…本当はFクラスと一緒に入浴したかったのだけどね」

 

「Fクラスと?ああ、俺も仲いい奴らはみんなFクラスだし、その方が良かったなあ」

 

でも久保はFクラスに友達がいたのか?

うーん、わからん。

 

「とりあえずは夕食まで暇つぶしを…ってあれは明久たちか?」

 

「なにっ!?吉井君だと!?」

 

ふと何気なく窓の外を見てみると、明久が担架で雄二たちに運ばれていた。

久保がやけに明久に反応していたようだが、そこは気にしないでおこう。

 

「ああっ、吉井君…意識がないようだが、どうしてこんなことに…(ばたっ)」

 

「お、おい久保!?」

 

急に顔色がおかしくなったと思ったら、久保がベッドに倒れ込んだ。

 

「なんだ、気を失ってるのか?明久が運ばれてるのがそんなにショックだったのか?」

 

謎は深まるが、今は放っておくしかないか。

それより明久が心配だし、様子を見に行こう。

 

 

 

 

「おいっ!一体何があったんだ!?」

 

雄二たちの部屋に到着した俺は、すぐに事の説明を問いただした。

 

「おお刹那か。それが少し難儀でのう」

 

部屋の中では秀吉が心配そうな面持ちで倒れた明久を見守っていた。

 

「くっ、これでどうだ?」

 

雄二が手元の器具のスイッチを入れ、明久を見る。

 

「よし、呼吸が安定してきたな。もう大丈夫そうだ」

 

「おい、これはいったいどういうことだ?」

 

「それがのう、わしらは電車でここまで来たのじゃが、そこでの昼食で…」

 

昼食。

それを聞いただけでいつぞやの昼休みの出来事が思い出された。

 

「なるほど、姫路さんか」

 

「ああ。姫路の実力の前に、このバカは倒れた…」

 

「う、うーん…」

 

「おおっ!明久、目が覚めたのじゃな!」

 

「よかった、電気ショックが効いたようだな」

 

安心して器具をしまう雄二だが、その様子を見て明久の顔から血の気が少し引いた。

 

「よ、よく生きてたね、僕」

 

「お主がうわごとで前世の罪を懺悔し始めたときはもうダメじゃと・・・」

 

ほんとによく生きてたよ。

 

「心配してくれてありがとう。それよりムッツリーニはどこ?僕たちと同じ部屋だよね?」

 

周りを確認するが、ムッツリーニの姿はない。

すると、タイミングを見計らったかのように部屋にやつが入ってきた。

 

「…………ただいま」

 

「お帰り、ムッツリーニ」

 

「…………明久、無事だったか」

 

「心配してくれてたの?」

 

「…………情報が無駄にならなくてすんだ」

 

「情報?」

 

ムッツリーニの口ぶりから、今まで何らかの捜査をしていたようだ。

 

「なんのことだ?」

 

「ああ、刹那は知らなかったね。実は…」

 

「実は…?」

 

真面目な顔つきで明久が言った。

 

「僕のメイド服パンチラが全世界にWeb配信されそうなんだ」

 

「…何があった?」

 

あまりに斜め上な説明に、流石にあっけにとられてしまった。

 

「ごめん端折りすぎた…」

 

「実はのう…」

 

そこで話を聞いていた秀吉が、明久に変わって説明をしてくれた。

 

要は明久のメイドコスプレの姿が盗撮されていて、その写真をネタに誰かから脅迫されているらしい。

さらに雄二も、これまた誰かに先日の学園祭での告白(声は秀吉のものまね)を録音されていたらしく、その件でムッツリーニに捜査を依頼していたらしい。

 

「お前らは、よくそこまで厄介事を抱え込めるよな。普段の行いのせいか」

 

「「こいつと一緒にするな!」」

 

はいはい、どっちもどっちです。

 

「それでムッツリーニ、どうだった?」

 

「…………昨日犯人が使ったと思われる道具の痕跡を見つけた」

 

さすがはムッツリーニだ。

同業者の手口についてはお手の物だな。

 

「…………手口や使用機器から、明久と雄二の件の犯人は同一人物だと断定できる」

 

「そうなのか。まあ、そんなことする奴が何人もいるとは思えないし、間違いないようだな」

 

「それ以前にこいつの存在がまずおかしいと思うのは俺だけ?」

 

ムッツリーニの盗聴、盗撮技術はもはやプロフェッショナルだ。

同学年にいると思うだけでもいろいろおかしいんだが。

 

「それで、犯人は誰なのじゃ?」

 

「…………(ふるふる)」

 

「あ、やっぱり犯人はまだわかんないの?」

 

「…………すまない」

 

「まあ時間が少なすぎるからな。仕方ないだろ」

 

いくらムッツリーニでも手がかりが少ないか。

 

「…………『犯人は女子生徒でお尻にやけどの跡がある』ということしかわからなかった」

 

「…君は一体何を調べたんだ」

 

普通に考えて、友達同士でもそんな情報は入ってこないと思うんだ。

 

「…………校内に仕掛けた盗聴器による操作の結果」

 

「なるほど?そこから取引の内容を話している生徒を見つけ出したわけだな?」

 

「…………ご明察。その会話の内容を聞いたところさっきの情報が得られた」

 

「よし、ご苦労。それだけでも情報が得られて良かった。よくやってくれた」

 

「でも雄二、これからどうするのさ?」

 

「明久、お前もたまには自分で考えろ」

 

「うーん、あそっか。秀吉に見てきてもらえばいいんだ!女子の入浴時間にさ!」

 

「おい明久!わしは男じゃと…」

 

「明久、それは無理だよ」

 

「どうしてさ刹那!」

 

「合宿のしおりの3ページ目を見てみろ」

 

刹那に促されて、明久はしおりを開く。

 

「ば、ばかなっ…秀吉だけ個室風呂だとっ!?」

 

「どうしてわしだけ個室風呂なのじゃ!?」

 

さすがの文月学園も秀吉を男として認識できなくなってきたのか?

この前のプールの時も秀吉専用の更衣室があったくらいだからな。

 

そこでどうしたものかと五人で頭を悩ませていた、その時だった。

 

バァン!

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」

 

もの凄い勢いで扉が開かれ、大勢の女子が乗り込んできた。

 

「な、なんだ!?」

 

「なにごとじゃ!?」

 

「木下と倉木はこっちへ。そこのバカ3人は抵抗をやめなさい!」

 

島田さんにそう言われて窓を見てみると、ほかの三人は窓からの逃走を試みていた。

 

「くっ、読まれたか!」

 

「さすがは美波だね。僕らの行動パターンがわかってる!」

 

「そもそもそこで窓から逃走しようとするお前らにツッコミをいれていいか?」

 

「刹那だって去年はよく一緒に逃げていたじゃないか!」

 

言われてみれば…

Aクラスに入ってから少し毒気が抜けたってことかな?

 

「ごちゃごちゃうるさいわね!」

 

「君は…確かCクラスの小山さんだったね?」

 

「倉木刹那…先日の試召戦争じゃあ迷惑をかけたわね。でも今はあんたと話している時間はないの。またあとでゆっくり話しましょ」

 

「いや別に話すことはもうないんだけど…にしてもどうしてここに?」

 

今は確か自由時間のはずだ。

 

「どう見ても遊びに来たわよ、って雰囲気じゃあないよな?」

 

「もちろんよ。このバカたちが犯人ってことはもうわかっているの!」

 

「犯人?」

 

「なんのことさ!僕たちは何もしてないよ!」

 

「とぼけないで!これに見覚えあるわよね?」

 

そう言って小山さんはポケットから小さな機械を取り出した。

 

「それは…」

 

「…………CCDカメラと小型集音マイク」

 

専門家のムッツリーニが答えた。

 

「これが女子風呂の脱衣所にこれが仕掛けられていたのよ」

 

「それじゃあ盗撮ってことか」

 

「そんな!一体誰がそんなことを!」

 

「あんたたち以外にこんなことする奴なんていないでしょう」

 

「はあ?」

 

このセリフについカチンと来てしまった。

 

「そこまで言うからにはちゃんとした証拠があるんだろうな?」

 

「証拠ですって?」

 

「ああそうだ。こいつらがやった瞬間を目撃した人がいるのか?その機器からこいつらの指紋でも出たか?」

 

「べ、別にそういうわけじゃないわよ。この学園でこんな不祥事を起こすのは決まってFクラス。それもそこのバカ3人なの。さらにはそこの土屋はこの手の機械に詳しいらしいじゃない。それだけでも十分な根拠と言えるはずよ」

 

「つまりはすべて状況証拠というわけか。話にならんな」

 

「なんですって?」

 

「その程度じゃこいつらが犯人だという根拠にはならないって言ったんだよ。そもそもこいつらはこの合宿所に来てからこの部屋にいたというアリバイだってある」

 

「アリバイ?本当なの?」

 

「ああ。明久の体調が悪くて雄二と秀吉がすぐ横にずっといたからな」

 

「そう。じゃあ土屋はどうなの?」

 

「…へ?」

 

「そこの土屋はどうなのかしら?彼がこの中で一番こういう物に詳しいんでしょう?だったら彼さえいればカメラは仕掛けられる。そうは思わない?」

 

「それはまあ、確かに」

 

「ちょっと、刹那!」

 

「だ、だからってしっかりした証拠もないのにこいつらを疑うのはどうなんだ?」

 

「わたしたちは学生よ?それにこれは刑事事件じゃあない。ちゃんとした捜査もできないでそんなもの用意できないわ。だから状況証拠だけでも十分なの」

 

「む、むう」

 

「納得してもらえたようね。だったらそこをどいてもらえるかしら?あなたと木下は関係ないのだから」

 

「…すまん明久」

 

「あお、そんなあ…って美波!?姫路さん!?」

 

「ア~キ~?」

 

「明久くん、悪い子にはお仕置きが必要なんですよ~?」

 

「あっ、いやっ、ちょっ!勘弁して~!」

 

俺が小山さんに論破されてから、明久は早速あの二人の餌食になってしまった。

 

「………雄二、浮気は許さない」

 

「しょ、翔子!?いだだだだっ!」

 

雄二は代表に捕まり、アイアンクローの刑に。

 

俺は…無力だ…

 

とはいったものの、俺も内心ではこいつらを信じきっていたわけじゃあない。

なんたってムッツリーニ以外に盗撮なんてする輩がそうそういるとは…

 

ん?盗撮…?

これってさっきの話の犯人なんじゃないか?

とはいえまだ根拠はない。

あとで雄二に聞いてみるか。

 

「残念だったわね」

 

事の成り行きを秀吉とともに見守っていると、小山さんが話しかけてきた。

刑の執行はほかの女子に任せてきたのだろう。

 

「いくらあなたでもさっきの状況は厳しかったみたいね」

 

「ああ…。あんたもなかなか頭の回転速いじゃん」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ。それと一つ言っておくわね」

 

ん?なんだ?

 

「わたし、頭のいい人が好きなのよね」

 

「ふーん?だからって根本はあまりオススメしないなあ」

 

「うっ。あいつのことは忘れたいの。その話はやめてくれる?」

 

例の女装趣味のことは聞いてたのかな?

まあそれも雄二たちの差金と知ったらまためんどうなことになるし、黙っておこう。

 

「それで?そんなことを俺に言ってどうするつもりだ?」

 

「ふふっ。わたしはあなたが気に入ったのよ」

 

「…はい?」

 

「ま、今日のところはそれだけ知っておいてくれたらいいわ。また後日、ゆっくり話しましょ?もちろん…ふたりっきりでね」

 

いたずらっぽい笑みを浮かべて、小山さんは去っていった。

 

なんだったんだ?

 

「ぎゃああ!も、もう無理…」

 

「ほらほらアキ~、まだまだいけるわよねえ?」

 

「ふぁいとです~明久くん~」

 

小山さんのことで少し考えたかったが、明久たちの断末魔がうるさくてそれどころではなかった。

まあ気にしなくてもいいだろう。

とりあえず今はこのバカ達を助けるとしようか。

 

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